高圧受変電設備の単線結線図には、20種類以上の機器が並びます。新人がつまずくのは記号そのものではなく、「この機器は、何を守る/測る/変えるために、そこに置かれているのか」がわからないことです。
そこでこのページでは、主要な機器を設置位置(6ブロック)ごとに並べ、目的・用途と、もし無かったらどうなるかを1行ずつまとめました。図面を見ながら横に置いて使ってください。
覚え方のコツは「ないとどうなるか」から読むこと。困る理由がわかれば、その機器がなぜそこに必要かは自然に頭に入るよ。
📖 この表の読み方
記号…単線結線図に書かれる文字記号(英文名の頭文字が原則)
設置位置…各表の見出しが、第1回で説明した6ブロックのどこにあたるかを示しています
ないとどうなるか…その機器を省いたときに現実に起きること。目的を体で覚えるための列です
解説回…連載でその機器を詳しく扱う回
機器別・目的早見表
ブロック① 引込部
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
PAS (GR付PAS) |
地絡継電装置付 高圧交流負荷開閉器 |
責任分界点に置き、構内で起きた地絡事故を自分の敷地内で切り離す。架空引込のときの標準機器。 |
構内の事故が電力会社の配電線ごと停電させ、近隣を巻き添えにする波及事故になる。 |
第4回 |
| UGS |
地中線用地絡継電装置付 高圧ガス負荷開閉器 |
PASの地中引込版。ガス絶縁で、高圧キャビネット内に納めて使う。 |
地中引込でも波及事故は起きる。切り離す手段がなくなる。 |
第4回 |
| SOG制御装置 |
過電流蓄勢トリップ付 地絡トリップ形制御装置 |
PAS・UGSの頭脳。地絡は即時開放、短絡は電力会社の再閉路による無電圧時に開放する。 |
短絡電流をPASで切ろうとして開閉器そのものが破損する。 |
第4回 |
| CH |
ケーブルヘッド (終端接続部) |
高圧ケーブルの端末を電界集中なく処理し、絶縁を保つ。引込部と受電部の各端末に付く。 |
処理不良が経年で絶縁破壊を起こし、地絡・短絡事故の起点になる。 |
第4回 |
ブロック② 受電部:計量・断路・避雷
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
| VCT |
計器用変圧変流器 |
取引用の電力量を計るため、VTとCTを一体化したもの。電力会社の支給品で封印されており、勝手に触れない。 |
取引の根拠が取れず、そもそも受電契約が成立しない。 |
第5回 |
| Wh |
電力量計 |
VCTの二次から使用電力量を積算する。最大需要電力計(デマンド計)を兼ねるものが多い。 |
料金の算定ができない。デマンド管理による基本料金の削減もできない。 |
第5回 |
| DS |
断路器 |
点検時に電路を確実に開放し、切れていることを目で確認するため。負荷電流は切れない。 |
停電作業の安全確認ができず、検電・接地の前提が崩れる。 |
第5回 |
| LA |
避雷器 |
雷サージなどの異常電圧を大地へ逃がし、後段の機器の絶縁を守る。A種接地と組で使う。 |
落雷で変圧器やケーブルの絶縁が破壊され、長期停電と高額な復旧費になる。 |
第5回 |
ブロック② 受電部:主遮断装置(CB形/PF・S形)
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
| VCB |
真空遮断器 |
短絡・過負荷の大電流を安全に遮断する。OCRとセットで働く、CB形の主遮断装置。 |
事故電流を切れず機器の焼損・火災に至り、上位の配電用変電所まで動作させる。 |
第6回 |
| PF |
電力ヒューズ (限流ヒューズ) |
短絡電流を溶断して遮断する。安価・小型で、PF・S形の主遮断装置に使う。 |
短絡保護がなくなる。溶断後は交換が必要な点も運用上おさえておく。 |
第6回 |
| LBS |
高圧交流負荷開閉器 |
負荷電流の開閉ができる開閉器。PFと組んでPF・S形を構成し、変圧器・コンデンサの一次側にも使う。 |
回路ごとの切り離しができず、1台の点検のたびに全停電になる。 |
第6回 |
ブロック② 受電部:計器用変成器と計器
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
| VT |
計器用変圧器 |
6,600Vを110Vに落とし、計器や継電器が扱える電圧にする。 |
電圧が測れず、UVR・力率計・電圧計がすべて機能しない。 |
第7回 |
| CT |
変流器 |
大電流を5Aなどに変換して計器・OCRへ送る。二次側の開放は厳禁。 |
電流が測れず、過電流保護そのものが働かない。 |
第7回 |
| ZCT |
零相変流器 |
3線の電流のベクトル和(=地絡電流)だけを取り出す。 |
地絡を検出できず、感電事故と波及事故を防げない。 |
第7回 |
| ZPD |
零相電圧検出装置 (コンデンサ形分圧器) |
地絡時の零相電圧を検出し、DGRが事故の方向(構内か構外か)を判別できるようにする。 |
方向判別ができず、構外の事故でも自分だけ停電するもらい事故を起こす。 |
第7回 |
A・V AS・VS |
電流計・電圧計 切換スイッチ |
運転状態を数値で見るため。AS・VSで測る相を切り換える。 |
片相の電流増加や電圧低下といった異常の兆候に気づけない。 |
第7回 |
ブロック② 受電部:保護継電器
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
| OCR |
過電流継電器 |
CTの二次電流を監視し、短絡・過負荷でVCBに引外し指令を出す。限時要素と瞬時要素をもつ。 |
短絡・過負荷が起きても遮断器が動かない。 |
第8回 |
| DGR |
地絡方向継電器 |
ZCTとZPDの入力から、地絡が構内か構外かを判別して動作する。 |
構外の事故で不要動作し、自分だけが停電する。 |
第8回 |
| GR |
地絡継電器(無方向) |
零相電流の大きさだけで地絡を検出する簡易形。ケーブルが長いと不要動作しやすい。 |
(DGRの代わりに使う場合)構外事故でのもらい事故を避けられない。 |
第8回 |
| UVR |
不足電圧継電器 |
停電・電圧低下を検出し、機器の保護や非常用発電機の始動信号にする。 |
停電を検出できず、非常用電源への自動切替が働かない。 |
第8回 |
| OVR |
過電圧継電器 |
異常な電圧上昇を検出して回路を切り離す。 |
過電圧で機器の絶縁を傷め、寿命を大きく縮める。 |
第8回 |
ブロック④ 変圧器部
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
T (単相) |
単相変圧器 |
6,600Vを105V/210Vにして、照明・コンセントなどの電灯負荷に供給する。 |
電灯負荷に電気を送れない。 |
第9回 |
T (三相) |
三相変圧器 |
6,600Vを210Vにして、空調機・ポンプ・エレベータなどの動力負荷に供給する。 |
動力設備が動かない。電灯と共用すると起動時に照明がちらつく。 |
第9回 |
| — |
ダイヤル温度計 ・警報接点 |
変圧器の油温・巻線温度を監視し、過熱を警報する。 |
過負荷や冷却不良に気づかないまま、変圧器を焼損する。 |
第9回 |
ブロック⑤ 力率改善部
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
| SC |
進相コンデンサ |
遅れ無効電力を打ち消して力率を改善し、電流と電気料金を減らす。 |
力率が悪いまま。基本料金が上がり、幹線・変圧器も余分な容量が必要になる。 |
第11回 |
| SR |
直列リアクトル |
コンデンサ投入時の突入電流を抑え、第5調波の拡大を防ぐ。容量はSCの6%が標準。 |
突入電流で開閉器が傷み、高調波が拡大して他設備に障害を与える。 |
第11回 |
| VMC |
高圧真空電磁接触器 |
コンデンサ回路の頻繁な開閉に耐える開閉器。自動力率制御に使う。 |
開閉頻度に耐えられず接点が早期に劣化する。 |
第11回 |
| APFR |
自動力率調整装置 |
負荷の力率を監視して、コンデンサ群を自動で投入・開放する。 |
軽負荷時に進み力率になり、かえって電圧が上昇する。 |
第11回 |
ブロック⑥ 低圧配電部
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
| MCCB |
配線用遮断器 |
低圧幹線・分岐回路の過負荷と短絡を保護し、回路単位で切り離す。 |
低圧側の事故が変圧器や上位のVCBまで波及し、建物全体が停電する。 |
第10回 |
| ELCB |
漏電遮断器 |
低圧回路の漏電を検出し、感電と電気火災を防ぐ。 |
感電事故・漏電火災のリスクが残る。 |
第10回 |
| ACB |
気中遮断器 |
大容量の低圧主幹に使う遮断器。保護要素を内蔵するものが多い。 |
大容量の低圧主回路を安全に遮断できない。 |
第10回 |
設備全体にかかるもの:接地
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
| A種 |
A種接地工事 |
高圧機器の金属製外箱や避雷器を接地し、高圧側の地絡時に人が触れても危険な電位にしない。10Ω以下。 |
高圧の充電部に触れたのと同じ状態になり、感電死に至る。 |
第12回 |
| B種 |
B種接地工事 |
変圧器の高低圧混触時に、低圧側の電位上昇を抑える。二次側の中性点または1端子に施す。 |
混触時に低圧側へ高圧が侵入し、建物中の低圧機器と人が危険にさらされる。 |
第12回 |
| C種 |
C種接地工事 |
300Vを超える低圧機器の外箱を接地する。10Ω以下(0.5秒以内に自動遮断する装置があれば500Ω以下)。 |
漏電時に機器の外箱が充電され、感電する。 |
第12回 |
| D種 |
D種接地工事 |
300V以下の低圧機器の外箱を接地する。100Ω以下(同上の条件で500Ω以下)。 |
同上。低圧機器はもっとも人が触れる場所にある。 |
第12回 |
設備全体にかかるもの:予備電源・系統連系
| 記号 |
名称 |
目的(なぜ必要か)・用途 |
ないとどうなるか |
解説回 |
| G |
非常用発電機 |
停電時に非常照明・消防設備・重要負荷へ給電する。UVRの信号で自動始動する。 |
停電時に避難・消火の設備が働かない(法令で必要な建物では設置義務違反になる)。 |
第13回 |
| — |
直流電源装置 (蓄電池・整流器) |
停電中でもVCBを引外し・投入できる操作電源を確保する。 |
停電と同時に事故が起きたとき、遮断器を動かせない。 |
第13回 |
| — |
系統連系用保護装置 |
太陽光などを連系するとき、単独運転を検出して系統から解列する。 |
単独運転が続き、復旧作業中の電力会社の作業員が感電するおそれがある。 |
第13回 |
| — |
切替インタロック |
商用電源と発電機が同時に投入されないようにする。 |
逆充電で電力会社側へ送電してしまい、重大事故になる。 |
第13回 |
補足:主遮断装置は受電設備容量で決まる
PF・S形(LBS+PF)…受電設備容量
300kVA以下。安価・小型で、小規模な
キュービクルの主流。
CB形(VCB+OCR)…受電設備容量
4,000kVA以下。保護の自由度が高く、再投入も容易。
どちらを選ぶかで、この表の「主遮断装置」の行がまるごと入れ替わります。詳しくは第6回で扱います。
まとめ
この表の使い方
・手元の単線結線図を6ブロックに区切ってから、ブロックごとにこの表と突き合わせる
・記号を覚えるのではなく、「ないとどうなるか」を先に読む
・機器が省かれている図面を見つけたら、なぜ省けるのかを考える(容量・用途・保護方式で決まります)
・詳しい選定方法や定格の決め方は、連載の各回で順に扱います
参考:電気設備の技術基準の解釈/高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/内線規程 JEAC 8001/JIS C 4620 キュービクル式高圧受電設備/JEM 1090 制御器具番号
📖次に読むならこれ【高圧受変電設備の設計マニュアル①】高圧受変電設備とは何か ― 目的と用途をやさしく解説設計マニュアル
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