ローリーアースの設置基準と接地線サイズ|根拠の条文とD種接地の決め方
ローリーアースは、タンクローリーから危険物を受け入れるときに、受入れ側(施設側)に用意しておく接地です。タンクローリーにはアースリールが備わっていますが、それを挟む相手がなければ静電気は逃げません。この記事では、なぜ必要なのか、根拠になる条文がどうつながっているのか、そして接地工事の種類・接地線サイズ・接地極をどう決めるのかを、図面に落とせる形で整理します。
結論
ローリーアースは受入れ側に設ける接地電極等。仕様はD種接地・接地線5.5mm²以上が実務の基本です。
ローリーアースとは、受入れ側に用意する接地
ローリー(lorry)はトラックのことで、消防法ではガソリンや灯油を運ぶタンクローリーを「移動タンク貯蔵所」と呼びます。このタンクローリーが給油所や工場に着き、地下タンクや受入れタンクへ危険物を注入するとき、車両と液体にたまった静電気を大地へ逃がすために接地をとります。その接地に使う施設側の端子・接地線・接地極をまとめて、図面では「ローリーアース」と書きます。
ここを取り違えると設計が止まります。接地導線(アースリール)は車両側の設備で、法令上もタンクローリーに備えることが決められています。一方でそれを接続する相手=接地電極等は、受け入れる側の施設に用意しておく必要があります。つまり、電気設備設計者が図面に描くのは後者です。
| 項目 | 車両側(タンクローリー) | 受入れ側(施設) |
|---|---|---|
| 設備の名前 | 接地導線(アースリール) | 接地電極等(ローリーアース) |
| 用意する人 | 運送事業者・車両側 | 施設の側(電気設備設計の範囲) |
| 根拠 | 令 第15条第1項第14号 | 令 第11条第1項第10号ニ ほか |
| 図面への表れ方 | 図面には出てこない | 接地端子・接地線・接地極・盤 |
ペン太
ハリタ- ローリーアース=タンクローリーの静電気を逃がすために受入れ側に設ける接地
- 車両側は接地導線(アースリール)、受入れ側は接地電極等
- 電気設備設計で描くのは、接地端子・接地線・接地極・(必要なら)ローリーアース盤
- 「移動タンク貯蔵所」はタンクローリーのこと
静電気が着火源になるまで
接地が要る理由は、静電気が着火源になるからです。ガソリンのような引火性液体は、ホースや配管の中を流れるだけで電荷が生まれます(流動帯電)。タンクローリーはタイヤで大地から絶縁されているので、この電荷が車体に残ります。車体と大地の間に電位差ができれば火花が飛び、そこにガソリン蒸気があれば引火します。
⚠ 静電気の火花は、思っているより小さなエネルギーで着火する
ガソリンなどの引火性蒸気は、静電気の放電程度のごく小さなエネルギーでも着火します。給油所で「静電気除去シートに触れてください」と案内があるのも、人体にたまった電荷を同じ理屈で逃がすためです。タンクローリーの荷卸しでは、車体という大きな導体にまとまった電荷がたまるぶん、人体よりも条件が厳しくなります。
ペン太
ハリタ- 引火性液体は流れるだけで帯電する(流動帯電)
- タンクローリーはタイヤで絶縁されているので、電荷が車体に残る
- 車体と大地の電位差で火花が飛び、蒸気に引火する
- 接地は「電荷がたまる段階」で逃がしてしまう対策
根拠になる条文を順にたどる
ローリーアースの根拠は、ひとつの条文ではありません。消防法 → 危険物の規制に関する政令 → 同 規則と降りていく形で決まっています。「どの条文を見ればよいか」と聞かれたときに答えられるよう、順に並べます。
| 条文 | だれに向けた基準か | 内容 |
|---|---|---|
| 消防法 第10条第4項 | — | 製造所・貯蔵所・取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は政令で定める |
| 令 第15条第1項第14号 | 移動タンク貯蔵所 (車両側) |
ガソリン等の移動貯蔵タンクには、接地導線を設けること |
| 令 第11条第1項第10号ニ | 屋外タンク貯蔵所 (受入れ側) |
注入口付近には、静電気を有効に除去するための接地電極を設けること |
| 令 第27条第6項第4号ハ | 取扱いの基準 (運用) |
移動貯蔵タンクに入れ、又は出すときは、総務省令で定めるところにより当該タンクを接地すること |
| 規則 第40条の6 | 接続のしかた | 導線により移動貯蔵タンクと接地電極等との間を緊結して行うこと |
| 令 第9条第1項第18号 | 製造所 | 静電気が発生するおそれのある設備には、蓄積される静電気を有効に除去する装置を設けること |
条文には、数値が書かれていない
ここが実務で迷うところです。政令にも規則にも、接地抵抗値の上限も、接地線の太さも書かれていません。規則第40条の6が定めているのは「導線で緊結する」という接続方法だけです。では現場の数値はどこから来ているかというと、市町村の消防本部が定める審査基準・指導基準と、電気工事の慣行です。
💡 消防本部の審査基準に書かれている内容(例)
- 接地工事の種類 D種接地工事(旧 第3種接地工事)によること
- 接地抵抗 接地電極と大地間の全抵抗を100Ω以下にすること
- アース線 導線は直径1.6mm程度の軟銅、またはこれ以外では引張強さ0.39kN以上の金属線
- アース線の長さ 注入ホースの長さ程度とすること
- 接地電極 直径10mm程度の鉄棒または銅棒を地盤面下0.9m打ち込んだもの。水道管や地中に埋設されたタンク脚で代替できる場合もある
内容は市町村ごとに違います。着工前に所轄消防本部の審査基準を確認するのが、いちばん確実な進め方です。
出典:消防法、危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)、危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)、各消防本部の危険物審査基準・少量危険物指導基準
- 消防法第10条第4項が政令へ委任し、政令の3本と規則第40条の6で組み立てられている
- 車両側=令第15条第1項第14号(接地導線)、受入れ側=令第11条第1項第10号ニ(接地電極)
- 運用は令第27条第6項第4号ハ、接続方法は規則第40条の6(導線で緊結)
- 法令には接地抵抗値も接地線の太さも書かれていない
仕様の決め方 ― D種接地と接地線サイズ
法令に数値がない以上、仕様は審査基準+実務の慣行で決めます。結論から書くと、接地工事はD種、接地線は5.5mm²以上です。
| 項目 | 実務での仕様 | 考え方 |
|---|---|---|
| 接地工事の種類 | D種接地 | 審査基準がD種接地工事(旧第3種)の技術基準によるとしている |
| 接地抵抗 | 100Ω以下 | 接地電極と大地間の全抵抗。測定値を記録に残す |
| 接地線サイズ | 5.5mm²以上 | 審査基準の「直径1.6mm程度」は最低限。強度と取り回しで太くする |
| 接地極 | φ14×1500 の銅覆鋼棒 ほか | 審査基準の目安は直径10mm程度・地盤面下0.9m。抵抗値を見て本数を決める |
| 接地端子 | クリップを挟める端子 | 荷卸しのたびに抜き差しする。腐食しにくいものを選ぶ |
| ローリーアース盤 | 端子がないときに設ける | 接地端子と接地線の引込口を備えた小型の盤 |
なぜ「直径1.6mm」ではなく5.5mm²にするのか
審査基準がいう直径1.6mmの軟銅は、断面積にすると約2mm²です。静電気を逃がすだけなら、これでも電気的には足ります。それでも実務で5.5mm²以上を採るのは、次の理由です。
⚠ 接地極を他の接地と共用してよいか
ローリーアースはD種接地なので、ほかのD種接地極と共用できる場合があります。ただし危険物施設では所轄消防の指導が優先します。避雷設備のA種や高圧受電のA種と共用すると、事故時に端子が高電位になる経路ができるため、単独接地を求められることもあります。共用の考え方は接地極の共用方法で整理しています。
- 接地工事はD種、接地抵抗は100Ω以下が実務の基本
- 接地線は5.5mm²以上。審査基準の「直径1.6mm程度」は最低限の値
- 接地極は φ14×1500 などを使い、測定値を見て本数を決める
- 接地極の共用は可能な場合もあるが、危険物施設では所轄消防の指導が優先する
図面と現場で外しやすいところ
仕様が決まっても、端子の位置を外すと使われません。ローリーアースは荷卸しのたびに人が抜き差しする設備なので、図面の見た目より現場の使い勝手で決まります。
⚠ 接続と取り外しのタイミングも決まっている
資源エネルギー庁の「給油所におけるローリー荷卸し時の安全対策基本マニュアル」では、荷卸しの準備段階でローリー備え付けのアースを施設側のアース端子に接続し、荷卸しがすべて終わった後片付けの段階でアースを収納する手順になっています。また、令第27条第6項第4号ロにより、引火点が40度未満の危険物を注入するときは移動タンク貯蔵所の原動機を停止させます。設計側としては、この一連の作業が無理なくできる位置かどうかを見ておきます。
| 外しやすいところ | どうなるか | 対策 |
|---|---|---|
| 端子が遠い | アース線が届かない | 注入ホースの長さ程度の範囲に置く |
| 車両の動線上にある | 踏まれる・引っかける | 停車位置と乗り入れ経路を図面で確認する |
| 端子が低すぎる | 見えない・挟みにくい | 立上りを保護管で保護し、見える高さに出す |
| 物で塞がれる | 使われなくなる | カラーコーンや物置の定位置を先に決めておく |
| 屋外で腐食した | 接触抵抗が増える | 端子部の材質と点検のしやすさを見ておく |
ペン太
ハリタ- 端子の位置は、停車位置とホースの取り回しから決める
- アース線の長さは注入ホースの長さ程度が目安
- 荷卸しの前に接続し、終了後に取り外す。作業しやすい位置かを見る
- 引火点40度未満の注入では原動機を停止させる(令第27条第6項第4号ロ)
よくある質問
ローリーアースの接地工事の種類は?
D種接地です。危険物の法令に接地工事の種類の定めはありませんが、消防本部の審査基準がD種接地工事(旧 第3種接地工事)の技術基準によるとしており、実務でもD種で施工します。
接地線のサイズはどれくらい必要ですか?
5.5mm²以上が目安です。審査基準にある「直径1.6mm程度の軟銅」は断面積で約2mm²にあたる最低限の値で、屋外での機械的強度や取り回しを考えて、実務では5.5mm²以上を採用します。
ローリーアースの根拠となる条文はどれですか?
消防法第10条第4項を受けた「危険物の規制に関する政令」が中心です。車両側は第15条第1項第14号(接地導線)、受入れ側は第11条第1項第10号ニ(注入口付近の接地電極)、荷卸し時の運用は第27条第6項第4号ハで、接続方法は規則第40条の6が「導線により移動貯蔵タンクと接地電極等との間を緊結する」と定めています。
接地抵抗値は何Ω以下にすればよいですか?
法令に数値の定めはありません。消防本部の審査基準では、接地電極と大地間の全抵抗を100Ω以下とする例があり、D種接地の基準とも一致します。測定値は記録に残しておきます。
接地極は何を使えばよいですか?
審査基準の目安は直径10mm程度の鉄棒または銅棒を地盤面下0.9m打ち込んだものです。実務ではφ14×1500の銅覆鋼棒などを使い、測定した抵抗値を見て本数を決めます。水道管や地中に埋設されたタンク脚で代替できる場合もあります。
ローリーアース盤は必ず必要ですか?
荷卸し口の側にすでに接地端子があれば、接地工事だけで足ります。端子がない場合に、クリップを挟める端子と接地線の引込口を備えたローリーアース盤を設けます。
アースはいつ接続して、いつ外しますか?
荷卸しの準備段階で接続し、荷卸しがすべて終わって後片付けをするときに外します。資源エネルギー庁の安全対策基本マニュアルでも、この順番が手順として示されています。
ほかの接地極と共用してもよいですか?
同じD種どうしなら共用できる場合がありますが、危険物施設では所轄消防の指導が優先します。避雷設備や高圧受電のA種接地と共用すると事故時に端子が高電位になる経路ができるため、単独接地を求められることもあります。
タンクローリー以外にも接地が必要な設備はありますか?
あります。静電気で引火したり製品に影響が出たりするおそれのある設備には接地が必要になることがあるので、機器の仕様書に接地工事の記載がないかを確認してください。
まとめ ― 取り違えやすいところと手順
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| ローリーアースは車両側に付ける設備 | 受入れ側(施設側)に用意する接地。車両側は接地導線(アースリール) |
| 根拠は令第9条第1項第18号 | 第9条は製造所の基準。受入れ側の接地電極は令第11条第1項第10号ニ、運用は令第27条第6項第4号ハと規則第40条の6 |
| 政令に接地線の太さが書いてある | 政令にも規則にも太さ・抵抗値の規定はない。数値は消防本部の審査基準と実務の慣行 |
| 接地工事はC種でよい | 審査基準はD種接地工事(旧第3種)。接地抵抗は100Ω以下 |
| 接地線は細くても機能すれば足りる | 「直径1.6mm程度」は最低限。屋外の強度と取り回しから5.5mm²以上とする |
| 端子を描けば設計は終わり | 荷卸しのたびに抜き差しする。届く範囲・動線・高さまで見て位置を決める |
| 手順 | やること | 使う値・見るもの |
|---|---|---|
| 1|区分の確認 | 受入れ設備の種類を確かめる | 給油取扱所・一般取扱所・少量危険物 |
| 2|現地の確認 | 荷卸し口の位置と車両の停車位置を押さえる | 注入口の場所、乗り入れの動線 |
| 3|端子の位置 | 接地端子(ローリーアース)の位置を決める | アース線は注入ホースの長さ程度 |
| 4|接地の仕様 | 接地工事の種類と接地線サイズを決める | D種接地/5.5mm²以上 |
| 5|接地極 | 接地極と接地抵抗の目標値を決める | φ14×1500 ほか/100Ω以下 |
| 6|協議 | 所轄消防本部の審査基準で確認する | 市町村ごとに指導内容が違う |
📘 あわせて確認したいこと
接地工事の種類と抵抗値は内線規程の解説(接地工事の種類)、接地線の太さは接地線の太さ早見表、A種〜D種の目的の違いは高圧受変電設備の設計マニュアル⑫ 接地で扱っています。
出典:消防法、危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条・第11条・第15条・第27条、危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第40条の6、各消防本部の危険物審査基準・少量危険物指導基準、資源エネルギー庁「給油所におけるローリー荷卸し時の安全対策基本マニュアル」。数値の運用は市町村の消防本部によって変わります。
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