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変圧器は50・75・100・150・200・300kVA。電動機は0.75・1.5・2.2・3.7・5.5・7.5kW。この飛び飛びの数字は、誰がどうやって決めたのでしょうか。じつは「標準数」という、数字の並びを決めるためだけの規格が日本にはあります。前回のR10系列の話から、そこへ入ります。

結論

数字の並びを決めるJIS Z 8601「標準数」は1954年からある現行規格です。ところが日本の電気設備の数字は、ほとんどこれに従っていません

  • 国際規格は変圧器の容量をR10系列から選ぶよう推奨している
  • 日本の値はR10と4.8〜6.3%ずれる。JISの附属書は「整合は困難」と明記
  • 変圧器のkVAも電動機のkWも、1桁を6段で刻んでいる
  • 標準数に「6段」という刻みは存在しない
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
R5は5段、R10は10段、日本の変圧器は6段で1桁を刻んでいることを対数目盛で比べた図
同じ1桁を何段に割るか。日本の変圧器の刻みは、R5ともR10とも重なりません。

前回、国際規格が変圧器の容量について「R10系列から選ぶことが望ましい」と書いている、という話が出ました。そのR10とは何なのか。調べていくと、思っていたより大きな話になりました。

ペン太
変圧器の75kVAとか150kVAって、なんだか半端ですよね。
ハリタハリタ
じつは数字の並べ方を決めた規格があるんです。ただ、日本の変圧器はそれに従っていません。
ペン太
規格があるのに、従っていないんですか。
ハリタハリタ
しかもJISの附属書に、従えない理由まで書いてありました。

数字の並べ方を決める規格が、1954年からある

JIS Z 8601「標準数」。これがその規格です。制定は1954年で、その後一度も改正されずに現行のまま使われています。

考え方は単純です。1から10までを何等分するかを決め、等比数列で刻む。何等分するかによって系列の名前が変わります。

系列 1桁あたり 公比 並び
R5 5段 約1.58 1.00 1.60 2.50 4.00 6.30
R10 10段 約1.26 1.00 1.25 1.60 2.00 2.50 3.15 4.00 5.00 6.30 8.00
R20 20段 約1.12 1.00 1.12 1.25 1.40 1.60 1.80 …
R40 40段 約1.06 1.00 1.06 1.12 1.18 1.25 1.32 …
Rのあとの数字が「1桁を何段に割るか」です。R10なら10段。公比は10の10乗根で、約1.26倍ずつ増えていきます。

1.25や3.15といった中途半端な数字は、計算値を丸めたものです。R10の3.15は本当は3.1623。規格はこの計算値も併記しています。

ここで押さえておきたいのは、用意されている刻みは5・10・20・40(と特別な80)だけだということです。それ以外の刻み方は、この規格には存在しません。あとで効いてきます。

💡 「なぜ使うべきか」は、別の規格に書いてある

JIS Z 8601の本文は「段階的に数値を定める場合には標準数を用いる」と指示するだけで、理由を説明していません。

理由が書かれているのは国際規格のほうです。最良の刻みであること、どんな分野にも使えること、計算が簡単になること、他の単位系への換算が楽なこと——この4つが挙げられています。

ここまでのポイント
  • JIS Z 8601「標準数」は1954年制定で、現在も改正されずに現行
  • R5・R10・R20・R40は「1桁を何段に割るか」を表す
  • 用意されている刻みは5・10・20・40だけ
  • 「なぜ使うか」の理由は、JISではなく国際規格の側に書かれている


変圧器の容量は、標準数に従っていない

では実際に照合してみます。まず変圧器から。

JIS C 4304が定める三相変圧器の定格容量は、20・30・50・75・100・150・200・300・500・750・1000・1500・2000kVAです。

国際規格のR10には160kVAがあるが、日本の変圧器には150と200しかないことを示す対数目盛の対比図
刻みが違うと、選べる容量の位置がずれます。160が必要でも、150か200しかありません。

これをR10と並べると、はっきり違いが出ます。

日本(JIS C 4304) 国際規格が推奨するR10 ずれ
100 kVA 100 kVA 一致
150 kVA 125 / 160 kVA −6.3%
200 kVA 200 kVA 一致
300 kVA 250 / 315 kVA −4.8%
500 kVA 500 kVA 一致
750 kVA 630 / 800 kVA −6.3%
国際規格は100・125・160・200・250・315・400・500・630・800という並びを推奨しています。日本の150・300・750は、そのどれでもありません。

面白いのは、JIS自身がこの食い違いを認めていることです。JIS C 4304の附属書には、国際規格との対比表が付いています。そこにはこう整理されていました。

⚠️ 「IEC規格との整合は困難である」

国際規格の規定——ISO 3のR10系列から優先的に採ることが望ましい。

JISの内容——我が国で一般に普及している容量を定格容量の種類として規定している。

差異の理由——長年にわたり規定しており、一般に普及している標準容量であるため、IEC規格との整合は困難である。

理由として挙げられているのは「長年やってきたから」「普及しているから」の二つだけです。技術的な理由は書かれていません。

ここが少し引っかかります。国際規格の側は、丸めた値を使ってよいのは「整数でなければならない」といったやむを得ない理由がある場合だけだとしていて、経済的な理由や心理的な理由での使用は認めないと明言しています。そしてその結果として国ごと・会社ごとに違う規格が生まれ、統一が難しくなると警告しています。

JIS C 4304の「整合は困難である」は、まさにその警告が現実になった一文に見えます。

ここまでのポイント
  • 日本の変圧器容量は150・300・750など、R10と4.8〜6.3%ずれる
  • JISの附属書は国際規格との差異を明記し「整合は困難」と述べている
  • 理由は「長年の実績」と「普及」だけで、技術的な説明はない
  • 国際規格は、そうした理由での丸め値使用を認めていない


電動機のkWも、同じ「6段」で刻まれている

次に電動機です。ここで面白いことが分かりました。

低圧三相かご形誘導電動機の定格出力は、0.75・1.1・1.5・2.2・3.7・5.5・7.5・11・15・22・37・55・75kWという並びです(一部を抜粋しています)。

R10と照合すると、ほぼ全滅でした。

定格出力 最も近いR10 ずれ
1.1 kW 1.00 +10.0%
2.2 kW 2.00 +10.0%
3.7 kW 4.00 −7.5%
5.5 kW 5.00 +10.0%
11 kW 10.0 +10.0%
22 kW 20.0 +10.0%
37 kW 40.0 −7.5%
55 kW 50.0 +10.0%
ひとつも一致しません。しかもずれ方が6〜10%と大きく、R10の刻み幅(約26%)の3分の1に達します。偶然の誤差ではありません。

3.7kWは、国際規格の推奨値にも入っていません。JIS本文にも「国際規格の表に記載されていない定格出力3.7kW」という趣旨の注記があり、日本独自の値であることを規格自身が認めています。

では、この並びは何なのか。刻みを数えてみました。

💡 どちらも「1桁を6段」で刻んでいる

変圧器——20kVAから2000kVAまでの100倍を12段。つまり1桁あたり6段。1桁分を取り出すと1・1.5・2・3・5・7.5

電動機——1.1kWから75kWまでを11段。計算すると1桁あたり5.999段。1桁分を取り出すと1.1・1.5・2.2・3.7・5.5・7.5

公比にすると約1.47倍。R5(約1.58倍)とR10(約1.26倍)のちょうど中間です。

そして冒頭で触れたとおり、標準数に用意されている刻みは5・10・20・40だけです。6段という刻みは存在しません。誘導数列を使っても作れません。

つまり日本の変圧器と電動機は、標準数から少しずれているのではなく、標準数とは別の体系で刻まれているということになります。しかも二つの機器が、同じ6段という刻みで揃っています。

ここまでのポイント
  • 電動機の定格出力は、R10とひとつも一致しない
  • ずれは6〜10%で、R10の刻み幅の3分の1に達する
  • 変圧器も電動機も、1桁を6段で刻んでいる
  • 標準数に6段という刻みは存在せず、誘導数列でも作れない


ブレーカーの中では、二つの系列が同居している

いちばん身近な配線用遮断器も見ておきます。ここは事情が違っていて、ひとつの表の中で二つの系列が混ざっていました。

まず注意点をひとつ。定格電流の推奨値を定めているのは、よく引用されるJIS C 8201-2-1ではありません。JIS C 8211(住宅及び類似設備用配線用遮断器)のほうです。そこに並んでいる値は次のとおりです。

3・5・6・8・10・13・15・16・20・25・30・32・40・50・60・63・75・80・100・120・125・150A

配線用遮断器の定格電流に国際規格系と日本系の二つの系列が同居していることを示す対数目盛の図
15と16、30と32、60と63。ほとんど同じ値が、ひとつの表の中に並んでいます。

この並び、じっと見ると妙です。10と13と15と16が続き、30と32が続き、60と63が続きます。近すぎます。

分けてみると、正体が見えてきました。

系列 標準数との関係
国際規格系 10・16・20・25・32・40・50・63・80・100・125 R10と一致
日本系 15・30・60・75・120・150 一致しない(−4.0〜−6.3%)
32は、R10の3.15を丸めた値(3.2)と一致します。二つの系列が統合されずに、同じ表の中に並んでいるわけです。

私たちが日常的に使う15A・30A・60Aはすべて日本系。一方で盤のカタログで見かける16A・32A・63Aは国際規格系です。

他の機器も同じ傾向でした。

機器 標準数との関係
低圧進相コンデンサ 10・15・20・25・30・50・75・100・150 kvar 一致しない(等比ですらない)
絶縁電線(単線) 0.8・1.0・1.2・1.6・2.0・2.6・3.2・4.0・5.0 mm 1.2・2.6が外れる
絶縁電線(より線) 2・3.5・5.5・8・14・22・38・60・100 sq 一致しない
契約アンペア 10・15・20・30・40・50・60 A 等比ですらない
契約アンペアは20A以上が10A刻みの等差数列です。等比で刻むという標準数の考え方とは正反対で、料金計算の分かりやすさが優先されたのだと思われます。
ここまでのポイント
  • 定格電流の推奨値を定めているのはJIS C 8211
  • その表には国際規格系(R10)と日本系が同居している
  • 15A・30A・60Aは日本系、16A・32A・63Aは国際規格系
  • コンデンサ・電線・契約アンペアも、標準数には従っていない


では、この数字は誰が決めたのか

標準数そのものの出どころは、はっきりしています。国際規格の解説書に、由来が書かれていました。

💡 1877年、フランス陸軍の工兵大尉

ISO 17という規格の序文に、こうあります。標準数が最初に使われたのは19世紀末のフランス。1877年から1879年にかけて、工兵大尉シャルル・ルナールが、軽航空機の製作に必要な要素を体系的に研究した——と。

対象は綿ロープの仕様。基準にしたのは1メートルあたりの質量でした。5段ごとに10倍になる等比数列を採り、丸めて10・16・25・40・63・100。これがR5の原形です。

R5を平方根で割っていけばR10になり、さらに割ればR20、R40になります。今も使われている系列の骨格が、この時点で出来上がっていたことになります。

📖 ここからは推し量り

由来は書かれています。ただし出典がなく、日本の「6段」を決めた人にはたどり着けませんでした。

まず由来のほうから。ISOの規格はルナールの話に出典を一切付けていません。参考文献も脚注もなく、1973年時点での伝聞的な記述です。

気になって、英語圏で最初期の標準数の論文(1922年、アメリカ機械学会)を全文当たってみました。「Renard」も「1877」も、一度も出てきません。この論文は標準数の展開をドイツ発として扱っています。つまり1922年の時点では、ルナール起源説は技術文献に存在していなかったことになります。

さらに、日本でよく語られる「425種類の索を整理した」という具体的な数字。ISOの文書には出てきません。ISOが書いているのは「綿ロープの1メートルあたりの質量」であって、索の太さでも種類数でもありません。解説記事のあいだでも400種類と425種類で食い違っています。もっともらしい逸話ほど、出どころを確かめる価値があります。

そして本題。日本の「1桁6段」は、誰がいつ決めたのか。JIS C 4304は「長年にわたり規定しており」としか書いていません。変圧器と電動機という別の分野が同じ刻みで揃っているのに、それを定めた横断的な文書は見つかりませんでした。

ひとつ、筋の通りそうな読み方はあります。1・1.5・2・3・5・7.5という並びは、暗算しやすいのです。1.5倍、2倍、3倍がすぐ出る。桁が変わっても同じ形が繰り返されます。対してR10の1.25・3.15・6.3は、掛け算も足し算もやりにくい。電卓のない時代に、現場と工場で数字を突き合わせる体系としては、6段のほうが扱いやすかったのではないか——そう考えると腑に落ちます。

ただし裏付けはありません。そして国際規格の側は、こういう「慣れているから」という理由での逸脱を、はっきり認めない立場を取っています。使いやすさを取った結果、国際規格から外れた——そう読むのがいちばん素直ですが、そう書き残した文書は見つかりませんでした。

ここまでのポイント
  • 標準数の由来は、国際規格の序文に書かれている
  • ただしISOはその記述に出典を付けておらず、ルナールの原典は特定できない
  • 「425種類の索」という数字はISOの文書には存在しない
  • 日本の「1桁6段」を定めた文書は見つからなかった

現場では、どこで効いてくるか

数字の並びの話は、実務では次の三つの場面で効いてきます。

  1. 海外製品を選ぶとき——16A・32A・63Aといった見慣れない定格が出てきたら、それは国際規格系です。15A・30A・60Aと混在させると、盤の中で紛らわしくなります。
  2. 変圧器を選定するとき——計算値が160kVAになったとき、日本では150kVAか200kVAしかありません。150を選ぶと足りず、200を選ぶと余る。この隙間は、日本の6段刻みが作っているものです。
  3. 電動機の容量を積み上げるとき——3.7kWや37kWは日本独自の値です。海外製の機器と混ぜて設計するときは、4kW・40kWとの違いを意識しておくと安全です。

もうひとつ、覚えておくと便利な性質があります。R10は5段上がるとちょうど約3.16倍、10段でちょうど10倍になります。R5なら1段が約1.6倍。刻みの意味が分かっていると、カタログの数字が飛んでいても見当がつきます。

今回は、規格どうしが食い違っている場面に行き当たりました。数字の並べ方を決めた規格があり、国際規格はそれに従うよう推奨していて、日本の規格は従っていない。しかもその理由が「長年やってきたから」と書いてある。

正しいか正しくないかというより、そういう歴史の積み重なりの上に、いま自分が選んでいる150kVAという数字がある——ということだと思います。

ここまでのポイント
  • 16A・32A・63Aは国際規格系。日本系と混在させると紛らわしい
  • 160kVAが必要でも、日本では150か200しか選べない
  • 3.7kW・37kWは日本独自の値
  • R10は10段で10倍、R5は1段で約1.6倍という性質を覚えておくと便利

よくある質問

標準数とは何ですか?

数値を段階的に定めるときの基準となる数字の並びで、JIS Z 8601が規定しています。1桁を何段に割るかによってR5・R10・R20・R40の系列があり、R10なら1.00・1.25・1.60・2.00・2.50・3.15・4.00・5.00・6.30・8.00という並びになります。公比は10の10乗根で約1.26倍です。1954年制定で、その後改正されずに現行のまま使われています。

なぜ変圧器は150kVAや750kVAなのですか?

国際規格は変圧器の定格容量をR10系列から選ぶよう推奨しており、その並びは125・160・250・315・630・800kVAです。日本の150・300・750はこれと4.8〜6.3%ずれます。JIS C 4304の附属書は「我が国で一般に普及している容量を規定している」「長年にわたり規定しており、一般に普及している標準容量であるため、IEC規格との整合は困難である」と説明しています。技術的な理由は書かれていません。

電動機の3.7kWはどこから来た数字ですか?

日本独自の値です。JIS C 4213は3.7kWを推奨値に含めていますが、注記で国際規格の表に記載されていない定格出力であることを認めています。R10で最も近いのは4.00で、3.7とは7.5%の差があります。1.1・2.2・5.5・11・22・55kWも、いずれもR10とは10%ずれています。

日本の数字の並びには規則性がありますか?

あります。変圧器のkVAも電動機のkWも、1桁あたり6段で刻まれています。変圧器なら1・1.5・2・3・5・7.5、電動機なら1.1・1.5・2.2・3.7・5.5・7.5という並びで、公比は約1.47倍です。ただしJIS Z 8601に用意されている刻みは5・10・20・40だけで、6段という刻みは存在せず、誘導数列でも作れません。標準数から少しずれているのではなく、別の体系だということになります。

15Aと16A、30Aと32Aはなぜ両方あるのですか?

JIS C 8211の定格電流の推奨値の表に、二つの系列が同居しているためです。10・16・20・25・32・40・50・63・80・100・125AはR10と一致する国際規格系、15・30・60・75・120・150Aは日本系です。32はR10の3.15を丸めた3.2に相当します。日常的に使う15A・30A・60Aは日本系、盤のカタログで見かける16A・32A・63Aは国際規格系です。

標準数は誰が考えたのですか?

ISO 17の序文によれば、1877年から1879年にかけて、フランス陸軍の工兵大尉シャルル・ルナールが軽航空機の製作を研究するなかで、綿ロープの1メートルあたりの質量を等比数列で段階付けたのが起源とされています。丸めた値が10・16・25・40・63・100で、これがR5の原形です。ただしISOはこの記述に出典を付けておらず、ルナール自身の原典は特定できませんでした。よく語られる「425種類の索」という数字も、ISOの文書には出てきません。

契約アンペアの10・15・20・30・40・50・60Aも標準数ですか?

違います。隣り合う値の比が1.5・1.33・1.5・1.33・1.25・1.20と単調に減っていて、等比数列ですらありません。20A以上は実質10A刻みの等差数列です。根拠は電力会社の特定小売供給約款に記載されていますが、この刻みを選んだ理由は書かれていません。料金計算の分かりやすさが優先されたものと思われます。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。