【動力設備の設計マニュアル②】負荷容量の換算 ― kWのままでは、電線は選べない
こんにちは、HARITAの設計室です。
動力設備の設計マニュアル、第2回です。前回は電灯と動力の分け方を見ました。今回は、機器表を受け取ったあと最初にやる作業――負荷容量の換算です。
ほしい数字が、書いていない
機器表や機器の銘板に書いてあるのは、たいてい出力(kW)です。「三相200V 3.7kW」のように。
ところが、こちらが選びたいのはブレーカーとケーブルです。そしてブレーカーもケーブルも、電流で決まります。kWのままでは選べません。
この kW と 電流 のあいだを埋める作業が、今回の話です。地味ですが、ここを飛ばすとその先が全部止まります。
電流は、4つの数字から出てくる
三相電動機の電流は、次の関係で出ます。
電流 = 出力 ÷(√3 × 電圧 × 力率 × 効率)
分母に4つの要素が並んでいます。ひとつずつ見ます。
- 出力 銘板に書いてあるkWです。ここで大事なのは、これが軸から出る力だということ。電気として入れた量ではありません。
- √3 × 電圧 三相だから √3 が付きます。単相なら付きません。
- 力率 流れた電流のうち、実際に仕事をする割合。
- 効率 入れた電力のうち、出力になる割合。
新人のうちにつまずくのは、効率がなぜ入るのかだと思います。銘板の3.7kWは出力なので、電動機の中で失われる分を考えると、入れる電力はそれより大きくなります。だから効率で割るわけです。
実機が決まる前に、電流が要る
ここで実務的な問題が出てきます。設計の段階では、実機がまだ決まっていないことが多いのです。
メーカーが決まらなければ力率も効率も分からない。でも回路とケーブルは決めないと図面が描けない。
この問題を解くのが規約電流です。出力ごとに「だいたいこれくらいの電流が流れる」という目安の値が、内線規程などの表に示されています。設計ではこれを使って回路とケーブルを先に決めます。
換算表は 動力(電動機)の負荷容量換算表【規約電流・kVA】 と 資料|電動機の容量換算表 にまとめています。
ただし、これはあくまで設計を先に進めるための目安です。実機が確定したら、銘板の値で必ず確認し直してください。とくに容量の大きい機器や、特殊な用途の機器では差が出ることがあります。
3つの単位は、使う場面が違う
動力の話では kW・電流(A)・kVA の3つが出てきます。同じ機器を、見る目的によって違う単位で表しているだけです。
- kW(出力) 機器の能力を表します。機器表に載り、契約の話にも出てきます。
- 電流(規約電流) ブレーカーとケーブルを選ぶために使います。分岐回路の設計はこれ。
- kVA(皮相電力) 変圧器の容量や幹線の集計に積み上げるときに使います。
迷ったら「いま何を選ぼうとしているか」で考えてください。分岐回路を選ぶなら電流、上流に積み上げるならkVAです。
kVAで積み上げた先は幹線の話になります。幹線設備の設計マニュアル② 負荷容量の集計 で扱った需要率・不等率が、そこで効いてきます。
変圧器容量への積み上げは 変圧器容量の選定・計算方法と需要率の適用基準 もあわせてどうぞ。
換算した数字は、負荷表に並ぶ
換算の結果は、動力盤の負荷表に落ちます。
表の左側――回路番号、負荷名、出力kW――は機器表からもらう情報です。右側――規約電流、ブレーカー、ケーブル――が、こちらで埋めていくところ。
この表ができると、盤の回路数が決まり、幹線に積み上げる数字も出ます。動力設計の背骨と言っていい表です。
負荷表そのものは 計算ツール|動力分電盤負荷表作成ツール で作れます。分岐回路のサイズは 200V三相誘導電動機の分岐回路サイズ選定ツール が使えます。
まとめ ― kWのままでは、電線は選べない
- 銘板にあるのは出力kW。選びたいブレーカーとケーブルは電流で決まる
- 電流 = 出力 ÷(√3 × 電圧 × 力率 × 効率)。効率が入るのは、銘板のkWが出力だから
- 力率と効率は機種で変わる。一律の値を覚えて当てはめない
- 実機が決まる前は規約電流で先に進め、確定したら銘板で確認し直す
- kWは能力、電流は分岐回路、kVAは上流への積み上げ
- 換算結果は動力盤の負荷表に落ちる。仮の値には印をつけておく
ほしい数字は、いつも電流のほうです。
よくある質問
Q1. 力率と効率は、いくつを使えばいいですか?
一律の値はありません。実機が決まっていればカタログ・銘板の値を使い、決まっていなければ規約電流の表を使ってください。「だいたいこれくらい」で覚えた数字を全案件に当てはめるのは避けてください。とくに小容量の電動機と大容量の電動機では傾向が違います。
Q2. 規約電流の表は、どの版を見ればいいですか?
内線規程は改定されます。案件で採用している版を確認してください。特記仕様書で版が指定されていることもあります。表番号だけを覚えて中身を確認しないのが危ないパターンです。
Q3. 単相200Vの機器も、同じ式で計算できますか?
√3 が付かないだけで、考え方は同じです。電流 = 出力 ÷(電圧 × 力率 × 効率)になります。ただし単相の機器は電灯回路から供給することも多いので、どの盤から取るのかを先に決めてから計算してください。
次回予告
第3回は「始動電流という別の顔」です。電動機は動き出す瞬間だけ、定格よりずっと大きな電流が流れます。それがブレーカーの選定や電圧降下にどう効いてくるのか。全電圧始動・スターデルタ・インバータの使い分けも扱います。
合言葉は「動く瞬間だけ、別の機械になる」。→ 第3回 始動電流という別の顔 を公開しました。




