この記事は連載「動力設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
負荷容量の換算の全体像:銘板にあるのは出力kW、電流は4つの数字から、規約電流、3つの単位の使い分け

こんにちは、HARITAの設計室です。

動力設備の設計マニュアル、第2回です。前回は電灯と動力の分け方を見ました。今回は、機器表を受け取ったあと最初にやる作業――負荷容量の換算です。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 機器表に「三相200V 3.7kW」とある。ここから何を出すのか
  • 電流を出す式に、なぜ効率が入るのか
  • 実機がまだ決まっていない。それでも回路とケーブルを決めるには
ペン太ペン太
機器表にkWって書いてあるのに、なんでそのまま使えないんですか?
はりたはりた
選びたいのはブレーカーとケーブルだから。どっちも電流で決まる。kWのままでは選べない。
ペン太ペン太
式に効率が入るのが引っかかります。
はりたはりた
銘板のkWは「軸から出る力」で、電気として入れた量じゃないんだ。電動機の中で失われる分があるから、入れる電力はそれより大きくなる。だから効率で割る。

ほしい数字が、書いていない

トピック1:ほしい数字が書いていない
200V 3.7 kW?kW HARITA
図1:銘板のkWと、必要な電流

機器表や機器の銘板に書いてあるのは、たいてい出力(kW)です。「三相200V 3.7kW」のように。

ところが、こちらが選びたいのはブレーカーとケーブルです。そしてブレーカーもケーブルも、電流で決まります。kWのままでは選べません。

この kW と 電流 のあいだを埋める作業が、今回の話です。地味ですが、ここを飛ばすとその先が全部止まります

ここまでのポイント
  • 機器表や銘板に書いてあるのは、たいてい出力(kW)
  • 選びたいブレーカーもケーブルも、電流で決まる
  • このkWと電流のあいだを埋めるのが換算。ここを飛ばすと、その先が全部止まる

電流は、4つの数字から出てくる

トピック2:電流は4つの数字から
4 ÷3 × × × kW 3 × 3200V 3 kWHARITA
図2:三相電動機の電流を求める式の分解

三相電動機の電流は、次の関係で出ます。

電流 = 出力 ÷(√3 × 電圧 × 力率 × 効率)

分母に4つの要素が並んでいます。ひとつずつ見ます。

  • 出力 銘板に書いてあるkWです。ここで大事なのは、これが軸から出る力だということ。電気として入れた量ではありません。
  • √3 × 電圧 三相だから √3 が付きます。単相なら付きません。
  • 力率 流れた電流のうち、実際に仕事をする割合。
  • 効率 入れた電力のうち、出力になる割合。

新人のうちにつまずくのは、効率がなぜ入るのかだと思います。銘板の3.7kWは出力なので、電動機の中で失われる分を考えると、入れる電力はそれより大きくなります。だから効率で割るわけです。

力率と効率は、機種で変わる
力率も効率も、電動機の種類・極数・容量・メーカーによって違います。一律の値を覚えて当てはめるものではありません実機が決まっていればカタログや銘板の値を、決まっていなければ次に説明する規約電流を使います。
ここまでのポイント
  • 電流 = 出力 ÷(√3 × 電圧 × 力率 × 効率)
  • 効率が入るのは、銘板のkWが「軸から出る力」だから。入れる電力はそれより大きい
  • 力率も効率も機種・極数・容量・メーカーで変わる。一律の値を覚えて当てはめない

実機が決まる前に、電流が要る

トピック3:規約電流という考え方
ABC使HARITA
図3:規約電流という考え方

ここで実務的な問題が出てきます。設計の段階では、実機がまだ決まっていないことが多いのです。

メーカーが決まらなければ力率も効率も分からない。でも回路とケーブルは決めないと図面が描けない。

この問題を解くのが規約電流です。出力ごとに「だいたいこれくらいの電流が流れる」という目安の値が、内線規程などの表に示されています。設計ではこれを使って回路とケーブルを先に決めます。

換算表は 動力(電動機)の負荷容量換算表【規約電流・kVA】資料|電動機の容量換算表 にまとめています。

ただし、これはあくまで設計を先に進めるための目安です。実機が確定したら、銘板の値で必ず確認し直してくださいとくに容量の大きい機器や、特殊な用途の機器では差が出ることがあります。

ここまでのポイント
  • 設計段階では実機が決まっていないことが多い=力率も効率も分からない
  • そこで使うのが規約電流。出力ごとの目安の値で、回路とケーブルを先に決める
  • あくまで先に進めるための目安実機が確定したら銘板の値で確認し直す

3つの単位は、使う場面が違う

トピック4:3つの単位の使い分け
3使kW AkVAHARITA
図4:kWと電流とkVAの使い分け

動力の話では kW・電流(A)・kVA の3つが出てきます。同じ機器を、見る目的によって違う単位で表しているだけです。

  • kW(出力) 機器の能力を表します。機器表に載り、契約の話にも出てきます。
  • 電流(規約電流) ブレーカーとケーブルを選ぶために使います。分岐回路の設計はこれ。
  • kVA(皮相電力) 変圧器の容量や幹線の集計に積み上げるときに使います。

迷ったら「いま何を選ぼうとしているか」で考えてください。分岐回路を選ぶなら電流、上流に積み上げるならkVAです。

kVAで積み上げた先は幹線の話になります。幹線設備の設計マニュアル② 負荷容量の集計 で扱った需要率・不等率が、そこで効いてきます。

変圧器容量への積み上げは 変圧器容量の選定・計算方法と需要率の適用基準 もあわせてどうぞ。

単位何を表すか使う場面
kW(出力)機器の能力機器表に載る。契約の話にも出てくる
電流 A(規約電流)実際に流れる電流ブレーカーとケーブル=分岐回路の設計
kVA(皮相電力)皮相電力変圧器容量や幹線の集計=上流への積み上げ
ここまでのポイント
  • kW(出力)=機器の能力。機器表と契約の話
  • 電流(規約電流)=ブレーカーとケーブルを選ぶために使う
  • kVA(皮相電力)=変圧器容量や幹線の集計に積み上げるときに使う

換算した数字は、負荷表に並ぶ

トピック5:負荷表に並ぶ
kW13.722.23調5.541.5kWHARITA
図5:動力盤の負荷表の構造

換算の結果は、動力盤の負荷表に落ちます。

表の左側――回路番号、負荷名、出力kW――は機器表からもらう情報です。右側――規約電流、ブレーカー、ケーブル――が、こちらで埋めていくところ。

この表ができると、盤の回路数が決まり、幹線に積み上げる数字も出ます。動力設計の背骨と言っていい表です。

負荷表そのものは 計算ツール|動力分電盤負荷表作成ツール で作れます。分岐回路のサイズは 200V三相誘導電動機の分岐回路サイズ選定ツール が使えます。

仮の数字には印をつける
機器表がまだ出ていない段階では、想定値で埋めることになります。そのときどのセルが仮の値なのかを、表の中で分かるようにしておいてください。仮の数字がそのまま確定値として扱われるのが、動力設計でいちばん多い事故です。
kWから電流とkVAへの換算の流れと、動力盤の負荷表の記入イメージ
図6:換算の流れと、負荷表の記入イメージ
ここまでのポイント
  • 負荷表の左側(回路番号・負荷名・出力kW)は機器表からもらう情報
  • 右側(規約電流・ブレーカー・ケーブル)がこちらで埋めるところ
  • この表ができると盤の回路数が決まり、幹線に積み上げる数字も出る。仮の値には印をつける
ペン太ペン太
単位が3つ出てきて混乱します。
はりたはりた
迷ったら「いま何を選ぼうとしているか」で考える。分岐回路を選ぶなら電流、上流に積み上げるならkVA。kWは機器の能力を表しているだけ。

まとめ ― kWのままでは、電線は選べない

トピック6:ここまでの整理
  • 銘板にあるのは出力kW。選びたいブレーカーとケーブルは電流で決まる
  • 電流 = 出力 ÷(√3 × 電圧 × 力率 × 効率)。効率が入るのは、銘板のkWが出力だから
  • 力率と効率は機種で変わる。一律の値を覚えて当てはめない
  • 実機が決まる前は規約電流で先に進め、確定したら銘板で確認し直す
  • kWは能力、電流は分岐回路、kVAは上流への積み上げ
  • 換算結果は動力盤の負荷表に落ちる。仮の値には印をつけておく
今回の合言葉
kWのままでは、電線は選べない。
ほしい数字は、いつも電流のほうです。

よくある質問

トピック7:よくある質問

Q1. 力率と効率は、いくつを使えばいいですか?

一律の値はありません。実機が決まっていればカタログ・銘板の値を使い、決まっていなければ規約電流の表を使ってください。「だいたいこれくらい」で覚えた数字を全案件に当てはめるのは避けてください。とくに小容量の電動機と大容量の電動機では傾向が違います。

Q2. 規約電流の表は、どの版を見ればいいですか?

内線規程は改定されます。案件で採用している版を確認してください。特記仕様書で版が指定されていることもあります。表番号だけを覚えて中身を確認しないのが危ないパターンです。

Q3. 単相200Vの機器も、同じ式で計算できますか?

√3 が付かないだけで、考え方は同じです。電流 = 出力 ÷(電圧 × 力率 × 効率)になります。ただし単相の機器は電灯回路から供給することも多いので、どの盤から取るのかを先に決めてから計算してください。

次回予告

トピック8:次回予告

第3回は「始動電流という別の顔」です。電動機は動き出す瞬間だけ、定格よりずっと大きな電流が流れます。それがブレーカーの選定や電圧降下にどう効いてくるのか。全電圧始動・スターデルタ・インバータの使い分けも扱います。

合言葉は「動く瞬間だけ、別の機械になる」。→ 第3回 始動電流という別の顔 を公開しました。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。