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停電したときの電源は、図面に 3 種類出てきます。非常用発電機UPS直流電源装置(蓄電池。似ているようで「何秒で立ち上がるか」「どれだけ供給できるか」「何時間もつか」がまったく違います。この記事では、発電機の仕様書の kVA と kW、系統図の ATS と 27、UPS の常時インバータとバイパス、蓄電池の種類と充電方式、そして期待寿命の根拠になるバスタブ曲線を、図で分解します。

結論

非常電源発電機(秒で起動・時間もつ)、UPS(0 秒・分しかもたない)、蓄電池(0 秒・小電力)の 3 種類。発電機はkW = kVA × 力率 0.8、UPS は常時インバータなら切替 0 秒、蓄電池は浮動充電なら常に負荷と並列と読みます。

  • 発電機の仕様書は発電機側・原動機側・法令側(40 秒以内・運転時間)の 3 グループ
  • 系統図は ATS で切り替え、27 で停電を検出。負荷は防災・保安・一般に分ける
  • UPS のバイパスは自動(故障時)と保守(点検時)。バックアップ時間は発電機までの橋渡し
  • 蓄電池は種類(鉛・アルカリ・リチウム)と充電方式(浮動・トリクル)、期待寿命はバスタブ曲線の右端の手前
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
非常用発電機・UPS・直流電源(蓄電池)の3種類を、守るもの・切替時間・供給量・持続時間・図面の主役で比べた図
非常電源は 3 種類。「何秒で」「どれだけ」「何時間」が違うので、組み合わせて使います。

非常電源は3種類 ― 発電機・UPS・蓄電池の役割分担

停電したときに電気を供給する設備は、図面に 3 種類出てきます。非常用発電機UPS(無停電電源装置)直流電源装置(蓄電池)。似ているようで、「何秒で立ち上がるか」「どれだけ供給できるか」「何時間もつか」がまったく違います。この違いが分かると、系統図でどの負荷がどの電源につながっているかが読めます。

設備 守る負荷 切替時間 供給量 持続時間
非常用発電機 消防設備・非常照明・保安負荷(防災負荷設備) 10〜40 秒(起動して電圧確立) 数百 kVA〜 燃料の分。数時間〜72 時間
UPS(CVCF) サーバ・監視装置・医療機器 0 秒(常時インバータ方式) 数 kVA〜数百 kVA 蓄電池の分。10〜30 分が多い
直流電源装置 遮断器の操作電源・非常灯・制御回路 0 秒(常時つながっている) DC100V/24V の小電力 非常灯 30 分、操作用 1〜2 時間
「防災負荷」は消防法・建築基準法で非常電源が義務づけられた負荷、「保安負荷」は法令外だが建物の運用上止められない負荷、「一般負荷」はそれ以外。系統図ではこの 3 つに色分けされることが多いです。

典型的な組み合わせは「停電 → 直流電源が遮断器を操作し、UPS が重要負荷を 0 秒で支え、40 秒以内に発電機が立ち上がって防災負荷と UPS の入力を引き受ける」です。系統図を読むときは、この時間の流れを頭に置きます。

ここまでのポイント
  • 非常電源は発電機(秒で起動・時間もつ)、UPS(0 秒・分しかもたない)、蓄電池(0 秒・小電力)
  • 負荷は防災・保安・一般の 3 つに分けて色分けされる
  • 停電 → 蓄電池 → UPS → 40 秒以内に発電機、の流れで読む

発電機の仕様書 ― kVA・kW・原動機・冷却・始動・燃料

非常用発電機の仕様書7項目(定格出力・電圧・原動機・冷却方式・始動方式・始動時間・燃料と運転時間)と数字の出どころ
kVA・kW・原動機 kW の 3 つが並びます。どれが発電機の力で、どれがエンジンの力かを分けて読みます。

発電機の仕様書には、似た単位の数字が並びます。整理すると、発電機側(kVA・kW・電圧)原動機側(エンジン kW・冷却・始動・燃料)法令側(始動時間・運転時間)の 3 グループです。

項目 書き方の例 読むときの意味
定格出力 500 kVA(400 kW)力率 0.8 発電機が出せる電力。kW = kVA × 力率。負荷の合計と始動時の電圧降下で決める
原動機容量 ディーゼル 450 kW エンジンの出力。発電機の kW より少し大きい(発電機の効率分)
形式 キュービクル式/オープン型 キュービクル式は箱入りで屋外・屋上に置ける。オープン型は発電機室に据える
冷却方式 ラジエータ空冷(清水循環)/水冷(冷却塔) 空冷は発電機室の給排気量が大きくなる。水冷は冷却塔と減圧水槽、プライミングポンプが付く
始動方式 セルモータ(DC24V)/空気始動 蓄電池と充電装置、または空気タンクが別に要る。図面に必ず出る付属品
始動時間 40 秒以内に電圧確立 消防法の非常電源(自家発電設備)の条件。10 秒以内の要求がある設備もある
燃料・運転時間 A 重油、小出槽 490L、2 時間 防災負荷を何時間動かすか。燃料タンクの容量と、地下タンクからの移送ポンプの根拠
排気・消音 排気管 φ200、消音器(工業用) 排気の経路と騒音。ハト小屋や外壁の貫通に関わる(第⑤回)
ガスタービン方式は冷却水が要らず小型で、始動が速い反面、燃料消費が多い。図面に「GT」とあればガスタービンです。

💡 kVA と kW の間にある「力率 0.8」

発電機の定格は kVA で書かれ、そのうち実際に仕事をする電力が kW です。両者の比が力率で、発電機は 0.8 で設計されるのが標準です。500 kVA の発電機は 400 kW まで、と読みます。負荷側に力率の悪い電動機が多いと、kW に余裕があっても kVA が足りなくなる――発電機の容量計算で最初に見るのはここです。

発電機に載せる変圧器や負荷の需要率をまとめて計算できます。発電機の kVA を決める前段の負荷集計に。

変圧器容量・需要率 計算ツールを開く

ここまでのポイント
  • 仕様書は発電機側・原動機側・法令側の 3 グループ
  • kW = kVA × 力率 0.8。原動機 kW は発電機 kW より少し大きい
  • 冷却・始動・燃料は「付属品」を決める。図面に必ず出る


発電機の系統図 ― ATS・27 リレー・防災負荷の分け方

発電機の系統図は、商用電源と発電機のどちらから負荷へ送るかを切り替える図です。切り替えるのが ATS(自動切替開閉器)、停電を検出するのが 27(不足電圧継電器・停電感知継電器です。

記号・言葉 意味 読むときの注意
ATS(自動切替開閉器) 商用と発電機を自動で切り替える開閉器 商用側と発電機側を同時に閉じない機械的インターロックがあるか
27(不足電圧継電器) 商用の電圧が下がったことを検出して発電機を起動 検出から起動信号までの時間設定。瞬低で起動しない遅延
防災負荷・保安負荷・一般負荷 発電機で受け持つ負荷の区分 発電機の容量は防災+保安で決まる。一般負荷は容量に余裕があれば
本線予備線方式 受電を 2 回線(本線と予備線)で受ける方式 発電機とは別の「停電対策」。受電の話か発電機の話かを区別する
系統連系 発電機を商用と並列運転する 通常の非常用は連系しない。連系するなら逆充電・単独運転防止の継電器が付く
負荷投入順序 発電機が立ち上がったあと、負荷を段階的に入れる 一度に入れると電圧・周波数が落ちる。順序回路(タイマー)が制御盤に
発電機を商用と並列する系統連系の考え方は高圧受変電設備の設計マニュアル⑬に詳しく書いています。
ペン太ペン太
停電したら発電機がすぐ動くんだと思ってました。40 秒もかかるんですね。
ハリタハリタ
エンジンですからね。回り始めて、電圧が安定して、ATS が切り替わるまでで 10〜40 秒。その間、非常照明は蓄電池、サーバは UPS が支えている。だから 3 種類あるんです。
ペン太ペン太
発電機が動いている間に商用が戻ったら?
ハリタハリタ
27 が復電を検出して、しばらく様子を見てから ATS を商用に戻します。戻す前に発電機と商用を同時につながないのが鉄則で、系統図の ATS には必ずインターロックの注記があります。
ここまでのポイント
  • 系統図は「商用か発電機か」を切り替える図。切替は ATS、検出は 27
  • 負荷は防災・保安・一般に分け、発電機容量は防災+保安で決まる
  • 本線予備線は受電側の停電対策。発電機とは別の話


UPS の仕様書 ― 常時インバータ・常時商用・バイパス

UPSの常時インバータ給電方式・常時商用給電方式・バイパス回路のブロック図
ふだん電気がどこを通っているかで方式が分かれます。バイパスは「UPS を止めても負荷を止めない道」です。

UPS の仕様書で最初に見るのは給電方式です。常時インバータ給電方式は、ふだんから整流器→インバータを通して負荷へ送るので、停電しても切替がなく 0 秒。常時商用給電方式は、ふだんは商用をそのまま送り、停電時だけインバータに切り替えるので数 ms〜10 ms の瞬断があります。系統図に「CVCF」とあれば常時インバータ方式の UPS です(定電圧定周波数装置)。

項目 書き方の例 読むときの意味
給電方式 常時インバータ/常時商用/ラインインタラクティブ 切替の有無と瞬断時間。重要負荷は常時インバータ
容量 30 kVA/24 kW 発電機と同じく力率がある。最近の UPS は力率 0.9〜1.0
入力・出力 三相 200V 入力/単相 100V 出力 入力と出力の電圧・相が違うことがある
バックアップ時間 10 分(定格負荷時) 蓄電池の容量。「定格負荷時」の値なので、実負荷が軽ければ長くなる
蓄電池 制御弁式鉛蓄電池 期待寿命 7 年/リチウムイオン 種類で寿命と設置スペースが変わる(次の見出し)
バイパス 自動バイパス+保守バイパス 故障時に自動で商用直送、点検時は手動で切り替える回路
瞬低対策 瞬時電圧低下 ○ms まで補償 落雷などで電圧が一瞬下がる「瞬低」を乗り切れるか
UPS の入力を発電機から取る設計では、発電機の周波数変動に UPS の整流器が追従できるかを確認します。仕様書の「入力周波数範囲」がその欄です。

⚠️ 「バックアップ 10 分」は「10 分で全部止まる」ではない

UPS の持続時間は、発電機が立ち上がるまでの橋渡し(40 秒)と、それでも電源が来なかったときにサーバを安全に停止する時間(数分)のためのものです。10 分あれば十分、という設計が多く、長時間の給電は発電機の役目です。仕様書の時間を「短い」と感じたら、系統図で UPS の入力が発電機につながっているかを見ます。

ここまでのポイント
  • 給電方式は常時インバータ(0 秒)と常時商用(瞬断あり)。CVCF は常時インバータ
  • バイパスは自動(故障時)と保守(点検時)の 2 種類
  • バックアップ時間は発電機までの橋渡し。定格負荷時の値


蓄電池の仕様書 ― 種類・充電方式・期待寿命

バスタブ曲線(初期故障期・偶発故障期・摩耗故障期)と、蓄電池の期待寿命・更新時期の関係
仕様書の「期待寿命」は、バスタブ曲線の右端――摩耗故障期――に入る前に替える、という意味です。

蓄電池の仕様書は、種類充電方式期待寿命の 3 つで読めます。種類は鉛かアルカリかリチウムか、充電方式はふだんどうつながっているか、期待寿命はいつ替えるか。

種類 図面の書き方 特徴 使う場所
ベント型鉛蓄電池 ベント形 HS 液式。補水が要り、水素が出るので換気が要る 古い受変電の直流電源。更新で制御弁式へ
制御弁式鉛蓄電池 MSE、制御弁式(VRLA) 密閉で補水不要。期待寿命 7〜9 年(長寿命形は 13〜15 年) 直流電源装置・UPS の主流
小型シール鉛蓄電池 小型シール鉛 小容量の密閉型。数年で交換 小型 UPS・非常灯・火災受信機
ニカド/ニッケル水素 アルカリ蓄電池 AH/AM 高率放電に強く低温に強い。ニカドはカドミウムの規制で減少 非常照明・誘導灯の内蔵電池、発電機の始動用
リチウムイオン LIB 小型・軽量・長寿命。温度管理と保護回路が要る 新しい UPS・蓄電システム
レドックス・フロー/電気二重層 RF 電池/EDLC 大規模・長時間(RF)、瞬低対策の短時間大電流(EDLC) 再エネ併設の蓄電・瞬低補償装置
図面の型式記号(MSE、HS、AH)は JIS の形式記号。MSE は制御弁式据置鉛蓄電池の一般的な呼び方です。
充電方式 ふだんの状態 読むときの意味
浮動充電方式(フロート) 充電器と蓄電池を負荷に並列につなぎ、常に満充電を保つ 直流電源・UPS の標準。停電時は蓄電池が瞬時に引き継ぐ
トリクル充電方式 蓄電池を負荷から切り離し、微小電流で充電を保つ 停電時にリレーで負荷へつなぐ。小型の非常電源
普通充電・均等充電 放電後に定電流で回復させる、セルのばらつきをそろえる 停電のあと、定期点検のとき。仕様書の「回復充電時間」
「浮動充電」と書いてあれば、蓄電池はふだん負荷と並列につながっている、と読めます。系統図の直流母線に蓄電池がぶら下がっている形です。

蓄電池と発電機・UPS の本体は、バスタブ曲線で更新時期を決めます。据付直後の初期故障期を試運転で越え、安定した偶発故障期を予防保全(PM)で使い、摩耗故障期に入る前に更新する。仕様書の「期待寿命 7〜9 年」「更新推奨 ○年」は、この曲線の右端の位置を書いたものです。

ここまでのポイント
  • 種類は鉛(ベント型・制御弁式・小型シール)、アルカリ(ニカド・ニッケル水素)、リチウム
  • 充電方式は浮動(並列・標準)とトリクル(切り離し)
  • 期待寿命はバスタブ曲線の摩耗故障期の手前。更新計画の根拠


実例 ― 非常電源の系統図を読む

系統図に「非常用発電機 500 kVA キュービクル式 ラジエータ空冷 A 重油 2h → 発電機盤 → ATS(27)→ 防災負荷盤・保安負荷盤/UPS 30 kVA 常時インバータ 10 分 MSE → サーバ室/直流電源 DC100V 浮動充電 MSE 100Ah → 受電盤操作電源・非常灯」とあったら、こう読みます。

💡 読み下しと照合

  1. 発電機 500 kVA(400 kW)が屋外キュービクル式で、空冷なのでキュービクルの給排気が要る。A 重油で防災負荷を 2 時間
  2. ATS と 27で商用停電を検出して切替。防災と保安の 2 つの盤に送る。一般負荷は載っていない
  3. UPS 30 kVA 常時インバータ 10 分がサーバ室を 0 秒で支え、10 分の間に発電機が立ち上がる。UPS の入力が発電機系統につながっているか
  4. 直流電源 DC100V 浮動充電が受電盤の遮断器操作と非常灯を支える。100Ah の根拠(操作回数と非常灯 30 分)
  5. 蓄電池の期待寿命と更新時期が、発電機・UPS・直流電源の 3 か所で揃っているか

これで「図面の見方・読み方」は 6 回になりました。盤のブレーカー、配線、照明、制御盤、建築との取り合い、非常電源――どれも表記は部品に分ければ読めること、そして読んだら別の図書と照合することは同じです。用語集の各カードから、この 6 本へ戻れるようにしてあります。

よくある質問

発電機の kVA と kW はどう違いますか?

kVA は発電機が出せる皮相電力、kW はそのうち実際に仕事をする有効電力です。両者の比が力率で、発電機は 0.8 で設計されるのが標準です。500 kVA の発電機は 400 kW まで供給できる、と読みます。

ATS とは何ですか?

自動切替開閉器(Automatic Transfer Switch)で、商用電源が停電したときに発電機側へ、復電したときに商用側へ、負荷の接続を自動で切り替える開閉器です。商用と発電機を同時につながないインターロックが付いています。

常時インバータ給電方式と常時商用給電方式の違いは何ですか?

常時インバータ方式は、ふだんから整流器とインバータを通して負荷へ送るため、停電しても切替がなく瞬断がありません。常時商用方式は、ふだんは商用をそのまま送り、停電時だけインバータに切り替えるため数 ms〜10 ms の瞬断があります。重要負荷には常時インバータ方式を使います。

浮動充電とトリクル充電の違いは何ですか?

浮動充電は、充電器と蓄電池を負荷に並列につないで常に満充電を保つ方式で、停電時は蓄電池が瞬時に引き継ぎます。トリクル充電は、蓄電池を負荷から切り離して微小電流で充電を保ち、停電時にリレーで負荷へつなぐ方式です。直流電源装置や UPS の標準は浮動充電です。

制御弁式鉛蓄電池(MSE)の期待寿命はどれくらいですか?

標準形で 7〜9 年、長寿命形で 13〜15 年が目安です。温度が高いと短くなります。仕様書の期待寿命は、バスタブ曲線の摩耗故障期(劣化で故障が増える時期)に入る前に更新する、という意味で書かれています。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。