非常用発電設備と系統連系 ― 予備電源の描き方 設計マニュアル ⑬ ① 予備電源には、性格の違う2種類がある 法令で義務づけられたもの 非常照明・誘導灯・スプリンクラー・排煙 切れないことが法的要求 事業を止めないためのもの サーバ・冷凍設備・生産ライン どこまで守るかは施主の判断 ② 予備電源の3タイプ ― 何秒で立ち上がるかが違う 非常用発電機 ディーゼル・ガスタービン 立ち上がり:40秒以内 長時間の給電が得意 蓄電池・UPS 直流電源装置/無停電電源 立ち上がり:瞬時 短時間だけ、確実に 系統連系電源 太陽光・自家発の常用連系 平常時から発電 停電時は原則いったん解列 ③ 停電してから給電するまで ① UVR(27)が停電を検出 ② 商用側の遮断器を開放 ③ 発電機を始動 ④ 電圧・周波数が確立 ⑤ 非常用母線へ投入 ― 40秒以内 ※ 消防法の非常電源は「40秒以内に電圧確立」が求められる ④ 連系すると、保護が増える OVR(59)/UVR(27) 電圧の異常を見る OFR/UFR(95) 周波数の異常を見る OVGR(64) 構外の地絡を見る RPR(67P) 逆潮流を出さない契約のとき 単独運転検出装置 系統が止まったのに発電を続ける状態を検出 ※ 高圧連系の要求は 系統連系規程 JEAC 9701 と電力会社の協議で決まる 予備電源の図面で最重要なのは「絶対に商用と同時投入させない」こと ― インタロックの表現を必ず確認します。
図解まとめ:予備電源の2つの性格(法令義務とBCP)、3タイプの立ち上がり時間、停電から給電までの5ステップ、連系で増える保護継電器を1枚に整理しました。 こんにちは、HARITAの設計室 です。第13回は非常用発電設備と系統連系 。第1回で挙げた6つの役割の最後、「備える」 です。
ここには受変電のほかのブロックにはない特徴があります。ふだんは動かない設備なのに、動かなければ人が逃げられない 。そして間違って動くと、電力会社の作業員を感電させます 。
発電機の図面、点線で囲われてたり切替のスイッチがあったりして…主回路と別世界に見えます。
別世界にしてあるんだ。商用と発電機は、絶対に同時につながってはいけない 。その「絶対」を図面で表現したのが、あの切替とインタロックだよ。
予備電源には2つの性格がある
区分 対象 性格
法令で求められる 非常電源 非常用照明、誘導灯、屋内消火栓、スプリンクラー、排煙設備、非常放送 など 設置しないと建物が使えない 。容量も切替時間も法令で決まる
事業継続のための 予備電源 サーバ、医療機器、生産設備、冷凍・冷蔵、通信 など 発注者が決める 。何をどこまで守るかは施主との合意で決まる
⚠ この2つを図面上で混ぜない
法令で求められる非常電源の回路に、あとから一般負荷をつないでしまう――現場で実際に起きるトラブルです。非常用と一般用は、回路も盤も名称も明確に分ける 。第10回の「負荷名称の書き方」が効いてくる場面です。
予備電源の3タイプ
方式 切替の速さ 持続時間 向いている用途
非常用発電機 ディーゼル・ガス 数十秒始動〜電圧確立 長い燃料次第 消防設備、非常照明、建物全体の重要負荷
蓄電池設備 直流電源・UPS 瞬時 無停電も可能 短い サーバ、制御電源、遮断器のトリップ電源(第6回)
太陽光+蓄電池 条件による 条件による 自立運転による部分的なバックアップ。停電時に使えるかは構成次第
組み合わせて使うのが実際
発電機は起動に時間がかかり、蓄電池は長く持ちません。だから「立ち上がるまでは蓄電池、以降は発電機」 という組み合わせが基本になります。 遮断器のトリップ電源に直流電源装置を使うのも同じ考え方(第6回)。速さと持続時間は両立しない ので、役割を分けるのです。
📐 図1 停電してから非常用電源が立ち上がるまで
停電してから、非常用電源が立ち上がるまで 商用電源 正常 停電 蓄電池・UPS 瞬時に給電(切れ目なし) 非常用発電機 始動〜電圧確立 給電 非常照明・消防設備 蓄電池でつなぐ 発電機へ引き継ぐ 平常時 0秒 10 20 30 40秒 50 60 停電発生 40秒以内に電圧確立 経過時間 この40秒を蓄電池でつなぐ設計にするか、40秒の消灯を許容するかで、必要な設備が変わります UVR(27)が「停電した」と判断してから発電機の始動指令が出る 瞬時電圧低下で誤って始動しないよう、UVRには短い時限を持たせるのが一般的
図1:蓄電池・UPSは瞬時、非常用発電機は40秒以内に電圧確立。この40秒を蓄電池でつなぐか、消灯を許容するかで必要な設備が変わります。
停電から給電までの流れ ― UVRの出番
第8回で扱ったUVR(27・不足電圧継電器) が主役になります。停電を検出して発電機を起こすのがUVRの仕事です。
📐 停電 → 給電 → 復電 の一連の流れ
【停電したとき】 ① 商用が停電 ② UVR(27)が電圧低下を検出 ③ 商用側の遮断器を開放 ④ 発電機を始動 ⑤ 電圧・周波数が確立するのを待つ ⑥ 発電機側の遮断器を投入 ⑦ 非常用負荷へ給電 【復電したとき】 ⑧ 商用の復電を確認(一定時間待つ) ⑨ 発電機側の遮断器を開放 ⑩ 商用側の遮断器を投入 ⑪ 発電機を無負荷で冷却運転 ⑫ 停止・待機状態へ
③が④より先 発電機をつなぐ前に、必ず商用側を切り離す 。この順序が崩れると次章の逆充電が起きます。
⑧で「待つ」理由 復電直後は電圧が不安定で、再び停電することがあります。すぐ切り戻すと二度手間 になるため、確認時間を置きます。
⑪の冷却運転 発電機はいきなり止めません。無負荷で回して冷やしてから停止します。この動作も展開接続図に描かれます (第2回)。
📖 消防用設備の非常電源には「切替時間」の規定がある
消防用設備等の非常電源として自家発電設備を使う場合、常用電源が停止してから電圧確立・投入までの所要時間 に上限が定められています(消防法令)。 「発電機さえ置けばよい」ではなく、始動して電気が届くまでの時間まで含めて要求されている のがポイントです。実際の数値と適用範囲は、物件の用途と規模に応じて必ず法令・所轄消防で確認してください。
📐 図2 インタロック ― 商用と発電機を同時に入れない
常用と非常用は、絶対に同時に入れない 商用電源(変圧器二次) 52-1 G 非常用発電機 52-2 インタロック 非常用母線 非常照明・消防設備 同時に入ると、発電機の電気が商用側へ逆送する 停電作業中の作業者が感電する ― 絶対に避ける 切り替わりの3つの状態 状態 52-1 52-2 電源 平常時 入 切 商用 停電時 切 入 発電機 復電時 入 切 商用 復電するときは 52-2 を切ってから 52-1 を入れる (無電圧を確認してから商用へ戻す) 図面では 52-1 と 52-2 の間に「インタロック」 または相手のb接点が描かれているかを確認する
図2:同時投入は発電機の電気が商用側へ逆送し、停電作業中の作業者が感電します。図面上に 52-1 と 52-2 のインタロック(または相手のb接点)が描かれているかを必ず確認します。
インタロック ― 絶対に同時投入させない
⚡ もし商用と発電機が同時につながったら
停電中、発電機が運転している ↓ 商用側の遮断器も入ったままだった ↓ 発電機の電気が構外へ逆流(逆充電) ↓ 停電したはずの配電線が充電される ↓ 復旧作業中の電力会社の作業員が感電
これが逆充電 です。第4回の波及事故は「自分の事故を外に出す」話でしたが、こちらは「自分の電気を外に出す」 話。どちらも構外に危害を及ぼします。 そのため、商用側と発電機側の遮断器は機械的・電気的の二重のインタロック で、同時に投入できないようにします。
インタロックの実現方法
機械的インタロック …物理的な機構で、片方が入っていると片方が入らない
電気的インタロック …相手の遮断器の
b接点(52b) を投入回路に直列に入れる(第3回の補助記号がここで効きます)
切替開閉器 …そもそも1つのスイッチで「商用/切/発電機」を選ぶ方式
単線結線図 では点線や記号で簡略表示されますが、
実際の動きは展開接続図でしか読めません 。試験や点検では必ず
インタロックの動作確認 を行います。
📐 図3 系統連系すると、図面に何が増えるか
系統連系すると、図面に何が増えるか 電力会社 高圧配電線 PAS 責任分界点 受電 VCB 高圧母線 一般負荷 (変圧器へ) 52G 解列点 PCS 太陽光パネル 連系保護 59・27・95 64・67P 単独運転検出 連系で押さえる3点 ① 逆潮流を出すか、出さないか 出さない契約なら 逆電力継電器 RPR(67P)で 系統へ流れ出す前に解列する。 出す契約なら電力会社との協議事項が増える。 ② 単独運転を絶対にさせない 系統が停電したのに発電を続けると、 復旧作業中の作業者が感電する。 受動的・能動的の両方式で検出して解列。 ③ 解列点を図面で明示する どの遮断器が「解列点」なのかを図面に書く。 保護継電器の整定値も別表で示す。 JEAC 9701 と電力会社の協議結果に合わせる。
図3:連系点には OVR(59)・UVR(27)・OFR/UFR(95)・OVGR(64)・RPR(67P) と単独運転検出装置が加わります。どの遮断器が「解列点」なのかを図面上で明示することが大切です。
系統連系 ― 太陽光をつなぐときに増える保護
太陽光発電 などを電力会社の系統につなぐことを系統連系 といいます。予備電源と似ていますが、ふだんから商用と並列で運転する 点が決定的に違います。
逆潮流あり/なし
逆潮流あり …余った電力を系統へ送る(売電)。系統側への影響が大きいため保護も手厚くなる逆潮流なし …構内で使い切る。系統へ送らないことを保証するため、逆電力継電器(RPR) で監視する どちらにするかで必要な保護継電器の顔ぶれが変わります 。図面を読むときは、まずここを確認してください。
⚡ 単独運転 ― 系統連系でいちばん重要な概念
系統が停電しているのに、太陽光だけが運転を続けて配電線に電気を送り続けている 状態を単独運転 といいます。 結果は逆充電と同じ。停電したはずの電線が生きている ため、復旧作業者が感電します。 そのため連系する設備には単独運転検出機能 が義務づけられ、検出したらただちに系統から切り離す(解列する) 必要があります。
連系保護に使われる継電器
OVR(59)過電圧継電器 …系統の電圧が上がりすぎたら解列UVR(27)不足電圧継電器 …系統が停電したら解列OFR/UFR 周波数継電器 …周波数の上昇・低下を検出して解列RPR 逆電力継電器 …逆潮流なしの場合、系統へ電気が流れ出すのを検出単独運転検出機能 …受動的方式(電圧位相や周波数の急変を見る)と能動的方式(あえて微小な変動を与えて反応を見る)を組み合わせる 第8回で扱った継電器が、ここでも役割を変えて登場します。整定値と保護方式は電力会社との連系協議で決まります 。
波及事故も、逆充電も、単独運転も…全部「構外に迷惑をかけない」って話なんですね。
そこに気づけたら、この連載の見方編は卒業だね。受変電設備の設計思想は「自分を守る」と「他人に迷惑をかけない」の2本柱 。図面はその思想が形になったものなんだ。
単線結線図では、こう描かれる
予備電源・系統連系の記載要素
① 発電機 G …容量(kVA)、電圧、燃料種別。点線の枠で囲って区別することが多い② 発電機側の遮断器 …52。商用側の52とセットでインタロックの表示 ③ 切替の方式 …切替開閉器か、遮断器2台か④ 非常用母線 …一般用の母線と分けて描く⑤ 非常用負荷 …名称に「非常」を明記(第10回)⑥ 連系点 …太陽光などの接続位置と、連系保護装置の記載⑦ 蓄電池・直流電源装置 …トリップ電源を兼ねる場合はその旨
新人がやりがちなミス 3選
① 非常用母線に一般負荷をつなぐ
発電機の容量は非常用負荷に合わせて決めてあります 。あとから一般負荷を足すと、いざというときに容量不足で落ちます。増設の相談を受けたら、まず発電機容量の再計算 から。
② インタロックを「付いているから大丈夫」で済ませる
インタロックは動作確認をして初めて機能が保証されます 。竣工時と定期点検で必ず試験してください。「図面に描いてある」と「実物が動く」は別の話です。
③ 太陽光を「後付けできる」と安易に答える
連系には
電力会社との協議、保護装置の追加、力率 改善設備の見直し (第11回)が伴います。「パネルを載せるだけ」ではありません。受変電側の検討が必要だと、早い段階で伝えてください。
まとめ
第13回のまとめ
・予備電源には法令で求められる非常電源 と事業継続のための予備電源 がある。図面上で混ぜない ・発電機は長く持つが立ち上がりに時間がかかる 、蓄電池は瞬時だが短い 。組み合わせて使う ・停電時はUVR(27)が検出 → 商用を切り離す → 発電機を起動 → 投入 の順 ・商用を切り離してから発電機をつなぐ 。順序が崩れると逆充電 になる ・商用と発電機は機械的・電気的の二重インタロック で同時投入を防ぐ ・系統連系では単独運転 を検出して解列 することが必須 ・波及事故・逆充電・単独運転はすべて「構外に迷惑をかけない」 という同じ思想
📝 理解度チェック(全3問クイズ)
Q1. 消防法に基づく非常電源(自家発電設備)に求められる、停電から電圧確立までの時間は?
A. 10秒以内B. 40秒以内C. 3分以内
答えと解説を見る 正解:B 消防用設備等の非常電源は、常用電源が停電してから40秒以内に電圧を確立することが求められます。始動用蓄電池や始動方式の選定はここから逆算します。
Q2. 商用電源と発電機を絶対に同時投入させないために設けるものは?
A. インタロック(機械的・電気的な連動)B. 避雷器C. 進相コンデンサ
答えと解説を見る 正解:A 同時投入は系統への逆充電となり、復旧作業者を感電させる重大事故になります。機械的インタロックと電気的インタロック(52a/52b接点)を二重に設けます。
Q3. 系統連系における「単独運転」の説明として正しいものは?
A. 発電設備が1台だけで運転している状態B. 系統が停電しているのに、発電設備が系統の一部に電気を送り続けている状態C. 発電設備が定格出力で運転している状態
答えと解説を見る 正解:B 系統停電後も発電が続くと、切り離したはずの線路が充電されたままになります。これを検出して速やかに解列するため、27・59・単独運転検出装置などの保護を組み合わせます。
※ まず自分で答えを考えてから「答えと解説を見る」を開いてみてください。
よくある質問
Q. 発電機の容量はどう決めるのですか?
まず何を守るか(非常用負荷の範囲) を確定させ、その合計から求めます。注意点は電動機の始動時に必要な容量 。定常運転の合計だけで決めると、消火ポンプの始動で電圧が落ちて立ち上がりません。始動条件まで含めた検討 が必要です。
Q. 発電機は動かさずに置いておけばよいのですか?
いいえ。ふだん動かない設備ほど、定期的に動かして確認する必要があります 。始動試験、負荷試験、燃料の劣化管理、バッテリーの点検。「いざというときに動かなかった」が最も多い失敗です。保安規程の点検計画に必ず織り込んでください。
次回予告
参考:高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/系統連系規程 JEAC 9701/消防法および同施行令・施行規則/建築基準法施行令/内線規程 JEAC 8001
次に読むならこれ 【引込・受電設備の設計マニュアル③】引込方式とルート ― 引込は、敷地の入口ではなく建物の入口で決まる 設計マニュアル
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