結論

1997年の改正で、接地工事の呼び方が数字から記号に変わりました。このとき第三種はD種、特別第三種はC種になっています。数字の順と記号の順が入れ替わって見えるのは、分類の軸そのものが「強化版かどうか」から「電圧の高さ」に置き換わったからです。

  • 第一種→A種、第二種→B種、特別第三種→C種、第三種→D種
  • A→Dは電圧の高い順。特別第三種が「第三種の上」だったのでCに入った
  • C種・D種の500Ω緩和は「0.5秒以内の遮断」と引き換えの条件
  • B種だけ式で決まるのは、守っている対象が違うから

古い図面を開くと「第三種接地工事」と書かれていることがあります。手元の資料はA種・B種・C種・D種。読み替えようとして、ふと止まる瞬間があります。——第三種は、CとDのどちらだったか。

答えはD種です。そして特別第三種がC種になります。数字だけ見ると「特別第三種は第三種の一段上だから、Dの次のE」と思いたくなりますが、そうはなっていません。ここには、名前が変わっただけではない理由があります。

💬 はりた&ペン太(まずは疑問から)

🐧 見習いペン太
「第一種がA、第二種がB…なら第三種はCじゃないんですか? なんでDなんです?」

🦔 はりた
「そこで引っかかる人は多いよ。実は“順番がずれた”んじゃなくて、“並べる基準が変わった”んだ。順に見ていこう」

まず、対応関係を確認する

接地工事の種類が現在の記号になったのは、1997年(平成9年)3月の改正(同年6月1日施行)です。それまでの数字による呼び方との対応は、次のとおりです。

旧名称 新名称 主な対象 接地抵抗値
第一種接地工事 A種接地工事 高圧以上の機器の外箱、避雷器など 10Ω以下
第二種接地工事 B種接地工事 高圧・特別高圧と低圧を結合する変圧器の低圧側 150/Ig Ω以下(条件で変動)
特別第三種接地工事 C種接地工事 300Vを超える低圧の機器の外箱など 10Ω以下
第三種接地工事 D種接地工事 300V以下の低圧の機器の外箱など 100Ω以下
Igは一線地絡電流。B種だけが固定値ではなく、計算で決まります。

なぜ、入れ替わったように見えるのか

旧名称の世界では、「第三種」と「特別第三種」は親子の関係でした。基本が第三種で、条件が厳しい場合にその強化版として特別第三種を使う——という構造です。名前からしても、後者は前者の派生です。

ところが新名称では、この2つが対等な兄弟として並べ直されました。基準は「派生かどうか」ではなく、扱う電圧の高さです。

  • A種——高圧以上
  • B種——高圧・特別高圧と低圧の境界(変圧器)
  • C種——低圧のうち300V超
  • D種——低圧のうち300V以下

この並びで見ると、C種がD種の上に来るのは自然です。300V超のほうが電圧が高いからです。順番が狂ったのではなく、並べる物差しが変わった——これが正体です。

💡 記号にした本当の狙い

1997年の改正は、電気設備技術基準を仕様規定から性能規定へ組み替える大きな見直しでした。「何をどう作れ」ではなく「どういう状態を満たせ」という書き方へ寄せる流れの中で、接地の分類も設備の性格ではなく電圧という客観的な軸で整理し直されています。数字から記号への変更は、その整理の結果として表に出た部分です。


4種類を電圧で並べ直すと、記号の意味が見えてくる

種別 接地抵抗 接地線の太さ(軟銅線) 覚え方
A種 10Ω以下 直径2.6mm以上 高圧。厳しく、太く
B種 150/Ig Ω以下 直径2.6mm以上 境界。値は計算で決まる
C種 10Ω以下 直径1.6mm以上 低圧300V超。値はA種と同じ厳しさ
D種 100Ω以下 直径1.6mm以上 低圧300V以下。もっとも多く使う
C種の抵抗値がA種と同じ10Ω以下である点は見落とされがちです。低圧だからといって緩いわけではありません。

この表で気づいてほしいのは、C種の10Ω以下という値が、高圧のA種と同じだということです。旧名称で「特別」と付いていた理由が、ここに残っています。300Vを超える低圧は、人が触れたときの危険度が跳ね上がるため、高圧並みの厳しさが求められています。

500Ωへの緩和は、「時間で買っている」

C種とD種には、実務でよく使う緩和規定があります。地絡を生じたときに0.5秒以内で自動的に電路を遮断する装置を施設すれば、500Ω以下でよいというものです。

D種なら100Ω→500Ω、C種なら10Ω→500Ω。かなり大きな緩和ですが、これは「甘くなった」のではありません。接地抵抗を下げて電位上昇を抑えるという守り方の代わりに、危険な状態が続く時間を短くするという守り方に置き換えているだけです。守る対象——人体に流れる電流の大きさと時間——は変わっていません。

⚠️ 500Ωを前提にするなら、遮断装置とセットで残す

500Ωで施工した場合、その安全は漏電遮断器が0.5秒以内に動くことに依存しています。後年の改修で遮断装置が撤去・変更されると、接地だけが取り残されて条件を満たさなくなります。竣工図と引き継ぎ書には、「この接地は0.5秒遮断を前提に500Ωで施工」と必ず書き残してください。数値だけ記録しても、前提は伝わりません。


B種だけ計算式なのは、守っている対象が違うから

A種・C種・D種は固定値ですが、B種だけは 150/Ig という式で決まります。ここも分類の軸を理解すると腑に落ちます。

A種・C種・D種が守っているのは、機器の金属外箱に触れた人です。だから「外箱の電位をどこまで抑えるか」という発想で、固定値になります。

一方でB種が守っているのは、高圧側と低圧側が混触したときに、低圧側全体の電位が持ち上がることです。どこまで持ち上がるかは、その系統に流れる一線地絡電流(Ig)次第。相手が可変なので、値も式になります。

遮断の条件 B種の接地抵抗値
自動遮断装置なし(基本) 150/Ig Ω以下
1秒を超え2秒以内に自動遮断 300/Ig Ω以下
1秒以内に自動遮断 600/Ig Ω以下
ここでも「速く切れるなら、抵抗値は緩めてよい」という同じ考え方が使われています。

C種・D種の500Ω緩和と、B種の300/600への緩和は、まったく同じ思想です。電位上昇の大きさと、それが続く時間。この2つの掛け算で危険度を見ている、と捉えると、4種類がひとつの体系に見えてきます。

古い図面を読むときの実務

改称から四半世紀が過ぎましたが、現場では旧表記に出くわします。改修や増設で既存図を扱うときの注意点を挙げます。

  • 「第三種」はD種、「特別第三種」はC種——ここだけは反射で言えるようにしておくと、現場で止まりません。
  • 旧図の数値をそのまま信じない——当時の抵抗値が、現在の要求と一致しているとは限りません。実測値と施工時の条件(遮断装置の有無)を確認してください。
  • 混在させない——改修図を作るとき、既存部分が旧表記、増設部分が新表記だと、後で読む人が混乱します。図面全体を新表記に揃え、凡例に「旧:第三種=D種」と一行入れておくのが親切です。
  • 接地極を流用するときは測り直す——既設の接地極は、経年で抵抗値が変わっています。図面の値は「その時点の記録」であって、現在の性能ではありません。
  • 共用・分離の判断は別問題——種別を読み替えられても、その接地を他系統と共用してよいかは別の検討が要ります。

💡 世代をまたぐ図面に効く一行

凡例に「接地種別は現行表記(A/B/C/D種)による。旧表記との対応:第一種=A種、第二種=B種、特別第三種=C種、第三種=D種」と書いておくだけで、次の改修担当者が調べ直す手間がなくなります。図面は、自分が読むためではなく、10年後の誰かが読むために作るものです。


よくある質問

第三種接地工事は、C種とD種のどちらですか?

D種です。特別第三種接地工事がC種になります。数字の順番と入れ替わって見えますが、新しい記号はA→Dが電圧の高い順に並んでおり、300V超の特別第三種がC種、300V以下の第三種がD種という整理になっています。

いつ名称が変わったのですか?

1997年(平成9年)3月の改正で、同年6月1日から施行されています。電気設備技術基準を仕様規定から性能規定へ組み替える大きな見直しの一環で、接地の分類も電圧という客観的な軸で整理し直されました。

C種の10Ω以下は、なぜA種と同じ厳しさなのですか?

300Vを超える低圧は、人が触れたときの危険度が大きく上がるためです。旧名称で「特別」と付いていたのはこの理由によるもので、記号に変わったあともその厳しさは引き継がれています。低圧だから緩い、という理解は誤りです。

C種・D種の500Ω緩和は、どんな条件で使えますか?

地絡を生じたときに0.5秒以内で自動的に電路を遮断する装置を施設する場合です。抵抗値を下げて電位上昇を抑える代わりに、危険な状態が続く時間を短くする、という置き換えになっています。遮断装置とセットで初めて成立する条件です。

B種だけ計算式なのはなぜですか?

守っている対象が違うからです。A種・C種・D種は機器の外箱に触れた人を守るため固定値ですが、B種は高圧と低圧が混触したときの低圧側全体の電位上昇を抑えるためのものです。上昇の大きさは一線地絡電流(Ig)次第なので、値も式になります。

旧図面の接地抵抗値は、そのまま使えますか?

使えません。記録された値はその時点のものであり、接地極は経年で抵抗値が変わります。また、当時の値がどんな条件(遮断装置の有無など)を前提にしていたかも確認が必要です。流用するなら必ず測り直してください。

改修図では新旧どちらの表記を使うべきですか?

図面全体を現行表記に揃えるのが望ましい対応です。そのうえで凡例に旧表記との対応を一行添えておくと、既存資料と突き合わせる人が迷いません。同一図面内で新旧が混在するのが、いちばん事故を招きます。

電力会社の見直しは、あなたの家に効くのか
「乗り換えれば安くなる」は、条件によります。電気設備の設計側から見ると、先にやるべきことがある家と、比較が効く家ははっきり分かれます。当てはまるものを見てください。
A契約アンペアが大きすぎる家
一人暮らしや二人暮らしなのに50A・60A契約、という家は珍しくありません。基本料金は契約アンペアで決まるので、下げるだけで毎月効きます。工事は電力会社が無料で行うのが一般的です。乗り換えより先に、こちらを確認してください。
B使用量が多い家・オール電化・EVがある家
月400kWhを超える、オール電化、EVを自宅で充電している——このあたりから単価と時間帯プランの差が大きく出ます。基本料金より従量料金のほうが金額として大きいので、プランと会社を比べる価値があります。
C関西・中国・四国・沖縄エリアの家
これらのエリアは最低料金制で、そもそも契約アンペアという区分がありません。Aの手が使えないので、比べるならプランと会社そのものになります。
比べるときに見落としやすいところ
  • 燃料費調整額の上限。大手電力の規制料金には上限がありますが、新電力の多くは上限を設けていません。燃料価格が上がった局面では、単価が安いはずのプランが逆転することがあります
  • 解約金・契約期間の縛り。1年未満の解約で費用がかかるプランがあります
  • 停電したときの連絡先は変わりません。設備の保安は送配電会社の担当なので、乗り換えても対応する会社は同じです(責任分界点の記事
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。