試運転でポンプのスイッチを入れたら、水が上がらない。ファンの風が弱い。よく見るとモーターが逆に回っている――。この記事は、三相モーターが逆に回る理由と、確かめ方、直し方だけにしぼって説明します。

結論

三相モーターの回る向きは、R・S・Tの相の順番で決まります。3本のうち2本を入れ替えると逆に回ります。回す前に検相器で電源の順番を、寸動でモーターの向きを確かめ、逆ならそのモーターの端子で2本を入れ替えます。

  • 2本を入れ替えると逆。3本を順にずらしても向きは同じ
  • 検相器で電源の順番、寸動でモーターの向きを確かめる
  • 直すのはそのモーターの端子。盤の幹線側では入れ替えない
  • 作業はブレーカーを切って検電してから。電気工事士の仕事
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。

なぜ逆に回る? ― 2本入れ替えると、相の順番が逆になる

三相の電気は、R・S・Tの3本の電圧が少しずつずれて、順番に山をつくります。三相モーター(三相誘導電動機)は、この順番どおりに回る磁界に引っぱられて回ります。これを相回転(相順)といい、R→S→Tの順を正相、逆の順を逆相と呼びます。

R・S・T正しい向きで回る
2本を入れ替え逆に回る
3本を順にずらす向きは変わらない
逆に回したいときどれか2本を入れ替える

3本のうちどれか2本を入れ替えると、順番がR→T→Sになり、磁界の回る向きが反対になります。だから、モーターも逆に回ります。現場でモーターが逆に回る原因の多くは、配線やつなぎ替えのときに、どこかで2本が入れ替わったことです。

つなぎ方 相の順番 回る向き
R・S・T R→S→T(正相) 正しい向き
R・T・S(2本を入れ替え) R→T→S(逆相) 逆向き
S・T・R(3本を順にずらす) S→T→R(正相のまま) 正しい向き
たとえるなら
相の順番は、3人で順に押す回転ドアのようなもの
回転ドアを、A→B→Cの順に押していけば、ドアはいつも同じ向きに回ります。誰から始めても、順番の輪が同じなら向きは同じです。ところが、BとCの順番を入れ替えると、ドアは反対向きに回り出します。三相の電気も、R・S・Tが順に押す役で、2本を入れ替えると押す順番が逆になります。
ここに注意!
「3本とも付け替えれば、逆に回る」ではありません。
R・S・TをS・T・Rのように3本とも順にずらしても、順番の輪は同じなので、回る向きは変わりません。逆に回したいときは、2本だけを入れ替えます。
ここまでのポイント
  • 回る向きは、R・S・Tの相の順番で決まる
  • 2本を入れ替えると逆に回る
  • 3本を順にずらしても、向きは変わらない

回す前に確かめる ― 検相器で電源、寸動でモーター

向きを確かめる道具が検相器です。3本のクリップを動力盤のR・S・Tにはさむと、正相か逆相かがランプや回転表示で分かります。電源を送る前の試験や、盤の改修のあとに使います。

検相器電源の順番を確かめる
正相・逆相表示やランプで分かる
寸動一瞬だけ入れてすぐ切る
見比べる本体の回転方向の矢印

ただし、検相器で分かるのは、測った場所の電源の順番だけです。そこから先の配線やモーター側の端子で2本が入れ替わっていれば、モーターは逆に回ります。そこで最後に、寸動で確かめます。スイッチを一瞬だけ入れてすぐ切り、本体に付いている回転方向の矢印と、軸や羽根の動きを見比べます。

逆に回ったときの症状は、機器によって違います。ポンプは水がほとんど上がらず、ファンは風が弱くなります。モーターの音や電流だけでは気づきにくいので、目で見て確かめるのが確実です。

ここに注意!
「検相器で正相だったから、モーターも正しく回る」ではありません。
検相器が確かめるのは、測った場所の電源の順番です。そこから先の配線や、モーター側の端子で2本が入れ替わっていれば、モーターは逆に回ります。最後は寸動で、実際の向きを見て確かめます。
ここまでのポイント
  • 検相器で、電源の順番(正相・逆相)を確かめる
  • 寸動で、モーターが矢印どおりに回るかを見る
  • 検相器が正相でも、モーター側で逆になることがある


逆だったら ― そのモーターの端子で2本を入れ替える

逆に回っていたら、そのモーターの端子(またはそのモーターの開閉器の負荷側)で、2本を入れ替えます。動力盤の幹線側で入れ替えると、同じ盤から出ているほかのモーターまで、すべて逆に回ってしまいます。

入れ替える場所そのモーターの端子
幹線側はだめほかの機器まで逆になる
作業の前にブレーカーを切り検電する
作業のあとに寸動でもう一度確かめる
  1. そのモーターのブレーカー(開閉器)を切り、検電器で電気が来ていないことを確かめる
  2. モーター側の端子で、3本のうち2本を入れ替え、しっかり締め直す
  3. 電源を入れ、寸動でもう一度向きを確かめる

端子の作業は電気工事士の仕事です。逆相のまま回すと困る機器には、逆相を検出してモーターを回さないようにする保護継電器(過負荷・欠相・逆相を見張る3Eリレーなど)を使う方法もあります。動力盤から電動機までの試運転の流れは、現場イメージ3D|動力回路(ポンプ)で見られます。

たとえるなら
盤の幹線側で入れ替えるのは、マンションの元栓で水の向きを変えるようなもの
1つの蛇口の不具合を直すのに、建物全体の元栓をいじると、ほかの部屋の水まで変わってしまいますよね。モーターの向きも同じで、直すのは逆に回ったそのモーターの端子だけにします。
ここに注意!
「とりあえず回してみて、逆なら直せばいい」ではありません。
ポンプやファンは逆に回ってもすぐには壊れにくいものの、圧縮機など、逆回転で傷むおそれのある機器もあります。長く回す前に寸動で確かめ、必要なら逆相を検出して止める保護継電器(3Eリレーなど)を使います。
ここまでのポイント
  • 入れ替えるのは、逆に回ったモーターの端子の2本
  • 盤の幹線側で入れ替えると、ほかの機器まで逆になる
  • 切る・検電する・入れ替える・寸動で確かめる、の順


まとめ|結論

結論

三相モーターは、R・S・Tのうち2本が入れ替わると逆に回ります。回す前に検相器で電源の順番を、寸動でモーターの向きを確かめ、逆なら電源を切って検電し、そのモーターの端子で2本を入れ替えます。

迷ったら、この順で確かめます。

  1. 動力盤で、検相器を使って正相かを確かめる
  2. 寸動で、モーターが本体の矢印どおりに回るかを見る
  3. 逆なら、ブレーカーを切って検電し、そのモーターの端子で2本を入れ替える
  4. もう一度寸動で確かめてから、運転に入る

よくある質問

三相モーターを逆回転させるには、どうすればいいですか?

電源の3本のうち、どれか2本を入れ替えます。R・S・TをR・T・Sのようにすると、回る向きが逆になります。3本を順にずらすだけ(R・S・T→S・T・R)では向きは変わりません。

どの2本を入れ替えてもいいですか?

どの2本でも逆になります。ただし、入れ替える場所は、そのモーターの端子(またはその回路の開閉器の負荷側)にします。盤の幹線側で入れ替えると、同じ盤から出ているほかのモーターまで逆に回ります。

検相器で正相だったのに、モーターが逆に回りました。なぜですか?

検相器が見ているのは、測った場所の電源の順番です。そこからモーターまでの配線やモーター側の端子で2本が入れ替わっていると、モーターは逆に回ります。最後は寸動で、実際の回る向きを確かめます。

逆回転のまま運転すると、どうなりますか?

ポンプは水がほとんど送れず、ファンは風量が大きく落ちます。圧縮機など、逆回転で壊れるおそれのある機器もあります。向きを確かめる前に、長く運転しないようにします。

逆相を自動で防ぐ方法はありますか?

逆相を検出して止める保護継電器があります。過負荷・欠相・逆相を見張る3Eリレーなどを使うと、相順が逆のときにモーターを回さないようにできます。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。