避雷設備の設置手順|計画・設計から施工の順番、竣工試験、定期点検まで
避雷設備は、完成するとほとんどが見えなくなる設備です。接地極は土の中、鉄筋の接続はコンクリートの中、引下げ導線は柱の中。だからこそ、いつ・何を・どの順番で施工して検査するかが品質を決めます。この記事では、計画・設計から、着工前の協議、施工の順番、竣工試験、定期点検までを6つのステップで整理します。
結論
避雷設備は計画 → 設計 → 協議 → 施工 → 竣工検査 → 定期点検の6ステップ。施工は接地極 → 躯体 → 屋上と地面の下から進め、埋める前・打設する前に検査と記録を残します。
- 設計はクラス → 受雷部 → 引下げ導線 → 接地 → 内部雷保護の順
- 鉄筋を引下げ導線に使うなら、最上階〜地上で 0.2Ω以下が目安。打設前に確認
- 竣工試験は試験用接続部を開いて単独、つないで総合。10Ω未満が推奨
- 点検は定期のほか、改修後・落雷後にも
計画と設計 ― クラスを決めて、上から順に配置する
最初にやるのは、避雷設備が義務かどうかの確認です。高さ20mを超えるか(塔屋込み)、敷地に20mを超える工作物があるか、危険物施設か。条件の詳しい整理は「避雷設備の設置義務|対象になる建物・工作物・危険物施設と「高さ20m」の測り方」にまとめています。
義務の有無がわかったら、JIS Z 9290-3:2019 に沿って次の順で設計します。
- 建物の条件:高さ・形・用途・立地のほか、構造(鉄骨造・RC造など)を早めに押さえます。鉄骨や鉄筋を引下げ導線・接地極として使えるかで、設計が大きく変わるからです
- 大地抵抗率:接地極の長さは大地抵抗率で決まります。規格は、設計中に測定し、季節による変化も考えることを勧めています
- 分離するか・しないか:避雷設備を建物に直接取り付ける(分離しない)のが一般的です。可燃物で覆われた建物や爆発の危険がある場所では、建物から離して立てる「分離した」方式を検討します
- 設計図書:受雷部・導線の経路、材料、構造体利用部分との接続位置、試験用接続部の位置まで、図面と仕様書に書きます
- まず義務の確認。塔屋込みの高さ・工作物・危険物施設を見る
- 設計はクラス → 受雷部 → 引下げ導線 → 接地 → 内部雷保護の順
- 構造と大地抵抗率は早めに押さえる。接続位置まで図面に書く
着工前の協議 ― 避雷設備は「他の工事」に乗っている
避雷設備は単独では成り立ちません。接地極は基礎工事に、引下げ導線は躯体に、受雷部は屋上の防水と笠木に乗っています。規格も、設計から施工まで関係者が定期的に協議することを求めています。
| 相手 | 主に決めること |
|---|---|
| 建築設計者 | 導線の経路と外観、材料、とい・手すり・笠木の詳細、屋上設備の位置、防水への取付け方法 |
| 構造設計者・建設業者 | 鉄筋への溶接やクランプの可否、接続位置と数、基礎下の導体の位置、打設前の検査の段取り |
| 電力・通信・ガス・水道の各事業者 | 引込口でのボンディング、絶縁継手の橋絡(分離用スパークギャップ)、SPD の設置 |
| アンテナ・電子設備の設置者 | ケーブルのシールドのボンディング、屋上の架空ケーブルの経路、SPD |
| 消防機関 | 警報設備や消火設備の配置、可燃性の屋根の建物の雷保護方法(必要に応じて) |
手続きの面では、避雷針は建築基準法で建築設備に含まれます。高さ20mを超える建物では、確認申請の図書に避雷設備を示し、完了検査で確認されます。危険物施設では、消防法の設置許可と完成検査の中で確認されます。
ペン太
ハリタ- 避雷設備は基礎・躯体・防水・笠木に乗っている。関係者と定期的に協議
- 鉄筋への溶接の可否、接続位置、打設前検査の段取りは構造・建設側と決める
- 避雷針は建築設備。確認申請の図書に示し、完了検査で確認される
施工① 地面の下と躯体 ― 見えなくなる前に検査する
接地極(根切り・基礎の段階)
- B形(環状接地極)は、建物の外壁から約1m離し、深さ0.5m以上に埋めるのが望ましい
- A形は、建物の外側に、上端を0.5m以深にして、互いの影響が小さくなるよう均等に配置する
- 凍結する地域では、凍る深さの部分は効果が落ちるので、その分を見込む
- 垂直の接地極は、打ち込みながら接地抵抗を測ると、下がらなくなったところで止められ、追加の位置も判断しやすい
- 接地極は施工中に検査できるように設置する。埋め戻す前に、位置・深さ・接続を確認して写真に残す
⚠️ 地中の材料と接続
アルミニウムは接地極や地中には使いません。地中の接続は圧着や溶接などで行い、溶接部には腐食対策をします。鋼製の接地導線がコンクリートや土から地上に出る部分は、腐食しやすいので耐食性のテープなどで保護します。銅・ステンレスの導線ならこの対策は不要です。
構造体(躯体の段階)
鉄骨や鉄筋を引下げ導線として使う場合、電気的につながっていることが前提です。JIS Z 9290-3 では、鉄筋の相互接続を溶接・クランプ、または直径の20倍以上の重ね合わせで結束などとし、つながりが明確でない場合は最上階から地上までの抵抗を測って 0.2Ω以下が望ましいとしています。測定は4線式の測定器で、電流は約10Aが目安です。
- 鉄筋への溶接は構造設計者が同意した場合だけ。溶接長さは50mm以上が目安
- コンクリートの打設前に、接続作業と検査をすべて終える
- どの鉄筋を使ったかは、施工後に確かめられないので、図面・説明書・施工中の写真で記録する
- 基礎の鉄筋を接地極(基礎接地極)として使う場合も、接続部はコンクリートにひびが入らないよう配慮する
- 接地極はB形なら壁から約1m・深さ0.5m以上。埋め戻す前に検査と写真
- 構造体を使うなら、最上階〜地上で 0.2Ω以下が目安。打設前に確認
- 使った鉄筋と接続位置は、図面と写真で残す
施工② 屋上と外壁 ― 防水を守り、しっかり固定する
受雷部(屋上・防水の段階)
- 受雷部と導線は、振動・雪の滑落・熱による伸び縮みで外れたり切れたりしないよう、堅固に取り付ける。支持間隔の目安は規格の附属書(表D.1)にある
- 接続はできるだけ少なく。黄銅ろう付・溶接・クランプ・圧着・ねじ止め・ボルト締めなどで確実に
- 屋上の縁と突角部に受雷部を沿わせる。金属の笠木を受雷部に使う場合は、継目を電気的に橋絡する
- 陸屋根で水がたまる場所では、受雷部が水没しないように設置する
- 屋上のボンディングや貫通部は防水処理をする。取付け方法は着工前に建築・防水業者と決めておく
- 可燃性の屋根では、導体と屋根材の間を0.1m以上(かやぶきは0.15m以上)あける
- 後から付く屋上設備(室外機・アンテナ・架台など)は、保護範囲に入れるか、離隔が取れなければ受雷部にボンディングする
引下げ導線と接続部(外壁・仕上げの段階)
- 引下げ導線は雨どいの中に入れない。ループにせず、まっすぐ下ろす
- 可燃性の壁で温度上昇が問題になる場合は、壁から0.1m以上離す
- 各引下げ導線の、接地極とつながる位置に試験用接続部を設ける(構造体の引下げ導線と構造体接地極の組み合わせは除く)。工具で開けられ、ふだんは閉じておく
- 異種金属に注意。亜鉛めっき鋼やアルミの上に銅を置かない、銅とアルミを直接つながない、アルミをコンクリートやしっくいなどに直接取り付けない
- 引込口の近くにボンディング用バーを設け、電源・通信・ガス・水道の引込を直接または SPD でボンディングする
ペン太
ハリタ- 受雷部は堅固に固定。縁と突角部に沿わせ、笠木の継目は橋絡
- 防水の貫通・取付けは着工前に決め、防水処理を忘れない
- 雨どい内の配線は禁止。試験用接続部を各引下げ導線に。異種金属に注意
竣工検査と定期点検 ― 測って、記録して、比べる
竣工試験でやること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目視点検 | 設計どおりか、接続部のゆるみ・導体の破損・腐食がないか、試験用接続部の状態、離隔距離、ボンディングと SPD の状態 |
| 導通試験 | 施工後に目視できない部材(構造体の引下げ導線、埋設部など)の電気的なつながり |
| 接地抵抗試験 | 試験用接続部で切り離して1本ずつ測る単独測定と、全体の総合測定。10Ωを超える場合は接地極の長さが規格を満たすか確認 |
| 記録 | 受雷部の状態、腐食と防食の状態、取付け状態、接地抵抗の測定値、規格への適合、変更・増設の内容、試験結果 |
点検のタイミング
- 建設中:埋設した接地極の確認
- 設置後:竣工試験
- 定期:建物の特性、LPSクラス、腐食の状況に応じた周期(目安は規格の附属書 表D.2)
- 臨時:改修や修理のあと、落雷を受けたとき
爆発の危険がある建物では、6か月ごとの目視点検と年1回の電気的な点検が望ましいとされています。接地抵抗は季節で変わるので、測った時期も記録し、前回値と比べて徐々に上がっていないかを見ます。上がり続けるなら接地極の追加を検討します。
⚠️ 点検の安全
点検・試験・保守は雷雨中に行ってはいけません。また、充電部にかかわる点検は、電気主任技術者の立会いのもとで行います。
- 竣工試験は目視・導通・接地抵抗(単独と総合)・記録の4つ
- 点検は建設中・設置後・定期・改修後/落雷後
- 接地抵抗は前回値と比べる。雷雨中は点検しない
よくある質問
避雷設備はどの順番で施工しますか?
建物の工程に合わせて、地面の下から順に進めます。根切り・基礎の段階で接地極を埋設して基礎の鉄筋と接続し、躯体工事で柱の鉄骨や鉄筋を引下げ導線としてつなぎ、屋上の防水工事に合わせて受雷部を取り付け、最後に試験用接続部やボンディングを仕上げて竣工試験を行います。
構造体の鉄筋を引下げ導線に使うとき、何を確認しますか?
鉄筋の電気的なつながりです。JIS Z 9290-3 では、つながりが明確でない場合に最上階から地上までの抵抗を測り、0.2Ω以下であることが望ましいとしています。測定は4線式の測定器で、電流は約10Aが目安です。コンクリートを打設すると確認できなくなるため、接続と検査は打設前に行います。
竣工時の接地抵抗はどう測りますか?
各引下げ導線の試験用接続部を開いて、接地極を1本ずつ切り離して測る単独測定と、すべてつないだ状態の総合測定を行い、記録します。一般に10Ω未満が推奨で、10Ωを超える場合は接地極の長さが規格の最小長さを満たしているかを確認します。
避雷設備の点検はいつ行いますか?
建設中(埋設した接地極の確認)、設置後、建物の特性やLPSクラス・腐食の状況に応じた定期点検、改修や修理のあと、落雷を受けたときに点検します。爆発の危険がある建物では、6か月ごとの目視点検と年1回の電気的な点検が望ましいとされています。
避雷設備は建築確認の対象ですか?
はい。避雷針は建築基準法で建築設備に含まれるため、高さ20mを超える建物では確認申請の図書に避雷設備を示し、完了検査で確認されます。危険物施設では、消防法の設置許可と完成検査の中で確認されます。
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