単線結線図の変圧器まわりや電験の電力科目に出てくる「中性点接地」。用語集では一言で説明されますが、中性点がどこなのか、直接接地・抵抗接地・非接地で何が変わるのか、6,600Vの配電がなぜ非接地なのかまでは分かりにくい言葉です。この記事は、この3つだけにしぼって説明します。

ペン太ペン太
単線結線図の変圧器のところに「中性点接地」って書いてあって…。中性点ってどこなんですか?
ハリタハリタ
星形につないだ3本の線の、真ん中の点だよ。そこを大地につなぐのが中性点接地なんだ。
はじめての方へ:まず言葉の意味
3相の真ん中の点が中性点で、それを直接・抵抗・リアクトルを通して大地につなぐのが中性点接地、6600ボルトの配電はつながない非接地である、ということを3コマで示す動く図解
ひとことで言うと
「中性点接地」は、変圧器の3本の線の真ん中の点(中性点)を、大地につなぐこと。つなぎ方には4つの方式があります。
読み方
ちゅうせいてんせっち/ちょくせつせっち・ていこうせっち・しょうこリアクトルせっち・ひせっち
どこで出てくる?
単線結線図の変圧器まわり、電験の電力科目、高圧受電設備の保護継電器(GR・DGR)の説明。

結論

中性点接地は、3相の真ん中の点(中性点)を大地につなぐことです。つなぎ方は直接・抵抗・消弧リアクトル・非接地の4つで、地絡電流を小さくするほど、健全相の電圧が上がる関係にあります。6,600Vの配電は非接地で、地絡電流は小さいかわりに、健全相の電圧が√3倍に上がります。

  • 中性点は、3本の電圧が打ち消し合う点。ふだんは大地との電圧がほぼ0V
  • 187kV以上は直接接地、66〜154kVは抵抗接地が多い
  • 6,600Vの配電は非接地。地絡電流が小さく、誘導障害も少ない
  • そのかわり健全相は√3倍(約3,810V→6,600V)。DGRで見つけて切る
この記事でわかること
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この記事に出てくる言葉

読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。

言葉 読み方 やさしい説明
三相 さんそう 3本の線に、少しずつずらした電気を流す送り方。発電所から建物まで使われる。
星形結線(Y結線) ほしがたけっせん 3つの巻線の片側を1点にまとめるつなぎ方。まとめた点が中性点。
相電圧・線間電圧 そうでんあつ・せんかんでんあつ 相電圧は1本の線と中性点のあいだ、線間電圧は線と線のあいだの電圧。線間は相の√3倍。
地絡 ちらく 電線が大地や、大地とつながった金属に触れてしまうこと。
健全相 けんぜんそう 地絡していない、ほかの線のこと。
対地静電容量 たいちせいでんようりょう 電線と大地のあいだに電気がたまる性質。線が長いほど大きい。
誘導障害 ゆうどうしょうがい 大きな電流が流れたとき、近くの通信線などに電圧が生じて悪さをすること。
保護継電器 ほごけいでんき 事故を見つけて、遮断器に「切れ」と指令を出す装置。リレーとも呼ぶ。
先に理解しておきたいこと

「中性点接地」を理解するために、土台になる考え方を3つだけ押さえておきましょう。

1

三相の電気は、3本でつり合っている

3本の線の電圧は、少しずつずれながら上がり下がりしていて、合わせるとちょうど打ち消し合います。打ち消し合う点が中性点で、ふだんは大地との電圧がほぼ0Vです。

2

地絡すると、電流は大地を通って中性点へ帰る

1本の線が大地に触れると、電流は大地を通り、中性点の接地から電源へ戻ろうとします。中性点をどうつないでいるかで、この帰り道の通りやすさが決まります。

3

電流を小さくすると、電圧が上がる

帰り道に抵抗を入れたり、つながなかったりすると地絡電流は小さくなりますが、そのぶん地絡していない線の大地との電圧が上がります。電流と電圧は、シーソーの関係です。

中性点とは? ― 3相の「真ん中」を大地につなぐ理由

ペン太ペン太
どうしてわざわざ、真ん中を大地につなぐんですか?
ハリタハリタ
地絡したときに、電圧が暴れないようにして、電流の大きさも決めておくためさ。事故を確実に切るための準備なんだ。

三相の変圧器や発電機を星形(Y)結線にすると、3つの巻線の片側が1点にまとまります。この点が中性点です。3本の線の電圧はたがいに打ち消し合うので、ふだん中性点の大地との電圧はほぼ0Vになります。

中性点3相の真ん中
ふだん大地との電圧ほぼ0V
目的電圧・電流・継電器
家でも中性線をB種接地

この中性点を大地につなぐのが中性点接地です。目的は、地絡したときの異常な電圧の上昇を抑えること、地絡電流の大きさを決めること、保護継電器を確実に動かすことの3つです。身近なところでは、家の単相3線式(100V・200V)でも、変圧器の真ん中から出る中性線をB種接地しています(中性線が切れるとどうなる?)。

たとえるなら
中性点は、シーソーの支点のようなもの
3人が順番にシーソーをこぐように、3本の線の電圧は上がったり下がったりしますが、真ん中の支点はほとんど動きません。その支点を地面にしっかり固定するのが中性点接地です。
ここに注意!
「中性点は、ふだん電気が流れていない」とは限りません。
三相の負荷がつり合っていないときや、単相3線式の中性線では、中性点(中性線)にも電流が流れます。大地との電圧がほぼ0Vなのと、電流が流れないのは別の話です。
ここまでのポイント
  • 中性点は、3本の電圧が打ち消し合う真ん中の点
  • ふだんの大地との電圧はほぼ0V
  • 電圧を抑え、電流を決め、継電器を動かすために接地する

直接・抵抗・消弧リアクトル・非接地 ― 何を入れて大地へつなぐか

ペン太ペン太
つなぎ方にもいろいろあるんですか?
ハリタハリタ
導線でそのまま、抵抗を通す、リアクトルを通す、つながない、の4つだよ。地絡電流と電圧の上がり方が、それぞれちがうんだ。

中性点接地の方式は、中性点と大地のあいだに何を入れるかで4つに分かれます。入れるものによって、地絡したときの電流の大きさと、地絡していない線(健全相)の電圧の上がり方が変わります。

直接187kV以上
抵抗66〜154kV
非接地6,600V配電
関係電流と電圧はシーソー
方式 つなぎ方 地絡電流 健全相の電圧 主に使われる所
直接接地 導線でそのまま 大きい ほとんど上がらない 187kV以上の超高圧送電線
抵抗接地 抵抗(100Ω〜1kΩ程度)を通す 中くらい 上がる 66kV〜154kVの送電線
消弧リアクトル接地 静電容量と打ち消し合うリアクトルを通す ほぼ0 上がる 新しい採用は多くない
非接地 つながない 小さい(静電容量の分) √3倍に上がる 6,600Vの高圧配電線

直接接地は、地絡電流が大きいので継電器が確実に動き、健全相の電圧もほとんど上がらないため、機器の絶縁を低くできます。そのかわり、大きな電流で機器が傷みやすく、近くの通信線に誘導障害を起こしやすくなります。電圧が高い超高圧では絶縁を低くできる利点が大きいので、直接接地が選ばれます。

たとえるなら
方式の選び方は、川の「堤防」と「水門」
地絡電流を大きく流して一気に切るか(直接接地)、水門で流れを細めるか(抵抗接地)、流れはほとんど出さないかわりに水位(電圧)が上がるのを受け止めるか(非接地)。何を守りたいかで選び方が変わります。
ここに注意!
「抵抗を入れるほど、安全になる」ではありません。
抵抗やリアクトルで地絡電流を小さくすると、そのぶん、地絡していない線の大地との電圧が上がります。機器の絶縁を、その電圧に耐えられるようにしておく必要があります。
ここまでのポイント
  • 方式は、中性点と大地のあいだに何を入れるかで4つ
  • 地絡電流を小さくするほど、健全相の電圧が上がる
  • 超高圧は直接、送電は抵抗、配電は非接地が多い


6,600Vの配電は、なぜ非接地? ― 電流は小さく、電圧は√3倍

ペン太ペン太
キュービクルに来る6,600Vは、どれなんですか?
ハリタハリタ
非接地だよ。地絡しても電流は小さいけど、ほかの2本の電圧が上がるから、DGRで確実に見つけて切るんだ。

キュービクルに来る6,600Vの高圧配電線は、非接地が多く使われています。電圧が低く、線路も短いので、電線と大地のあいだの静電容量が小さく、1線が地絡しても流れる電流が小さく済むからです。電流が小さいので、通信線への誘導障害も起きにくくなります。

地絡電流静電容量の分だけ
電圧√3倍に上がる
数字3,810V→6,600V
見つけ方ZCT・ZPD・DGR

そのかわり、1線が地絡すると、ほかの2本の大地との電圧が√3倍に上がります。ふだんの大地との電圧は6,600V÷√3=約3,810Vですが、地絡すると健全相は6,600Vになります。また、地絡が途切れながら続く間欠アーク地絡では、異常な電圧が出ることもあります。

地絡電流が小さいので、受電設備ではZCTで零相電流を、ZPDで零相電圧を測り、地絡方向継電器(DGR)で自分の構内の地絡かどうかを見分けて切ります(DGRを標準で入れる理由)。なお、6,600Vという電圧が決まった理由はなぜ高圧は6,600Vなのかで説明しています。

ここに注意!
「非接地なら、地絡しても放っておいてよい」ではありません。
電流が小さくて気づきにくいだけで、健全な2本の電圧は√3倍に上がっています。そのまま2本目が地絡すると、大きな事故になります。地絡はすぐに見つけて切ります。
ここまでのポイント
  • 6,600Vの配電は非接地が多い。地絡電流が小さい
  • そのかわり健全相は√3倍(約3,810V→6,600V)
  • 受電設備ではZCT・ZPDで測り、DGRで切る


まとめ|結論

結論

中性点接地は、3相の真ん中の点を大地につなぐことで、地絡したときの電圧と電流をコントロールします。直接・抵抗・消弧リアクトル・非接地の4つの方式は、地絡電流を小さくするほど健全相の電圧が上がる関係にあります。6,600Vの配電は非接地で、地絡電流は小さいかわりに、健全相の電圧が√3倍に上がります。

単線結線図で中性点接地を確かめるときは、この順で見ます。

  1. 変圧器が星形(Y)結線か、中性点が出ているか
  2. 中性点が、何を通して大地につながっているか(直接・抵抗・リアクトル・なし)
  3. 非接地の系統なら、ZCT・ZPDと地絡方向継電器(DGR)があるか
  4. 低圧側の中性点(中性線)にB種接地があるか

よくある質問

中性点接地とは何ですか?

変圧器などの星形結線の中性点を、大地につなぐことです。地絡したときの異常な電圧の上昇を抑え、地絡電流の大きさを決め、保護継電器を確実に動かすために行います。

中性点接地の方式には、どんな種類がありますか?

中性点と大地のあいだに何を入れるかで、直接接地(導線でそのまま)、抵抗接地(抵抗を入れる)、消弧リアクトル接地(リアクトルを入れる)、非接地(つながない)の4つに分けられます。

どの電圧で、どの方式が使われていますか?

一般に、187kV以上の超高圧の送電線は直接接地、66kV〜154kVの送電線は抵抗接地、6,600Vの高圧配電線は非接地が多く使われています。消弧リアクトル接地は、高価で調整が難しいため、新しく採用されることは多くありません。

6,600Vの配電線は、なぜ非接地なのですか?

電圧が低く、線路が短いので、電線と大地のあいだの静電容量が小さく、1線が地絡しても流れる電流が小さく済むからです。電流が小さいと、通信線への誘導障害が起きにくくなります。

非接地方式の弱点は何ですか?

1線が地絡すると、ほかの2本の線の大地との電圧が√3倍に上がります。6,600Vなら、約3,810Vが6,600Vになります。また、地絡が途切れながら続く間欠アーク地絡で、異常な電圧が出ることがあります。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。