過電流遮断器と配線用遮断器の違いとは?ヒューズ・漏電遮断器との関係、切れ方と動作条件、付けてはいけない線
条文では「過電流遮断器を施設すること」と書かれ、図面や現場では「配線用遮断器」「ブレーカー」「MCCB」と呼ばれます。同じものなのか、別のものなのか。この記事は、2つの言葉の関係、仲間に入る機器・入らない機器、切れ方と動作条件の違い、付けてはいけない線の4つにしぼって説明します。
ペン太
ハリタ- ひとことで言うと
- 過電流遮断器は「過電流が流れたら自動で切る装置」の総称。配線用遮断器はその代表選手です。
- 読み方
- かでんりゅうしゃだんき/はいせんようしゃだんき
- 現場での呼び名
- 配線用遮断器は、ブレーカー・MCCB・ノーヒューズブレーカー(NFB)とも呼ばれます。
結論
過電流遮断器は過電流で自動的に電路を切る装置の総称(役割の名前)、配線用遮断器はその中のひとつの機器です。低圧では、ほかにヒューズ、過電流素子付きの漏電遮断器、電動機回路用の組み合わせ装置が過電流遮断器になります。違いが出るのは切れ方で、ヒューズは溶けて使い切り、配線用遮断器ははね上がって何度でも戻せる点です。
この記事に出てくる言葉
読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。
| 言葉 | 読み方 | やさしい説明 |
|---|---|---|
| 過電流 | かでんりゅう | 電線や機器が安全に流せる量を超えた電流。過負荷と短絡(ショート)の2種類がある。 |
| 過電流遮断器 | かでんりゅうしゃだんき | 過電流が流れたとき、自動で電路を切る装置の総称。 |
| 配線用遮断器 | はいせんようしゃだんき | 樹脂のケースに入った遮断器。MCCB・ブレーカー。 |
| ヒューズ | ヒューズ | 中の金属(エレメント)が熱で溶けて電路を切る部品。 |
| 過電流素子 | かでんりゅうそし | 漏電遮断器の中で過電流を見張る部分。OCと略される。 |
| 定格電流 | ていかくでんりゅう | その機器を続けて流してよい電流の大きさ。20A・30Aなど。 |
この3つを頭に入れておくと、残りがすっと読めます。
法令は「過電流遮断器」で書いてある
電技省令 第14条は「必要な箇所に過電流遮断器を施設する」とだけ定めています。何を使うかは、性能を満たせば選べます。
配線用遮断器は、その中の一番の主役
低圧の分電盤や動力盤では、過電流遮断器として配線用遮断器を使うのが標準です。
性能の決まりは電技解釈 第33条
ヒューズと配線用遮断器、それぞれに「何倍の電流で何分以内に切れるか」が別々に決められています。
どういう関係? ― 「役割の名前」と「機器の名前」
電気設備技術基準(省令)第14条は、過電流で電線や機器が焼けたり火災が起きたりしないよう、電路の必要な箇所に過電流遮断器を施設しなければならないと定めています。ここでいう過電流遮断器は特定の製品名ではなく、「過電流が流れたら自動で電路を切る」という役割を果たすもの全部を指します。
その役割をこなす機器の代表が配線用遮断器です。樹脂でできたケース(モールドケース)に、開閉の機構、過電流を見張る引外し装置、アークを消す消弧装置を収めたもので、英語の Molded Case Circuit Breaker からMCCBと略されます。
ペン太
ハリタ- 過電流遮断器は「過電流で自動的に切る装置」の総称
- 配線用遮断器(MCCB)はその中の機器のひとつ
- 法令が求めるのは「過電流遮断器」で、機器の種類は選べる
どれが過電流遮断器になる? ― 漏電遮断器・サーマル・ヒューズ
ペン太
ハリタ低圧で過電流遮断器として使えるものを、なる・ならないで整理すると次のとおりです。迷いやすいのは、漏電遮断器と、電動機回路で使う電磁開閉器のサーマルです。
| 機器 | 過電流遮断器になる? | 条件・注意 |
|---|---|---|
| 配線用遮断器 | ○ なる | 低圧の標準。過負荷も短絡も切る。 |
| ヒューズ | ○ なる | 低圧は電技解釈 第33条第2項の性能を満たすもの。非包装ヒューズは原則つめ付き。 |
| 漏電遮断器(過電流素子付き) | ○ なる | 1台で漏電と過電流の両方を切る。 |
| 漏電遮断器(過電流素子なし) | ✕ ならない | 電源側に同じ定格以上の過電流遮断器が別に必要。 |
| 電磁開閉器のサーマル単体 | ✕ ならない | 短絡電流を切れない。 |
| サーマル+短絡保護専用遮断器(ヒューズ) | △ 条件付き | 電動機だけにつながる回路で、1つの箱に収めた場合に限る。幹線には使えない(第33条第4項)。 |
| 開閉器(ナイフスイッチなど) | ✕ ならない | 手で開閉するだけ。ヒューズ付きなら、ヒューズが過電流遮断器になる。 |
漏電遮断器の「OC付」「OCなし」は、銘板や形式名で見分けます。見た目がほとんど同じなので、図面の機器表と現物の銘板を必ず照らし合わせてください。漏電遮断器そのものの見分け方は漏電ブレーカーの見分け方でくわしく説明しています。
- 過電流素子付きの漏電遮断器は、過電流遮断器を兼ねる
- OCなしの漏電遮断器とサーマル単体は、過電流遮断器にならない
- サーマルとの組み合わせは、電動機回路だけの特例
切れ方と動作条件はどう違う? ― ヒューズは使い切り、ブレーカーは戻せる
同じ過電流遮断器でも、切れ方は大きく違います。ヒューズは中のエレメントが熱で溶けて切れるので、一度切れたら交換です。配線用遮断器は、熱や電磁力で引外し装置が働いてハンドルが落ちるだけなので、原因を取り除けばハンドルを戻して使えます。
どれくらいの電流で切れるかも、電技解釈 第33条で別々に決められています(電気用品安全法の適用を受ける製品は、同法の技術基準による)。
| 定格電流 | 1.6倍で溶断 | 2倍で溶断 |
|---|---|---|
| 30A以下 | 60分以内 | 2分以内 |
| 30Aを超え60A以下 | 60分以内 | 4分以内 |
| 60Aを超え100A以下 | 120分以内 | 6分以内 |
| 100Aを超え200A以下 | 120分以内 | 8分以内 |
| 200Aを超え400A以下 | 180分以内 | 10分以内 |
| 400Aを超え600A以下 | 240分以内 | 12分以内 |
| 600A超過 | 240分以内 | 20分以内 |
| 定格電流 | 1.25倍で動作 | 2倍で動作 |
|---|---|---|
| 30A以下 | 60分以内 | 2分以内 |
| 30Aを超え50A以下 | 60分以内 | 4分以内 |
| 50Aを超え100A以下 | 120分以内 | 6分以内 |
| 100Aを超え225A以下 | 120分以内 | 8分以内 |
| 225Aを超え400A以下 | 120分以内 | 10分以内 |
| 400Aを超え600A以下 | 120分以内 | 12分以内 |
| 600Aを超え800A以下 | 120分以内 | 14分以内 |
| 800Aを超え1,000A以下 | 120分以内 | 16分以内 |
| 1,000Aを超え2,000A以下 | 120分以内 | 18〜22分以内 |
| 2,000A超過 | 120分以内 | 24分以内 |
ヒューズは「1.1倍に耐え、1.6倍でゆっくり切れる」、配線用遮断器は「1倍では切れず、1.25倍でゆっくり切れる」というように、切れ始める境目の考え方が少し違います。どちらも、短絡のような大きな電流ほど速く切れる「反限時」の特性です。
ペン太
ハリタ- ヒューズは溶けて使い切り、配線用遮断器は戻して再使用
- 動作条件は第33条の33-1表・33-2表で別々に決まっている
- ヒューズは限流の力が強く、今も後ろ盾として使われる
図面ではどう読み分ける? ― 記号と、付けてはいけない線
屋内配線の図記号(JIS C 0303)では、四角の中の文字で機器を描き分けます。設計の図面で「過電流遮断器」という1つの記号があるわけではなく、実際に使う機器の記号で描くのがふつうです。
| 図記号の中の文字 | 機器 | 過電流遮断器になる? |
|---|---|---|
| S | 開閉器(必要に応じてヒューズの定格を添える) | ヒューズ付きならヒューズが過電流遮断器 |
| B | 配線用遮断器 | ○ |
| E | 漏電遮断器 | 過電流素子付きなら○(BEと書き分けることもある) |
過電流遮断器は「どこにでも付ければ安全」というわけではありません。電技解釈 第35条は、接地線、多線式電路の中性線、一端を接地した低圧電線路の接地側電線には過電流遮断器を施設しないよう定めています。中性線だけが切れると、単相3線式では100Vの機器どうしが直列になって200Vを分け合い、片方に100Vを超える電圧がかかるからです。くわしくは単相3線式の中性線が切れるとどうなる?で計算しています。
ただし、各極が同時に切れる場合は例外です。単相3線式の主幹に使う「3P2E」は、3極を同時に開閉し、過電流を見張る素子は電圧側の2極だけに付いた形なので、この条件に合います。
もうひとつ大切なのが遮断容量です。第33条第1項は、過電流遮断器はその場所を通る短絡電流を切れる能力をもつことと定めています。最大の短絡電流が10,000Aを超える場所では、10,000A以上を切れる配線用遮断器の電源側に、それより早く(または同時に)切る過電流遮断器を置く組み合わせ(カスケード遮断)も認められています。上下の遮断器の組み合わせ方は保護協調の記事で説明しています。
- 図面では「過電流遮断器」ではなく、使う機器の記号(B・Eなど)で描く
- 接地線・中性線・接地側電線には、単独で切れる過電流遮断器を付けない
- 短絡電流を切れる遮断容量があるかも、あわせて確認する
まとめ
結論
過電流遮断器は「役割の名前」、配線用遮断器は「その役割をこなす機器の名前」です。条文の「過電流遮断器」には、ヒューズや過電流素子付きの漏電遮断器も入ります。
実務で迷わないための4つの確認
- 条文の「過電流遮断器」は、配線用遮断器に限らない(ヒューズ・OC付き漏電遮断器も入る)
- 漏電遮断器はOC付きかOCなしかを銘板で確かめる。OCなしなら電源側に過電流遮断器が要る
- ヒューズは使い切り、配線用遮断器は戻せる。動作条件は第33条の別々の表で決まる
- 中性線・接地線には単独で切れる遮断器を付けない。遮断容量も確認する
ブレーカーの容量の決め方はブレーカー20Aで何ワットまで使える?と動力ブレーカーの選定根拠と計算例、漏電遮断器の感度の選び方は定格感度電流の記事で説明しています。
よくある質問
ブレーカーと配線用遮断器は同じものですか?
現場で「ブレーカー」と言えば、ほとんどが配線用遮断器(MCCB)か漏電遮断器のことです。正式な名前は配線用遮断器で、ノーヒューズブレーカー(NFB)はもともと製品の呼び名から広まった言い方です。
漏電遮断器だけ付ければ、過電流遮断器はいりませんか?
過電流素子付き(OC付)の漏電遮断器なら、過電流遮断器の役目も兼ねるので1台で済みます。過電流素子なし(OCなし)の漏電遮断器は漏電しか見ないので、電源側に過電流遮断器が別に必要です。銘板やカタログで「過電流保護付」かどうかを確かめてください。
電磁開閉器のサーマルは過電流遮断器になりますか?
サーマル(過負荷保護装置)だけでは過電流遮断器になりません。短絡電流を切れないからです。電動機だけにつながる回路で、短絡保護専用の遮断器やヒューズと組み合わせて1つの箱に収めた場合に限り、組み合わせ全体を過電流遮断器として使えます(電技解釈 第33条第4項)。幹線には使えません。
ヒューズと配線用遮断器、今どちらを使うべきですか?
低圧の分電盤・動力盤は、戻せて状態が見える配線用遮断器が標準です。ヒューズは切れるのが速く大きな短絡電流を抑える力(限流)が強いので、半導体機器の保護や、遮断容量が足りない箇所の後ろ盾(バックアップ)に使われます。
中性線に遮断器を付けたら違反ですか?
中性線だけが単独で切れるように過電流遮断器を付けるのは、電技解釈 第35条で禁止されています。ただし、各極が同時に切れるもの(3極で中性線は開閉だけ行う3P2Eなど)は例外として認められています。


