技術図書館非常放送の連動は注意報から警報へ2つの信号と3つの放送、火災放送への4つのきっかけ、区分鳴動とBGMカットこの資料をスライドで見る資料一覧を見る

天井の感知器が煙を感じた数秒後、館内のスピーカーから「ただいま3階の火災感知器が作動しました」という女性の声が流れ、しばらくすると男性の声で「火事です。火事です」に変わります。この放送を自動で動かしているのが、自動火災報知設備(自火報)と非常放送(放送設備)の連動です。この記事では、2つの設備のあいだでどんな信号が受け渡され、放送がどう切り替わり、どの階に流れるのかを、図と条文で1つずつ丁寧に解説します。

結論

自火報の受信機は、階別信号と確認信号を放送アンプに送ります。放送は感知器発報放送(女声)→ 火災放送(男声)の2段階で、大きな建物では出火階と直上階から始まります。

  • 放送設備を設ければ、自火報のベル(地区音響装置)は省略できる(施行規則第24条)
  • 信号を受けてから10秒以内に放送開始。火災放送は10分以上くり返す(非常警報設備の基準)
  • 火災放送へは、発信機・別の感知器・受信機の判断・タイマーのどれかで自動で移る
  • 非常放送のときはBGMを止め、音量調整器を最大に強制。停電しても蓄電池で10分以上
感知器から受信機、受信機から放送アンプへ階別信号ELと確認信号EFが送られ、放送アンプから各階のスピーカーへ放送が流れる構成と、受信機から送る信号、放送アンプがやることの一覧
自火報と非常放送は、受信機から放送アンプへの信号でつながっています。

つながり方 ― 受信機から放送アンプへ、2つの信号

自火報と非常放送は、別々の設備です。自火報は火災を見つけて知らせる設備、非常放送は建物じゅうに声で伝える設備。この2つが信号線でつながり、二人三脚で動きます。たとえるなら、自火報は現場を見張る見張り番、非常放送は町内に知らせる拡声器です。

信号 意味 放送設備の動き
階別信号(EL) どの階(区域)の感知器が作動したか その階の名前を入れた感知器発報放送を始める
確認信号(EF) 発信機が押された、火災と確認・断定された 火災放送に切り替える
JEITA「非常用放送設備に関するガイドライン」の信号の区分をもとに作成

信号は無電圧の接点などで受け渡します。接点の仕様(電圧・パルス幅など)は機器どうしで合わせる必要があるので、自火報と放送設備のメーカーが違う場合は、早い段階で取り合いを決めておきます。

📘 放送設備があれば、自火報のベルは省略できる

消防法施行規則第24条第5号は、自火報の地区音響装置(ベル)の設け方を定めていますが、放送設備を第25条の2のとおり設置した場合は除くとしています。つまり、放送設備が自火報と連動して音声で警報を出すなら、ベルは設けなくてよいということです。また、非常警報設備の基準では、自火報と連動する放送設備は、起動装置や表示灯を省略できる場合があるとしています。

どんな建物に放送設備が必要かは「建築消防|非常警報設備の設置基準|自火報があっても放送設備が必要になる場合」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 受信機 → 放送アンプへ、階別信号(EL)と確認信号(EF)
  • ELで感知器発報放送、EFで火災放送
  • 放送設備を基準どおり設ければ、自火報のベルは省略できる

3つの放送 ― 女声と男声で聞き分ける

感知器発報放送(女声)、火災放送(男声)、非火災報放送(女声)の3つの放送が、シグナル音とメッセージの組み合わせで順に流れる様子の動く図解
動く図解:3つの放送は、声とシグナル音の組み合わせで区別できます。

非常放送の中身は、非常警報設備の基準(昭和48年消防庁告示第6号)で決まっています。

放送 構成 流れるとき
感知器発報放送 女声 第1シグナル+メッセージ+無音1秒を2回以上くり返す 感知器が作動したとき(自動)
火災放送 男声 第1シグナル+メッセージを2回、第2シグナルを加えて10分以上くり返す 火災の可能性が高まったとき(自動または手動)
非火災報放送 女声 第1シグナル+メッセージ+無音1秒を2回以上くり返す 火災でないと確認したとき(手動)
非常警報設備の基準(昭和48年消防庁告示第6号)第四をもとに作成

女声は「注意してください」、男声は「逃げてください」という合図です。たとえるなら、天気予報の注意報と警報です。まず注意報(感知器発報放送)で身構えてもらい、確かな情報が入ったら警報(火災放送)で行動してもらいます。

放送設備は、起動の信号を受けてから10秒以内に放送を始めることが求められています。感知器が作動したら、すぐに館内の人に伝わるということです。

ここまでのポイント
  • 感知器発報放送は女声、火災放送は男声、非火災報放送は女声
  • 火災放送は第2シグナルを加えて10分以上くり返す
  • 起動の信号から10秒以内に放送開始


「火事です」への切り替え ― 4つのきっかけ

感知器発報放送から火災放送に切り替わる4つのきっかけ(発信機・非常電話の操作、別の感知器の作動、受信機の火災判断、一定時間の経過)と、火災でなかった場合の非火災報放送を示した図
火災放送へは、4つのきっかけのどれかで自動的に切り替わります。

感知器が1つ作動しただけでは、誤作動(非火災報)の可能性もあります。そこで、まず感知器発報放送を流し、次のどれかが起きたら自動で火災放送に切り替えます(非常警報設備の基準 第四の四)。

  1. 発信機・非常電話が操作された:人が火災を見つけて押したので、直ちに火災放送へ
  2. 別の感知器も作動した:最初(第一報)とは別の感知器が作動すれば、火災の可能性が高い
  3. 受信機が火災と判断した:火災の可能性が高いという信号を受けたとき
  4. 一定の時間がたった:誰も確認できなかった場合に備えて、タイマーで自動的に移る。時間は2〜5分が目安で、建物ごとに設定する

現場を確認して火災でなかった場合は、防災センターなどから手動で非火災報放送を流し、「さきほどの火災感知器の作動は異常がありませんでした」と知らせます。

ペン太ペン太
タイマーって、短いほうが安全なんじゃないですか?
ハリタハリタ
短すぎると、確認が間に合わないうちに「火事です」が流れて、誤報のたびに全員が避難することになります。長すぎると、本当の火災で避難が遅れる。管理の人が何分で現場に着けるかを考えて、建物ごとに決めるんです。
ここまでのポイント
  • 発信機・非常電話は直ちに火災放送へ
  • 別の感知器・受信機の判断・タイマー(2〜5分目安)でも自動で移る
  • 火災でなければ手動で非火災報放送

区分鳴動 ― まず出火階と直上階から

9層の建物で3階から出火したとき、まず3階と4階に放送が流れ、一定時間後に全館へ広がる様子と、出火階ごとの放送範囲の決まりを示した動く図解
動く図解:まず出火階と直上階、時間がたったら全館へ。

大きな建物で全館に一斉に「火事です」と流すと、全員が同時に階段に殺到して、かえって危険です。そこで、火に近い階から順に知らせるしくみが区分鳴動です。たとえるなら、映画館で出口に近い列から順に退場を案内するのと同じです。

出火階 最初に警報を出す範囲
2階以上 出火階+直上階
1階 出火階(1階)+直上階(2階)+地階
地階 出火階+直上階+その他の地階
消防法施行規則第24条第5号ハ(地区音響装置)をもとに作成

対象は、地階を除く階数が5以上で、延べ面積が3,000m²を超える建物です。一定の時間がたったとき、または新たな火災信号を受けたときは、全区域に自動で警報を出すよう措置することが求められています。放送設備でも同じ考え方で、階ごとに区分して放送できるようにします。

ここまでのポイント
  • 5階以上かつ延べ3,000m²超の建物は、出火階+直上階から
  • 1階の火災は地階も、地階の火災はほかの地階も
  • 一定時間または新たな火災信号で全区域へ


ほかの音を止める ― BGMカットと音量の強制

放送アンプから非常制御信号でBGMや業務放送をカットし、3線式の音量調整器では緊急線で調整器を飛ばしてスピーカーを最大音量で鳴らす仕組みと、停電時も蓄電池で放送できることを示した図
非常放送のときは、ほかの音を止め、絞った音量つまみも無視して最大音量で鳴らします。

どれだけ放送しても、聞こえなければ意味がありません。非常放送では、次の3つで「確実に聞こえる」ようにします。

  • BGM・業務放送を止める:非常放送が始まると、非常制御信号で館内のBGMやほかの音響設備を止めます。テナントの独自の音響設備も、止められるようにしておきます
  • 音量調整器を最大に:会議室などで音量を絞っていても、3線式の配線にしておけば、非常時は調整器を飛ばして最大音量で鳴らせます
  • 停電しても鳴る:放送設備には非常電源(蓄電池)があり、停電しても10分以上放送できます

⚠️ あとから付けた音量つまみに注意

テナント工事や改修で、2線式の音量調整器をあとから付けてしまうと、つまみを絞った部屋では非常放送が聞こえなくなります。改修の図面では、音量調整器が3線式になっているかを必ず確認します。

ここまでのポイント
  • 非常放送が始まるとBGM・業務放送を自動で止める
  • 3線式の音量調整器で、絞った部屋でも最大音量に
  • 蓄電池で停電しても10分以上

試験と点検 ― 階の対応と切り替えを確かめる

階の対応、10秒以内、火災放送への移行、区分と全館、ほかの音と音量、停電時の6つの確認ポイントを並べた図
竣工前の連動試験と定期点検で確かめる6つのポイント。
  • 階の対応:各階の感知器を作動させて、正しい階の名前で感知器発報放送が流れるか。改修でフロアの名前が変わった建物は要注意
  • 起動の速さ:信号を受けてから10秒以内に放送が始まるか
  • 火災放送への切り替え:発信機で直ちに切り替わるか、2つ目の感知器で切り替わるか、タイマーの時間は設定どおりか
  • 区分と全館:出火階と直上階から始まり、時間や新たな信号で全館に広がるか
  • ほかの音と音量:BGMが止まるか、絞った音量調整器の部屋でも聞こえるか
  • 停電時:商用電源を切っても蓄電池で放送できるか

点検や工事で自火報を触るときは、放送との連動を一時的に止めて、誤って館内に放送が流れないようにします。終わったら連動を必ず元に戻し、戻したことを記録に残します。点検の資格については「建築消防|消防設備士と消防設備点検資格者|自火報の電源工事は誰がやるのか」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 各階の感知器で、正しい階の名前が放送されるか
  • 切り替えのきっかけ・タイマー・区分鳴動を確かめる
  • 点検時の連動停止は、終わったら必ず戻す


よくある質問

自火報と非常放送はどのように連動しますか?

自火報の受信機から放送設備(放送アンプ)へ、どの階の感知器が作動したかを示す信号(階別信号)と、火災と確認・断定されたことを示す信号(確認信号)が送られます。放送設備はこれを受けて、10秒以内に自動で感知器発報放送を始め、条件がそろうと火災放送に切り替えます。

感知器発報放送と火災放送の違いは何ですか?

感知器発報放送は、感知器が作動した段階で流れる女声の放送で、「ただいま○階の火災感知器が作動しました」と知らせます。火災放送は、火災の可能性が高まった段階で流れる男声の放送で、「火事です。火事です。○階で火災が発生しました」と避難を促します。火災放送は第2シグナルとともに10分以上くり返します。

火災放送にはいつ切り替わりますか?

非常警報設備の基準では、発信機や非常電話が操作されたとき(直ちに)、最初とは別の感知器が作動したとき、受信機が火災の可能性が高いと判断したときに、自動で火災放送に移ります。また、感知器発報放送から一定の時間がたったときにも移るよう、タイマーを設定します(2〜5分が目安)。

放送設備があれば、自火報のベル(地区音響装置)はいりませんか?

消防法施行規則第24条では、放送設備を第25条の2の基準どおりに設置した場合は、自火報の地区音響装置を設けないことができるとされています。放送設備が自火報と連動して、音声で警報を発するためです。

区分鳴動とは何ですか?

大きな建物で全館に一斉に警報を出すと、階段に人が殺到して危険なため、まず出火階とその直上階などに限って警報を出すしくみです。地階を除く階数が5以上で延べ面積が3,000m²を超える建物が対象で、一定の時間がたったときや新たな火災信号を受けたときは、全区域に自動で警報を出します。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。