技術図書館自火報は火災の司令塔連動と移報の違い、設備ごとの動きと合図、連動試験と連動停止の注意この資料をスライドで見る資料一覧を見る

火災の感知器がひとつ作動すると、建物じゅうの設備が一斉に動き出します。放送が流れ、排煙口が開き、防火戸が閉まり、空調が止まり、エレベーターは避難階へ向かいます。その合図を出しているのが自動火災報知設備(自火報)です。この記事では、自火報と他の設備の連動・移報の関係を整理し、非常放送・排煙・防火戸・空調・エレベーター・電気錠、そして非常用発電機の発停まで、「だれが、何の合図で、どう動くか」を図で解説します。

結論

自火報は火災の司令塔。感知器の火災信号で放送・排煙・空調停止・EV管制・電気錠などを動かします。一方、非常用発電機は停電で起動し、防火戸やガス系消火は専用感知器で動くのが基本です。

  • 連動=相手を動かす、移報=情報を知らせる
  • 非常放送は感知器発報放送 → 火災放送の2段階
  • 排煙口は煙感知器連動の自動開放も可。排煙機は排煙口の開放で自動起動
  • 非常用発電機は停電から40秒以内に電圧確立(消防用)。火災信号では起動しない
  • 連動は試験で確かめ、点検後の「連動停止」の戻し忘れに注意
自火報の受信機を中心に、非常放送・排煙設備・防火戸とシャッター・空調換気・エレベーター・電気錠と自動ドア・中央監視と通報へ信号が出ている関係図と、受信機に入ってくる信号、自火報では動かないものの一覧
自火報の受信機を中心にした連動の全体像。右下の「自火報では動かないもの」も大事なポイントです。

全体像 ― 自火報は「火災の司令塔」

自火報は、感知器や発信機からの火災信号を受信機で受け取り、ベルや表示で知らせる設備です。それと同時に、受信機からは他の設備へ信号が出ていきます。たとえるなら、オーケストラの指揮者です。指揮棒(火災信号)がひと振りされると、放送、排煙、空調、エレベーターなどの奏者が、決められた楽譜(連動表)どおりに一斉に動きます。

用語 意味
連動 火災信号を受けて、相手の設備を実際に動かす 放送の起動、空調の停止、電気錠の解錠、エレベーターの管制運転
移報 火災が起きたという情報を、他の盤やシステムに知らせる 中央監視(BAS)、管理室、警備会社、防災盤への表示
入力(表示) 他の設備の状態を、受信機や防災盤に知らせてもらう スプリンクラーの流水検知、消火ポンプの起動、排煙口・防火戸の作動確認
一般的な用語の使い方

連動の内容は、建物ごとに防災設備の連動表(連動図)にまとめます。「どの警戒区域の感知器が作動したら、どの排煙口を開け、どの空調を止めるか」を一覧にしたもので、設計・施工・試験・点検のすべてで使います。大規模な建物では、これらを防災センター総合操作盤で集中して監視・操作します(「建築消防|総合操作盤はいつ義務になるか|規則12条1項8号のイ・ロ・ハと2つの告示」参照)。

非常放送・排煙口と排煙機・防火戸とシャッター・空調停止・エレベーター管制・電気錠の解錠・非常用発電機・ガス系消火について、起動の合図が自火報の火災信号・専用感知器・停電信号・手動のどれかを示した早見表
だれが起動の合図を出すかの早見表。発電機は停電、ガス系消火は専用感知器が合図です。
ここまでのポイント
  • 自火報は受信機を中心に、他の設備へ火災信号を出す司令塔
  • 連動=相手を動かす、移報=情報を知らせる、入力=相手の状態を受け取る
  • 建物ごとの連動は「連動表」で決める

非常放送 ― 「感知器が作動しました」から「火事です」へ

非常放送の感知器発報放送・火災放送・非火災報放送の3種類の文例と起動のきっかけ、放送設備があれば自火報の地区音響装置を設けないことができることを示した図
非常放送は、感知器発報放送 → 火災放送(または非火災報放送)の順に流れます。

非常放送(放送設備)は、自火報ともっとも密接に連動する設備です。感知器が作動すると、放送設備が自動で起動し、段階的に放送します。

  • 感知器発報放送:感知器の作動で自動的に流れる。「ただいま○階の火災感知器が作動しました。係員が確認しておりますので、次の放送にご注意ください」など
  • 火災放送:発信機が押されたとき、別の感知器も作動したとき、一定時間がたったとき、または係員の確認で「火事です」の放送に移る
  • 非火災報放送:確認の結果、火災でなかったときに手動で流す

放送設備を設けた建物では、自火報の地区音響装置(ベル)を設けないことができます。放送が自火報のベルの役割も担うためです。どんな建物に放送設備が必要かは「建築消防|非常警報設備の設置基準|自火報があっても放送設備が必要になる場合」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 感知器の作動で放送設備が自動起動
  • 感知器発報放送 → 火災放送(発信機・2つ目の感知器・時間経過・確認)
  • 放送設備があれば地区音響装置(ベル)は省略できる

非常放送との連動は「建築消防|自火報と非常放送の連動|感知器発報放送から火災放送への切替・区分鳴動・BGMカットのしくみ」で詳しく解説しています。


煙を止める連動 ― 排煙・防火戸・空調

感知器の作動から、感知器発報放送、排煙口の開放と排煙機の起動、防火戸とシャッターの閉鎖、空調換気の停止、エレベーターの避難階への移動、電気錠の解錠、火災放送までが順に動く様子の動く図解
動く図解:感知器が作動すると、設備が次々に動きます(順番はイメージ)。

火災で人命を奪う最大の原因はです。自火報まわりの連動の多くは、煙を「出す」「閉じ込める」「広げない」ためのものです。

設備 動き ポイント
排煙口・排煙機 排煙口が開き、排煙機が起動する 建築基準法排煙設備は手動開放装置が基本。煙感知器と連動する自動開放装置も使える。排煙機は排煙口の開放に伴って自動で作動する
防火戸・防火シャッター 閉鎖して火と煙を区画に閉じ込める 煙感知器(または熱感知器)と連動する。自火報とは別の専用感知器が一般的。閉鎖の表示を受信機・防災盤へ
空調・換気 運転を止める ダクトで煙を他の階や部屋に広げないため。どの範囲を止めるかは設計と所轄の指導で決める
防火ダンパー ダクト内で閉じる 温度ヒューズ式のほか、煙感知器と連動するものもある
建築基準法施行令第126条の3などをもとに一般的な内容を整理

排煙設備の予備電源は、停電しても排煙機などが動くように、蓄電池や自家用発電装置で確保します。排煙設備に代わる加圧防排煙設備については「建築消防|加圧防排煙設備と消防用水|排煙設備に代える設備と、消防隊が使う水源」で解説しています。

ここまでのポイント
  • 排煙口は手動が基本、煙感知器連動の自動開放も可。排煙機は排煙口の開放で自動起動
  • 防火戸・シャッターは専用感知器での閉鎖が一般的
  • 空調は止めて、ダクトで煙を広げない

排煙設備との連動は「建築消防|自火報と排煙設備の連動|排煙口の開放・排煙機の起動・手動開放装置と280℃ダンパー」で詳しく解説しています。

避難を助ける連動 ― エレベーター・電気錠・通報

設備 動き ポイント
エレベーター 火災時管制運転で避難階へ直行し、扉を開いて休止 行き先の呼びは取り消される。消防隊が使う非常用エレベーターは別の運転(消防運転)になる
電気錠・自動ドア 解錠・開放して避難経路を確保 停電時の動き(解錠か施錠か)もあわせて決める。セキュリティとの調整が要る
火災通報装置 消防機関へ自動で通報 病院や社会福祉施設など一部の用途では、自火報と連動して起動することが求められる
中央監視・管理室 火災の発生を移報 建物管理の画面や警備会社へ。どの区域かも送れると初動が早い
消火設備 スプリンクラーの流水検知や消火ポンプの起動を受信機へ入力 スプリンクラーの作動で火災放送につなげる設計もある
一般的な連動の内容

⚠️ ガス系消火は自火報で起動しない

不活性ガス消火設備や二酸化炭素消火設備は、人がいる場所にガスを放出すると危険なため、専用の感知器と起動装置で動かし、放出前の警報と遅延時間を設けます。自火報の火災信号で放出させることはありません(「建築消防|不活性ガス消火設備と二酸化炭素消火設備|令和5年4月施行の閉止弁・音声警報と遡及の範囲」参照)。

ここまでのポイント
  • エレベーターは火災時管制運転で避難階へ
  • 電気錠は解錠して避難経路を確保。停電時の動きも決める
  • 通報・中央監視へは移報。ガス系消火は専用感知器で起動


発電機とポンプの発停 ― 起動の合図は「停電」と「圧力」

停電の検出、非常用発電機の自動始動、40秒以内の電圧確立と切替、消火ポンプや排煙機など防災負荷への給電、復電後の切替、冷却運転と停止の流れを示した動く図解
動く図解:非常用発電機は、停電を合図に動き出し、復電したら冷却運転をしてから止まります。

「火災になったら発電機が回る」と思われがちですが、非常用発電機の起動の合図は停電です。火災で電線が焼けたり、電力会社の停電が起きたりしたときに、防災設備が止まらないように電気を送るのが役目です。

  • 起動:商用電源の電圧がなくなったことを検出して自動で始動します
  • 電圧確立:消防用設備等の非常電源となる自家発電設備は、停電から40秒以内に電圧を確立して電力を送れることが求められます(自家発電設備の基準)
  • 給電:消火ポンプ、スプリンクラーポンプ、排煙機、非常照明、非常用エレベーターなどの防災負荷へ送ります。火災信号で一般負荷を切り離す設計もあります
  • 停止:商用電源が戻ったら切り替え、無負荷で冷却運転をしてから停止するのが一般的です

消火ポンプ(屋内消火栓・スプリンクラーの加圧送水装置)の起動の合図は、配管の圧力低下や起動ボタンです。いったん起動したら自動では止まらず、制御盤で手動で止めるのが基本です。ポンプの起動は受信機や防災盤に表示します(「建築消防|スプリンクラー設備の設置基準|ヘッドの水平距離・省略できる部分と加圧送水装置の非常電源」参照)。発電機の仕様書・系統図の読み方は「非常用発電機・UPS・蓄電池の仕様書と系統図の読み方|kVA と kW・ATS・27・常時インバータ・バイパス・制御弁式・浮動充電を分解する【図面の見方・読み方⑥】」で解説しています。

ペン太ペン太
火災報知器が鳴ったら、発電機も自動で回るんですよね?
ハリタハリタ
そこがよくある勘違いです。発電機が見ているのは「停電したかどうか」。火災信号ではありません。だから、火災なのに停電していなければ発電機は回らないし、それで正常なんです。
ここまでのポイント
  • 非常用発電機は停電で起動。火災信号では起動しない
  • 消防用の非常電源は停電から40秒以内に電圧確立
  • 消火ポンプは圧力低下などで起動し、停止は制御盤で手動が基本


試験と点検 ― つないだら試す、止めたら戻す

連動表をつくる、総合連動試験、連動停止スイッチ、戻し忘れに注意の4つのポイントを示した図
連動は、試験で確かめて初めて信頼できます。点検後の戻し忘れがいちばん危険です。
  • 連動表:設計の段階で、感知器の警戒区域と、動かす設備の対応を一覧にします。電気・機械・建築・エレベーターの各担当で共有します
  • 総合連動試験:竣工前に、感知器を実際に作動させて、放送・排煙・防火戸・空調・エレベーター・電気錠が連動表どおりに動くか、受信機や防災盤の表示が正しいかを確かめます。消防検査でも確認されます
  • 連動停止:点検や工事のときは、受信機や防災盤で連動を止めて、誤って排煙口が開いたり放送が流れたりしないようにします
  • 戻し忘れに注意:連動停止のままでは、火災のときに設備が動きません。点検後の復帰を表示灯で確認し、記録に残します
ここまでのポイント
  • 連動表で「どの感知器が、どの設備を動かすか」を決めて共有
  • 竣工前に総合連動試験で全設備の動きと表示を確認
  • 点検時の連動停止は、終わったら必ず戻して確認

よくある質問

自動火災報知設備と連動する設備には何がありますか?

代表的なのは、非常放送(放送設備)、排煙口・排煙機、防火戸・防火シャッター、空調・換気の停止、エレベーターの火災時管制運転、電気錠の解錠、火災通報装置や中央監視への移報です。どの設備をどう連動させるかは、建物ごとに防災設備の連動表で決めます。

連動と移報の違いは何ですか?

連動は、火災信号を受けて相手の設備を実際に動かすこと(放送を起動する、空調を止める、ドアを開けるなど)です。移報は、火災が起きたという情報を他の盤やシステム(中央監視、管理室、警備会社など)に知らせることで、相手を直接動かすとは限りません。

非常放送は自火報とどう連動しますか?

感知器が作動すると、放送設備が自動的に起動して「○階の火災感知器が作動しました」という感知器発報放送を流します。発信機が押されたとき、別の感知器も作動したとき、一定時間がたったときなどに「火事です」という火災放送に移ります。火災でなかった場合は、確認のうえ手動で非火災報放送を流します。

非常用発電機は自火報の信号で起動しますか?

起動しません。非常用発電機は、商用電源の停電を検出して自動で始動します。消防用設備等の非常電源として使う自家発電設備は、停電から40秒以内に電圧を確立して電力を送れることが求められます。火災信号で一般の負荷を切り離し、防災設備に電力を回す設計はあります。

防火戸は自火報の感知器で閉まりますか?

防火戸や防火シャッターは、建築基準法にもとづく煙感知器や熱感知器と連動して閉鎖します。自火報とは別の専用感知器を使うのが一般的で、自火報の感知器と兼用する場合は条件があります。閉鎖したことは受信機や防災盤で確認できるようにします。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。