ショッピングセンターの通路の天井に、細長い箱が付いているのを見たことはありませんか。火災のときに、そこから防火シャッターが下りてきて、火と煙を区切ります。そのきっかけをつくるのが、天井の煙感知器です。この記事では、自動火災報知設備(自火報)と防火戸・防火シャッターの連動について、閉まる順番、感知器の置き方、人を守るしかけまで、図と告示で1つずつ丁寧に解説します。

結論

煙感知器が煙を見つけると、連動制御器が自動閉鎖装置に指令し、ふだん開いている防火戸・防火シャッターが閉まって防火区画ができあがります

  • 竪穴区画・異種用途区画は「煙で閉まる」+遮煙。面積区画・高層区画は煙か熱で閉まればよい
  • 感知器は防火設備から10m以内、壁から60cm以上、間に間仕切壁がないこと(告示2563号)
  • 閉まるときの運動エネルギーは10J以下。通路にはくぐり戸(幅75cm以上・高さ1.8m以上)
  • 連動制御器には予備電源。閉鎖は防災センターに表示する
煙感知器から連動制御器、自動閉鎖装置、防火戸・シャッターへと信号が流れ、閉鎖したことが防災センターに表示される連動の全体像と、予備電源・危害防止・くぐり戸のポイント
煙感知器・連動制御器・自動閉鎖装置・防火戸が、順番にバトンを渡して動きます。

役割 ― ふだん開いている「区画の扉」

大きな建物は、火や煙が一気に広がらないように、壁と床でいくつかの部屋のかたまりに区切られています。これが防火区画です。たとえるなら、船の防水隔壁です。1つの区画に水が入っても、隔壁の扉を閉めれば船全体は沈みません。

ところが、区画の壁には、通路や出入口のための開口がどうしても必要です。そこに付けるのが防火戸や防火シャッターです。閉め方には2種類あります。

閉め方 ふだんの状態 火災のとき 自火報との連動
常時閉鎖式 閉まっている。通るときだけ手で開き、手を離すと閉まる もともと閉まっている なし
随時閉鎖式 開いている(通行のじゃまにならない) 感知器などの信号で自動的に閉まる あり
昭和48年建設省告示第2563号をもとに作成

随時閉鎖式は、ふだんはマグネットのドアストッパーで開けておき、火災の合図でストッパーを外して閉める、というイメージです。このストッパーを外す役目が自動閉鎖装置、合図を出すのが煙感知器と連動制御器です。

面積区画・高層区画の防火設備は煙または熱で閉まればよく遮煙性能は求められないこと、竪穴区画・異種用途区画の防火設備は煙で閉まり遮煙性能が求められることを左右に比べた図
竪穴区画と異種用途区画は、煙の段階で閉めて、煙も止めます。

どのくらい早く閉めるかは、区画の種類で変わります。階段・吹抜け・エレベーターのシャフトのような竪穴は、煙が上の階へ一気にのぼる煙突になりやすい場所です。そのため、竪穴区画と異種用途区画の防火設備は、煙で閉まり、煙も通さない(遮煙性能)ことが求められます(建築基準法施行令112条19項2号)。

ここまでのポイント
  • 防火戸・防火シャッターは、防火区画の開口をふさぐ扉
  • 自火報と連動するのは、ふだん開いている随時閉鎖式
  • 竪穴区画・異種用途区画は、煙で閉まって煙も止める

閉まる順番 ― 煙を見つけてから閉まるまで

通路で火災が起き、煙感知器が作動し、連動制御器が閉鎖を指令し、防火シャッターが下りて火災側と避難側が区切られ、防災センターに表示されるまでを順に示した動く図解
動く図解:①感知器 → ②連動制御器 → ③自動閉鎖装置 → ④閉鎖 → ⑤表示の順に動きます。

随時閉鎖式の防火戸・防火シャッターは、次の順番で閉まります。昭和48年建設省告示第2563号では、随時閉鎖式の防火設備は煙感知器(または熱煙複合式感知器)・連動制御器・自動閉鎖装置・予備電源を備えたものとしています。

  1. 煙感知器が煙を見つける:防火戸の近くの天井で、煙を感知する
  2. 連動制御器が閉鎖を指令:感知器の信号を受けて、その感知器が受け持つ防火戸・シャッターに閉鎖の信号を送る
  3. 自動閉鎖装置が作動:戸を開けておいたストッパーやシャッターのブレーキを外す
  4. 防火戸・シャッターが閉まる:戸は自分の力(ドアクローザー)で、シャッターは自分の重さで閉まる
  5. 防災センターに表示:どの防火戸・シャッターが閉まったかを表示する

閉まる力は、モーターではなく、戸やシャッター自身の力を使うのが基本です。停電していても、ストッパーさえ外れれば閉まるからです。

ペン太ペン太
自火報の感知器があるのに、防火戸のために別の煙感知器を付けることがあるんですか?
ハリタハリタ
あります。防火戸の感知器は「防火戸から10m以内」のように、置く場所が防火戸を基準に決まっています。自火報の感知器は部屋全体を見張るように置くので、位置が合わないことが多いんです。自火報と一体の複合盤にして、条件を満たす感知器を共用することもありますが、どちらにするかは設計の段階で決めておきます。
ここまでのポイント
  • 感知器 → 連動制御器 → 自動閉鎖装置 → 閉鎖 → 表示の順
  • 閉める力は、戸やシャッター自身の力が基本
  • 随時閉鎖式には、感知器・連動制御器・自動閉鎖装置・予備電源がそろう


感知器の置き方 ― 10m以内、壁から60cm以上

防火戸から水平距離10m以内で壁から60cm以上離れた天井に感知器を付ける例と、間仕切壁の向こう側や吹出口の近くに付けた悪い例を示した図
感知器は、防火戸の近くで、煙がまっすぐ届く場所に付けます。

防火戸を閉めるための感知器は、その防火戸の前に煙が来たことを見つけるのが仕事です。そのため、置く場所が告示で決まっています。

決まり 内容 理由
検定品 消防法の検定に合格した感知器を使う 性能が確かめられた感知器で確実に感知するため
距離 防火設備からの水平距離が10m以内 防火戸の近くまで煙が来たことを見つけるため
さえぎらない 防火設備との間に間仕切壁などがない場所 壁の向こうの煙では、この防火戸は閉められないため
壁から 壁(はりを含む)から60cm以上離れた天井など 壁ぎわは煙がたまりにくく、感知が遅れるため
避ける場所 換気口の近くや、結露しやすい場所など 煙が吹き流されたり、誤作動したりしやすいため
昭和48年建設省告示第2563号 第1第2号をもとに作成

⚠️ 間仕切り変更で「10m」がくずれる

テナントの入れ替えで間仕切壁を足すと、感知器と防火戸のあいだが壁でさえぎられたり、防火戸から10mを超えたりすることがあります。内装改修の図面では、防火戸と連動用の感知器の位置関係を必ず確認します。

ここまでのポイント
  • 防火設備から10m以内、間に間仕切壁がないこと
  • 壁から60cm以上離れた天井に付ける
  • 換気口の近くなど、煙を感知しにくい場所は避ける

人を守るしかけ ― 当たったら止まる、くぐって逃げられる

下りてくる防火シャッターが下の荷物に当たって止まる様子と、閉まるときの運動エネルギーの上限、通路の防火シャッターに設けるくぐり戸の寸法を示した動く図解
動く図解:シャッターは、人や物に当たると止まります。

防火シャッターは、火と煙を止める頼もしい設備ですが、重い鉄の板が上から下りてきます。人が下にいたら大けがになりかねません。実際に、下りてきたシャッターに挟まれる事故が起きたことから、平成17年の告示改正で、閉まるときの安全の基準が加わりました。

しかけ 内容
閉まる力の上限 閉まるときの運動エネルギーを10J以下にする(質量×閉まる速さ²が20以下)
障害物感知装置 シャッターの下端が人や物に当たったら止まる。防火・防煙シャッターの標準の装備
くぐり戸 居室から地上に通じる廊下・階段などの通路では、幅75cm以上・高さ1.8m以上・下端が床から15cm以下の、手で開いて自動で閉まる戸を設ける
昭和48年建設省告示第2563号をもとに作成。数値は告示本文と製品仕様で確認する

くぐり戸は、たとえるなら城門に付いているくぐり門です。大きな門を閉めても、人が1人ずつ通れる小さな戸があれば、逃げ遅れた人も避難できます。防火シャッターの横に常時閉鎖式の防火戸があれば、くぐり戸がいらない場合もあります。

ここまでのポイント
  • 閉まるときの運動エネルギーは10J以下
  • 人や物に当たったら止まる障害物感知装置
  • 避難通路のシャッターには、くぐり戸(幅75cm以上・高さ1.8m以上)


自火報とのつなぎ方 ― 複合盤・表示・電源

防火戸・防火シャッターは建築基準法の設備、自火報は消防法の設備です。法律はちがっても、火災のときは同じ合図で動くので、設計ではひとつながりの設備として計画します。

項目 一般的な計画 確認すること
盤の構成 自火報の受信機と連動制御器を一体にした「複合盤」にすることが多い どの感知器でどの防火戸が閉まるか(連動表)
電源と配線 連動制御器の電源は、階ごとの主開閉器より電源側から分岐する。予備電源(蓄電池)を備える 一般の回路を切っても連動制御器が止まらないか
自動閉鎖装置 連動制御器からの信号で、電磁式などのレリーズが作動する 信号の電圧・方式が機器どうしで合っているか
表示 閉鎖したことを防災センター(総合操作盤)に表示する どの階のどの防火戸かがわかる表示になっているか
ほかの連動 排煙・空調停止と同じ合図で動くことが多い 排煙の防煙区画と、防火戸で区切る範囲が合っているか
昭和48年建設省告示第2563号と一般的な設計の例をもとに作成。建物ごとに設計図書で確認する

排煙設備との連動は「建築消防|自火報と排煙設備の連動|排煙口の開放・排煙機の起動・手動開放装置と280℃ダンパー」、防災センターの表示と操作は「建築消防|総合操作盤はいつ義務になるか|規則12条1項8号のイ・ロ・ハと2つの告示」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 自火報の受信機と連動制御器は、複合盤にすることが多い
  • 連動制御器は階ごとの主開閉器より電源側から分岐し、予備電源を備える
  • 閉鎖は防災センターに表示する

試験と点検 ― 閉まる・止まる・戻るを確かめる

閉まる防火設備、閉鎖障害、危害防止、くぐり戸、表示と復旧、停電時の6つの確認ポイントを並べた図
竣工前の連動試験と定期点検で確かめる6つのポイント。
  • 閉まる防火設備:各感知器を作動させて、正しい防火戸・シャッターが閉まるか
  • 閉鎖障害:戸の前やシャッターの下に、商品・台車・くさびなどが置かれていないか。点検でいちばん多い指摘です
  • 危害防止:障害物に当たって止まるか。閉まる速さ
  • くぐり戸:手で開くか、自動で閉まるか、前がふさがれていないか
  • 表示と復旧:防災センターに閉鎖が表示されるか。元どおり開けて戻せるか
  • 停電時:商用電源を切っても、予備電源で閉鎖できるか

📘 防火設備には法定の定期検査がある

平成28年から、随時閉鎖式の防火戸・防火シャッターなどは、建築基準法第12条の定期検査の対象になりました。防火設備検査員などの資格者が、おおむね6か月〜1年ごとに、特定行政庁が定める時期に検査して報告します。自火報の点検(消防法)とは別の検査なので、両方の時期を管理しておきます。

試験のあとは、閉まった防火戸・シャッターを必ず元に戻し、点検のために切った連動を復旧します。戻したことは記録に残します。

ここまでのポイント
  • 感知器ごとに、正しい防火戸・シャッターが閉まるか
  • 閉鎖障害と危害防止は、毎回の点検で確認
  • 防火設備の定期検査(建築基準法)と、自火報の点検(消防法)は別


よくある質問

防火戸・防火シャッターは、どのように自火報と連動しますか?

煙感知器が煙を見つけると、連動制御器が自動閉鎖装置に閉鎖の指令を出し、ふだん開いている防火戸や防火シャッターが閉まります。連動制御器は自火報の受信機と一体の複合盤にすることも多く、閉鎖したことは防災センターに表示されます。

常時閉鎖式と随時閉鎖式の違いは何ですか?

常時閉鎖式は、ふだんから閉まっていて、人が通るときだけ手で開き、手を離すと自動で閉まる防火戸です。随時閉鎖式は、ふだんは開いていて、火災のときに感知器などの信号で自動的に閉まる防火戸や防火シャッターです。自火報と連動するのは随時閉鎖式です。

防火戸を閉めるための煙感知器は、どこに付けますか?

昭和48年建設省告示第2563号では、防火設備からの水平距離が10m以内で、防火設備との間に間仕切壁などがない場所の、壁から60cm以上離れた天井などに設けるとしています。感知器は消防法の検定に合格したものを使い、換気口の近くなど煙を感知しにくい場所は避けます。

熱で閉まる防火戸と、煙で閉まる防火戸の違いは?

面積区画・高層区画に使う防火設備(建築基準法施行令112条19項1号)は、煙または温度の急上昇のどちらかで自動的に閉まればよいとされています。竪穴区画・異種用途区画に使う防火設備(同2号)は、煙で自動的に閉まり、遮煙性能も持つことが求められます。

防火シャッターの危害防止装置とは何ですか?

閉まっていくシャッターが人に当たってけがをしないように、閉まるときの力や速さを抑え、人や物に当たったら止まるようにするしかけです。平成17年の告示改正で、閉鎖作動時の運動エネルギーを10J以下にするなどの基準が設けられました。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。