【単線結線図の見方⑫】非常用発電機と切替 ― 先に商用を切ってから入れる順番とインタロックで読み、非常用母線を分ける理由を知る
停電した夜、ビルの廊下は真っ暗になりません。天井の非常照明がすぐにつき、少しすると地下の発電機がうなりを上げて、消火ポンプや非常用エレベーターに電気を送り始めます。ふだんは眠っているのに、いざというときに動かなければ人が逃げられない。それが非常用発電機です。最終回の第12回は、単線結線図で点線に囲まれた発電機と、商用からの切替の読み方です。
結論
切替は先に商用を切り、発電機の電圧がそろってからつなぐ順番です。商用と発電機はインタロックで同時に入らないようにし、図面では非常用母線と非常用負荷を分けて描きます。
停電したら ― すぐは蓄電池、40秒以内に発電機
停電すると、UVR(不足電圧継電器、器具番号27)が電圧の低下を見つけ、発電機に始動の合図を出します。ただし発電機は、始動してから電圧が安定するまでに時間がかかります。その間にも止められない非常照明や制御電源は、蓄電池がつなぎます。
| 方式 | 切り替わる速さ | もつ時間 | おもな用途 |
|---|---|---|---|
| 蓄電池・UPS | 瞬時 | 短い | 非常照明・サーバ・遮断器の制御電源 |
| 非常用発電機 | 始動から電圧確立まで数十秒(消防用は一般に40秒以内) | 長い(燃料しだい) | 消火ポンプ・非常用EV・排煙機 |
| 太陽光+蓄電池 | 構成による | 構成による | 部分的なバックアップ |
- UVR(27)が停電を見つける
- すぐ要る分は蓄電池
- 発電機は40秒以内が目安
切替は「先に切ってから入れる」
停電から給電までの順番は決まっています。いちばん大事なのは、発電機をつなぐ前に商用側を切り離すことです。
| 順番 | 動き | ねらい |
|---|---|---|
| ① | 停電し、UVR(27)が検出 | 発電機に始動の合図 |
| ② | 商用側の遮断器52-1を開く | 構外と切り離す |
| ③ | 発電機を始動し、電圧と周波数がそろうまで待つ | 不安定な電気を送らない |
| ④ | 発電機側の遮断器52-2を投入 | 非常用母線へ給電 |
| 復電 | 一定時間待ってから52-2を開き、52-1を投入 | すぐ戻すと再停電のことがある |
- 先に商用を切る
- 電圧がそろってから入れる
- 復電は待ってから逆の順
インタロック ― 同時に入れない
もし商用側の遮断器が入ったまま発電機をつなぐと、発電機の電気が停電中の配電線へ逆に流れ出します。これが逆充電です。電力会社の作業員は「停電しているはず」の電線で作業しているので、感電するおそれがあります。
守るのは構外の人
商用側の52-1と発電機側の52-2は、片方しか入らないようにします。機械的な鎖錠と電気的な鎖錠(相手のb接点)の二重にするのが基本です。単線結線図では注記で示され、動きの中身は展開接続図に描かれます。
太陽光などで系統連系している場合も同じ考え方です。電力会社側が停電しているのに発電を続ける単独運転を検出したら、ただちに系統から切り離し(解列)ます。連系のためにOVR(59)・UVR(27)・OFR/UFR・RPRなどの継電器が加わります。くわしくは設計マニュアル⑬ 非常用発電設備と系統連系で扱っています。
- 同時投入は逆充電
- 52-1と52-2は片方だけ
- 連系は単独運転で解列
図面では「点線のG」と「非常用母線」を読む
| 図面の表記 | 読み方 |
|---|---|
| 点線の枠とG | 非常用発電設備。容量(kVA)・電圧・燃料(ディーゼル・ガス)を読む |
| 52-2 | 発電機側の遮断器。商用側の52-1とセットでインタロック |
| 切替開閉器(ATS など) | 遮断器2台の代わりに切替用の開閉器を使う方式 |
| 非常用母線 | 一般の母線と分けて描く |
| 「非常」とつく負荷名称 | 消火ポンプ・非常用EV・排煙機・非常照明など |
- 点線の枠で区別
- 非常用母線を分ける
- 負荷名称に「非常」
連載のふり返り ― 12回で1枚の図面が読める
単線結線図は、電柱側から上から下へ、引込・受電・変圧・配電・備えの順にたどれば読めます。12回の内容を1枚にまとめました。
| 回 | テーマ | 読みどころ |
|---|---|---|
| ① | 全体の流れ | 上から下へ、4つのまとまりで読む |
| ② | 引込とPAS/UGS | 点線の責任分界点から読む |
| ③ | VCTと電力量計 | 小さくして測り、乗率で戻す |
| ④ | DS・LA | 遮断器が先、DSはあと |
| ⑤ | 主遮断装置 | CB形とPF・S形 |
| ⑥ | VT・CT・ZCT・ZPD | 直列・貫通か母線に並列か |
| ⑦ | 保護継電器 | 器具番号と保護協調 |
| ⑧ | 変圧器バンク | 4点セットと動力・電灯 |
| ⑨ | SC・SR | 開閉器→SR→SCの順 |
| ⑩ | 低圧配電 | 遮断器・幹線・盤名 |
| ⑪ | 接地 | A種〜D種とB種の役目 |
| ⑫ | 非常用発電機と切替 | 先に切ってから入れる |
よくある読み違い(第12回)
- 発電機を先につなぐと思う:必ず商用側を先に切ります。
- インタロックを省略できると思う:逆充電で構外の人を危険にさらします。
- 非常用母線に一般負荷をつなぐ:いざというときに容量不足になります。
- 発電機だけで瞬時に切り替わると思う:電圧確立まで時間がかかるので、蓄電池と組み合わせます。
- 上から下へたどる
- 自分を守り、構外に迷惑をかけない
- 気になる回から読み返す
よくある質問
非常用発電機は停電してから何秒で電気を送りますか?
消防用設備の非常電源として使う自家発電設備は、停電してから電圧が確立して電気を送るまでの時間に上限があり、一般に40秒以内とされています。その間に必要な非常照明などは、蓄電池でつなぎます。実際の要件は物件の用途と規模に応じて法令と所轄消防で確かめます。
停電したとき、商用を切るのと発電機をつなぐのはどちらが先ですか?
商用側の遮断器を先に開きます。UVR(27)が停電を検出し、商用側の52-1を開き、発電機を始動して電圧と周波数がそろってから、発電機側の52-2を投入します。この順番が崩れると逆充電が起きます。
逆充電とは何ですか?
発電機の電気が、停電している電力会社の配電線へ逆に流れ出すことです。停電中の電線で作業している人が感電するおそれがあります。商用と発電機が同時につながらないよう、インタロックで防ぎます。
インタロックは図面でどう描かれますか?
商用側の遮断器52-1と発電機側の52-2の間に、同時に入らないことを示す注記や、相手のb接点を使った回路が描かれます。機械的な鎖錠と電気的な鎖錠の二重にするのが基本で、くわしい動きは展開接続図で確かめます。
非常用母線と一般の母線を分けるのはなぜですか?
法令で求められる非常電源の回路に一般の負荷がつながると、いざというときに発電機の容量が足りなくなるからです。非常用の負荷は、盤も回路も名称も「非常」と明示して分けて描きます。
太陽光発電がある場合、何が変わりますか?
系統連系になり、電力会社の配電線が停電しているのに発電を続ける単独運転を防ぐ必要があります。単独運転を検出したらすぐに切り離し(解列)、OVR・UVR・OFR/UFR・RPRなどの継電器が加わります。整定値は電力会社との協議で決まります。
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