分電盤の設計|動力盤主幹の設置基準と有無の判断方法について詳しく解説
動力盤の主幹(主開閉器)は、内線規程 1355-1〔注1〕で「特に必要がある場合以外は取り付けなくてもよい」とされています。ただし、これは「どの盤でも外してよい」という意味ではありません。引込口装置になる場合と、幹線が途中で分岐している場合は別です。この記事では、要否の判断を図で押さえたうえで、根拠になっている条文と、省略したときに残る手間までを整理します。
結論
見るのは分かれ道があるかと引込口かどうかの2つだけです。
- 供給元と1対1で送っているだけなら、主幹はいらない
- 幹線が途中で分岐して他の盤へ行くなら、分岐点に過電流遮断器が要る(=盤の主幹)
- ただし電技解釈148条の緩和(55%/8m・35%/3m)に当てはまれば省ける
- その盤が引込口装置になるなら、〔注1〕は使えない。主幹は必ず付ける
- 省略できても、点検のたびに供給元まで戻ることになる。そこまで含めて決める
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まず結論 ― 分かれ道があるかどうか
細かい条文の前に、判断の骨格から見ます。供給元の盤から、その動力盤へ1本で送っているだけなら主幹は要りません。途中で分かれて他の盤にも行っているなら要ります。
1対1なら、供給元のブレーカーを切れば、止まるのはその動力盤だけです。幹線もそのブレーカーで守られています。だから盤の入口にもう一つ置かなくても成り立ちます。
ペン太
ハリタ- 供給元と1対1で送っているなら、主幹は原則いらない
- 途中で分岐して他の盤へ行くなら、分岐点に遮断器が要る
- 1対1なら供給元のブレーカーが幹線の保護も兼ねている
- 主幹は「その盤だけを止める」ための開閉器でもある
根拠になっている4つの文
「主幹はいらない」の根拠としてよく引かれるのが内線規程 1355-1の〔注1〕です。ただし、これだけを読むと判断を外します。前後に3つの文があるからです。
内線規程 1355-1(要旨)と〔注1〕
低圧開閉器は、低圧電路中、次の箇所に施設すること。
- 負荷電流を通じたり、止めたりする必要のある箇所
- 引込口・その他故障、点検、測定、修理などに際して電路を閉鎖する必要がある箇所
- ヒューズの電源側(この場合の開閉器は、ヒューズに近接して設置すること)
〔注1〕分電盤の主開閉器(引込口装置になるものを除く。)は、特に必要がある場合以外は、取り付けなくてもよい。
読みどころは2つです。ひとつは「引込口装置になるものを除く」という括弧。もうひとつが「特に必要がある場合」という言い回しです。この2つが、次の章と、その次の章になります。
- 〔注1〕は内線規程(民間規格)の但し書き
- 括弧の「引込口装置になるものを除く」が最初の関門
- 「特に必要がある場合」は、電技解釈148条の分岐の話につながる
- 〔注1〕だけを読むと、幹線の保護の話が抜け落ちる
「特に必要がある場合」=幹線を分岐するとき
幹線から別の幹線を分岐するときは、その分岐点に、細いほうの幹線を守る過電流遮断器を施設するのが原則です(電技解釈 第148条)。この遮断器が、実際には動力盤の主幹になります。
⚠「規程で省略できる」と「保護が成立している」は別
内線規程の〔注1〕は、盤の主開閉器という部品を付けなくてもよいと言っています。いっぽう電技解釈148条は、分岐した細い幹線を守れと言っています。
1対1で送っているなら、供給元のブレーカーが幹線を守っているので両方とも成立します。しかし途中で分岐しているなら、緩和条件のどれかに当てはまらない限り、分岐点に遮断器が必要です。省略の判断は、ここまで見てから決めます。
幹線の太さと遮断器の関係は幹線の簡略計算とブレーカーとケーブルの選定で扱っています。
出典:内線規程(JEAC 8001)1355-1、電気設備の技術基準の解釈 第147条・第148条・第149条。条番号や数値は改定で変わることがあります。適用にあたっては最新版をご確認ください。
- 幹線から幹線を分岐するときは、分岐点に過電流遮断器が要る(解釈148条)
- 緩和は3つ。許容電流55%以上/8m以下で35%以上/3m以下でその先に幹線をつながない
- どれにも当てはまらなければ、分岐点の遮断器=盤の主幹が必要
- 「規程で省略できる」と「幹線の保護が成立している」は別の話
引込口装置になるなら、省略できない
〔注1〕の括弧に戻ります。引込口装置になるものは対象外です。その盤が引込口にあたるなら、主幹は必ず付けます。
もとになっているのは電技解釈 第147条です。低圧屋内電路には、引込口に近く、容易に開閉できる箇所に開閉器を施設するのが原則で、省略できるのは次の3つがそろったときだけです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 使用電圧 | 300 V 以下であること |
| 保護 | 20 A 以下の配線用遮断器(または15 A 以下のヒューズ)で保護されていること |
| 電路の長さ | 他の屋内電路につながる長さ15 m 以下の電路から供給を受けていること |
- 引込口装置になる開閉器は、〔注1〕の対象外
- 電技解釈147条は、引込口に近く容易に開閉できる箇所に開閉器を求めている
- 省略できるのは300V以下・20A以下で保護・15m以下の3つがそろったときだけ
- 動力盤がこの3つを満たすことはまずない
省略したときに、あとから効いてくること
ここからは規程の話ではなく、現場の話です。省略できる=省略してよい、ではありません。省略すると、その盤を止める操作が供給元まで戻ります。
💡 テナントや24時間稼働の設備では、まず主幹を付ける
同じ幹線に複数のテナントや、止められない設備がぶら下がっているときは、1対1でも主幹を付けておくほうが動かしやすいことがあります。盤の点検・改修のたびに供給元を切るのは、現実には調整が難しいからです。
機器側で切る手段については手元開閉器の設置基準もあわせてご覧ください。
ペン太
ハリタ- 省略すると、その盤を止めるのに供給元まで戻ることになる
- 同じ幹線の他の負荷も一緒に止まる
- 盤のそばで開路できないので、施錠・表示の措置も離れた盤で取ることになる
- 増設・改修のときに切り離せない
- 止められない設備が混ざっているなら、1対1でも主幹を付けておく
付けるときの定格と、発注前のチェック
主幹を付けると決めたら、定格は下を負荷電流、上を幹線ケーブルの許容電流で挟みます。
- 下限は負荷電流、上限は幹線ケーブルの許容電流
- 上位の遮断器と選択遮断できる組合せにする
- 三相3線なら3P3E。素子数を回路に合わせる
- 省略したときは、その理由と根拠を図面の注記に残す
よくある質問
動力盤に主幹は必ず必要ですか?
いいえ。内線規程 1355-1〔注1〕では、分電盤の主開閉器(引込口装置になるものを除く)は、特に必要がある場合以外は取り付けなくてもよいとされています。ただし引込口装置になる場合と、幹線を分岐している場合は別です。
「特に必要がある場合」とは何ですか?
幹線が途中で分岐して他の盤へも供給している場合が代表例です。電技解釈148条により、分岐点には細いほうの幹線を守る過電流遮断器が必要で、それが実際には盤の主幹になります。
分岐していても主幹を省略できるケースはありますか?
あります。電技解釈148条の緩和として、①細い幹線の許容電流が上位の遮断器定格の55%以上、②長さ8m以下かつ35%以上、③長さ3m以下でその先に他の幹線をつながない、のいずれかに当てはまる場合です。
その盤が引込口装置になる場合はどうなりますか?
省略できません。〔注1〕は「引込口装置になるものを除く」と明記しています。電技解釈147条でも、引込口に近く容易に開閉できる箇所に開閉器を施設することが求められています。
引込口の開閉器を省略できる条件はありますか?
使用電圧300V以下、20A以下の配線用遮断器(または15A以下のヒューズ)で保護されている、他の屋内電路につながる長さ15m以下の電路から供給を受けている、の3つがそろったときだけです。動力盤がこれに当てはまることはほとんどありません。
主幹の有無は盤の大きさで決まりますか?
決まりません。判断の軸は、引込口装置になるかどうかと、幹線が分岐しているかどうかです。回路数や盤の寸法とは別の話です。
省略するとどんな不便がありますか?
その盤を止めるのに供給元の遮断器を切ることになり、同じ幹線の他の負荷も止まります。盤のそばで開路できないため、施錠・表示・監視人の措置も離れた盤で取ることになります。
主幹の定格はどう決めますか?
下限は負荷電流、上限は幹線ケーブルの許容電流です。この間に入る定格を選び、上位の遮断器と選択遮断できる組合せにします。三相3線なら3P3Eが基本です。
ヒューズの電源側に開閉器を付けるときの注意はありますか?
ヒューズに近接して設置する必要があります。ただし、分岐回路用過電流遮断器以降のヒューズがプラグヒューズのように、取替えの際に充電部へ触れるおそれがないものであれば、この開閉器は省略できます。
省略したことを図面に残す必要はありますか?
残しておくことをおすすめします。改修のときに「なぜ主幹がないのか」が分からないと、判断のやり直しになります。1対1供給であること、緩和条件のどれで成立しているかを注記に一行書いておけば足ります。
まとめ ― 取り違えやすいところと手順
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| 動力盤には必ず主幹が要る | 引込口装置になるものを除き、特に必要がある場合以外は取り付けなくてもよい |
| 〔注1〕があるからどの盤でも省略できる | 引込口装置になる盤と、幹線を分岐する盤は対象外 |
| 主幹の要否は盤の大きさや回路数で決まる | 引込口かどうかと、幹線が分岐しているかどうかで決まる |
| 分岐していても規程で省略できる | 解釈148条の緩和(55%/8m・35%/3m)に当てはまるかを確認する |
| 省略できるなら省略したほうがよい | 点検のたびに供給元を切ることになる。止められない負荷がないか見る |
| ヒューズの電源側なら開閉器の位置は問わない | ヒューズに近接して設置する |
| なんとなく省略してよい | 根拠を図面の注記に残す。改修時の判断がやり直しにならない |
| 手順 | やること | 見るところ |
|---|---|---|
| 1|引込口 | その盤が引込口装置になるか確認する | なるなら主幹は必ず付ける |
| 2|系統図 | 幹線が途中で分岐していないか見る | 分かれ道の有無 |
| 3|緩和条件 | 分岐しているなら148条の3条件を確認する | 55%/8m・35%/3m |
| 4|保守 | その盤だけを止められるか考える | 同じ幹線の他の負荷 |
| 5|定格 | 負荷電流と幹線の許容電流で挟む | 上位との保護協調、3P3E |
| 6|図面 | 要否と根拠を書き残す | 系統図・機器表・注記 |
📘 あわせて確認したいこと
この記事は、連載「幹線設備の設計マニュアル」の第6回 分電盤へ落とすの補足解説です。計画全体の流れは設計・施工マニュアル(目次)から、動力盤の組み立て方は動力盤の構成でご覧いただけます。
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