ケーブルのカタログの「交流導体抵抗」や、太い幹線・バスダクト・高調波の話に出てくる「表皮効果」。用語集では一言で説明されますが、なぜ表面に集まるのか、どのくらいの太さから効いてくるのか、設計でどう扱うのかまでは分かりにくい言葉です。この記事は、この3つだけにしぼって説明します。

ペン太ペン太
ケーブルのカタログに「直流導体抵抗」と「交流導体抵抗」があって、値がちがうんです。なぜですか?
ハリタハリタ
表皮効果のせいだよ。交流は電線の表面に集まって流れるから、抵抗が少し大きくなるんだ。
はじめての方へ:まず言葉の意味
直流は電線の断面全体をまんべんなく流れるのに、交流は外側に寄って流れ、周波数が高いほど強くなり、真ん中がむだになって交流の抵抗が増える、という表皮効果の考え方を3コマで示す動く図解
ひとことで言うと
「表皮効果」は、交流の電流が電線の表面の近くに集まって流れる現象です。電線の真ん中が使われにくくなり、交流の抵抗が大きくなります。
読み方
ひょうひこうか/スキンエフェクト
どこで出てくる?
ケーブルのカタログの交流導体抵抗、太い幹線やバスダクトの設計、高調波の対策、電験の理論科目。

結論

表皮効果は、交流の電流が電線の表面の近くに集まって流れる現象です。銅の表皮深さは50Hzで約9.3mm、60Hzで約8.5mmで、周波数が高いほど浅くなります。太い電線や高調波の多い回路では交流の抵抗が大きくなるので、並列にする・平らな導体にする・交流導体抵抗で計算することで対応します。

  • 交流は、変わり続ける磁界にじゃまされて、真ん中を流れにくい
  • 表皮深さ:50Hz 約9.3mm・250Hz 約4.2mm(銅)
  • 半径が表皮深さに近い太い電線ほど、影響が大きい
  • 計算は直流抵抗ではなく、交流導体抵抗で
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。

この記事に出てくる言葉

読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。

言葉 読み方 やさしい説明
直流・交流 ちょくりゅう・こうりゅう 直流は向きが変わらない電気、交流は向きが周期的に変わる電気。
周波数 しゅうはすう 交流の向きが1秒間に何回変わるか。東日本は50Hz、西日本は60Hz。
導体 どうたい 電気を通す部分。電線では銅やアルミの芯。
表皮深さ ひょうひふかさ 電流の濃さが表面の約37%まで下がる深さ。周波数が高いほど浅い。
交流導体抵抗 こうりゅうどうたいていこう 交流を流したときの電線の抵抗。表皮効果などで直流より大きい。
高調波 こうちょうは ふつうの50・60Hzの何倍もの周波数の成分。インバーターなどが出す。
近接効果 きんせつこうか 近くの電線の影響で、電流が片側に寄る現象。
sq(スケア) スケア 電線の太さを表す単位。断面積(mm²)のこと。
先に理解しておきたいこと

「表皮効果」を理解するために、土台になる考え方を3つだけ押さえておきましょう。

1

電流が流れると、まわりに磁界ができる

電線に電流が流れると、そのまわりと電線の中に磁界ができます。交流では電流の向きが変わり続けるので、磁界も変わり続けます。

2

変わる磁界は、電流をじゃまする

変わり続ける磁界は、電線の中に、もとの電流を打ち消す向きの電流を生みます。この打ち消しは、電線の真ん中ほど強く効きます。

3

だから、電流は表面に追いやられる

真ん中ほど電流が流れにくくなり、結果として電流は表面の近くに集まります。周波数が高いほど、この働きは強くなります。

なぜ表面に集まる? ― 変わり続ける磁界が、真ん中をじゃまする

ペン太ペン太
電線の中の電気が、表面に集まるんですか?
ハリタハリタ
そうさ。交流は向きが変わり続けるから、電線の中にできる磁界が、真ん中の電流をじゃまするんだ。

直流は、電線の断面全体をまんべんなく流れます。ところが交流では、電流の向きが変わり続けるので、電線の中の磁界も変わり続けます。この磁界が、電線の真ん中ほど電流を打ち消すように働くため、電流は表面の近くに集まって流れます。これが表皮効果です。

直流まんべんなく
交流外側に寄る
表皮深さ50Hzで約9.3mm
結果交流の抵抗が増える

電流が通る部分が実質的にせまくなるので、同じ電線でも交流の抵抗は直流の抵抗より大きくなります。表面から、電流の濃さが表面の約37%まで下がる深さを表皮深さといいます。

たとえるなら
表皮効果は、満員電車の「ドア付近」
満員電車で、人がドアの近くにばかり集まって、車両の真ん中が空いていることがありますよね。交流の電流も、電線の表面付近に集まって、真ん中があまり使われません。せっかくの太さが、全部は生かせないのです。
ここに注意!
「電線を太くすれば、太くしたぶんだけ抵抗が下がる」とは限りません。
交流では、太くしても真ん中の部分が電流にあまり使われないので、抵抗は面積ほどには下がりません。とても太い電線では、細い電線を並列にしたほうが効率がよいことがあります。
ここまでのポイント
  • 交流は、電線の表面の近くに集まって流れる
  • 真ん中が使われにくく、交流の抵抗が大きくなる
  • 表皮深さ:電流の濃さが約37%まで下がる深さ

どのくらいで効いてくる? ― 周波数と電線の太さ

ペン太ペン太
ふつうの電線でも気にしないといけないんですか?
ハリタハリタ
細い電線ならほとんど関係ないよ。太い幹線や、高調波が多い回路で効いてくるんだ。

表皮深さは、周波数が高いほど浅くなります。銅の表皮深さを計算すると、次のようになります。

50Hz9.3mm
60Hz8.5mm
250Hz4.2mm
1kHz2.1mm
周波数 表皮深さ(銅) どんな電流
50Hz 約9.3mm 東日本の電源
60Hz 約8.5mm 西日本の電源
250Hz 約4.2mm 50Hz系の第5高調波
1kHz 約2.1mm インバーターなどの高い周波数の成分
10kHz 約0.66mm さらに高い周波数

電線の半径が表皮深さよりずっと小さければ、影響はほとんどありません。たとえば100sqの半径は約5.6mm、325sqの半径は約10mmで、太い幹線になるほど50・60Hzでも影響が出てきます。高調波を多く含む回路では、表皮深さが浅くなるので、ふつうの太さでも抵抗が増えて発熱が大きくなります。

たとえるなら
周波数が上がると、ドアから離れなくなる
電車がゆれるほど(周波数が高いほど)、人はドアの手すりにしがみついて、奥へ行かなくなるようなものです。高調波のように周波数が高い電流ほど、表面のごく近くにしか流れません。
ここに注意!
「50Hzだから、表皮効果は関係ない」ではありません。
インバーターなどが出す高調波は、50Hzの何倍もの周波数の電流です。第5高調波(250Hz)なら表皮深さは約4.2mmで、ふつうの太さの幹線でも抵抗が増え、発熱の原因になります。
ここまでのポイント
  • 表皮深さは周波数が高いほど浅い(周波数4倍で半分)
  • 50Hzで約9.3mm、第5高調波で約4.2mm
  • 太い幹線や高調波の多い回路で効いてくる


設計での扱い ― 並列・平らな導体・交流導体抵抗

ペン太ペン太
じゃあ、太い幹線はどうしているんですか?
ハリタハリタ
細いケーブルを何本か並列にしたり、バスダクトを薄い平らな形にしたりして、表面を増やしているのさ。

同じ断面積でも、太い1本より細い何本かに分けたほうが、表面が増えて電流が流れやすくなります。そのため、大きな幹線ではケーブルを並列にし、バスダクトは導体を薄い平らな形にしています。

並列細い何本かに分ける
バスダクト薄い平らな導体
高調波減らす
計算交流導体抵抗を使う

計算では、メーカーの資料にある交流導体抵抗(50Hz・60Hz)を使います。許容電流の表にも、表皮効果や近くの電線どうしの影響(近接効果)が含まれています。幹線の太さの考え方は幹線設備の設計マニュアル③で説明しています。

ここに注意!
「直流抵抗で計算すれば十分」ではありません。
太い幹線では、交流導体抵抗は直流抵抗より大きくなります。電圧降下や発熱を計算するときは、メーカーの資料の交流導体抵抗(50Hz・60Hz)を使います。
ここまでのポイント
  • 太い1本より、細い何本かの並列
  • バスダクトは薄い平らな導体
  • 計算は交流導体抵抗で。高調波も減らす

まとめ|結論

結論

表皮効果は、交流の電流が電線の表面の近くに集まって流れる現象で、交流の抵抗を大きくします。銅の表皮深さは50Hzで約9.3mm、周波数が高いほど浅くなります。太い幹線や高調波の多い回路では、並列や平らな導体、交流導体抵抗での計算で対応します。

太い幹線を設計するときは、この順で確かめます。

  1. 電線の太さ(半径)が、表皮深さに近くないか
  2. インバーターなど、高調波を出す負荷が多くないか
  3. 電圧降下・発熱の計算に、交流導体抵抗を使っているか
  4. 太い1本ではなく、並列やバスダクトにしたほうがよくないか


よくある質問

表皮効果とは何ですか?

交流の電流が、電線の中心よりも表面の近くに集まって流れる現象です。周波数が高いほど、また電線が太いほど目立ちます。電流が通る断面が実質的にせまくなるので、交流の抵抗が直流の抵抗より大きくなります。

表皮深さとは何ですか?

電流の濃さが表面の約37%(1/e)まで下がる深さです。銅の場合、計算で50Hzは約9.3mm、60Hzは約8.5mm、250Hz(第5高調波)は約4.2mmになります。

ふつうの電線でも、表皮効果は気にする必要がありますか?

細い電線では、表皮深さより半径が小さいので、ほとんど影響はありません。半径が表皮深さに近づく太い電線(目安として数百sq)や、バスダクト、高調波を多く含む回路で影響が出てきます。

表皮効果は、どうやって設計に入っていますか?

メーカーの資料にある交流導体抵抗や、許容電流の表には、表皮効果や近接効果の影響が含まれています。電圧降下や発熱を計算するときは、直流抵抗ではなく交流導体抵抗を使います。

近接効果とは何ですか?

近くにある電線どうしの磁界の影響で、電流が電線の片側に寄って流れる現象です。表皮効果と同じく、交流の抵抗を大きくします。電線を近づけて並べる幹線やバスダクトで影響が出ます。

次に読むならこれ【造営材】とは?造営物との違い・「造営材に沿って」「造営材を貫通しない」の読み方と支持・離隔の決まり電気設計の解説
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。