📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。今回から、新人講座に「積算編」という新しいトラックが加わります。図面を読めるようになった次にやってくる仕事、「図面を数量に変える」という作業を、6回かけて掘り下げていきます。

第1回のテーマは「部位別の拾い方」第21回「拾い出しのきほん」では拾いの手順(準備→区切る→数える→測る→まとめる)を学びました。今回はその一段下、「器具・配線・盤・弱電で、そもそも数え方が違う」という話です。

ペンタ
はりた先輩、拾い出しの手順は分かったんですけど…実際に図面を前にすると、どこから手を付けていいか分からなくて固まっちゃいます。
はりた
それは手順の問題じゃなくて、「何を、何で数えるか」を決めていないから固まってるんだ。器具は「個」、配線は「m」、盤は「面」。部位が変われば単位が変わる。ここが決まっていないと、手は動かないよ。
ペンタ
単位…考えたことなかったです。とりあえず全部数えればいいのかと。
はりた
全部数える、が一番危ない。目についた順に拾うと、必ず漏れる。今日は「部位ごとに分けて拾う」というやり方を身につけよう。

拾いが崩れる本当の原因は「単位」にある

新人が拾い出しで失敗するとき、その原因はたいてい「数え間違い」ではありません。数え始める前に、単位を決めていないことです。

たとえば配線。図面を見て「この線とこの線とこの線…全部で12本」と数えてしまうと、その瞬間に長さの情報が消えます。2mの線も30mの線も、同じ「1本」になってしまう。配線は本数ではなく長さ(m)で拾うもの、という前提が抜けているとこうなります。

部位別の拾い方 ― 部位ごとの単位と数え方、落としやすい分をまとめたマトリクス
図1:部位ごとに「単位」「何を1つと数えるか」「落としやすい分」が変わる
ペンタ
うわ、単位が4種類もある…。しかも弱電だけ「個+式」って2つ書いてありますね。
はりた
そう、弱電は2階建てなんだ。スピーカや情報コンセントみたいな端末は「個」で数える。でもそれを鳴らす親機や、設定・調整の手間は端末数では表せないから「式」で別に出す。端末だけ数えて出すと、必ず金額が足りなくなる。
ペンタ
なるほど…。盤の「面」っていうのも初めて聞きました。
はりた
分電盤は「1面、2面」と数える。「1台」じゃないんだ。ここが混ざると、集計したときに「盤 2台」と「盤 1面」が別の品目として2行に割れてしまう。単位はチームで統一しておくものだよ。

部位① 器具 ― 「記号+添字」が同じものだけを1グループにする

照明・スイッチ・コンセントといった器具は「個」で数えます。ここでのポイントは、同じ記号でも添字が違えば別の品目だということです。

コンセントの記号はどれも似ていますが、接地極付(ET)、抜け止め(LK)、防雨形(WP)では品物も単価も違います。「コンセント 20個」とまとめてしまうと、後で単価を入れる段階で必ず戻ってくることになります。

ペンタ
じゃあ添字ごとに列を分けて数えるんですね。数える回数が増えて大変そう…。
はりた
増えないよ。1回まわりながら、記号ごとの欄に「正」の字を書いていくだけ。大事なのは、数え終わった器具に必ず色を塗ること。塗った=数えた、の印がないと検算ができない。


部位② 配線・配管 ― 「平面の長さ」だけでは足りない

配線・配管は「m」で拾います。ここで新人がほぼ全員つまずくのが、縦方向の長さです。

図面は上から見た平面図なので、天井裏を走る水平の長さは読み取れます。しかし、天井から器具まで下ろす分、床から立ち上げる分、盤の中でとぐろを巻いている余長は、平面図には映りません。この縦分を足し忘れると、配線量は必ず不足します。

ペンタ
立下りって、どれくらいで見ればいいんですか?
はりた
会社ごとに標準がある。「天井内から埋込器具まで0.5m」「壁のスイッチまでは天井から1.2m」みたいにね。自分で決めずに、必ず先輩の拾い書を見て合わせる。バラバラだと比較できなくなるから。
ペンタ
それも根拠メモに書いておくんですね。
はりた
そう。「平面38m+立下り0.5m×8箇所=42m」と残しておけば、後で誰が見ても再現できる。数字だけ残すのは、拾いじゃなくてただのメモだよ。

部位③ 盤・機器 ― 数えるのは「面」、記録するのは「中身」

分電盤や制御盤は「面」で数えます。ただし、面数だけを数えても金額にはなりません。盤の値段を決めるのは中身だからです。

主開閉器の容量、分岐回路の数、予備回路の数、露出か埋込か、屋外用か。この情報がないと、盤は見積もれません。盤の拾いとは「数える」より「転記する」作業だと考えたほうが近いくらいです。

ペンタ
たしかに、盤の姿図って情報がぎっしり書いてありますね。
はりた
だから盤は平面図ではなく、盤結線図・盤リストから拾う。平面図に描いてあるのは「置き場所」だけ。ここを間違えると、面数は合っているのに中身が全部ズレる。

部位④ 弱電 ― 「端末」と「システム」を分けて拾う

放送、電話・LAN、インターホン、防犯といった弱電設備は、「個」と「式」の2階建てで拾います。

スピーカ、情報コンセント、カメラといった端末は「個」。一方で、それらをまとめる親機・アンプ・ラック、そして設定や試験調整といった作業は端末数では表せないので、「一式」として別の行に立てます。

ペンタ
でも「一式」って便利すぎませんか? 何でも入れられちゃいそう。
はりた
鋭い。だから「一式」の中身は、必ず別紙で内訳を作る。中身の説明ができない一式は、見積査定でまっさきに削られる。「一式」は思考停止の言葉じゃなくて、「まとめて1行にした」という宣言なんだ。


実践 ― 1部屋を「4周」して拾う

部位ごとに単位が違うということは、部位ごとに拾う周回を分けるのが一番安全だということです。1つの部屋を4回まわる。遠回りに見えて、これが最短です。

1部屋を4周して拾う手順 ― 器具・配線・盤・弱電の周回と、できあがる拾い書の形
図2:同じ部屋を、部位を変えて4周する。周回の順番は部屋が変わっても固定する
ペンタ
4回もまわるんですか!? 1回で全部数えたほうが速そうですけど…。
はりた
やってみると分かるけど、1回で全部やろうとすると頭の中で単位が切り替わるたびに、直前まで数えていた数字が飛ぶ。「照明8個、あ、この線は…えっと何個まで数えたっけ」ってなる。あれが数え漏れの正体だよ。
ペンタ
…めちゃくちゃ心当たりあります。
はりた
4周に分けると、1周ごとに脳が1つの単位だけを扱う。だから途中で中断されても「今は2周目の途中」と分かれば再開できる。実務では電話も来るし呼ばれもする。中断に強い拾い方をしておくのがプロだよ。
ペンタ
周回の順番って、器具→配線→盤→弱電で固定なんですか?
はりた
会社や人によって多少違うけど、自分の中で一度決めたら変えない。順番が毎回違うと、「この部屋、配線まではやったっけ?」が分からなくなる。順番は記憶の代わりなんだ。

💼 実務でこう生きる

📋 実務活用事例:設計変更が入っても、差し替えるのは1部位だけで済む
実施設計の途中で「会議室の照明をダウンライトからベースライトに変更」という指示が入ったとします。部位別に拾ってあれば、直すのは器具の行と、その器具に付く配線の立下り分だけ。盤も弱電も触る必要はありません。
一方、部屋ごとに全部位をごちゃ混ぜで拾っていると、どの数字が照明由来なのか分からず、その部屋を丸ごと拾い直すことになります。変更に強い拾い書は、拾う段階で決まります。
📋 実務活用事例:見積の「なぜこの数量か」に、その場で答えられる
提出後の質疑で最も多いのが「この数量の根拠は?」です。部位別・単位別に整理された拾い書なら、「配線は平面38m+立下り0.5m×8箇所で42mです」と即答できます。
逆に、根拠を残していないと再度拾い直すことになり、しかも2回目の答えが1回目と合わないという最悪の事態が起きます。数量が変わった時点で、見積全体の信用が下がります。


🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

🐣 「1式」と「一式」って、書き方に決まりはあるの?
厳密なルールはなく、社内様式に合わせるのが正解です。ただし1つの拾い書の中で表記を混ぜないことは徹底してください。表計算ソフトで集計するとき、「1式」と「一式」は別の文字列として扱われ、集計が2行に割れます。
同じ理由で、「m」(全角)と「m」(半角)、「個」と「ヶ」の混在も事故のもとです。単位欄は自由入力にせず、リストから選ぶ形にするのが実務的な対策です。
🐣 弱電の拾いは、新人には難しすぎない?
最初は「端末を数える」だけで十分です。スピーカが何個、情報コンセントが何個。ここは平面図を見れば数えられます。
難しいのはその先、系統図を見て「どの端末がどの親機につながっているか」を追う部分です。ここは先輩と一緒にやる領域なので、端末数を正確に出したうえで「系統は未確認です」と申し送るのが、新人として一番正しい振る舞いです。分からない部分を空欄で出すのではなく、分からないと書いて出すのが大事です。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

🔎 「部位別に拾うと、部屋ごとの合計が出しにくくないですか」と聞いてみた
はりた「逆だよ。拾い書に「室名」の列を必ず作っておけば、部位別に拾っても部屋ごとに集計できる。表計算ソフトのフィルタやピボットで一瞬だ。
むしろ危ないのは、部屋ごとにシートを分けてしまうこと。シートが50枚になった時点で、全体の合計を出すのがものすごく大変になる。データは1枚のシートに縦に積む、集計は式でやる。これが拾い書の鉄則だよ。」
🔎 「CADで自動集計すれば、拾いなんて要らなくなりませんか」と聞いてみた
はりた「自動集計は強力だし、実際にどんどん使うべきだ。ただし自動集計が数えられるのは「図面に正しく入力されている属性」だけなんだ。
他社から支給された図面、PDFしかない改修図面、線として描いてあるだけの配線。実務ではこういう図面のほうが多い。それに、自動集計の結果が正しいかどうかを判断できるのは、手で拾ったことがある人だけだよ。桁が1つ違っていても、経験がないと気づけない。」
🔎 「拾いの精度って、どのくらいを目指せばいいんですか」と聞いてみた
はりた「新人のうちは「正確さ」より「再現性」を目指すといい。つまり、同じ図面をもう一度拾ったときに同じ数字が出ること。
数量が多少ずれていても、根拠が残っていれば直せる。でも根拠のない正解は、次に直せない。だから僕は、拾い書を見るとき数字より先に根拠メモの欄を見るんだ。ここが埋まっている人は、必ず伸びる。」


⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

  • 単位を決めずに数え始める:配線を「本」で数えた瞬間に長さが消えます。数え始める前に単位欄を埋めてください。
  • 添字をまとめてしまう:「コンセント20個」では単価が入りません。ET・LK・WPは別の行に立てます。
  • 立上り・立下りを忘れる:平面図に映らない縦分は、意識して足さないと必ず抜けます。
  • 盤を平面図だけで拾う:盤の中身は盤結線図・盤リストにあります。面数が合っていても中身がズレます。
  • 弱電を「一式」だけで出す:内訳のない一式は査定で削られます。端末数は必ず個別に出しておきます。
  • 部屋ごとにシートを分ける:後で全体集計ができなくなります。1枚のシートに室名列を付けて縦に積みます。

まとめ ― 今日の1枚

  • 拾いが崩れる原因は数え間違いではなく、単位を決めていないこと。
  • 器具=/配線・配管=m/盤・機器=/弱電=端末は個・システムは式
  • 器具は「記号+添字」が同じものだけを1グループにする。数えたら色を塗る。
  • 配線は平面の長さ+立上り・立下りの縦分。根拠メモに式の形で残す。
  • 盤は面数より中身(主開閉器容量・分岐回路数・予備)の転記が本体。盤結線図から拾う。
  • 弱電は端末(個)とシステム(式)の2階建て。一式には必ず内訳を付ける。
  • 実践は1部屋を4周。周回の順番は部屋が変わっても固定する。

拾い出しの手順そのものは第21回「拾い出しのきほん」で解説しています。あわせて読むと、今回の「部位別」という考え方がより立体的に見えてくるはずです。

次回・積算編②は、「拾い書のつくり方 ― 様式・単位・根拠の3点セット」。今回何度も出てきた「根拠メモ」を、実際にどんな様式で残すのか。誰が見ても追える拾い書の形を、良い例・悪い例を並べて見ていきます。公開しました!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
📖次に読むならこれ【新人講座 積算編③】拾いミスの事例集 ― ビフォーアフターで見る、金額が狂う瞬間新人教育