📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。積算編①で部位ごとの数え方を、②で拾い書の様式を見てきました。今回は、その拾いがどこで壊れるのかという話です。

先に結論を書いておくと、拾いミスは「不注意な人がする間違い」ではありません。図面という道具の性質上、誰がやっても同じ場所で漏れる——そういう構造をしています。だから型として覚えれば、提出前に自分で見つけられる。今日は5つの型と、実際の金額がどう動くかを見ていきます。

ペンタ
先輩、会議室Aの拾い、②で教わった様式でちゃんと作り直しました! 根拠も全部埋めてます。
はりた
お、いいね。じゃあ提出前に一緒に検図しようか。……うん、VVFが38mになってる。この38ってどこから出した数字?
ペンタ
平面図の配線ルートを、キルビメーターで測った長さの合計です。ちゃんと測りました!
はりた
測り方は正しい。でもね、平面図って真上から見た図だから、縦方向の長さがゼロに見えるんだ。天井裏から器具まで、電線は下りてくるよね。その分はどこ?
ペンタ
……あ。消えてます。
はりた
そう。これ、新人が100%やるミスなんだよ。だから「気をつける」じゃなくて、型として覚えて、毎回同じ手順で潰す。全部で5つある。

拾いミスは5つの型に分けられる

現場や案件が変わっても、拾いのミスはだいたい同じ5パターンに収まります。それぞれ何が起きるか・なぜ起きるか・どう防ぐかを1枚にまとめました。

拾いミス5類型 ― 現象・原因・対策の早見表
図1:拾いミス5類型。ミスは不注意ではなく「起きやすい形」で起きる
ペンタ
「金額の向き」の列が気になります。不足と過大があるんですね。
はりた
ここ、すごく大事。不足は失注しないけど、受注後に自分の会社が損をする。過大は逆に、高すぎて失注する。どっちも困るんだけど、新人がやるミスは圧倒的に「不足」側に偏るんだ。
ペンタ
なんでですか?
はりた
図面に描いてあるものは拾えるけど、描いていないものは思い出せないから。立上りも、ボックスも、調整費も、図面の記号には出てこない。だから漏れる。過大になるのは二重カウントくらいで、これは色を塗りながら拾えば防げる。

型1|立上り・立下りの拾い漏れ ― 平面図には縦の長さが無い

もっとも起きやすく、もっとも金額に効くのがこの型です。

平面図は建物を真上から見た図なので、上下方向の長さは図面上でゼロに見えます。天井裏の配線から照明器具まで下ろす分、床から立ち上げてスイッチまで届く分、階をまたぐ幹線の縦分——これらは全部、図面を測っても出てきません。

防ぎ方は簡単で、器具1個あたりの縦の長さをあらかじめ決めておき、器具数を掛けるだけです。たとえば天井高2.8m、配線ルートが天井内なら、照明への立下りは0.3〜0.5m程度。スイッチやコンセントは床上高さから決まります。会社に標準値があるなら、まずそれに従ってください。

はりた
この「1個あたり○m」って、自分の会社の過去の見積から逆算して覚えておくといいよ。案件が変わっても大きくは動かないから、一度覚えれば一生使える。
ペンタ
自分用の早見表を作っておけばいいんですね。

型2|二重カウント ― 同じものを2つの図面から拾う

唯一「過大」側に振れる型です。たとえば幹線を系統図からも拾い、平面図でも拾ってしまう。あるいは弱電の端末を平面図で拾ったあと、機器リストからも拾い直してしまう。

原因は単純で、その品目をどの図面で拾うかを決めていないことです。品目ごとに「これは系統図で拾う」「これは平面図で拾う」と最初に決め、拾った線・拾った記号には必ず色を塗る。この2つだけで型2はほぼ消えます。


型3|縮尺・図面版の取り違え ― 長さが半分になる

図面の縮尺は1枚ごとに違います。全体平面が1/200で、部分詳細だけ1/50、なんてことは普通にあります。1/100の感覚のまま1/200の図面を測ると、長さがちょうど半分になります。

しかも半分という数字は、それらしく見えてしまうのが厄介です。「なんか短いな」と思うほどの違和感が出ません。

対策は2つ。図面を開いたらまず表題欄の縮尺と日付を読むこと。そして既知の寸法で1回検算すること。たとえば「この会議室は寸法線で7.2mと書いてある」なら、その壁をスケールで測って7.2mになるか確かめる。ここで合わなければ縮尺が違います。

ペンタ
図面の日付も、縮尺と同じくらい大事なんでしたよね。
はりた
うん。版が違えば、正しい数量も変わる。②で根拠欄に版を書く練習をしたのはこのため。旧版で拾った数量は「間違い」じゃなくて「別の答え」なんだよ。だから版が書いてあれば、差分だけ直せる。

型4|単位の取り違え ― 記号が同じでも中身が違う

積算編①②で繰り返してきた話ですが、実例で見るとインパクトが分かります。

たとえばスイッチ。図面上ではどれも同じ「S」に見えますが、片切スイッチと3路スイッチでは単価が違います。3路は2箇所から同じ照明を操作する仕組みなので、器具も配線も増える。これを「スイッチ2個」と1行にまとめると、単価表に当てた瞬間に金額がずれます。

配線も同じで、「本」で数えると長さが消えます。2mも30mも同じ「1本」。この状態から正しい金額は絶対に出ません。

ルールとしては、記号の添字が違えば行を分ける。これだけです。添字は設計者が「これは別物です」と宣言している印なので、それを無視して合算した時点で情報が失われます。

型5|付属品・予備の計上漏れ ― 図面に描かれないもの

最後の型は、図面を見ていても絶対に見つからないという点で特殊です。

照明器具の記号は器具本体しか表しません。別置きの電源装置、取付用のボックス、支持金物。盤の記号は盤しか表しません。予備回路、基礎・架台。弱電の記号は端末しか表しません。センター機器、設定・試験調整費。

これらはどこに書いてあるかというと、仕様書・特記仕様書です。図面と仕様書はセットで初めて「工事の中身」になります。図面だけを見て拾うというのは、半分の情報で見積を作っているのと同じです。

ペンタ
仕様書、正直あんまり読んでませんでした……。文字ばっかりで。
はりた
最初は全部読まなくていい。「電気設備工事仕様」の章だけ、付属品・予備・調整費の記述を探す。そこだけでも読めば型5はかなり防げるよ。慣れてきたら全体を読む。


実際にどれだけ動くのか ― ビフォーアフター

では、会議室Aの拾いを5類型で検図するとどうなるか。修正前と修正後を並べます。数え間違いは1つもしていません。それでも金額は動きます。

ビフォーアフター ― 会議室Aを拾い直したときの数量と金額の差
図2:同じ図面・同じ数え方でも、5類型を潰すと金額はこれだけ動く
ペンタ
1部屋で33%も……。しかも僕、間違えたつもりがないのがこわいです。
はりた
そこが一番のポイント。拾いミスは「間違えた自覚がない」まま起きる。だから自己検図がいるんだ。もっと言うとね、この漏れ方は同じ拾い方をしている限り、全部屋で同じように起きる
ペンタ
あ……50室あったら、50室ぶん漏れてる。
はりた
そう。拾いミスは1箇所の誤差じゃなくて、全体に効く係数の間違いとして出てくる。だから1室を丁寧に検図する価値がある。1室で見つけた漏れは、必ず他の全室にもあるからね。

💼 実務でこう生きる

📋 実務活用事例:受注後、現場から「材料が足りない」と電話が来る前に
拾いの不足は、見積の段階では誰も気づきません。気づくのは施工が始まってから、現場で電線が足りなくなったときです。そのとき追加で買う材料費は、すでに決まった請負金額の中から出すことになります。拾いの不足=そのまま自社の利益の目減りです。提出前に5類型で自己検図する30分は、受注後の数十万円を守る時間だと考えてください。とくに型1(立上り漏れ)と型5(付属品漏れ)は、金額が大きいわりに検図が数分で済むので費用対効果が高い部分です。
📋 実務活用事例:先輩に見てもらう前の「セルフ赤ペン」で、指摘の質が変わる
新人の拾いを先輩がチェックするとき、型1〜5のような定型ミスが残っていると、指摘がそこで終わってしまいます。逆に定型ミスを自分で潰してから見せると、先輩はその案件固有の判断——この盤は本当に1面でいいのか、この弱電の範囲はどこまでか——といった、より価値の高い部分を見てくれます。自己検図は、先輩の時間を高いほうの仕事に使ってもらうための準備でもあります。結果として、自分が学べる内容も濃くなります。


🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

🐣 立上りの長さって、何mで見ればいいんでしょう。図面には書いてないですよね
案件と会社の標準によりますが、考え方は「どこからどこまで下ろすか」です。天井内の配線から照明器具までなら、天井仕上げから器具までの距離+余長で0.3〜0.5m程度。床から立ち上げてスイッチまでなら、スイッチの取付高さ(一般に床上1.2m前後)が基準になります。コンセントなら床上0.3m前後。まずは自分の会社の過去の拾い書を見て、実際に何mで拾っているかを調べるのが最短です。数字そのものより、「器具ごとに縦分を足す」という手順が身についているかのほうが大事です。
🐣 自己検図って、拾い終わってから全部見直すんですか? それだと時間が2倍かかりそうで……
全部を拾い直すわけではありません。5類型それぞれについて、その型だけを見るという縦断的なチェックです。たとえば型1なら「配線の行だけを見て、縦分が入っているか」を全行まとめて確認する。型4なら「単位の列だけを上から下まで眺める」。この見方だと1つの型あたり数分で終わります。人間は同じ観点で連続して見るほうが速く、しかもミスを見つけやすい。逆に1行ずつ全観点を見ていくやり方が一番遅く、一番見落とします。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

🔎 「配線の「余長」って、立上りとは別に見るものですか?」と聞いてみた
別物として意識したほうが安全です。立上り・立下りは経路として実際に走る長さ、余長は接続作業のために必要な余りの長さです。盤内で結線するための余り、ジョイントボックス内での接続分、器具の裏で処理する分。これらは経路図をどれだけ正確に測っても出てきません。実務では「経路長に一定率を掛ける」「箇所あたり○mを加算する」といった会社ごとのルールで見込むことが多いので、必ず自社のやり方を確認してください。ここは自己判断で数字を作らないほうがいい領域です。
🔎 「拾いミスを見つけたとき、拾い書は上書きして直すべき? 修正履歴を残すべき?」と聞いてみた
拾い書自体は上書きで構いませんが、何をどう直したかは残しておくことを強くおすすめします。根拠メモの欄に「07/25 立下り分を追加(0.5×8)」のように追記するだけで十分です。理由は2つあって、1つは金額が動いた説明を求められたときに即答できるから。もう1つは、自分がどの型でミスしやすいかの記録になるからです。数案件ぶん溜まると、自分の弱点がはっきり見えてきます。型1が多い人、型5が多い人、傾向は個人ではっきり分かれます。
🔎 「ミスに気づいたのが、見積を提出したあとだったら?」と聞いてみた
まず、気づいた時点ですぐ上司に報告してください。これが唯一の正解です。黙っていて得することは何もありません。不足であれば受注後に自社が損をしますし、過大であれば発注者に対して過大請求をしていることになります。実務上は、提出直後であれば差替えの相談ができますし、契約後でも数量の誤りとして協議できる場面はあります(契約の形態や発注者との関係によります)。ただし、時間が経つほど選択肢は減ります。報告が遅れるほど、ミスそのものより「報告しなかったこと」が問題になる——これは積算に限らず、この業界全体に共通する感覚です。


⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

  • 平面図の長さだけで配線を拾う … 縦方向がゼロになります。器具数×立下り長を必ず加算。
  • どの図面で拾うか決めずに拾い始める … 平面図と系統図の二重計上が起きます。品目ごとに1つ決める。
  • 図面の縮尺を確認せずに測る … 長さが半分や倍になります。表題欄を読み、既知寸法で検算。
  • 記号の添字を無視して合算する … 片切と3路、ET付とET無しは単価が別。添字が違えば行を分ける。
  • 図面だけを見て仕様書を読まない … ボックス・電源装置・調整費は図面に出てきません。
  • 1室で見つけた漏れを、その1室だけ直す … 同じ漏れは全室にあります。必ず全室に展開して確認。

まとめ ― 今日の1枚

  • 拾いミスは不注意ではなく「起きやすい形」で起きる。型で覚えれば提出前に自分で見つけられる。
  • 型1 立上り・立下りの漏れ:平面図に縦の長さは無い。器具数×立下り長を必ず加算する。
  • 型2 二重カウント:品目ごとに「どの図面で拾うか」を1つに決め、拾った分に色を塗る。
  • 型3 縮尺・版の取り違え:表題欄の縮尺と日付を読み、既知寸法で1回検算する。
  • 型4 単位の取り違え:記号の添字が違えば行を分ける。配線はmで残す。
  • 型5 付属品・予備の漏れ:図面には描かれない。仕様書を読んで拾う。
  • 自己検図は型ごとに縦断して見ると速い。そして1室で見つけた漏れは全室にある

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次回・積算編④は、「複合単価と歩掛 ― 材料費だけでは金額にならない」。ここまでで数量は出せるようになりました。次はその数量に何を掛けるのか。材料費・労務費・歩掛の関係を、1つの単価が組み上がる過程で見ていきます。

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
📖次に読むならこれ【新人講座 積算編②】拾い書のつくり方 ― 様式・単位・根拠の3点セット新人教育