📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。積算編①で部位ごとの数え方を、②で拾い書の様式を、③で拾いミスの直し方を見てきました。ここまでで、図面から正しい数量を出せるようになりました。

でも、数量が出せても、まだ金額にはなりません。数量に何を掛けるのか――今回はそこを開けてみます。「複合単価」という、見積書の一番大事なのに、いちばん中身を見られていない数字の話です。

ペンタ
先輩、この前もらった見積、同じ工事なのに会社によって単価が全然違うんです。コンセント1個の値段が、A社は1,800円でB社は2,600円で…。どっちかがぼったくりなんですか?
はりた
いきなり「ぼったくり」は早いよ(笑)。その単価、「材料費」だけで比べてない?
ペンタ
え、単価って材料費のことじゃないんですか…?器具のカタログ見たら、コンセントって数百円くらいですよね。
はりた
そう、そこが今日のポイント。見積書に載ってる「1個いくら」は材料費じゃなくて「複合単価」。中身を分解すると、単価が違う理由がちゃんと見えてくるよ。

複合単価ってなに? ― 「1個いくら」の中身

複合単価の分解図。材料費・労務費・雑材費・経費の内訳バーと、各要素の説明カード
図1|複合単価=材料費+労務費+雑材費+経費。比率は工種によって変わる
ペンタ
材料費と労務費と…雑材費?経費?急に4つに増えました。
はりた
順番に見ていこう。まず材料費は、コンセントや電線そのものの仕入値。ここはイメージ通り、カタログや卸の見積が根拠になる、いちばん分かりやすい部分。
ペンタ
じゃあ、さっきの1,800円と2,600円の差は、材料費じゃないってことですか?
はりた
その通り。同じ器具を使うなら材料費はほぼ同じはず。差が出るのは、残りの3つ――特に労務費。ここが今日いちばん大事なところだよ。

労務費と歩掛 ― 「手間」を数値にする

ペンタ
労務費って、「取り付ける人の日当」ってことですよね。それが単価に混ざってるのが、ちょっと不思議な感じです。
はりた
感覚としては合ってる。ただ「日当そのまま」じゃなくて、歩掛(ぶがけ)という係数を使って計算するんだ。歩掛は「1つ付けるのに、何人工(にんく)かかるか」を表す数字。
ペンタ
人工…働く人の数、ですか?
はりた
人工は「働く人1人が1日働く量」の単位。歩掛0.08人工/個のコンセントなら、1人で1日(8時間)働くと、理屈の上では12.5個くらい取り付けられる、という意味。数量×歩掛=所要人工、それに労務単価を掛けると労務費になる。
ペンタ
じゃあ、A社とB社で歩掛の考え方が違えば、単価が変わるってことですね。
はりた
そう。それに、同じ器具でも現場条件で歩掛は変わる。天井が高い、狭くて動きにくい、夜間作業しかできない――こういう条件は、材料費には出てこないけど、歩掛にはちゃんと反映される。

雑材費 ― 図面に描かれない材料

ペンタ
雑材費は初めて聞きました。何のことですか?
はりた
ビス、テープ、結束バンド、圧着端子…図面には描かれないけど、施工には絶対必要な消耗品のこと。1個1個は数円〜数十円でも、現場全体だと結構な金額になる。だから材料費の数%を目安に、まとめて計上するのが一般的。
ペンタ
拾い出しのときに、ビスの数まで数えたりはしないですもんね。
はりた
うん、そこまでやると拾いが終わらない(笑)。だからこそ「見えない材料費」として、比率で織り込んでおく。ここを忘れると、現場で「材料が足りない」が頻発するよ。


経費 ― 会社を運営するための原価

ペンタ
最後の経費は、会社の利益ってことですか?
はりた
似てるけど少し違う。経費は現場管理費(現場監督の人件費や仮設費など)と一般管理費(会社を維持するための費用)のこと。利益はさらにその先、別枠で乗ることが多い。経費が無いと、そもそも工事を管理する人や会社自体が成り立たないから、これも立派な「原価」なんだ。
ペンタ
材料費・労務費・雑材費・経費…全部足して、やっと「1個いくら」になるんですね。
はりた
そういうこと。だから材料費だけを見て「高い」「安い」を判断するのは危ない。同じ器具でも、労務費や経費の考え方次第で、単価は普通に1.5倍くらい変わる。

歩掛で計算してみる ― 数量×歩掛の実践

歩掛の考え方模式図。数量×歩掛=所要人工、所要人工×労務単価=労務費という式と、品目別の計算例の表
図2|数量×歩掛=所要人工。品目ごとに歩掛は違う(表は目安の一例)
ペンタ
この表、コンセントは歩掛0.08なのに、分電盤結線は1.50って全然桁が違いますね。
はりた
数が少なくても、1つあたりの手間が大きい作業は歩掛が高くなる。分電盤の結線は配線を1本ずつ端子に留めていく作業だから、1面でも1.5人工くらいかかることは珍しくない。
ペンタ
VVF敷設は数量が120mで歩掛0.03なのに、労務費がいちばん高いのは意外でした。
はりた
歩掛が小さくても、数量が大きければ所要人工は積み上がる。数量×歩掛の掛け算だから、どちらか一方だけを見ても金額の大きさは読めないんだ。
ペンタ
見積書の「コンセント新設 20個 単価1,800円」だけを見ていたら、この中身には絶対気づけないですね。
はりた
気づけない。でも歩掛の考え方を知っていれば、「この数量なら人工はこのくらいのはず」と逆算して、単価の妥当性を自分でチェックできるようになる。今日はそこがゴールだよ。

💼 実務でこう生きる

📋 実務活用事例:見積査定で「なぜこの単価なのか」を説明できる
相見積を取ると、同じ工事内容なのに単価が違う場面が必ず出てきます。そんなとき「材料費はほぼ同じはずなので、差は労務費(歩掛や施工条件)にあるはずです」と、複合単価の中身に踏み込んで質問できると、査定の精度が一気に上がります。安いだけの見積の裏に「歩掛を極端に低く見ている=現場で人工が足りなくなる」リスクが隠れていることもあります。
📋 実務活用事例:自分の設計判断が金額にどう跳ねるかを説明できる
「高所作業になる配置」「狭いPS内での結線」など、自分が描いた設計が、実は歩掛(=労務費)を押し上げる要因になっていることがあります。積算担当や施工会社から「ここ、歩掛が上がりますよ」と言われたときに、複合単価の構造を知っていれば、代替案の検討や予算調整にすぐ頭を切り替えられます。


🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

🐣 歩掛の数字って、そもそも誰が最初に決めたんですか?
国や業界団体が過去の実績データを積み上げて作った「標準歩掛」が土台になっています。各社はそれをベースに、自社の実績データで補正して使うのが一般的です。ゼロから毎回考えているわけではなく、積み上げられた「相場」があるとイメージすると分かりやすいです。
🐣 歩掛が高い=会社が儲かる、ということですか?
いいえ、逆です。歩掛が高いということは「その分、人工(コスト)がかかる」という意味なので、会社の取り分(利益)が増えるわけではありません。歩掛は儲けの指標ではなく、あくまで「手間の見積もり」です。混同しやすいポイントなので、ここは整理しておきましょう。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

🔎 「歩掛って、毎回同じ数字を使うんですか?」と聞いてみた
はりた:いや、標準歩掛はあくまで「標準条件」の数字。天井高・狭所・夜間作業・既存設備が近くにあって養生が必要、といった条件があると、会社ごとに補正係数をかけて調整するのが普通だよ。だから同じ工事でも会社によって歩掛の見積もり方に差が出る。
🔎 「経費の割合って、値切ることはできるんですか?」と聞いてみた
はりた:交渉の余地はゼロではないけど、経費を極端に削ると現場管理が手薄になるリスクがある。安くする交渉は「材料費のボリュームディスカウント」や「工程の効率化による人工削減」から攻める方が健全だよ。経費だけを削らせる見積は、あとで品質やスケジュールにしわ寄せが来ることが多い。
🔎 「材料費がほぼ同じ2社なのに、見積総額が10%も違うのはなぜですか?」と聞いてみた
はりた:労務費(歩掛の見積もり方)と経費率の違いが大きい。歩掛を厳しめ(=作業を丁寧に見積もる)に取る会社は総額が上がりやすく、逆に歩掛を甘く見ている会社は安く見えても現場で人工が足りなくなり、後から追加請求や品質低下という形でしわ寄せが来ることがある。単純に総額だけで比べず、内訳の労務費に注目するといい。


⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

  • 単価を材料費だけで判断する … 労務費・雑材費・経費を無視すると、見積の高い安いを見誤ります。必ず内訳で考える。
  • 歩掛は絶対の数字だと思い込む … 現場条件で補正が必要です。標準歩掛をそのまま鵜呑みにしない。
  • 数量だけを見て労務費の大きさを予測する … 歩掛が高い品目は数量が少なくても労務費が大きくなります。数量×歩掛で考える。
  • 雑材費をゼロとして扱う … 図面に描かれない消耗品も原価です。比率での計上を忘れない。
  • 経費を「利益」と混同する … 経費は現場管理費・一般管理費で、利益とは別枠です。
  • 相見積を総額だけで比較する … 総額差の理由を、材料費・労務費・経費に分解してから判断する。

まとめ ― 今日の1枚

  • 見積書の「1個いくら」は複合単価。材料費+労務費+雑材費+経費の合計でできている。
  • 材料費は器具・電線そのものの仕入値。カタログや見積が根拠。
  • 労務費は歩掛(人工/個)×労務単価(円/人工)で算出する「手間」のコスト。
  • 雑材費はビス・テープなど図面に描かれない消耗品。材料費の数%を目安に計上する。
  • 経費は現場管理費・一般管理費。会社を運営するための原価で、利益とは別。
  • 歩掛は現場条件(高所・狭所・夜間作業など)で補正され、会社によって見積もり方が変わる。
  • 単価の高い安いは総額ではなく内訳(特に労務費)で判断する。

複合単価の中身が分かると、拾い出しで出した数量が、そのまま金額の根拠になっていく感覚がつかめてきます。あわせて第21回 拾い出しのきほん第22回 積算・見積のきほんおすすめアイテム一覧もどうぞ。

次回・積算編⑤は、「内訳書の読み方・見積比較 ― 総額ではなく中身で比べる」。今日で単価の中身が分かるようになりました。次はその単価が積み上がった内訳書を読み、他社見積と並べたときにどこを比べればいいのかを見ていきます。

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
📖次に読むならこれ積算編⑤ 内訳書の読み方・見積比較 ― 総額ではなく中身で比べる新人教育