図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎 積算編⑥ 改修・増設の積算の全体像
改修工事の総額は「新築と同じ拾い項目+改修だけの項目」の足し算。撤去費・仮設費・夜間休日の割増・調査費という、新築にはない4つの費目を見落とさない拾い方を、会話形式で解説します。積算編、これで全6回完結です。
この記事は、連載コンセント設備の設計マニュアル」第6回 図面化と拾い・積算 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
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今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。積算編⑤で内訳書の読み方・見積比較を見てきました。内訳の階層と、総額差の分解の仕方が分かると、いよいよ積算編も最終回です。

今回のテーマは改修・増設の積算。新築の拾い方はここまでの5回でひと通り身につきましたが、改修工事には新築にはない費目が必ず発生します。「新築と同じつもりで拾うと必ず外す」――そう言われる理由を、会話形式で見ていきます。

この3つ、すぐ答えられますか
  • 改修の拾いで、新築にはない費目を4つ挙げられますか。
  • 撤去は「外すだけ」で終わりますか。
  • 改修で最初にやるべき拾いは、どれですか。
ペンタ
先輩、初めて改修工事の拾いをやったんですけど、新設する器具の数量だけ拾って先輩に見せたら「これじゃ全然足りない」って言われました…。
はりた
あるある。改修は新設する部分それ以外の部分の両方を拾わないといけない。新築の感覚のままだと、後者をまるごと忘れる。
ペンタ
それ以外の部分…って、具体的に何を拾えばいいんですか?
はりた
大きく4つ。撤去・仮設・割増・調査。どれも新築には出てこない費目だから、今日はこの4つを1つずつ潰していこう。

新築と改修の拾い項目差分

トピック1:右側の4項目から、洗い出す
新築と改修の拾い項目差分図。新築で拾う項目(器具・配線・盤・弱電・材料費労務費)と改修で追加拾う項目(撤去・仮設・割増・調査)の2列比較
図1|改修の内訳は「新築の項目+改修だけの項目」の足し算
ペンタ
この図の右側、全部知らない言葉です…。
はりた
だよね、最初はみんなそう。でも仕組みはシンプルで、改修の総額=新築と同じ拾い項目+改修だけの項目。右側の4項目を先に洗い出しておけば、あとは今まで通り新築の拾い方でいい。
ペンタ
右側だけ意識すればいいなら、少し気が楽になりました。
はりた
そう。それに右側は図面に描かれない「見えない数量」が多い。だからこそ、現地を見ないと分からないことが多いんだ。
新築の拾い改修で追加になるもの
対象これから付ける器具・配線新設分 + 既存を外す分
費目材料費・労務費撤去費・仮設費・夜間休日の割増・調査費
数量の出どころ図面から拾える図面に描かれない「見えない数量」が多い
進め方図面 → 拾い書 → 内訳書現地調査 → 図面 → 拾い書 → 内訳書
ここまでのポイント
  • 改修の総額=新築と同じ拾い項目+改修だけの項目
  • 右側の4項目を先に洗い出せば、あとは今まで通りの新築の拾い方でいい
  • 右側は図面に描かれない項目が多いので、現地を見ないと分からない

撤去費を拾う ― 既存設備の処分にもお金がかかる

トピック2:外すだけでは、終わらない
ペンタ
撤去って、古い器具を外すだけですよね?そんなに手間もかからなそうですけど。
はりた
外すだけじゃない。撤去した後の産業廃棄物としての処分費も必要になる。古い分電盤幹線ケーブルは重量もあるから、運搬・処分だけでそれなりの金額になるよ。
ペンタ
新設する器具の数だけじゃなくて、撤去する器具の数も数えないといけないんですね。
はりた
その通り。「撤去〇〇個」「撤去〇〇m」と、新設とは別行で拾うのが基本。新設と撤去を1行にまとめてしまうと、あとで数量が合わなくなる。
ここまでのポイント
  • 撤去は「外すだけ」ではない。撤去後の産業廃棄物としての処分費も必要になる
  • 古い分電盤や幹線ケーブルは重量もあり、運搬・処分だけでそれなりの金額になる
  • 「撤去〇〇個」「撤去〇〇m」と、新設とは別行で拾うのが基本

仮設費を拾う ― 稼働中の現場で工事をする難しさ

トピック3:稼働中の建物が、相手になる
ペンタ
仮設電源とか養生費って、新築でも仮設工事ってありましたよね?何が違うんですか?
はりた
新築の仮設は「まだ何もない場所」に建てるための仮設。改修は稼働中の建物・使用中の設備の近くで工事をするための仮設だから、性質が違う。
ペンタ
稼働中だと、何が大変なんですか?
はりた
たとえば、停電できない系統があれば仮設電源を引いて別ルートで給電しながら工事する必要がある。周囲の什器や床を傷つけないための養生も、新築より神経を使う場面が多い。ここを軽く見積もると、現場で追加費用が発生しやすい。
ここまでのポイント
  • 新築の仮設は「まだ何もない場所」に建てるための仮設
  • 改修の仮設は、稼働中の建物・使用中の設備の近くで工事をするための仮設
  • 停電できない系統には仮設電源、什器や床には養生。軽く見積もると現場で追加費用が出る

夜間・休日作業の割増を拾う

トピック4:いつ・誰が・どんな条件でやるか
ペンタ
夜間や休日に工事する理由って、そんなにあるんですか?
はりた
改修は稼働中の施設が相手だから、営業中・使用中は工事できないケースが多い。店舗やオフィスなら閉店後の夜間、病院や工場なら休日にしか止められない設備もある。
ペンタ
じゃあ、昼間の工事費とは別に考えないといけないんですね。
はりた
その通り。夜間・休日は労務単価そのものに割増がかかるのが一般的。同じ作業量でも、いつ・誰が・どんな条件でやるかで金額が変わることを、拾いの段階で意識しておく必要がある。
ここまでのポイント
  • 改修は稼働中の施設が相手なので、営業中・使用中は工事できないケースが多い
  • 夜間・休日は労務単価そのものに割増がかかるのが一般的
  • 同じ作業量でも「いつ・誰が・どんな条件でやるか」で金額が変わる

調査費を拾う ― 図面だけでは分からないことが多い

トピック5:図面が、信用できない
ペンタ
調査費ってどういう意味ですか?現地調査は無料でやるものだと思ってました。
はりた
新築と違って、改修は竣工図が古い・実際と違う・そもそも残っていないということがよくある。図面が信用できない以上、現地で実測・現況確認する工数そのものがコストになる。
ペンタ
現地に行かないと分からないことって、たとえばどんなことですか?
はりた
配線ルートが図面と違う、既存の盤に空き回路がない、天井裏に想定外の障害物がある……こういうのは行ってみないと分からない。だからこそ調査費を最初から見込んでおくことが大事なんだ。
ここまでのポイント
  • 改修は竣工図が古い・実際と違う・そもそも残っていないことがよくある
  • 図面が信用できない以上、現地で実測・現況確認する工数そのものがコストになる
  • 配線ルート・盤の空き回路・天井裏の障害物は、行ってみないと分からない

実践 ― 改修工事のコスト構成

トピック6:見えない4割を、先に見込む
改修工事のコスト構成の帯グラフ。材料費34%・労務費26%・撤去費16%・仮設割増14%・調査費10%の内訳
図2|撤去費・仮設費・調査費だけで全体の約4割を占める例
ペンタ
この帯グラフ、材料費と労務費を足しても6割にしかならないんですね。
はりた
そう、残りの4割が新築にはない費目。これを最初から見込んでおかないと、後から「予算が全然足りない」ということになる。
ペンタ
この4項目、拾う順番ってあるんですか?
はりた
おすすめは現地調査を最初にやること。調査で撤去数量・仮設の必要性・作業可能時間帯が分かれば、残り3つの拾いが一気に楽になる。順番を間違えると、二度手間になりやすいよ。
ペンタ
新築の積算とはだいぶ考え方が違うんですね。
はりた
新築と同じつもりで拾うと必ず外す――今日のタイトル通り。改修は「新築の拾い+4つの追加項目」とセットで覚えておこう。
ここまでのポイント
  • 撤去費・仮設費・調査費だけで全体の約4割を占めることがある
  • 材料費と労務費を足しても6割にしかならない、という構成を先に知っておく
  • 拾う順番は現地調査が最初。調査で撤去数量・仮設の要否・作業可能時間帯が分かる

💼 実務でこう生きる

トピック7:聞くべきことを、最初に聞く
📋 実務活用事例:改修見積のヒアリング項目を最初から用意できる
見積依頼を受けた時点で「稼働中の設備はありますか」「夜間・休日しか止められない系統はありますか」と聞けると、撤去・仮設・割増の見積もり精度が上がります。後出しの追加費用トラブルを防げます。
📋 実務活用事例:現地調査の必要性を上司や客先に説明できる
「図面だけで概算は出せますが、正確な金額には現地調査が必要です」と根拠を持って言えるようになります。調査を省略した見積が後で大きくブレるリスクを、事前に共有できます。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

トピック8:素朴なギモンほど、聞きにくい
🐣 撤去した古い器具って、そのまま捨てていいんですか?
いいえ、産業廃棄物として法令に沿って処分する必要があります。処分費用は撤去費の中に含めて計上するのが一般的です。勝手に不法投棄することは絶対にできません。
🐣 改修と増設って、積算の考え方は同じですか?
基本的な考え方は共通ですが、増設は「今ある設備に追加する」ため撤去費が発生しないケースが多く、改修は「入れ替える」ため撤去費が発生しやすい、という傾向があります。どちらも新築にはない項目が発生する点は共通です。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

トピック9:会話だから、もっと分かる
🔎 「夜間・休日作業の割増って、どのくらい変わるものですか?」と聞いてみた
はりた:会社や地域によって差はあるけど、平日昼間の労務単価に対して1.2〜1.5倍程度の割増を見込むことが多い。深夜帯だとさらに上がることもある。正確な率は自社の実績や協力業者の見積で確認するのが確実だよ。
🔎 「調査費って、見積書のどこに書くんですか?」と聞いてみた
はりた:内訳書の中に独立した科目として立てることが多い。積算編⑤で見た「工事区分→科目→細目」の階層でいうと、撤去・仮設・調査はそれぞれ独立した科目として扱われることが多いよ。
🔎 「小さな改修工事でも、この4項目は全部拾う必要がありますか?」と聞いてみた
はりた:規模が小さくても考え方は同じ。ただし金額的なインパクトが小さければ、簡略化して概算で計上することもある。大事なのは「存在を忘れない」こと。金額の大小は現場の規模に応じて判断すればいい。

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

トピック10:新設と撤去を、1行にしない
  • 新設器具の数量だけを拾って満足する … 撤去・仮設・割増・調査を見落とすと、見積が大きく不足します。
  • 撤去と新設を同じ行にまとめる … 数量が合わなくなる原因になります。必ず別行で拾います。
  • 仮設電源の必要性を現地確認せずに済ませる … 稼働中設備の有無は現地で必ず確認します。
  • 夜間・休日の割増を昼間と同じ単価で見積もる … 労務単価の割増を見込み忘れると赤字の原因になります。
  • 古い図面をそのまま信用する … 竣工図と現況が違うことは珍しくありません。現地調査で必ず裏を取ります。
  • 調査費をサービスだと思い込む … 調査そのものに工数がかかる以上、コストとして計上する意識を持ちます。

まとめ ― 今日の1枚

トピック11:今日の1枚に、畳んでおく

新築と同じつもりで拾うと、必ず外します。改修の総額は「新築と同じ拾い項目+改修だけの項目」の足し算。右側の4項目を先に洗い出せば、左側はこれまで通りの拾い方で構いません。

改修だけの4項目を、1枚で見る

費目何にかかるお金か見落とすとどうなるか
撤去費既存設備を外す手間 + 産業廃棄物としての処分費重量物の運搬・処分費がまるごと抜ける
仮設費稼働中の設備を止めずに工事するための仮設電源・養生現場で追加費用が発生する
夜間・休日の割増営業中・使用中に工事できないぶんの労務単価の割増同じ作業量なのに、金額が足りなくなる
調査費図面が信用できないぶんの実測・現況確認の工数想定外の障害物や空き回路不足が、着工後に判明する

総額の考え方

足し算で捉える
  • 改修の総額は新築と同じ拾い項目+改修だけの項目の足し算。
  • 改修だけの項目は撤去費・仮設費・夜間休日の割増・調査費の4つ。

4項目の中身

ひとつずつ
  • 撤去費は既存設備の処分費まで含めて考える。
  • 仮設費は稼働中の設備・施設を止めずに工事するための費用。
  • 夜間・休日作業は労務単価そのものに割増がかかる。
  • 調査費は図面が信用できない改修特有の必要経費。

拾う順番

現地調査が最初
  • これら4項目は図面に描かれない「見えない数量」のため、現地調査を最初に行うのが効率的。

最後に ― 見積依頼の時点で聞いておく

「稼働中の設備はありますか」「夜間・休日しか止められない系統はありますか」。この2つを見積依頼の時点で聞けるかどうかで、撤去・仮設・割増の精度が変わります。後出しで発覚するより、最初に押さえておく方がずっと早く済みます。

これで積算編は全6回、拾い出しから内訳書・改修積算までひと通り扱いました。あわせて第21回 拾い出しのきほん第22回 積算・見積のきほん、積算編⑤の内訳書の読み方・見積比較もあわせてどうぞ。

積算編はこれで全6回、完結です。拾い方から単価の中身、内訳書の比較、改修特有の費目まで、積算の基礎を一通り見てきました。引き続き、全カリキュラム(目次)から、他のトラックもぜひ読んでみてください。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。