結論

家電が雷で壊れるとき、その家に落ちていないことのほうが多いです。数百m先の落雷でも、電線に電圧が誘起されて機器に届きます。そして雷ガードタップは「その機器につながっている線を、全部おなじタップに通す」使い方をしないと効きません。電源だけ守ってアンテナ線をそのままにすると、守っていない側から入ってきます。

  • 入口は電源線・通信線・アンテナ・アース線の4つ
  • タップは「電源だけ」では不十分。テレビなら電源+アンテナを同じタップへ
  • いちばん確実なのは、鳴り出す前にプラグを抜くこと
  • 壊れたときの火災保険は、「家財」の契約があるかで決まる

「近所に雷が落ちたらしいけど、うちには落ちていない。なのにテレビとルーターだけ動かなくなった」——毎年この時期に必ず聞く話です。落ちていないのに壊れる理由と、市販の雷ガードタップをどう使えば効くのかを、電気設備設計の視点で整理します。

2026年8月15日時点の情報です。制度・料金は変更されることがあります。必ず一次情報でご確認ください。

💬 はりた&ペン太(まずは疑問から)

🐧 見習いペン太
「雷って、家に落ちなければ大丈夫じゃないんですか?」

🦔 はりた
「そこが誤解のもと。機器が壊れる原因の多くは、直撃じゃないんだ。落雷そのものより、そのあと電線を伝ってくるほうが問題になる」

🐧 見習いペン太
「じゃあ雷ガードタップを挿しておけば安心ですね!」

🦔 はりた
「……その挿し方だと、たぶん効かない。理由を順番に説明するね」

うちに落ちていないのに、なぜ壊れるのか

雷が機器に届く経路は3つあります。

雷が機器に届く3つの経路

経路どういうものか頻度
直撃雷建物やアンテナに直接落ちる低い
誘導雷近くに落ちた雷の電磁界が、屋外の電線に電圧を起こす高い
侵入雷別の場所に落ちた雷の電流が、電力線や通信線を伝って入ってくる高い

壊れた家電の多くは、下の2つが原因です。直撃していないのに壊れるので、「うちには落ちていないから大丈夫」という判断が外れます。避雷針が受け止めてくれるのは直撃だけで、誘導雷と侵入雷は建物の中まで入ってきます。

日本の雷は8月がピークで、1年の放電のおよそ3割がこの月に集中します。日本海側の冬の雷は数こそ少ないものの、1回あたりのエネルギーが大きいという特徴があります。設計の現場向けには、外部と内部の雷保護を分けて考える話を接地・雷保護の設計マニュアル⑤にまとめています。

雷サージが入ってくる4つの入口

屋外から家の中へ伸びている金属の線は、すべて雷サージの入口になります。具体的には次の4つです。

雷サージが家に入ってくる4つの入口を示した図。電源線・通信線・アンテナ・アース線の4経路と、テレビが電源とアンテナの2本につながっていることを図示。
屋外から伸びる金属の線は、すべて雷サージの入口になります

入口はこの4つ

入口つながっている機器の例
電源線引込線コンセントほぼすべての家電
通信線(電話・CATV・LAN)ルーター、ONU、固定電話、テレビ
アンテナ(地デジ・BS)テレビ、レコーダー、ブースター
アース線洗濯機、エアコン、電子レンジなど

ここで大事なのは、1台の機器が複数の入口につながっているという点です。テレビは電源とアンテナ。パソコンは電源とLAN。ルーターは電源と通信線。2本つながっている機器は、2本とも守らないと意味がありません。理由は次の章で説明します。

光回線のケーブル(光ファイバー)は金属ではないので、雷サージを伝えません。ただしONUやホームゲートウェイは電源につながっているので、そちら側から入ります。「光だから雷に強い」は半分だけ正しい、という理解が実態に近いです。

雷ガードタップが効かない、いちばんよくある使い方

雷ガードタップの中身はSPD(サージ防護デバイス)という部品です。専門的な機器にも同じものが入っています。SPDがやっているのは、雷サージを「消す」ことではありません。機器の端子と端子のあいだの電圧の差を、機器が壊れない範囲まで詰めることです。

差を詰める装置なので、差が生まれる場所を1つでも見落とすと、そこから壊れます。SPDのメーカーも「被保護機器に接続されるすべての金属線路に設置する」ことを設置の原則として挙げています。

機器ごとに、タップへ通すべき線

機器通すべき線ありがちな失敗
テレビ・レコーダー電源+アンテナ線電源だけ挿して、アンテナは壁から直結
デスクトップPC電源+LANケーブル電源だけ。ルーター経由で回り込む
ルーター・ONU電源+電話線/CATV光だから安心、と何もしない
固定電話・FAX電源+電話線電話線が無防備

電源だけを守った状態で雷サージが来ると、電源側の電位はタップが押さえてくれますが、アンテナ側は押さえられていません。その差が、そのままテレビの端子間にかかります。「タップを使っていたのに壊れた」の多くは、これです。

同じ理屈で、SPDと機器のアースは共通にするのが原則です。別々の場所に接地すると、雷電流が大地に流れたときに地面の電位が持ち上がり、2つの接地のあいだに差が生まれます。その差が機器にかかります。専門的な現場では「等電位ボンディング」と呼んでいる考え方で、接地・雷保護の設計マニュアル④で詳しく扱っています。

タップを選ぶときに見るところ

  • 制限電圧(保護レベル)が書かれているか。「雷ガード」とだけ書かれた製品より、数値が明示されているほうが選びやすい
  • 劣化のお知らせがあるか。SPDは雷サージを受けるたびに少しずつ消耗し、いつかは効かなくなります。ランプで残り寿命を示す製品を選び、点灯が変わったら交換してください
  • アンテナ線・LANを通せる差込口があるか。電源だけの製品では、上の表の対策ができません

いちばん確実なのは、鳴り出す前に抜くこと

身も蓋もない話ですが、線がつながっていなければ、サージは入ってきません。タップもSPDも「入ってきたものを減らす」装置なので、抜くことにはかないません。

抜く順番

  1. 機器の電源を操作パネルから正しく切る(いきなり抜かない)
  2. 電源プラグを抜く
  3. アンテナ線・LAN・電話線も抜く。ここを忘れると意味が半分になります

雷が鳴っている最中の抜き差しは避けてください。アンテナ線や電話線を握っているときにサージが来ると、そのまま体に流れます。遠くでゴロゴロ聞こえ始めた段階で抜く、というのが安全な順番です。すでに近くで光っている場合は、機器をあきらめて、金属や配線から離れてください。

もちろん、抜けない機器もあります。冷蔵庫、給湯器、エアコン、インターホン、太陽光のパワーコンディショナ。こうした抜けない機器が多い家ほど、次に説明する分電盤側の対策が効いてきます

分電盤にSPDを付けるという選択肢

SPDは、置く場所によってクラスが分かれています。

SPDのクラスと置き場所

クラス置く場所受け止めるもの
クラスI引込口・受電盤直撃雷に相当する大きなエネルギー
クラスII分電盤誘導雷に相当するもの
クラスIII機器の直前残ったぶんを最後に削る。市販の雷ガードタップはここ

並べてみると分かりますが、雷ガードタップは仕上げの一段です。手前に何もない状態で最後の一段だけ置いても、削りきれない量が来ることがあります。抜けない機器が多い家や、周囲に高い建物がなく電線が長く引かれている家では、分電盤にクラスIIのSPDを入れるのが本筋の対策になります。

これは電気工事店(登録電気工事業者)の仕事です。分電盤の中を触る作業なので、電気工事士の資格がなければ行えません。またSPDは受け止めたサージを大地へ逃がす装置なので、接地(アース)がきちんとあることが前提です。古い家でアースが取られていない場合は、そこから相談することになります。費用は分電盤の空き状況と接地の有無で変わるため、見積を取ってください。

壊れてしまったら|火災保険は「家財」を見る

落雷による損害は、火災保険の基本的な補償に含まれているのが一般的です。ただし請求の前に確認しておきたい点があります。

請求前に確認すること

  • 建物と家財は別の契約です。テレビやパソコンは「家財」にあたるので、家財を契約していないと補償されません。持ち家で建物だけ契約している人は、ここでつまずきます
  • 免責金額が設定されていることがあります。3万円・5万円・10万円といった設定が一般的で、テレビ1台の修理費が免責額を下回ると保険金は出ません
  • 請求には被害箇所の写真・状況説明・修理業者の見積書が必要になります。捨てる前に撮っておいてください
  • 請求できるのは損害の日から3年までです
  • 機器の中のデータやソフトウェアは対象外です

実務的なコツとして、複数台が同時に壊れたときはまとめて1回の事故として申請するほうが、免責額の壁を越えやすくなります。テレビ・ルーター・給湯器のリモコンが同時にやられた、というのは雷ではよくあるパターンです。1台ずつ諦めず、家じゅうを点検してから連絡してください。

💬 はりた&ペン太(というわけで、解決!)

🐧 見習いペン太
「タップを挿すだけじゃダメで、その機器につながってる線を全部通すんですね」

🦔 はりた
「そう。守り忘れた1本が、差を作る。テレビなら電源とアンテナ。そして今夜から使える最強の方法は、鳴り出す前に抜くこと」

🐧 見習いペン太
「抜けない冷蔵庫とかは、分電盤のほうで受けるってことですか」

🦔 はりた
「そのとおり。順番としては、抜けるものは抜く。抜けないものが多いなら分電盤のSPDを検討する。タップは仕上げの一段、って覚えておくといいよ」

よくある質問

雷が鳴ったらブレーカーを落とせば安全ですか?

電源側だけを見れば有効です。ブレーカーを切れば、その先の屋内配線は電源から切り離されます。ただしアンテナ線・電話線・LANはブレーカーとは無関係なので、そこからの侵入は止められません。ブレーカーを落とすなら、アンテナ線も抜いてください。

また、冷蔵庫や給湯器も同時に止まります。夏場に長時間切るのは現実的ではないので、多くの家庭では「守りたい機器のプラグを抜く」ほうが扱いやすいはずです。

雷ガードタップは何年くらいで交換すればいいですか?

年数では決まりません。SPDはサージを受けるたびに少しずつ消耗する部品なので、受けた回数と大きさ次第です。近くで大きな雷があった年は、それだけ寿命が縮んでいます。

そのため、劣化を示すランプが付いた製品を選び、表示が変わったら交換するのが確実です。表示のない製品は、効いているのか切れているのかを外から判断できません。

タップが壊れた場合、つないでいた家電は無事ですか?

「タップが身代わりになった」ように見えることはありますが、保証はありません。SPDは差を詰める装置で、盾ではないからです。守れる量を超えたサージが来れば、タップも機器も同時に壊れます。

タップが焦げた・異臭がするといった場合は、そのまま使わずに交換してください。

マンションでも対策は必要ですか?

戸建てに比べると、屋外の電線に直接さらされる度合いは小さくなります。ただし共用のアンテナ設備や、屋上に近い上階などでは影響を受けます。専有部でできることは戸建てと同じで、機器につながる線をまとめて守るか、抜くかです。分電盤のSPDは共用部との関係が出るので、管理組合や管理会社に確認してから進めてください。

停電したのですが、これも雷のせいですか?

雷は停電の原因としてよくあるものですが、停電と機器の故障は別の話です。停電は電力会社(一般送配電事業者)の設備側で起きていることが多く、復旧も向こうの作業になります。一方、機器が壊れたかどうかは復電してから分かります。

どこまでが電力会社の担当で、どこからが自分の設備なのかは、責任分界点の記事に図でまとめています。連絡先を間違えると時間を無駄にするので、停電時はそちらもご覧ください。

参考にした情報

  • 音羽電機工業「実は身近な誘導雷」(雷サージの侵入経路:電源線・通信線・アンテナ・接地線
  • サンコーシヤ「SPDの効果的な使い方」(被保護機器に接続されるすべての金属線路への設置、SPDと機器の接地の共通化)
  • 気象庁「雷の観測と統計」(雷の季節変化。月別では8月が最多)
  • 各損害保険会社の火災保険約款・解説(落雷の補償範囲、建物と家財の区分、免責金額、請求期限)

※金額・補償内容はご契約の保険会社・商品によって異なります。実際の判断は約款と保険会社への確認をお願いします。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

次に読むならこれ卒FITで何もしないと、余った電気は無償で引き取られる|売る・使う・ためるの決め方家庭の電気設備の設計
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。