この記事は連載「EV充電・再エネ設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
発電設備が入ると、事故電流が両側から供給されます。保護協調と遮断容量の見直し、アークが消えない直流側の危険、屋根の上の雷対策とSPD、屋外設備の10年後、そして竣工検査で追加になる項目を整理します。 発電設備が入ると、事故電流が両側から供給されます。保護協調と遮断容量の見直し、アークが消えない直流側の危険、屋根の上の雷対策とSPD、屋外設備の10年後、そして竣工検査で追加になる項目を整理します。
設計・施工マニュアル EV充電・再エネ設備 第5回 保護と施工
再エネ・EV充電設備の保護と施工をQ&A形式でまとめた図
この記事のポイントを1枚にまとめました。
発電設備が入ると、事故電流が両側から供給されます。保護協調と遮断容量の見直し、アークが消えない直流側の危険、屋根の上の雷対策とSPD、屋外設備の10年後、そして竣工検査で追加になる項目を整理します。

ここまでの4回で、EV充電・太陽光・蓄電池を建物につないできました。今回は、つないだあとを安全側から見直します。

発電設備が入ると、電気設備の前提がひとつ崩れます。電気は受電点から入って、負荷に向かって流れていく。この一方通行を前提に組まれてきた保護が、そのままでは成り立たなくなる。

合言葉は「電気が両方向に流れる」。

ペン太ペン太
発電設備を足すだけなら、既存の保護はそのままでいいですよね。
はりたはりた
そこが今回のいちばんの落とし穴なんだ。電気は受電点から入って負荷へ流れる。この一方通行を前提に保護が組まれている。
ペン太ペン太
発電設備が入ると…
はりたはりた
事故点の下流側からも電流が来る。上流を切っても消えない。だから発電側も自分を切り離す必要があるんだ。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

事故電流の供給元が、2つになる

トピック①:事故電流の供給元が、2つになる
事故電流でよくある問題と、その原因・対策を示した図
つまずきやすいところを、先に押さえておきます。

従来の保護協調は単純でした。どこかで短絡や地絡が起きたら、その事故点より上流にある遮断器が切れる。上流を切れば供給が止まり、事故電流は消えます。

発電設備があると、これが崩れます。事故点の下流側からも電流が供給されるからです。上流の遮断器を切っても、建物の中の発電設備が事故点へ電流を送り続ける。

だから系統連系では、系統側の異常を検知したら発電設備も自分を切り離すことが必須になります。第3回で扱った保護継電器と単独運転検出は、この役割を担っています。

短絡電流が増えることを、忘れない
もうひとつ、見落とされやすい影響があります。短絡電流が増えることです。発電設備は事故時に電流を供給するので、その分だけ事故点の短絡電流が大きくなる。既存の遮断器の遮断容量が足りているかどうか、後付けのときは必ず確認してください。
既存建物への後付けで、いちばん抜けやすい確認
「発電設備を足すだけ」と考えると、既存の受変電設備の整定も遮断容量もそのままにしがちです。しかし電気の流れ方が変わっている以上、既存の保護が同じように働く保証はありません。後付けは、既存設備の再検討とセットです。
ここまでのポイント
  • 発電設備があると、事故点の下流側からも電流が供給される
  • 系統側の異常を検知したら、発電設備も自分を切り離す
  • 発電設備の寄与で短絡電流が増える。既存遮断器の遮断容量を確認

直流側は、電気工事の常識が通じない

トピック②:直流側は、電気工事の常識が通じない
直流側でよくある問題と、その原因・対策を示した図
つまずきやすいところを、先に押さえておきます。

太陽光と蓄電池には、これまでの電気設備になかった領域があります。直流側です。ここは交流の感覚のまま触ると危険です。

違いは2つあります。

ひとつめ。直流はアークが消えない。交流は1秒間に100回か120回、電流がゼロを通ります。開閉器を開いてアークが出ても、このゼロ点で自然に消える。直流にはゼロ点がないので、いったん生じたアークは伸びながら燃え続けます。交流用の開閉器やヒューズを直流回路に使ってはいけないのは、このためです。

ふたつめ。太陽光パネルは、日射があるかぎり電圧を出し続けます。系統のブレーカーを切っても、PCSを止めても、パネルからPCSまでの直流ケーブルは生きている。スイッチで止められる電源ではなく、光が当たっている間ずっと通電している電源です。

この2つが重なると、施工と保守の手順が変わります。直流側の作業は、遮光するか、日射のない時間帯に行うか、開放できる箇所を設けておくか。「主幹を切ったから安全」が成り立たないことを、関係者全員が理解している必要があります。

コネクタの混用は、火災の原因になる
直流ケーブルの接続に使うコネクタは、形状が似ていてもメーカーが違えば嵌合の精度や接触圧が異なります。無理に組み合わせると接触抵抗が上がり、長期間かけて発熱し、最終的に発火します。同一メーカー・同一型式で揃えるのが原則です。屋根の上は点検しにくいので、ここでの手抜きは見つかりません。
ペン太ペン太
主幹を切ったので、直流側も触って大丈夫ですよね。
はりたはりた
だめだよ。日射があるかぎり、パネルは電圧を出し続ける。スイッチで止められる電源じゃないんだ。
ペン太ペン太
じゃあ、どうすれば。
はりたはりた
遮光するか、日射のない時間帯にやる。しかも直流はアークが消えないから、交流用の開閉器やヒューズも使えない。
2 使 PCS
ここまでのポイント
  • 直流はゼロ点がないので、いったん生じたアークは消えない
  • 交流用の開閉器・ヒューズを直流回路に使ってはいけない
  • 日射があるかぎりパネルは電圧を出し続ける。遮光か時間帯で対応

屋根の上は、雷を受けやすい

トピック③:屋根の上は、雷を受けやすい
屋根の上の雷でよくある問題と、その原因・対策を示した図
つまずきやすいところを、先に押さえておきます。

太陽光発電は、屋外にあって、高いところにあって、面積が広い。雷から見れば、これ以上ないほど受けやすい条件が揃っています。しかも直撃しなくても、近くへの落雷による誘導で、配線に電圧が誘起されます。

接地・雷保護編で扱った内容が、そのままここに効いてきます。

  • 架台と建物の等電位化:金属製の架台は建物の接地系とボンディングする。架台だけが孤立していると、雷時に架台と建物のあいだに電位差が生まれる
  • 直流側のSPD:パネルからPCSまでの直流回路に入れる。直流用のSPDを使う(交流用は使えない)
  • 交流側のSPD:PCSから盤までの交流回路に入れる。第6回で扱うSPDの考え方がそのまま当てはまる
  • 接続線は短く:SPDの接続線が長ければ、そのぶんの電圧が上乗せされる。往復0.5m以内が原則
  • 配線のループを小さく:直流ケーブルを大きく回すと、誘導を受ける面積が広がる。往復の線を近づけて配線する

とくに最後の項目は、屋根の上では守られにくい点です。パネルの配置に合わせてケーブルを引き回すうちに、意図せず大きなループができる。施工要領に「往復線は近接させる」と明記しておかないと、現場では意識されません。

避雷設備がある建物なら、離隔も忘れずに
建物に避雷設備がある場合、引下げ導線とパネル・架台・直流ケーブルとのあいだに安全離隔距離が必要になります。近づけざるを得ないなら、離すのではなくボンディングする。接地編の第5回で扱った「離しても電位差は消えない」という考え方が、屋根の上でも同じように成り立ちます。
SPD SPD PCS SPD SPD0.5m  
ここまでのポイント
  • 架台は建物の接地系とボンディングする
  • 直流側と交流側の両方にSPD。直流用と交流用は別物
  • SPDの接続線は往復0.5m以内、直流ケーブルのループは小さく

屋外にあるものは、10年で劣化する

トピック④:屋外にあるものは、10年で劣化する
屋外の劣化でよくある問題と、その原因・対策を示した図
つまずきやすいところを、先に押さえておきます。

太陽光もEV充電設備も、屋外に置かれます。竣工時に問題がなくても、10年20年の単位で見ると別の設備です。

  • ケーブルの日射劣化:直流ケーブルは屋外用でも、直射日光と紫外線で被覆が劣化する。屋根の上で宙吊りになっている配線は、支持と保護を丁寧に
  • 金属部の腐食:架台のボルト、接地端子、コネクタ。海岸部では進行が速い。異種金属の接触は接地編第4回で扱ったとおり
  • 屋根の防水:架台の固定部からの浸水は、電気の問題ではないが、電気工事が原因とされやすい。防水の責任区分を書面で明確にする
  • 小動物と植物:屋外盤への鳥や虫の侵入、地上設置なら草の繁茂。開口部の処理と、点検通路の確保
  • 耐風:架台の設計は建築側の領域だが、風で動いたときに配線が引っ張られない納まりになっているかは電気側で見る
10年後を想像するためのリスト
この一覧は、竣工時のチェックリストではなく10年後を想像するためのリストです。点検できない場所に、点検が必要なものを置かない。それだけで維持のしやすさが変わります。
10
ここまでのポイント
  • 直流ケーブルは屋外用でも紫外線で劣化する。支持と保護を丁寧に
  • 架台のボルト・接地端子・コネクタの腐食、異種金属の接触に注意
  • 屋根の防水は責任区分を書面で明確にしておく

竣工検査で、何を確かめるか

トピック⑤:竣工検査で、何を確かめるか
竣工検査でよくある問題と、その原因・対策を示した図
つまずきやすいところを、先に押さえておきます。

最後に検査です。発電設備が入ると、従来の絶縁抵抗測定と接地抵抗測定だけでは足りません。

  • 直流側の絶縁抵抗:測定には電圧を止める必要があるので、遮光するか、日射のない時間帯に行う。日中そのまま測ろうとして測れない、というのは現場でよくある
  • 開放電圧と極性:ストリングごとに測る。極性の逆接続は、PCSを壊すか、最悪の場合は発火につながる
  • 保護継電器の動作試験:整定値どおりに動くか。第3回で扱った各継電器を、実際に模擬入力で動かす
  • 単独運転の試験:系統側を模擬的に切り離して、規定の時間内に停止するかを確認する。連系時に電力会社の立会いで行うことが多い
  • 切替試験(蓄電池):停電を模擬して、非常時用回路に切り替わるか。切替時間も記録する

そして、これらの結果を残す。接地編の最終回で「完成すると見えなくなる設備は、図面に残してはじめて設計が終わる」と書きました。発電設備も同じです。整定値、試験結果、ストリング構成、SPDの位置。これがないと、次に触る人は最初から測り直すことになります。

ケース別|こんなとき、どうするか

トピック⑥:ケース別|こんなとき、どうするか

ここまでの内容を、現場でよく出てくる相談の形にして並べます。上から順に読む必要はありません。当てはまるものだけ拾ってください。

ケース別|こんなとき、どうするか
CASE 1既存建物に、あとから発電設備を足す
既存の整定と遮断容量を、セットで再検討する。
「発電設備を足すだけ」と考えると、既存の受変電設備の整定も遮断容量もそのままにしがちです。しかし電気の流れ方が変わっている以上、既存の保護が同じように働く保証はありません。後付けは、既存設備の再検討とセットです。
CASE 2「主幹を切ったので直流側も触れますよね」と言われた
日射があるかぎり、直流側は通電している。
パネルはスイッチで止められる電源ではなく、光が当たっている間ずっと通電している電源です。系統のブレーカーを切っても、PCSを止めても、パネルからPCSまでの直流ケーブルは生きています。遮光するか、日射のない時間帯に作業してください。
CASE 3直流ケーブルのコネクタが、在庫の都合で揃わない
同一メーカー・同一型式で揃える。
形状が似ていても、メーカーが違えば嵌合の精度や接触圧が異なります。無理に組み合わせると接触抵抗が上がり、長期間かけて発熱し、最終的に発火します。屋根の上は点検しにくいので、ここでの手抜きは見つかりません。
CASE 4屋根に太陽光、建物には避雷設備もある
架台を孤立させない。SPDは直流・交流の両側に。
金属製の架台は建物の接地系とボンディングします。架台だけが孤立していると、雷時に架台と建物のあいだに電位差が生まれます。SPDは接続線が長いとそのぶんの電圧が上乗せされるので、往復0.5m以内が原則です。
CASE 5竣工検査の日程が、日中しか取れない
遮光の手間を、検査計画に見込んでおく。
日射があると直流側の絶縁抵抗が測れません。夜明け前・日没後に測るか、パネルを遮光シートで覆います。検査計画の段階で時間帯を決めておくと、当日の混乱がなくなります。

打ち合わせと、図面への記載

ケースの判断を実際に形にするのは、打ち合わせでの確認と、図面への記載です。誰と何を決め、どこに何を書くかを並べておきます。

打ち合わせで確認すること
施主・管理者と
将来の増設予定と、点検の体制・頻度
屋根に上がる手段と、点検通路の確保
建築・構造と
架台の固定方法と、屋根の防水の責任区分
風で動いたときに配線が引っ張られない納まり
受変電・社内で
機器メーカーからの短絡電流の寄与値
既存遮断器の遮断容量と、既存整定の見直し
電力会社と
単独運転試験の立会い日程
施工者と
直流側作業の遮光、または日射のない時間帯
コネクタは同一メーカー・同一型式で揃える
図面・書類への書き方
単線結線図
発電設備の位置と系統構成
短絡電流の検討結果と、既存遮断器との協調
接地・雷保護図
架台と建物接地系のボンディング
避雷設備がある場合の離隔またはボンディング
SPD
直流側・交流側それぞれの位置と種類
接続線長は往復0.5m以内と明記
特記仕様
直流用開閉器の指定(交流用は不可)
コネクタの同一型式指定
屋外ケーブルの支持と保護の方法
竣工図書
ストリング構成と整定値
各試験の結果と実施日

様式は案件によって変わります。抜けると10年後に困る項目を挙げています。

ペン太ペン太
つないだあとのことまで考えると、見るところが一気に増えますね。
はりたはりた
増えるというより、前提が変わったぶんを見直すだけなんだ。「電気が両方向に流れる」と一言で押さえておけば、どこを疑えばいいかは自然に出てくる。
ペン太ペン太
図面と記録に残すところまでが仕事、ですね。
はりたはりた
そう。10年後に触る人が読めるかどうか。そこまでが設計だよ。
ここまでのポイント
  • 直流側の絶縁抵抗は、遮光するか日射のない時間帯に測る
  • ストリングごとの開放電圧と極性。逆接続はPCSを壊す
  • 保護継電器・単独運転・切替試験の結果を必ず記録に残す

まとめ

トピック⑦:まとめ
  • 発電設備が入ると、事故電流が両側から供給される。上流を切っても消えないので、発電側も切り離す
  • 発電設備の寄与で短絡電流が増える。既存遮断器の遮断容量を再確認する
  • 直流はアークが消えない。交流用の開閉器・ヒューズは使えない
  • 日射があればパネルは常時電圧を出している。「主幹を切ったから安全」が成り立たない
  • コネクタは同一メーカー・同一型式で。混用は数年後の発熱・発火につながる
  • 屋根の上は雷を受けやすい。直流側と交流側の両方にSPD、接続線は短く、配線のループは小さく
  • 架台は建物の接地系とボンディングする。避雷設備があるなら離隔かボンディング
  • 屋外設備は10年で劣化する。点検できない場所に、点検が必要なものを置かない
  • 竣工検査は、直流側の絶縁抵抗・開放電圧と極性・保護継電器・単独運転・切替試験が追加になる

よくある質問

Q1. 既存の遮断器の遮断容量は、どう確認しますか?

受電点の短絡電流に、発電設備が供給しうる分を加えて評価します。太陽光のPCSは短絡電流の寄与が比較的小さい一方、蓄電池のPCSや回転機は大きくなることがあります。機器メーカーから短絡電流の寄与値を取り寄せるのが確実です。既存の盤の銘板と、当時の短絡電流計算書があれば、それを起点に見直してください。

Q2. 直流側の絶縁抵抗が測れないと言われました。

日射があるとパネルが電圧を出し続けるため、測定器が正しく動作しません。夜明け前・日没後に測るか、パネルを遮光シートで覆います。工程上どうしても日中に測るなら、遮光の手間を見込んでおく必要があります。検査計画の段階で時間帯を決めておくと、当日の混乱がなくなります。

Q3. 架台の接地は、どこまでやればよいですか?

架台の金属部が電気的に連続していること、そしてそれが建物の接地系につながっていることが基本です。塗装やアルマイト処理の上から締めても導通しないので、接触面の処理は接地編の第4回と同じ注意が要ります。架台メーカーの標準納まりが導通を保証しているかは、製品ごとに違うので確認してください。

Q4. SPDは直流側と交流側の両方に本当に必要ですか?

侵入経路が2つあるからです。屋根の上で誘導を受けたサージは直流側から入り、系統側から来たサージは交流側から入ります。片方だけ守ると、空いているほうから入ってきます。接地編の最終回で扱った「電源側だけSPDを付けて通信線が素通し」と同じ構図です。

次回予告

トピック⑧:次回予告

最終回となる第6回は「申請と図面化」です。系統連系の申請と法令上の届出をいつ・何を出すのか、単線結線図に何を描くのか。そして、この連載で扱ってきたEV充電・太陽光・蓄電池を、1枚の図面としてどう引き継ぐか。

合言葉は「申請が設計の締切を決める」。→ 第6回・最終回 申請と図面化 を公開しました。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。