結論

停電したら、まず「うちだけか、地域全体か」を切り分けます。そして地震で避難するときは、必ずブレーカーを落としてから家を出てください。阪神・淡路大震災では出火原因の約61%、東日本大震災でも約54%が電気に起因していました。電気が復旧したときに起きる通電火災を防ぐ、最も確実な方法です。

  • まず「他の家の明かり」を見て、うちだけかどうかを判断する
  • うちだけなら分電盤へ。どのブレーカーが落ちたかで原因がわかる
  • 地震で避難するときはブレーカーを落とす。通電火災を防ぐ
  • 感震ブレーカーは自動で遮断するが、真っ暗になるので照明の備えを
  • 太陽光がある家は、自立運転コンセントの場所を平時に確認しておく

停電は突然きます。台風、落雷、地震、あるいは設備の不具合。そのとき慌てないために、何を、どの順番で確認すればいいのかを整理しておきましょう。

この記事は、停電したその場で読めるように書いています。ブックマークしておくか、印刷して分電盤のそばに貼っておくと、いざというときに役立ちます。

ステップ1|「うちだけ」か「地域全体」かを切り分ける

最初にやるのは原因探しではなく、範囲の確認です。ここで対応が大きく分かれます。

確認方法 見るもの
窓の外を見る 近所の家の明かり、街灯、信号機がついているか
スマホで確認する 電力会社の停電情報ページ。地域と復旧見込みがわかる
家の中を見る 一部の部屋だけ消えているのか、家全体か
近所も暗ければ地域全体の停電、うちだけ暗ければ家の中に原因があります。

ステップ2|うちだけ停電しているとき

分電盤を見にいきます。どのブレーカーが落ちているかで、原因の見当がつきます。

落ちているもの 考えられる原因
アンペアブレーカー(いちばん大きい) 同時に使いすぎた。契約容量を超えた
漏電ブレーカー(真ん中) どこかで漏電している。要注意
安全ブレーカー(小さいものの1つ) その回路だけ使いすぎたか、機器の不具合
分電盤の見方は分電盤の見方 完全入門で詳しく解説しています。

漏電ブレーカーが落ちた場合は、原因の切り分け手順があります。漏電ブレーカーが落ちたときの切り分け手順を参考にしてください。何度も落ちる、焦げた臭いがするといった場合は、自分で復旧させようとせず電気工事店へ連絡します。

ステップ3|地域全体の停電のとき

この場合、家の側でできることは限られます。復旧を待ちながら、次の順で動いてください。

  1. 使っていた電気機器のスイッチを切る——復旧時に一斉に動き出すのを防ぐ
  2. 暖房器具・アイロン・ドライヤーはプラグを抜く——復旧時の発熱・出火を防ぐ
  3. 冷蔵庫は開けない——中の温度を保つ
  4. 停電情報で復旧見込みを確認する
  5. スマホの電池を温存する(画面を暗く、不要な通信を切る)
  6. 断水に備えて、浴槽に水をためられるなら ためておく

💡 ここがポイント

停電中にろうそくを使うのは避けてください。停電時は普段と違う場所に物が置かれていることが多く、倒したときの危険が大きくなります。懐中電灯やランタン、スマホのライトを使ってください。コンセントに挿しておくだけで停電時に自動点灯するライトは、備えとして有効です。


【最重要】避難するときは、ブレーカーを落とす

ここがこの記事で最も伝えたい部分です。地震などで家を離れるときは、必ず分電盤のブレーカーを落としてから避難してください。

なぜ必要なのか

大地震のあとに起きる火災の多くは、電気が原因です。内閣官房の資料によると、次のような結果が出ています。

震災 電気に起因する出火 全体に占める割合
阪神・淡路大震災 85件(総火災139件) 約61%
東日本大震災 58件(総火災108件) 約54%
出典:内閣官房「大規模地震時における火災の発生状況」

これが通電火災と呼ばれるものです。地震で停電したあと、電気が復旧したときに起こります。

  • 倒れた電気ストーブが、通電と同時に再び発熱して周囲のものに着火する
  • 壊れた配線や、水に濡れた機器に電気が流れて出火する
  • 散乱した可燃物の上に、熱を持った機器が乗っている

怖いのは、避難して誰もいない家で起きることです。発見が遅れ、消火も遅れます。ブレーカーを落としておけば、そもそも電気が流れません。

感震ブレーカーという選択肢

揺れを感知して自動でブレーカーを落とす感震ブレーカーという装置があります。慌てて避難するときに操作を忘れても、自動で遮断してくれます。

内閣官房の資料では、南海トラフ地震の防災推進地域で設置率が約8.5%から100%になった場合、火災による焼失棟数が5割減になるという試算が示されています。

💡 ここがポイント

感震ブレーカーには注意点もあります。作動すると強制的に停電状態になるため、夜間の地震では家の中が真っ暗になります。避難の途中でつまずく危険もあるので、停電時に自動点灯する足元灯や、懐中電灯を手の届く場所に置く備えとセットで考えてください。在宅で医療機器を使っている場合は、とくに慎重な検討が必要です。


停電中の家電の扱い

機器 停電中の扱い
冷蔵庫 開けない。目安として数時間は保冷が保たれる
エアコン スイッチを切る。復旧時の一斉起動を避ける
電気ストーブ・アイロン プラグを抜く。復旧時の出火リスクが高い
給湯(エコキュート) 沸き上げは止まる。タンクの水は生活用水として使える
パソコン・NAS 可能なら正常終了させる
電気錠・シャッター 手動での解除方法を確認しておく
マンションの給水ポンプ 停電で水が止まることがある
エコキュートのタンクの水は、多くのメーカーが飲用不可としています。詳しくはエコキュートの選び方と交換の目安をご覧ください。

太陽光・蓄電池・EVがある家

発電設備があっても、何もしなければ停電時に電気は使えません。切り替え操作が必要です。

設備 停電時にできること 平時に確認しておくこと
太陽光のみ 自立運転に切り替えると、専用コンセントから電気を取れる(昼間のみ) 自立運転コンセントの場所と切替方法
蓄電池(特定負荷型) あらかじめ決めた回路だけ使える どの回路が非常用か
蓄電池(全負荷型) 家中の回路が使える 使える時間の目安
V2H・EV 車から家へ給電できる 操作手順、車の残量管理
いずれも「いざというとき初めて操作する」のが最も危険です。詳しくは住宅の非常用電源|ポータブル電源・蓄電池・V2Hの使い分けへ。

復旧したときの確認

  1. 家に戻ってから、ブレーカーを上げる——不在のまま復旧させない
  2. 上げる前に、ガスの臭い・水漏れ・焦げた臭いがないか確認する
  3. 安全ブレーカーは1つずつ上げ、異常がないか確かめる
  4. 電気機器を1つずつ動かして、異常な音や臭いがないか見る
  5. 冷蔵庫の中身の状態を確認する
  6. 給湯・空調・時計などの設定が初期化されていないか確認する

復旧後にブレーカーがすぐ落ちる、焦げた臭いがするといった場合は、使用を止めて電気工事店に相談してください。連絡先の判断は電力会社と電気工事店、どっちに連絡する?が参考になります。


備えておくもの

もの ポイント
懐中電灯・ランタン 各部屋と枕元に。ろうそくは使わない
停電時自動点灯ライト コンセントに挿しておくだけ。廊下・階段に
モバイルバッテリー 満充電を保つ。家族の人数分
乾電池 使う機器のサイズを確認しておく
ポータブル電源 数時間〜1日の停電に有効
カセットコンロ オール電化の家では特に
飲料水 1人1日3リットルが目安
分電盤の位置と操作方法 家族全員が知っていること
最後の項目が最も大切です。誰が家にいても操作できる状態にしておいてください。

よくある質問

停電したら、まず何をすればいいですか?

近所の家や街灯を見て、うちだけの停電か地域全体かを確認してください。うちだけなら分電盤を見て、どのブレーカーが落ちたかを確認します。地域全体なら、使っていた機器のスイッチを切り、暖房器具などのプラグを抜いて復旧を待ちます。

なぜ避難前にブレーカーを落とすのですか?

通電火災を防ぐためです。地震で倒れたストーブや、傷んだ配線に電気が復旧時に流れると出火することがあります。阪神・淡路大震災では出火原因の約61%、東日本大震災でも約54%が電気に起因していました。誰もいない家で起きると発見が遅れるため、被害が大きくなります。

感震ブレーカーは付けたほうがいいですか?

避難時にブレーカーを落とし忘れても自動で遮断してくれるため、有効な備えです。ただし作動すると強制的に停電状態になり、夜間は真っ暗になります。停電時に自動点灯するライトなど、明かりの備えとセットで検討してください。在宅で医療機器を使っている場合は、慎重な判断が必要です。

太陽光があれば停電しても電気を使えますか?

そのままでは使えません。パワーコンディショナを自立運転に切り替えると、専用コンセントから電気を取り出せます。ただし昼間の発電時に限られ、出力にも制限があります。切替方法と自立運転コンセントの場所を、平時に確認しておいてください。

冷蔵庫の中身はどれくらい持ちますか?

扉を開けなければ、数時間は保冷が保たれるのが一般的です。開閉を繰り返すと急速に温度が上がるため、停電中は開けないのが基本です。長時間の停電では、傷みやすいものから消費するか、保冷剤やクーラーボックスへ移すことを検討してください。

復旧したあと、すぐブレーカーを上げていいですか?

まず家の中を確認してください。ガスの臭い、水漏れ、焦げた臭いがないかを見てから、安全ブレーカーを1つずつ上げます。上げた直後にまた落ちる、異臭がするといった場合は使用を止め、電気工事店に相談してください。

電力会社の見直しは、あなたの家に効くのか
「乗り換えれば安くなる」は、条件によります。電気設備の設計側から見ると、先にやるべきことがある家と、比較が効く家ははっきり分かれます。当てはまるものを見てください。
A契約アンペアが大きすぎる家
一人暮らしや二人暮らしなのに50A・60A契約、という家は珍しくありません。基本料金は契約アンペアで決まるので、下げるだけで毎月効きます。工事は電力会社が無料で行うのが一般的です。乗り換えより先に、こちらを確認してください。
B使用量が多い家・オール電化・EVがある家
月400kWhを超える、オール電化、EVを自宅で充電している——このあたりから単価と時間帯プランの差が大きく出ます。基本料金より従量料金のほうが金額として大きいので、プランと会社を比べる価値があります。
C関西・中国・四国・沖縄エリアの家
これらのエリアは最低料金制で、そもそも契約アンペアという区分がありません。Aの手が使えないので、比べるならプランと会社そのものになります。
比べるときに見落としやすいところ
  • 燃料費調整額の上限。大手電力の規制料金には上限がありますが、新電力の多くは上限を設けていません。燃料価格が上がった局面では、単価が安いはずのプランが逆転することがあります
  • 解約金・契約期間の縛り。1年未満の解約で費用がかかるプランがあります
  • 停電したときの連絡先は変わりません。設備の保安は送配電会社の担当なので、乗り換えても対応する会社は同じです(責任分界点の記事
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

次に読むならこれ賃貸の電気でできること・できないこと|アンペア変更・コンセント増設・原状回復の線引き家庭の電気設備の設計
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。