避雷設備の接地極|A形・B形の選び方、最小長さ l1 と等価半径の計算、10Ωの本当の意味
避雷設備の接地極というと「10Ω以下」を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、いまの規格(JIS Z 9290-3:2019)では、接地抵抗の値そのものより、接地極の形と長さで設計します。この記事では、A形とB形の違い、A形の最小長さ l1 の考え方、B形の等価半径の計算、基礎の鉄筋の利用、10Ωの本当の意味と施工のポイントを整理します。
結論
避雷用の接地極はA形(1本ずつ)かB形(ぐるりと囲む)。設計は最小長さ l1で行い、B形は等価半径 re ≧ l1を確認します。10Ωは「満たせば長さを問わない」目安です。
- A形は引下げ導線ごとに、B形は建物を囲む環状・基礎・メッシュ
- l1 はクラスⅢ・Ⅳで一定、クラスⅠ・Ⅱは大地抵抗率が高いほど長い
- B形は re = √(A÷π) ≧ l1。足りなければ接地極を追加
- 深さ0.5m以上、壁から約1m。基礎の鉄筋も接地極に使える
A形とB形 ― 1本ずつか、ぐるりと囲むか
| A形 | B形 | |
|---|---|---|
| 形 | 水平・垂直・板状の接地極を、引下げ導線ごとに1本以上 | 建物を囲む環状接地極(全長の80%以上が土に接する)、閉ループの基礎接地極、メッシュ |
| 向いている建物 | 小さな建物、既存建物の改修、岩盤などで環状にしにくい場所 | 大きな建物、構造体を利用する建物、電子機器の多い建物 |
| 設計の確認 | 各接地極が最小長さ l1 以上 | 等価半径 re が l1 以上 |
B形は、建物の周囲の電位を均一にしやすく、雷電流を多方向に分散できます。内部雷保護(等電位ボンディング)の面でも有利なので、新築の大きな建物ではB形、とくに基礎の鉄筋を使った構造体接地極が主流です。
- A形は引下げ導線ごとに1本ずつ。小さな建物・改修向き
- B形は建物を囲む。大きな建物・構造体利用向き
- 新築の大きな建物では、基礎の鉄筋を使ったB形が主流
A形の最小長さ l1 ― クラスと土で決まる
- クラスⅢ・Ⅳ:大地抵抗率によらず一定(水平で5m)
- クラスⅠ・Ⅱ:大地抵抗率が一定の値を超えると、高くなるほど長くなります。値は規格の図から読み取ります
- 垂直接地極:垂直に打ち込む場合は、水平の0.5倍の長さでよいとされています
- 大地抵抗率がとても高い土:3000Ωmを超えるような土では、B形か接地抵抗低減剤の使用が推奨されています
大地抵抗率は、設計の段階で測っておくのが理想です。季節によって変わるので、測った時期も記録しておきます。接地極と接地抵抗の基本は「【接地・雷保護の設計マニュアル②】接地極と接地抵抗 ― 抵抗値は設計ではなく、土が決める」で解説しています。
- クラスⅢ・Ⅳは一定、クラスⅠ・Ⅱは大地抵抗率で長くなる
- 垂直なら水平の0.5倍の長さでよい
- 大地抵抗率は設計段階で測り、時期も記録
B形の確認 ― 等価半径 re を計算する
B形接地極は、環状接地極が囲む面積 A を、同じ面積の円に置き換えた等価半径 reで確認します。
re = √(A ÷ π) ≧ l1
たとえば、30m×20mの建物で、壁から1m外に環状接地極を回すと、A=32m×22m=704m²、re≒15.0m です。クラスⅢ・Ⅳ(l1=5m)なら十分です。re が l1 より小さい場合は、水平なら lr = l1 − re、垂直なら lv = (l1 − re)÷2 の長さの接地極を追加します。
- re = √(A÷π) を求め、l1 以上か確認
- 一般的な大きさの建物なら、クラスⅢ・Ⅳは余裕をもって満たす
- 足りなければ lr = l1 − re(垂直は半分)を追加
基礎の鉄筋を使う ― 構造体接地極
コンクリート基礎の中で相互につながった鉄筋は、構造体接地極として使うことが望ましいとされています。基礎の鉄筋は建物全体に広がっているので、B形の条件を自然に満たしやすく、腐食の心配も少ないのが利点です。
- つながりを確保:基礎の鉄筋どうし、柱の鉄筋・鉄骨との接続を図面で指定し、打設前に確認します
- 接地端子を出しておく:測定や他の接地との接続のために、基礎から接地端子(取り出し用の導体)を出しておきます
- 長期の変化に注意:規格は、構造体接地極の接地抵抗が長期間で増えることがある点に注意を促しています
- 試験用接続部:構造体の引下げ導線と構造体接地極を組み合わせる場合は不要です
💡 接地はひとつにまとめる
等電位ボンディングの考え方では、避雷設備の接地と電気設備の接地を相互につなぐ(統合する)のが基本です。別々にすると、雷電流が流れたときに接地どうしの間に大きな電位差が生まれます。電気設備側の共用・統合接地の条件もあわせて確認します。内部雷保護は「内部雷保護とSPD|雷保護ゾーン(LPZ)・引込口の等電位ボンディング・SPDのクラスと選び方」で整理しています。
たとえるなら、池に石を落としたときの波紋です。1点から広げるより、建物をぐるりと囲んで広げたほうが、足もとの電位のかたよりが小さくなります。
- 基礎の鉄筋は構造体接地極として使うのが望ましい
- つながりを図面で指定し、打設前に確認。接地端子を出す
- 避雷用と電気設備用の接地は、相互につなぐのが基本
10Ωの意味と施工 ― 深さ0.5m、壁から1m
10Ωの本当の意味
JIS Z 9290-3 では、接地抵抗の値そのものより、接地極の形と長さを重視しています。一般に10Ω未満が推奨で、10Ω未満であれば最小長さ l1 によらなくてもよいとされています。つまり、10Ωは「必ず満たす値」というより、「満たしていれば長さを問わない」目安です。10Ωを超える場合は、接地極の長さが最小長さを満たしているかを確認します。
施工のポイント
- 深さ0.5m以上、壁から約1m離して埋設するのが推奨です
- 地中の接続は圧着・溶接などで確実に。アルミニウムは地中に使いません
- 鋼製の導線が土やコンクリートから地上に出る部分は、腐食しやすいので保護します
- 埋める前に検査と写真。埋め戻したら確認できません
ペン太
ハリタ- 10Ωは「満たせば長さを問わない」目安。超えたら最小長さを確認
- 深さ0.5m以上、壁から約1m。地中の接続は確実に
- 埋める前に検査と写真
よくある質問
避雷設備の接地極のA形とB形の違いは何ですか?
A形は、引下げ導線ごとに1本以上つなぐ水平・垂直・板状の接地極で、ループをつくらない形です。B形は、建物を囲む環状接地極(全長の80%以上が土に接するもの)、閉ループの基礎接地極、メッシュ状の接地極です。大きな建物や構造体を利用する建物ではB形が一般的です。
A形接地極の最小長さはどう決まりますか?
LPSクラスと大地抵抗率で決まります。クラスⅢ・Ⅳは大地抵抗率によらず一定で、クラスⅠ・Ⅱは大地抵抗率が高いほど長くなります。垂直に打ち込む接地極は、水平の0.5倍の長さでよいとされています。
B形接地極はどう確認しますか?
環状接地極が囲む面積 A から等価半径 re = √(A÷π) を求め、A形の最小長さ l1 以上であることを確認します。足りない場合は、水平なら lr = l1 − re、垂直なら lv = (l1 − re)÷2 の長さの接地極を追加します。
避雷設備の接地抵抗は10Ω以下でないといけないのですか?
JIS Z 9290-3 では、接地抵抗の値そのものより、接地極の形と長さを重視しています。一般に10Ω未満が推奨で、10Ω未満であれば最小長さによらなくてもよいとされています。10Ωを超える場合は、接地極の長さが規格の最小長さを満たしているかを確認します。
基礎の鉄筋を接地極として使えますか?
使えます。コンクリート基礎の中で相互につながった鉄筋は、構造体接地極として利用することが望ましいとされています。構造体の引下げ導線と組み合わせると、試験用接続部も不要になります。
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