引下げ導線と構造体利用|本数と間隔の決め方、鉄骨・鉄筋を使う条件と0.2Ωの確認
受雷部で受けた雷電流を、接地極まで流す通り道が引下げ導線です。本数と間隔はLPSクラスで決まり、いまの建物では柱の鉄骨や鉄筋をそのまま引下げ導線に使う設計が一般的になっています。この記事では、本数と間隔の決め方、専用導線と構造体利用の選び方、鉄骨・鉄筋を使うときの条件と検査、配置の注意点を整理します。
結論
引下げ導線は2本以上、外周をクラスごとの間隔以内で配置し、かどには1本。構造体を使うなら最上階〜地上で0.2Ω以下を打設前に確認します。
- 間隔はクラスⅠ・Ⅱ:10m、Ⅲ:15m、Ⅳ:20m
- 構造体利用は本数が多くとれ、分流がよく、外観に出ない
- 鉄筋の重ね継手は直径の20倍以上+結束、または溶接・クランプ
- 雨どいの中は不可。まっすぐ最短で。各導線に試験用接続部
本数と間隔 ― かどに1本、あとは間隔以内で埋める
引下げ導線の本数は、JIS Z 9290-3:2019 で次のように決まっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最低本数 | 建物から分離しない避雷設備は2本以上。水平投影面積が25m²以下なら1本でよい |
| 間隔 | クラスⅠ・Ⅱ:10m、Ⅲ:15m、Ⅳ:20m(外周に沿った平均的な間隔) |
| 配置 | 外周に沿ってできるだけ均等に。建物のかど(突角部)にはできるだけ1本 |
本数の目安は 外周の長さ ÷ 間隔 です。たとえば、外周120mの建物をクラスⅢ(15m)で設計すると 120÷15=8本になります。そのうえで、かどの位置に導線が来るように配置を調整します。
本数を増やすほど、1本あたりに流れる雷電流が小さくなり、導線のまわりの電位の上昇や電磁界の影響も小さくなります。屋上機器などの離隔距離の計算で使う係数 kc も、本数が多いほど小さくなります(「屋上の機器と避雷設備|室外機・太陽光・アンテナ・キュービクルを守る保護範囲・離隔距離・ボンディング」参照)。
たとえるなら、道路の車線です。1車線に全部の車が集まれば大渋滞ですが、4車線あれば流れが分散します。
- 2本以上(25m²以下は1本)
- 間隔はⅠ・Ⅱ:10m、Ⅲ:15m、Ⅳ:20m。本数の目安は外周÷間隔
- かどに1本。本数が多いほど分流して安全
専用導線か、構造体利用か
引下げ導線には、専用の導線を張る方法と、建物の鉄骨・鉄筋を使う(構造体利用)方法があります。
| 専用の引下げ導線 | 構造体利用 | |
|---|---|---|
| 向いている建物 | 木造・既存建物の改修・小規模な建物 | 新築の鉄骨造・鉄筋コンクリート造 |
| 本数 | 必要な本数だけ張る | 柱の数だけとれる。分流がよい |
| 外観 | 外壁に出る(支持金物が必要) | 出ない |
| 注意点 | 腐食・固定・雨どいとの取り合い | 電気的なつながりの確認。打設すると見えない |
構造体利用は、雷電流を多くの柱に分散でき、建物全体がかご(ファラデーケージ)のように働くので、内部雷保護の面でも有利です。その分、鉄骨・鉄筋の電気的なつながりを設計と施工で確実にすることが条件になります。
- 新築の鉄骨造・RC造は構造体利用が一般的
- 構造体利用は分流がよく、外観に出ず、内部雷保護にも有利
- その代わり、電気的なつながりの確認が必須
鉄骨・鉄筋を使う条件 ― 0.2Ωと打設前の確認
鉄骨造
鉄骨の柱・梁は、溶接やボルトでつながっていれば、そのまま引下げ導線として使えます。受雷部と柱の頭部、柱の脚部と基礎の鉄筋(接地極)の接続位置を図面で決めておきます。
鉄筋コンクリート造
- 継手:鉄筋の重ね継手は、直径の20倍以上の長さで重ねてバインド線で結束します。溶接や専用のクランプでつなぐ方法もあります
- 確認:つながりが明確でない場合は、最上階から地上までの抵抗を測り、0.2Ω以下が望ましいとされています。測定は4線式の測定器で、電流は約10Aが目安です
- 記録:どの柱の鉄筋を使ったか、接続位置はどこかを、図面と写真で残します
⚠️ 打設したら確認できない
コンクリートを打設すると、鉄筋の接続は二度と見られません。打設前の検査と写真を工程に組み込み、施工図に接続位置を明記しておきます。施工の順番は「避雷設備の設置手順|計画・設計から施工の順番、竣工試験、定期点検まで」で整理しています。
- 鉄骨は溶接・ボルトでつながっていれば使える。接続位置を図面で指定
- 鉄筋の重ね継手は直径の20倍以上+結束、または溶接・クランプ
- 最上階〜地上で0.2Ω以下が目安。打設前に確認と写真
配置の注意 ― まっすぐ、最短で、人から離す
- 雨どいの中に通さない:水がたまって腐食し、点検もできません
- ループをつくらない:まっすぐ最短で下ろします。曲げると、曲がった部分で火花放電が起きやすくなります
- 窓・扉・人の近くを避ける:人が触れる場所では、接触電圧や歩幅電圧の危険があります。離隔距離も確保します
- 環状導体でつなぐ:引下げ導線どうしを、地表面近くの環状導体でつなぎます。高い建物では途中の階でもつなぎます
- 試験用接続部:各引下げ導線の、接地極とつながる位置に設けます(構造体利用の引下げ導線と構造体接地極の組み合わせは不要)
- 雨どいの中は不可。ループにせず、まっすぐ最短で
- 窓・扉・人の近くを避け、離隔距離を確保
- 地表面近くの環状導体でつなぎ、各導線に試験用接続部
設計図と施工監理 ― 書くことと見ること
| 段階 | 押さえること |
|---|---|
| 設計図 | 引下げ導線の本数と位置(専用か構造体か)、受雷部・接地極との接続位置、試験用接続部の位置、環状導体の経路 |
| 構造設計との協議 | 鉄筋への溶接の可否、接続方法(溶接・クランプ・結束)、使う柱 |
| 施工中 | 接続の目視と写真、打設前の検査、専用導線の固定間隔と防食 |
| 竣工時 | 導通試験(最上階〜地上)、接地抵抗の単独・総合測定、記録 |
ペン太
ハリタ- 設計図に、使う柱・接続位置・試験用接続部を明記
- 溶接の可否や接続方法は構造設計と協議
- 施工中は打設前検査と写真、竣工時は導通と接地抵抗を記録
よくある質問
引下げ導線は何本必要ですか?
建物から分離しない避雷設備では2本以上が原則で、水平投影面積が25m²以下の小さな建物は1本でよいとされています。そのうえで、外周に沿って LPSクラスごとの間隔(Ⅰ・Ⅱ:10m、Ⅲ:15m、Ⅳ:20m)以内になるように配置し、建物のかどにはできるだけ1本置きます。
建物の鉄骨や鉄筋を引下げ導線に使えますか?
使えます。電気的に連続していれば、鉄骨造の柱や鉄筋コンクリートの鉄筋を「構造体利用の引下げ導線」として使えます。本数が多くとれて雷電流がよく分流し、外観にも出ないのが利点です。
鉄筋の電気的な連続性はどう確認しますか?
JIS Z 9290-3 では、つながりが明確でない場合に、建物の最上階から地上までの抵抗を測り、0.2Ω以下であることが望ましいとしています。測定は4線式の測定器で行い、電流は約10Aが目安です。鉄筋の重ね継手は、直径の20倍以上重ねてバインド線で結束するか、溶接・専用クランプで接続します。
引下げ導線を雨どいの中に通してもいいですか?
いけません。雨どいの中は水がたまって腐食しやすく、点検もできないためです。引下げ導線は雨どいの外に、ループをつくらずまっすぐ最短で下ろし、窓や扉など人が触れる場所の近くは避けます。
試験用接続部はどこに設けますか?
各引下げ導線が接地極とつながる位置に設けます。接地抵抗を1本ずつ測るためで、工具で開けられ、ふだんは閉じておく構造にします。構造体利用の引下げ導線と構造体の接地極を組み合わせる場合は不要です。
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