技術図書館避雷設備の図面は位置・構造・根拠で描く5種類の図面、屋上伏図の読み方、保護範囲の検討と特記仕様この資料をスライドで見る資料一覧を見る

避雷設備の図面は、確認申請で見られ、現場で施工に使われ、竣工後も点検のたびに開かれます。それなのに、何をどこまで描けばいいのかは、意外と教わる機会がありません。この記事では、避雷設備の図面セットの5種類と、それぞれに描くこと、屋上伏図の読み方、特記仕様に書くこと、よくある描き漏れを整理します。

結論

避雷設備の図面は屋上伏図・立面図・接地極配置図・詳細図・特記仕様の5種類。位置(どこに)・構造(どうつなぐ)・根拠(なぜ守れる)がそろっていることが大切です。

  • 屋上伏図:受雷部・導体の位置と経路、引下げ導線の位置
  • 立面図:引下げ導線と、保護範囲の検討(回転球体・保護角)
  • 接地極配置図・詳細図:接地極、接続、試験用接続部
  • 特記仕様:規格・クラス・方式・材料・試験
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
避雷設備の図面セットとして、屋上伏図・立面図・接地極配置図・詳細図・特記仕様の5種類と、それぞれに描く内容を並べた図
避雷設備の図面セット。確認申請から点検まで、同じ図面が使われ続けます。
この記事で読めるようになる用語:受雷部 引下げ導線 回転球体法 接地抵抗

図面セット ― 位置・構造・根拠をそろえる

図面 描くこと
屋上伏図 受雷部(縁の導体・メッシュ・突針)の位置と経路、塔屋・屋上機器、引下げ導線の位置、屋上機器のボンディング
立面図 引下げ導線の経路、環状導体、試験用接続部の高さ、保護範囲の検討(回転球体・保護角)
接地極配置図 接地極の種類(A形・B形)と位置、環状接地極の経路、構造体接地極の接続、接地端子・測定端子
詳細図 導体の支持金物と間隔、接続方法、試験用接続部、防水貫通部、構造体との接続
特記仕様 適用規格、LPSクラス、受雷部の方式、材料・断面積・防食、試験と記録
一般的な図面構成の例

小さな建物では、屋上伏図と立面図に詳細や仕様をまとめて描くこともあります。大事なのは枚数ではなく、どこに(位置)・どうつなぐか(構造)・なぜ守れるか(根拠)が、図面だけで読み取れることです。

ここまでのポイント
  • 屋上伏図・立面図・接地極配置図・詳細図・特記仕様
  • 枚数より「位置・構造・根拠」がそろっていること
  • 確認申請・施工・点検で同じ図面が使われる

屋上伏図の読み方 ― 縁、網目、突針、導線、機器

屋上伏図の例に、縁の導体、メッシュの網目、突針と塔屋、引下げ導線の位置、屋上機器の5か所の番号を付け、それぞれの確認ポイントを示した図
屋上伏図は、縁 → 網目 → 突針 → 引下げ導線 → 屋上機器の順に見ると、漏れを見つけやすくなります。

屋上伏図を読むとき(チェックするとき)は、次の順番で見ていくと漏れを見つけやすくなります。

  1. 縁の導体:屋根の縁・パラペット・かどに、受雷部の導体(または金属の笠木)が回っているか
  2. メッシュの網目:網目がLPSクラスの大きさ(Ⅳなら20m×20m)以下か
  3. 突針と保護範囲:塔屋・屋上機器が保護範囲に入っているか。突針の高さは足りているか
  4. 引下げ導線の位置:かどに1本あり、間隔がクラスの値以内か
  5. 屋上機器:離隔をとるのか、ボンディングするのか、指示が書いてあるか

受雷部の配置の考え方は「受雷部の配置の決め方|回転球体法・保護角法・メッシュ法の使い分けと作図の手順」、屋上機器の扱いは「屋上の機器と避雷設備|室外機・太陽光・アンテナ・キュービクルを守る保護範囲・離隔距離・ボンディング」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 縁 → 網目 → 突針 → 引下げ導線 → 屋上機器の順に見る
  • かどと縁に導体があるか、網目と間隔がクラスの値以内か
  • 屋上機器の扱い(離隔かボンディングか)が書いてあるか


立面図と保護範囲の検討 ― 「なぜ守れるか」を描く

立面図には、引下げ導線の経路と、保護範囲の検討を描きます。保護範囲の検討は、受雷部が建物全体を守れていることを示す、避雷設備の図面でいちばん大事な部分です。

  • 回転球体法:立面・断面に、クラスの半径の円を描き、建物に沿って転がした位置を何か所か示します。円が受雷部にだけ触れていることを示します
  • 保護角法:突針の先端から保護角の線を引き、塔屋や機器がその内側に入ることを示します。使った角度と高さも書きます
  • 高い建物:60mを超える場合は、上部20%の側壁の受雷部も示します
  • 引下げ導線:経路、環状導体の高さ、試験用接続部の高さ、窓などとの離隔

💡 方向を変えて何枚か

保護範囲の検討は、1方向の立面だけでは足りません。長辺・短辺の2方向と、塔屋や屋上機器がある部分の断面を描いておくと、確認申請でも施工でも説明がしやすくなります。

たとえるなら、家具の配置図で「ここにぶつかる」を確かめるのと同じです。図面の上で球を転がし、受雷部にしか当たらないことを見せるのが検討図です。

立面図の上で回転球体を転がし、球が触れる屋上の縁や塔屋のかどを順に示して、受雷部の位置が決まることを表した動く図解
動く図解:保護範囲の検討図は、図面の上で球を転がして「守れている」ことを示す図です。
ここまでのポイント
  • 保護範囲の検討は、避雷設備の図面でいちばん大事な部分
  • 回転球体の円や保護角の線を描き、建物が範囲に入ることを示す
  • 2方向の立面と、塔屋・機器の断面を描く

特記仕様 ― 現場が判断できるように書く

特記仕様に書く項目として、適用規格、LPSクラス、受雷部の方式、引下げ導線、接地極、材料・断面積、試験・記録の7項目と記載例を並べた図
特記仕様に書く7項目。これがないと、現場は材料も施工方法も決められません。

特記仕様は、図面に描ききれない決まりごとをまとめる場所です。とくに次の点は、書いていないと現場で判断できません。

  • 適用規格とLPSクラス:JIS Z 9290-3:2019、クラスⅣ など
  • 構造体利用の指示:使う柱、接続方法(溶接・クランプ・結束)、打設前の確認
  • 材料:導体の材料と断面積、支持金物、異種金属の接続方法、防食
  • 試験と記録:導通試験、接地抵抗の単独・総合測定、写真の撮り方と提出物
ここまでのポイント
  • 特記仕様は、図面に描ききれない決まりごとをまとめる
  • 規格・クラス・構造体利用・材料・試験は必ず書く
  • 試験と記録の方法まで書くと、竣工書類がそろう


よくある描き漏れ ― 竣工後に困るもの

描き漏れ 困ること
構造体利用の柱と接続位置 打設前に確認できない。竣工後に構造体利用かどうか分からない
試験用接続部の位置 点検のときに見つからない。接地抵抗を1本ずつ測れない
屋上機器の扱い 後から増えた機器で保護範囲が崩れても気づけない
防水貫通部の納まり 漏水の原因になる。防水工事と取り合いがつかない
接地極の埋設位置 外構工事で切断されたり、改修で位置が分からなくなる
よくある例
ペン太ペン太
竣工図って、設計図をそのまま出せばいいんですよね?
ハリタハリタ
避雷設備は、施工で位置が変わりやすいんです。引下げ導線の柱、接地極の経路、試験用接続部の位置は、実際の施工に合わせて竣工図に反映しておく。10年後の点検で、その図面だけが頼りになります。
ここまでのポイント
  • 構造体利用の柱・試験用接続部・接地極の位置は必ず描く
  • 屋上機器と防水貫通部の扱いも明記
  • 竣工図には、施工で変わった位置を反映する

よくある質問

避雷設備の設計図には、どんな図面が必要ですか?

一般に、屋上伏図(受雷部の位置と経路)、立面図(引下げ導線と保護範囲の検討)、接地極配置図、詳細図(支持金物・接続・試験用接続部)、特記仕様(適用規格・LPSクラス・材料・試験)の5種類をそろえます。建物の規模によっては、屋上伏図と立面図に詳細をまとめることもあります。

保護範囲の検討図とは何ですか?

回転球体法や保護角法で、受雷部が建物全体を守れていることを示す図です。立面図や断面図に回転球体の円や保護角の線を描き込み、建物や屋上機器が保護範囲に入っていることを示します。確認申請や設計の説明で求められることが多い図です。

特記仕様には何を書きますか?

適用規格(JIS Z 9290-3:2019)、LPSクラス、受雷部の方式、引下げ導線(専用か構造体利用か)、接地極の種類、材料と断面積・防食、試験と記録の方法を書きます。構造体を利用する場合は、使う柱と接続位置の指示も必要です。

避雷設備の図記号はどれを使いますか?

構内電気設備の配線用図記号(JIS C 0303)の避雷設備の記号を基本に、会社や案件の凡例に合わせます。どの記号を使う場合も、図面ごとに凡例を明記して、読み手が迷わないようにします。

既存建物の避雷設備の図面が見つからないときは?

現地で受雷部・引下げ導線・試験用接続部の位置を確認し、接地抵抗を測って、現況図をつくります。構造体利用かどうかは外から分かりにくいので、竣工図の構造図や当時の施工記録も探します。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。