建築消防|自火報と非常放送の連動|感知器発報放送から火災放送への切替・区分鳴動・BGMカットのしくみ
天井の感知器が煙を感じた数秒後、館内のスピーカーから「ただいま3階の火災感知器が作動しました」という女性の声が流れ、しばらくすると男性の声で「火事です。火事です」に変わります。この放送を自動で動かしているのが、自動火災報知設備(自火報)と非常放送(放送設備)の連動です。この記事では、2つの設備のあいだでどんな信号が受け渡され、放送がどう切り替わり、どの階に流れるのかを、図と条文で1つずつ丁寧に解説します。
結論
自火報の受信機は、階別信号と確認信号を放送アンプに送ります。放送は感知器発報放送(女声)→ 火災放送(男声)の2段階で、大きな建物では出火階と直上階から始まります。
- 自火報と非常放送は、どうつながっている?
- 3つの放送は、どう違う?
- 「火事です」には、いつ切り替わる?
- どの階に放送が流れる?(区分鳴動)
- BGMや音量つまみは、どうなる?
- 竣工前と点検で、何を確かめる?
つながり方 ― 受信機から放送アンプへ、2つの信号
自火報と非常放送は、別々の設備です。自火報は火災を見つけて知らせる設備、非常放送は建物じゅうに声で伝える設備。この2つが信号線でつながり、二人三脚で動きます。たとえるなら、自火報は現場を見張る見張り番、非常放送は町内に知らせる拡声器です。
| 信号 | 意味 | 放送設備の動き |
|---|---|---|
| 階別信号(EL) | どの階(区域)の感知器が作動したか | その階の名前を入れた感知器発報放送を始める |
| 確認信号(EF) | 発信機が押された、火災と確認・断定された | 火災放送に切り替える |
信号は無電圧の接点などで受け渡します。接点の仕様(電圧・パルス幅など)は機器どうしで合わせる必要があるので、自火報と放送設備のメーカーが違う場合は、早い段階で取り合いを決めておきます。
📘 放送設備があれば、自火報のベルは省略できる
消防法施行規則第24条第5号は、自火報の地区音響装置(ベル)の設け方を定めていますが、放送設備を第25条の2のとおり設置した場合は除くとしています。つまり、放送設備が自火報と連動して音声で警報を出すなら、ベルは設けなくてよいということです。また、非常警報設備の基準では、自火報と連動する放送設備は、起動装置や表示灯を省略できる場合があるとしています。
どんな建物に放送設備が必要かは「建築消防|非常警報設備の設置基準|自火報があっても放送設備が必要になる場合」で整理しています。
- 受信機 → 放送アンプへ、階別信号(EL)と確認信号(EF)
- ELで感知器発報放送、EFで火災放送
- 放送設備を基準どおり設ければ、自火報のベルは省略できる
3つの放送 ― 女声と男声で聞き分ける
非常放送の中身は、非常警報設備の基準(昭和48年消防庁告示第6号)で決まっています。
| 放送 | 声 | 構成 | 流れるとき |
|---|---|---|---|
| 感知器発報放送 | 女声 | 第1シグナル+メッセージ+無音1秒を2回以上くり返す | 感知器が作動したとき(自動) |
| 火災放送 | 男声 | 第1シグナル+メッセージを2回、第2シグナルを加えて10分以上くり返す | 火災の可能性が高まったとき(自動または手動) |
| 非火災報放送 | 女声 | 第1シグナル+メッセージ+無音1秒を2回以上くり返す | 火災でないと確認したとき(手動) |
女声は「注意してください」、男声は「逃げてください」という合図です。たとえるなら、天気予報の注意報と警報です。まず注意報(感知器発報放送)で身構えてもらい、確かな情報が入ったら警報(火災放送)で行動してもらいます。
放送設備は、起動の信号を受けてから10秒以内に放送を始めることが求められています。感知器が作動したら、すぐに館内の人に伝わるということです。
- 感知器発報放送は女声、火災放送は男声、非火災報放送は女声
- 火災放送は第2シグナルを加えて10分以上くり返す
- 起動の信号から10秒以内に放送開始
「火事です」への切り替え ― 4つのきっかけ
感知器が1つ作動しただけでは、誤作動(非火災報)の可能性もあります。そこで、まず感知器発報放送を流し、次のどれかが起きたら自動で火災放送に切り替えます(非常警報設備の基準 第四の四)。
- 発信機・非常電話が操作された:人が火災を見つけて押したので、直ちに火災放送へ
- 別の感知器も作動した:最初(第一報)とは別の感知器が作動すれば、火災の可能性が高い
- 受信機が火災と判断した:火災の可能性が高いという信号を受けたとき
- 一定の時間がたった:誰も確認できなかった場合に備えて、タイマーで自動的に移る。時間は2〜5分が目安で、建物ごとに設定する
現場を確認して火災でなかった場合は、防災センターなどから手動で非火災報放送を流し、「さきほどの火災感知器の作動は異常がありませんでした」と知らせます。
ペン太
ハリタ- 発信機・非常電話は直ちに火災放送へ
- 別の感知器・受信機の判断・タイマー(2〜5分目安)でも自動で移る
- 火災でなければ手動で非火災報放送
区分鳴動 ― まず出火階と直上階から
大きな建物で全館に一斉に「火事です」と流すと、全員が同時に階段に殺到して、かえって危険です。そこで、火に近い階から順に知らせるしくみが区分鳴動です。たとえるなら、映画館で出口に近い列から順に退場を案内するのと同じです。
| 出火階 | 最初に警報を出す範囲 |
|---|---|
| 2階以上 | 出火階+直上階 |
| 1階 | 出火階(1階)+直上階(2階)+地階 |
| 地階 | 出火階+直上階+その他の地階 |
対象は、地階を除く階数が5以上で、延べ面積が3,000m²を超える建物です。一定の時間がたったとき、または新たな火災信号を受けたときは、全区域に自動で警報を出すよう措置することが求められています。放送設備でも同じ考え方で、階ごとに区分して放送できるようにします。
- 5階以上かつ延べ3,000m²超の建物は、出火階+直上階から
- 1階の火災は地階も、地階の火災はほかの地階も
- 一定時間または新たな火災信号で全区域へ
ほかの音を止める ― BGMカットと音量の強制
どれだけ放送しても、聞こえなければ意味がありません。非常放送では、次の3つで「確実に聞こえる」ようにします。
- BGM・業務放送を止める:非常放送が始まると、非常制御信号で館内のBGMやほかの音響設備を止めます。テナントの独自の音響設備も、止められるようにしておきます
- 音量調整器を最大に:会議室などで音量を絞っていても、3線式の配線にしておけば、非常時は調整器を飛ばして最大音量で鳴らせます
- 停電しても鳴る:放送設備には非常電源(蓄電池)があり、停電しても10分以上放送できます
⚠️ あとから付けた音量つまみに注意
テナント工事や改修で、2線式の音量調整器をあとから付けてしまうと、つまみを絞った部屋では非常放送が聞こえなくなります。改修の図面では、音量調整器が3線式になっているかを必ず確認します。
- 非常放送が始まるとBGM・業務放送を自動で止める
- 3線式の音量調整器で、絞った部屋でも最大音量に
- 蓄電池で停電しても10分以上
試験と点検 ― 階の対応と切り替えを確かめる
- 階の対応:各階の感知器を作動させて、正しい階の名前で感知器発報放送が流れるか。改修でフロアの名前が変わった建物は要注意
- 起動の速さ:信号を受けてから10秒以内に放送が始まるか
- 火災放送への切り替え:発信機で直ちに切り替わるか、2つ目の感知器で切り替わるか、タイマーの時間は設定どおりか
- 区分と全館:出火階と直上階から始まり、時間や新たな信号で全館に広がるか
- ほかの音と音量:BGMが止まるか、絞った音量調整器の部屋でも聞こえるか
- 停電時:商用電源を切っても蓄電池で放送できるか
点検や工事で自火報を触るときは、放送との連動を一時的に止めて、誤って館内に放送が流れないようにします。終わったら連動を必ず元に戻し、戻したことを記録に残します。点検の資格については「建築消防|消防設備士と消防設備点検資格者|自火報の電源工事は誰がやるのか」で整理しています。
- 各階の感知器で、正しい階の名前が放送されるか
- 切り替えのきっかけ・タイマー・区分鳴動を確かめる
- 点検時の連動停止は、終わったら必ず戻す
よくある質問
自火報と非常放送はどのように連動しますか?
自火報の受信機から放送設備(放送アンプ)へ、どの階の感知器が作動したかを示す信号(階別信号)と、火災と確認・断定されたことを示す信号(確認信号)が送られます。放送設備はこれを受けて、10秒以内に自動で感知器発報放送を始め、条件がそろうと火災放送に切り替えます。
感知器発報放送と火災放送の違いは何ですか?
感知器発報放送は、感知器が作動した段階で流れる女声の放送で、「ただいま○階の火災感知器が作動しました」と知らせます。火災放送は、火災の可能性が高まった段階で流れる男声の放送で、「火事です。火事です。○階で火災が発生しました」と避難を促します。火災放送は第2シグナルとともに10分以上くり返します。
火災放送にはいつ切り替わりますか?
非常警報設備の基準では、発信機や非常電話が操作されたとき(直ちに)、最初とは別の感知器が作動したとき、受信機が火災の可能性が高いと判断したときに、自動で火災放送に移ります。また、感知器発報放送から一定の時間がたったときにも移るよう、タイマーを設定します(2〜5分が目安)。
放送設備があれば、自火報のベル(地区音響装置)はいりませんか?
消防法施行規則第24条では、放送設備を第25条の2の基準どおりに設置した場合は、自火報の地区音響装置を設けないことができるとされています。放送設備が自火報と連動して、音声で警報を発するためです。
区分鳴動とは何ですか?
大きな建物で全館に一斉に警報を出すと、階段に人が殺到して危険なため、まず出火階とその直上階などに限って警報を出すしくみです。地階を除く階数が5以上で延べ面積が3,000m²を超える建物が対象で、一定の時間がたったときや新たな火災信号を受けたときは、全区域に自動で警報を出します。
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