技術図書館非常用発電機の合図は火災ではなく停電40秒以内の発停の流れ、火災時の一般負荷遮断、設備ごとの使用時間この資料をスライドで見る資料一覧を見る

火災で建物が停電すると、消火ポンプも排煙機も止まってしまいます。そこで出番になるのが非常用発電機です。ところで、発電機を動かす合図は「火災」でしょうか、それとも「停電」でしょうか。答えは停電です。では、自火報と発電機はどこでつながっているのか。この記事では、自動火災報知設備(自火報)と非常用発電機の発停について、発電機が動いて止まるまでの流れ、火災時の一般負荷遮断、非常電源の使用時間まで、図で1つずつ丁寧に解説します。

結論

非常用発電機は停電で自動始動し、40秒以内に送電します。自火報の信号は、火災のときに一般負荷を切り離して防災負荷に容量を回すために使います。

  • 始動の合図は停電。停電から電圧確立・投入まで40秒以内(自家発電設備の基準)
  • 復電したら切り戻し、冷却運転をしてから止まる
  • 防災と一般を兼ねる発電機は、火災の信号で一般負荷を遮断する方式がある(条件つき)
  • 非常電源の使用時間は設備ごとに違う(自火報10分、消火栓・排煙30分など)
停電で発電機が自動始動し40秒以内に防災負荷へ送電する流れと、自火報とのかかわりとして一般負荷の遮断、運転・故障の表示、自火報自体の電源の3つを示した全体像
発電機を動かすのは「停電」。自火報とのかかわりは3つです。

動かす合図 ― 火災ではなく「停電」

非常用発電機は、たとえるならリレーの第2走者です。第1走者の商用電源がバトンを落としたら(停電したら)、すぐに走り出して、電気を送り続けます。走り出す合図は「停電」で、火災かどうかは関係ありません。火災でなくても、停電すれば発電機は動きます。

設備 動き出す合図 電源
非常用発電機 停電(常用電源の電圧がなくなる) 自分で発電する
自火報 火災(感知器・発信機の作動) 停電したら、受信機の予備電源(蓄電池)などで動く
消火ポンプ・排煙機など 火災(起動の信号) 停電したら、発電機から電気をもらう
一般的な構成の例

自火報が発電機を待たずに蓄電池で動くのは、発電機が立ち上がるまでの数十秒のあいだも、火災を見張り続けなければならないからです。

ここまでのポイント
  • 発電機を動かす合図は「停電」
  • 自火報は蓄電池で、発電機を待たずに動き続ける
  • 消火ポンプや排煙機は、停電時は発電機の電気で動く

発停の順番 ― 停電から復電まで

停電を検出して発電機が始動し、電圧を確立して切替器で防災負荷へ送電し、復電したら商用電源へ切り戻して冷却運転のあと停止するまでを示した動く図解
動く図解:停電を検出してから、発電機が止まるまでの8つのステップ。

非常用発電機の発停は、次の順番で進みます。

  1. 停電を検出:不足電圧継電器などが、常用電源の電圧がなくなったことを見つける
  2. 始動:セルモーターでエンジン(原動機)を回す
  3. 電圧確立:回転数と電圧が安定する
  4. 切替・投入:切替器(ATSなど)で負荷を発電機側につなぎ、送電する。停電から電圧確立・投入まで40秒以内
  5. 復電を確認:常用電源が戻り、安定したことを確かめる
  6. 切り戻し:負荷を常用電源側へ戻す
  7. 冷却運転:負荷を外したまましばらく回して、エンジンを冷ます
  8. 停止:止まって、次の停電に備える

自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)では、常用電源が停電したときに自動的に電圧確立・投入・送電が行われること、停電してから電圧確立及び投入までの所要時間が40秒以内であることとされています。系統図の読み方は「非常用発電機・UPS・蓄電池の仕様書と系統図の読み方|kVA と kW・ATS・27・常時インバータ・バイパス・制御弁式・浮動充電を分解する【図面の見方・読み方⑥】」で解説しています。

ここまでのポイント
  • 停電検出 → 始動 → 電圧確立 → 切替・投入まで40秒以内
  • 復電したら切り戻し、冷却運転のあと停止
  • 始動・切替・切り戻しはすべて自動で行う


火災時の一般負荷遮断 ― 防災負荷に容量を回す

発電機の容量に防災負荷と一般負荷を積むと容量を超えてしまうが、自火報の火災の信号で一般負荷の遮断器を切り離すと防災負荷が収まる様子と、その条件の例を示した動く図解
動く図解:火災の信号で一般負荷を切り離すと、防災負荷が発電機の容量に収まります。

発電機を、消火ポンプや排煙機などの防災負荷だけでなく、照明やコンセント、サーバーなどの一般負荷にも使うことがあります。停電しても仕事を続けたい建物では、よくある計画です。ただ、両方を合わせると、発電機がとても大きくなってしまいます。

そこで使われるのが火災時の一般負荷遮断です。ふだんの停電では一般負荷にも電気を送り、火災の信号が来たら一般負荷を切り離して、防災負荷に容量を回します。たとえるなら、救急車が来たら一般の車が道をあけるのと同じです。

条件の例 理由
二次的な災害が起きないこと 一般負荷を切っても、人命や設備に危険が生じない
感知器が全館を警戒していること どこで火災が起きても、確実に遮断の信号が出る
誤報に強い受信方式(アナログ方式・蓄積機能など) 誤報のたびに一般負荷が切れないようにする
遮断の回路は耐火配線・耐熱配線 火災の熱で回路が切れて、遮断できなくなるのを防ぐ
さいたま市の消防用設備等に関する審査基準の例をもとに作成。条件は消防本部ごとに確認する
ペン太ペン太
一般負荷を切るなら、最初から防災負荷だけの発電機にすればいいんじゃないですか?
ハリタハリタ
それも一つの答えです。ただ、停電のときに病院の照明やサーバーを止められない建物もあります。「ふだんの停電では全部に送り、火災のときだけ防災負荷を優先する」ことで、発電機を2台持たずに済むんです。どちらにするかは、建物の使い方と費用で決めます。
ここまでのポイント
  • 防災と一般を兼ねる発電機は、火災の信号で一般負荷を切る方式がある
  • この方式なら、一般負荷を容量に入れずに済む場合がある
  • 全館警戒・誤報対策・耐火耐熱配線などの条件を消防本部に確認


使用時間 ― 設備ごとに動かし続ける時間

非常電源で動かし続ける時間の例として、自火報・非常警報10分、誘導灯20分、屋内消火栓・スプリンクラー・排煙30分、不活性ガス・粉末消火設備60分、連結送水管の加圧送水装置・総合操作盤120分を棒グラフで示した図
非常電源で動かし続ける時間は、設備ごとに違います。

非常電源は、設備ごとに何分以上動かし続けられるかが決まっています。発電機の燃料は、定格負荷での連続運転可能時間に消費される量以上を持つことが求められます(自家発電設備の基準)。

考え方 内容
全負荷同時起動 原則として、すべての防災負荷を同時に起動できる容量にする
順次投入 5秒以内ごとに順番に電気を送る装置を設ける場合は、すべての消防用設備等に40秒以内に電源を送れるようにする
同時に使わない設備 同時に使わない設備があれば、いちばん大きい組み合わせで容量を計算できる
燃料 連続運転可能時間に消費する量以上を燃料槽に持つ
自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)、さいたま市の審査基準の例をもとに作成
ここまでのポイント
  • 使用時間は自火報10分、消火栓・排煙30分、総合操作盤120分など設備ごと
  • 全負荷同時起動が原則。順次投入でも40秒以内に全部へ
  • 燃料は、連続運転可能時間ぶん以上

表示と取り合い ― 防災センターへ知らせること

発電機の制御盤から、運転中・故障・燃料の残量・一般負荷を遮断中の信号を防災センターの総合操作盤へ送る構成を示した図
火災と停電が重なったとき、発電機の状態が一目でわかるようにします。

火災と停電が重なると、防災センターでは「発電機は動いているか」「燃料はもつか」「一般負荷は切れているか」を知る必要があります。発電機の制御盤から、次のような信号を送ります。

信号 確認すること
運転中 停電で発電機が動いているか
故障 始動の失敗、過電流、冷却水の異常などが起きていないか
燃料の残量 長い停電のとき、補給が必要か
一般負荷を遮断中 火災の信号で一般負荷を切り離しているか
一般的な計画の例

エレベーターの停電時の管制運転も、発電機の運転の信号を使います(「建築消防|自火報とエレベーターの連動|火災時管制運転のしくみと信号、非常用エレベーターとの違い」)。防災センターの表示と操作については「建築消防|総合操作盤はいつ義務になるか|規則12条1項8号のイ・ロ・ハと2つの告示」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 運転・故障・燃料・一般負荷遮断中を防災センターに表示
  • エレベーターの停電時管制運転にも発電機の信号を使う
  • 火災と停電が重なったときの状態を一目でわかるように


試験と点検 ― 動く・送る・切る・戻るを確かめる

停電試験、一般負荷遮断、負荷運転、燃料、表示、切り戻しの6つの確認ポイントを並べた図
竣工前の試験と定期点検で確かめる6つのポイント。
  • 停電試験:実際に停電させて、自動で始動し、40秒以内に送電するか
  • 一般負荷遮断:火災の信号を入れて、一般負荷が切り離されるか。防災負荷は止まらないか
  • 負荷運転:総合点検では、定格出力の30%以上の負荷で運転する負荷運転か、内部観察などを行う
  • 燃料:必要な時間を運転できる量があるか
  • 表示:運転・故障・燃料・一般負荷遮断中が防災センターに出るか
  • 切り戻し:復電で常用電源に戻り、冷却運転のあと止まるか

⚠️ 停電試験は、建物じゅうの設備に影響する

停電試験では、エレベーター・空調・サーバーなどが一斉に止まったり切り替わったりします。自火報と一緒に試験すると、一般負荷の遮断やエレベーターの管制運転も動きます。日時と範囲を建物の管理者と事前に決め、試験のあとはすべての設備が元に戻ったかを確認します。

ここまでのポイント
  • 停電試験で、自動始動と40秒以内の送電を確認
  • 火災の信号で一般負荷が切れるかも試す
  • 試験の影響範囲を事前に調整し、復旧まで確認

よくある質問

非常用発電機は、自火報の信号で始動するのですか?

いいえ。非常用発電機が始動する合図は「停電」です。常用電源の電圧がなくなったことを検出して自動で始動し、消防の基準では停電から40秒以内に電圧を確立して投入することが求められています。自火報の信号は、発電機を動かすためではなく、火災時に一般負荷を切り離して防災負荷に容量を回すためなどに使われます。

停電から40秒以内というのは、どこで決まっていますか?

自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)で、常用電源が停電してから電圧確立及び投入までの所要時間は40秒以内であることとされています。順次投入する場合も、すべての消防用設備等に40秒以内に電源を供給できるようにします。

火災時の一般負荷遮断とは何ですか?

発電機を防災負荷と一般負荷(照明やコンセントなど)の両方に使う場合に、火災の信号で一般負荷を切り離し、発電機の容量を消火ポンプや排煙機などの防災負荷に回すしくみです。この方式にすると、一般負荷を発電機の容量に加えずに済む場合がありますが、二次的な災害が起きないこと、感知器が全館を警戒していることなどの条件があり、消防本部ごとに確認が必要です。

自火報は停電したらどうなりますか?

自火報は、受信機の予備電源(蓄電池)などで、停電しても動き続けます。発電機が立ち上がるまでの時間を待たずに火災を見張り続ける必要があるからです。非常電源の使用時間は、自火報では10分以上とされるのが一般的です。

非常用発電機の点検では何をしますか?

機械点検では無負荷で5〜10分程度運転して状態を確かめ、総合点検では定格出力の30%以上の負荷で運転する負荷運転か、内部観察などを行います。あわせて、停電させて自動で始動・送電するか、火災の信号で一般負荷が切り離されるかといった連動も確かめます。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。