【単線結線図の見方②】引込とPAS/UGS ― 点線の責任分界点から読み、地絡はすぐ・短絡は待って切る元栓を知る
家の水道管が破裂したら、道路の本管ごと止めたりはしません。自分の家の元栓だけを閉めます。高圧で電気を受けるビルにも、この元栓にあたる機器があります。それがPAS(UGS)です。第2回は、単線結線図のいちばん上、電力会社との境目にある引込部の読み方を見ていきます。
結論
図面のいちばん上の点線が責任分界点、そのすぐ内側のPAS(地中ならUGS)が自分の事故を外に出さない元栓です。PASは遮断器ではなく、地絡はすぐ、短絡は待ってから切り離します。
- 点線から内側は自分の持ち物・自分の責任
- 架空引込はPAS、地中引込はUGS
- 記号の横のGR付・DGR付まで読む
- 短絡の大電流を切るのはVCBや変電所
引込部は「電力会社との境目」
高圧で受電するビルや工場は、電力会社の配電線(6,600V)から電気を分けてもらっています。同じ配電線には、となりのビルや工場もつながっています。その配電線から自分の敷地へ入るところが引込部で、境目の線を責任分界点といいます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 責任分界点 | ここから内側の設備は、保守も事故の責任も需要家(自分)が負う |
| 財産分界点 | 設備の持ち主が分かれる点(多くは責任分界点と同じ位置) |
| 区分開閉器 | 分界点のすぐ内側に置く開閉器。架空はPAS、地中はUGS |
| 波及事故 | 自分の構内の事故で、同じ配電線のほかの建物まで停電させること |
PASは、いわば自分の敷地の元栓です。構内で地絡が起きたとき、自分だけを配電線から切り離して、となりの建物を巻き込まないようにします。分界点の決め方や契約の考え方は、引込・受電設備の設計マニュアル④でくわしく扱っています。
- 配電線から敷地へ入るところ
- 点線から内側は自分の責任
- PASは自分の敷地の元栓
図面では「点線」と「開閉器の記号」
単線結線図のいちばん上を見ると、電力会社の配電線のすぐ下に点線が引かれ、その内側に開閉器の記号があります。記号のまわりの文字まで読むと、どんなPASなのかがわかります。
| 図面の表記 | 読み方 |
|---|---|
| 点線と「責任分界点」 | 電力会社と自分の境目。ここから内側が自分の設備 |
| 開閉器の記号+「PAS」 | 架空引込の区分開閉器(地中なら「UGS」) |
| 「GR付」「DGR付」 | 地絡を見つける継電器の種類(DGR付は方向も見る) |
| ZCT・ZPD | 地絡の電流(ZCT)と電圧(ZPD)を取り出す部品。PASに組み込み |
| 「LA内蔵」 | 雷の電圧を逃がす避雷器がPASに入っている |
| 引込ケーブルの傍記 | ケーブルの種類と太さ(例 CVT)。斜線の数は線の本数 |
- 点線が責任分界点
- 開閉器の記号にPAS・UGS
- GR付・DGR付まで読む
架空ならPAS、地中ならUGS
区分開閉器は、電気の引き込み方で決まります。前の道路の電線が電柱なら架空引込でPAS、道路の下なら地中引込でUGSです。
| 項目 | PAS | UGS |
|---|---|---|
| 引込方式 | 架空引込 | 地中引込 |
| 名前 | 気中負荷開閉器 | 地中線用負荷開閉器 |
| 置き場所 | 第1号柱の上(高所) | 高圧キャビネットの中(地上) |
| 絶縁 | 空気(Air) | ガス(Gas) |
| 点検 | 高所作業車が要ることが多い | 地上で扉を開けて点検できる |
地中引込の高圧キャビネットは、1つの箱の中に電力会社の分岐装置と自分のUGSが並んでいます。箱は同じでも、中で持ち主が変わるのがポイントです。引込方式の決め方は引込・受電設備の設計マニュアル③で扱っています。
- 架空はPAS・柱の上
- 地中はUGS・キャビネットの中
- 役目は同じ区分開閉器
PASの動き ― 地絡はすぐ、短絡は待ってから
PASは開閉器で、遮断器ではありません。ふだんの負荷電流や小さな地絡電流は切れますが、短絡の大きな電流は切れません。そこでSOG制御(蓄勢・過電流・地絡の頭文字)で、事故の種類によって動きを変えます。
| 事故 | PASの動き | 理由 |
|---|---|---|
| 地絡 | ZCTが見つけて、その場でPASを開く | 地絡電流は小さいのでPASでも切れる |
| 短絡 | すぐには開かず「切る」と記憶(蓄勢)。変電所が遮断して無電圧になった瞬間に開く | 短絡の大電流はPASでは切れない |
| そのあと | 変電所の再閉路で配電線に電気が戻る | 自分は切り離されているので、となりは復電する |
- PASは遮断器ではない
- 地絡はすぐ切る
- 短絡は無電圧になってから
間違えやすいところ
よくある読み違い
- PASを遮断器だと思う:短絡の大電流は切れません。切るのはVCBなどの主遮断装置と変電所の遮断器です。
- 電柱の上だから電力会社のものと思う:PASは原則として需要家の持ち物で、点検も更新も自分側で行います。
- GR付・DGR付を読み飛ばす:構内のケーブルが長いのにGR付だと、もらい事故の原因になります。
- 点線を確かめずに停電範囲を考える:分界点より外側は電力会社の設備で、自分では操作できません。
- 低圧受電の図面にもPASがあると思う:PAS・UGSは高圧受電の設備です。
次回は、分界点の内側に続くVCTと電力量計(取引用の計器)の読み方です。全体の流れは第1回で見ています。
- PASは遮断器ではない
- PASは自分の持ち物
- 点線から先を読む
よくある質問
PASとは何ですか?
気中負荷開閉器のことで、架空で引き込む高圧受電の建物の入口(第1号柱の上)に付ける区分開閉器です。自分の構内で地絡が起きたとき、自分の設備を配電線から切り離して、となりの建物まで停電させないようにします。
UGSとの違いは何ですか?
UGSは地中線用の開閉器で、地中で引き込むときに使います。地上の高圧キャビネットの中に入り、絶縁はガスです。PASは柱の上に付き、絶縁は空気です。役目は同じ区分開閉器で、どちらになるかは引込方式で決まります。
単線結線図のどこに描かれていますか?
いちばん上(電力会社の配電線のすぐ下)です。縦または横に引いた点線が責任分界点で、そのすぐ内側に開閉器の記号と「PAS」または「UGS」の文字、「DGR付」などの添え書きがあります。
PASは電力会社の持ち物ですか?
原則として需要家(建物側)の持ち物です。電柱の上にあるので電力会社のものと思われがちですが、点検も更新も需要家の費用と責任で行います。分界点の位置は電力会社との協議や契約で確かめます。
PASは短絡事故のときも電気を切りますか?
切りません。PASは開閉器で、短絡の大きな電流を切る力がありません。短絡のときはいったん開かずに記憶し、変電所の遮断器が切れて無電圧になった瞬間に開きます。構内の短絡を切るのは主遮断装置(VCBなど)の仕事です。
GR付とDGR付はどちらを選びますか?
いまはDGR付(方向性)が基本です。構内の高圧ケーブルが長いと、よその地絡でもGR付が動いてしまう「もらい事故」が起きやすいためです。DGR付はZCTの電流とZPDの電圧から、事故が構内か構外かを見分けます。
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