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家の水道管が破裂したら、道路の本管ごと止めたりはしません。自分の家の元栓だけを閉めます。高圧で電気を受けるビルにも、この元栓にあたる機器があります。それがPAS(UGS)です。第2回は、単線結線図のいちばん上、電力会社との境目にある引込部の読み方を見ていきます。

結論

図面のいちばん上の点線が責任分界点、そのすぐ内側のPAS(地中ならUGS)が自分の事故を外に出さない元栓です。PASは遮断器ではなく、地絡はすぐ、短絡は待ってから切り離します。

  • 点線から内側は自分の持ち物・自分の責任
  • 架空引込はPAS、地中引込はUGS
  • 記号の横のGR付・DGR付まで読む
  • 短絡の大電流を切るのはVCBや変電所
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
自分のビルで地絡が起きると1号柱の上のPASが開いて自分だけを配電線から切り離し、となりのビルや工場は停電しない場面から、単線結線図のいちばん上の点線の責任分界点とPAS(DGR付)の記号、架空引込のPASと地中引込のUGSの使い分け、地絡はすぐ・短絡は待ってから切るSOGの動きを示す動く図解
約50秒でくり返します。使っている場面から、図面の記号、PASとUGS、SOGの動きの順に見ます。

引込部は「電力会社との境目」

高圧で受電するビルや工場は、電力会社の配電線(6,600V)から電気を分けてもらっています。同じ配電線には、となりのビルや工場もつながっています。その配電線から自分の敷地へ入るところが引込部で、境目の線を責任分界点といいます。

用語 意味
責任分界点 ここから内側の設備は、保守も事故の責任も需要家(自分)が負う
財産分界点 設備の持ち主が分かれる点(多くは責任分界点と同じ位置)
区分開閉器 分界点のすぐ内側に置く開閉器。架空はPAS、地中はUGS
波及事故 自分の構内の事故で、同じ配電線のほかの建物まで停電させること
分界点の位置は電力会社との協議や契約で決まります。

PASは、いわば自分の敷地の元栓です。構内で地絡が起きたとき、自分だけを配電線から切り離して、となりの建物を巻き込まないようにします。分界点の決め方や契約の考え方は、引込・受電設備の設計マニュアル④でくわしく扱っています。

ここまでのポイント
  • 配電線から敷地へ入るところ
  • 点線から内側は自分の責任
  • PASは自分の敷地の元栓

図面では「点線」と「開閉器の記号」

単線結線図のいちばん上を見ると、電力会社の配電線のすぐ下に点線が引かれ、その内側に開閉器の記号があります。記号のまわりの文字まで読むと、どんなPASなのかがわかります。

図面の表記 読み方
点線と「責任分界点」 電力会社と自分の境目。ここから内側が自分の設備
開閉器の記号+「PAS」 架空引込の区分開閉器(地中なら「UGS」)
「GR付」「DGR付」 地絡を見つける継電器の種類(DGR付は方向も見る)
ZCT・ZPD 地絡の電流(ZCT)と電圧(ZPD)を取り出す部品。PASに組み込み
「LA内蔵」 雷の電圧を逃がす避雷器がPASに入っている
引込ケーブルの傍記 ケーブルの種類と太さ(例 CVT)。斜線の数は線の本数
記号の形や書き方は図面ごとに少し違います。凡例とあわせて読みます。
読み方のコツ:図面を渡されたら、まず点線(責任分界点)を指でさせるかを確かめます。停電作業の範囲も、事故のときの責任も、すべてこの線が基準になります。記号の種類については設計マニュアル③ 図記号・文字記号・器具番号の読み方で整理しています。
ここまでのポイント
  • 点線が責任分界点
  • 開閉器の記号にPAS・UGS
  • GR付・DGR付まで読む


架空ならPAS、地中ならUGS

区分開閉器は、電気の引き込み方で決まります。前の道路の電線が電柱なら架空引込でPAS、道路の下なら地中引込でUGSです。

項目 PAS UGS
引込方式 架空引込 地中引込
名前 気中負荷開閉器 地中線用負荷開閉器
置き場所 第1号柱の上(高所) 高圧キャビネットの中(地上)
絶縁 空気(Air) ガス(Gas)
点検 高所作業車が要ることが多い 地上で扉を開けて点検できる
どちらになるかは、電力会社との事前協議で確かめます。

地中引込の高圧キャビネットは、1つの箱の中に電力会社の分岐装置と自分のUGSが並んでいます。箱は同じでも、中で持ち主が変わるのがポイントです。引込方式の決め方は引込・受電設備の設計マニュアル③で扱っています。

ここまでのポイント
  • 架空はPAS・柱の上
  • 地中はUGS・キャビネットの中
  • 役目は同じ区分開閉器

PASの動き ― 地絡はすぐ、短絡は待ってから

PASは開閉器で、遮断器ではありません。ふだんの負荷電流や小さな地絡電流は切れますが、短絡の大きな電流は切れません。そこでSOG制御(蓄勢・過電流・地絡の頭文字)で、事故の種類によって動きを変えます。

事故 PASの動き 理由
地絡 ZCTが見つけて、その場でPASを開く 地絡電流は小さいのでPASでも切れる
短絡 すぐには開かず「切る」と記憶(蓄勢)。変電所が遮断して無電圧になった瞬間に開く 短絡の大電流はPASでは切れない
そのあと 変電所の再閉路で配電線に電気が戻る 自分は切り離されているので、となりは復電する
構内の短絡事故を切るのは、主遮断装置(VCBなど)の役目です。
読み方のコツ:PASの横に「DGR付」とあれば、ZCTの電流とZPDの電圧の両方を見て、事故が構内か構外かを見分けるタイプです。構内のケーブルが長いと、よその地絡でも動いてしまう「もらい事故」が起きやすいため、いまはDGR付が基本です。選び方は地絡継電器「方向性」の判断基準で扱っています。
ここまでのポイント
  • PASは遮断器ではない
  • 地絡はすぐ切る
  • 短絡は無電圧になってから


間違えやすいところ

よくある読み違い

  1. PASを遮断器だと思う:短絡の大電流は切れません。切るのはVCBなどの主遮断装置と変電所の遮断器です。
  2. 電柱の上だから電力会社のものと思う:PASは原則として需要家の持ち物で、点検も更新も自分側で行います。
  3. GR付・DGR付を読み飛ばす:構内のケーブルが長いのにGR付だと、もらい事故の原因になります。
  4. 点線を確かめずに停電範囲を考える:分界点より外側は電力会社の設備で、自分では操作できません。
  5. 低圧受電の図面にもPASがあると思う:PAS・UGSは高圧受電の設備です。

次回は、分界点の内側に続くVCTと電力量計(取引用の計器)の読み方です。全体の流れは第1回で見ています。

ここまでのポイント
  • PASは遮断器ではない
  • PASは自分の持ち物
  • 点線から先を読む

よくある質問

PASとは何ですか?

気中負荷開閉器のことで、架空で引き込む高圧受電の建物の入口(第1号柱の上)に付ける区分開閉器です。自分の構内で地絡が起きたとき、自分の設備を配電線から切り離して、となりの建物まで停電させないようにします。

UGSとの違いは何ですか?

UGSは地中線用の開閉器で、地中で引き込むときに使います。地上の高圧キャビネットの中に入り、絶縁はガスです。PASは柱の上に付き、絶縁は空気です。役目は同じ区分開閉器で、どちらになるかは引込方式で決まります。

単線結線図のどこに描かれていますか?

いちばん上(電力会社の配電線のすぐ下)です。縦または横に引いた点線が責任分界点で、そのすぐ内側に開閉器の記号と「PAS」または「UGS」の文字、「DGR付」などの添え書きがあります。

PASは電力会社の持ち物ですか?

原則として需要家(建物側)の持ち物です。電柱の上にあるので電力会社のものと思われがちですが、点検も更新も需要家の費用と責任で行います。分界点の位置は電力会社との協議や契約で確かめます。

PASは短絡事故のときも電気を切りますか?

切りません。PASは開閉器で、短絡の大きな電流を切る力がありません。短絡のときはいったん開かずに記憶し、変電所の遮断器が切れて無電圧になった瞬間に開きます。構内の短絡を切るのは主遮断装置(VCBなど)の仕事です。

GR付とDGR付はどちらを選びますか?

いまはDGR付(方向性)が基本です。構内の高圧ケーブルが長いと、よその地絡でもGR付が動いてしまう「もらい事故」が起きやすいためです。DGR付はZCTの電流とZPDの電圧から、事故が構内か構外かを見分けます。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。