消防設備編⑤ 非常電源のきほん
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📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら

消防設備編の①・③・④で、何度も「非常電源」という言葉が出てきました。感知器・受信機・放送設備・非常用照明――どの設備も、止まってしまっては意味がありません。今日はその非常電源そのものを主役にして、じっくり見ていきます。
キーワードは「発電機」「蓄電池」「キュービクル式非常電源専用受電設備」の3つ。名前は難しそうですが、それぞれの役割はシンプルです。
先輩、非常電源って結局、非常用の電池みたいなものですよね?
半分正解、半分不正解、かな。蓄電池のように「貯めておく」タイプもあれば、発電機のように「その場で作る」タイプ、さらに「別ルートで受け取る」タイプもある。今日はこの3つを整理しよう。
3種類もあるんですね。全部の建物に、3つとも付いているんですか?
いや、建物の規模や用途によって、どれか1つ、あるいは組み合わせて採用される。まずはそれぞれの特徴を知ることから始めよう。
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非常電源、3つの方式を比べる

発電機と蓄電池、どちらも「電気を作る・貯める」という点では似ていますよね?
似ているようで、得意分野が違うんだ。発電機は燃料さえあれば長時間動き続けられるから、大規模な建物や、長い供給時間が必要な設備に向いている。蓄電池は貯めた分しか使えないけど、起動が速いのが強み。
キュービクル式非常電源専用受電設備は、消防設備編①で少し出てきましたね。
よく覚えてたね。これは発電も蓄電もせず、電力会社からの引込みを2系統に分けて停電リスクを下げる方式。片方のルートが止まっても、もう片方から電気を受け取れるようにする、という発想なんだ。
なぜ非常電源が複数の方式に分かれているのか
1つの方式に統一されていない理由を、もう少し掘り下げてみましょう。
全部の建物に発電機を付ければ、一番安心なのでは……?
発電機は頼もしいけど、設置スペースも工事費も大きくなる。小規模な建物にオーバースペックな発電機を付けるのは、コストの面でも現実的じゃない。建物の規模と必要な電力量に見合った方式を選ぶのが設計の腕の見せどころなんだ。
小規模な建物なら、蓄電池だけで十分ということもあるんですか?
その通り。小規模な建物なら蓄電池設備だけで足りることも多い。逆に、大規模で消防用設備の種類が多い建物では、発電機とキュービクル式を組み合わせて計画することもある。
必要容量の考え方、5ステップ

①でやった「防火対象物の区分」が、ここでも出てくるんですね。
うん。区分によって、その建物に必要な消防用設備の種類・数量が変わり、それがそのまま非常電源に求められる容量に直結する。①〜④で学んだ設備の知識が、⑤の容量計算の土台になっているんだ。
消費電力の積算って、具体的にどうやるんですか?
感知器・受信機・放送設備・誘導灯・非常用照明――それぞれの消費電力を、設置台数分だけ足し合わせていく。今日の時点では「積み上げて容量を決める」という流れを理解できれば十分。細かい計算は先輩と一緒に進めていけばいい。
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防火対象物別の設置基準を読む
実際の設計では、防火対象物ごとに定められた非常電源の設置基準を確認することになります。ここで実務のイメージをつけておきましょう。
防火対象物ごとの基準って、自分でゼロから調べるものなんですか?
いや、既存の詳細記事や資料に、防火対象物別の非常電源の設置基準がまとめられている。新人のうちは、そうした資料を見ながら「この建物はどの区分に当たるか」を先輩と一緒に確認していく、という進め方で十分だよ。
区分さえ分かれば、あとは資料を見ればいいんですね、少し安心しました。
その通り。大事なのは、区分を間違えないこと。区分を間違えると、必要な非常電源の容量そのものが変わってしまうから、そこだけは慎重に確認しよう。
非常電源の切り替えと復電の考え方
非常電源は「起動して終わり」ではありません。停電から復旧するまでの一連の流れも、設計者として押さえておきたいポイントです。
非常電源が動き始めたあと、常用電源に戻るときって、どうなるんですか?
停電が復旧すると、自動または手動で常用電源側に切り替わる仕組みになっている。この切り替えを「復電」と呼ぶんだけど、切り替えの瞬間に一瞬でも電気が途切れると困る設備もあるから、切替方式も設計のポイントになる。
一瞬でも途切れると困る設備って、たとえばどんなものですか?
感知器や受信機のように、常に監視状態を保っていないといけない設備がそうだね。だから非常電源の設計では、起動時間だけでなく、常用電源への切り戻し方まで含めて計画することが大切なんだ。
切り替えのタイミングも、設計段階で決めておくものなんですね。
そう。方式によって自動切替か手動切替かも変わってくる。新人のうちは「起動して終わりではなく、復電までが非常電源の役割」という意識を持っておくといいよ。
非常電源と、これまで学んだ設備のつながり
ここで、これまでの消防設備編で学んだ内容と、非常電源のつながりを整理しておきましょう。
①〜④で出てきた設備、全部が非常電源とつながっているんですね……。
その通り。②の感知器・受信機、③の放送設備・誘導灯、④の非常用照明――どれも非常電源が止まったら機能しない。今日学んだ非常電源は、これまでの設備すべてを裏で支えている縁の下の力持ちなんだ。
こうやって振り返ると、消防設備編で学んできたことが、全部つながって見えてきました。
いいね、その感覚が大事。次回、消防設備編最終回では、これらの設備がどうやって検査され、実際に使われるようになるかという「手続きの流れ」を扱う。設備の知識と、手続きの知識、両方がそろって初めて一人前だよ。
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⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- 非常電源を「1種類あれば十分」と考え、方式ごとの得意分野を理解していない
- 建物の規模に見合わない方式(過大・過小)を選んでしまう
- 防火対象物の区分を確認せず、必要な非常電源容量を見誤る
- キュービクル式非常電源専用受電設備を、発電機や蓄電池と同じものだと誤解する
- 分電盤・幹線設計で非常電源系統の負荷計上を忘れる
- これまでの警報設備(②③④)と非常電源のつながりを意識せず、個別に設計してしまう
まとめ ― 今日の1枚
- 非常電源には「自家発電設備(発電機)」「蓄電池設備」「キュービクル式非常電源専用受電設備」の3方式がある
- 発電機は長時間・大容量向き、蓄電池は起動が速く小〜中規模向き
- キュービクル式非常電源専用受電設備は、2系統受電で停電リスクを下げる方式
- 建物の規模・必要な供給時間・設置スペースを見て、方式を選ぶ・組み合わせる
- 容量は「用途→区分→設備の洗い出し→消費電力の積算→容量・時間の決定」の順で決まる
- 非常電源は、これまで学んだ感知器・放送設備・誘導灯・非常用照明すべてを支える設備
詳しい設置基準・防火対象物別の考え方は、既存の詳細記事もあわせてどうぞ。受変電設備の設計|キュービクル式非常電源専用受電設備について詳しく解説で、実際の仕組みまで詳しく解説しています。
次回・消防設備編⑥(最終回)では、消防同意・検査の流れを扱います。これまで学んできた設備の知識を、実際の手続きの流れの中でどう使うのか、消防設備編の締めくくりとして整理していきましょう。
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