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絶縁抵抗の基準表や、住宅の「対地電圧150V以下」の決まりを読むと、「使用電圧」と「対地電圧」が同じ表に並んで出てきます。どちらも「〇〇V」なので、どれを当てはめればいいのか迷いやすいところです。この記事は、2つの電圧の違いと、法令の表での読み分け方、6,600Vのまわりに出てくる公称・最大使用・定格の電圧までを、この順にほどいていきます。

ペン太ペン太
絶縁抵抗の表に「使用電圧300V以下」と「対地電圧150V以下」が両方出てきて、混乱します…。
ハリタハリタ
それはよくある質問だよ。測る場所が違う2つの電圧なんだ。まず測る場所から整理しよう。
はじめての方へ:まず言葉の意味
使用電圧は線と線のあいだ、対地電圧は線と大地のあいだ、決まりは両方を見る、を3コマで示す動く図解
ひとことで言うと
「使用電圧」は電線どうしのあいだの電圧、「対地電圧」は電線と大地のあいだの電圧です。同じ回路でも、測る場所が違うので数字が変わります。
読み方
しようでんあつ/たいちでんあつ
どこで出てくる?
絶縁抵抗の基準、住宅の150V以下の決まり、低圧・高圧の区分、絶縁耐力試験、機器の仕様書、第二種電気工事士や電験の法規。

結論

使用電圧は電線どうしのあいだの電圧(電路を代表する線間電圧=公称電圧)、対地電圧は電線と大地のあいだの電圧です。単相3線式100/200Vなら使用電圧200V・対地電圧100V。法令の表は「先に使用電圧、次に対地電圧」の順で当てはめます。

  • 同じ「200V」でも、単相3線式は対地100V、三相3線式は対地200V
  • 絶縁抵抗は、使用300V以下かつ対地150V以下なら0.1MΩ以上
  • 最大使用電圧は使用電圧×1.15(1,000V以下)、×1.15/1.1(高圧)
  • 6,600V→6,900V→試験10,350V、機器の定格は7.2kV

この記事に出てくる言葉

読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。

言葉 読み方 やさしい説明
使用電圧 しようでんあつ 電路を代表する、電線どうしの電圧。公称電圧と同じ意味。
公称電圧 こうしょうでんあつ 電路の呼び名としての電圧。100V・200V・6,600Vなど。
線間電圧 せんかんでんあつ 2本の電線のあいだの電圧。
対地電圧 たいちでんあつ 電線と大地のあいだの電圧。感電の危なさに直結する。
最大使用電圧 さいだいしようでんあつ ふだんの使い方で電路にかかる最大の線間電圧。試験電圧のもとになる。
定格電圧 ていかくでんあつ 機器が「この電圧で使える」と決めて作られた電圧。7.2kVなど。
B種接地 ビーしゅせっち 変圧器の低圧側の1本(中性点)を大地につなぐ接地。
先に理解しておきたいこと

2つの電圧を読み分けるために、土台になる考え方を3つだけ押さえておきましょう。

1

電圧は「2点のあいだ」で決まる

電圧は、どこか1点だけでは決まりません。どこからどこまでを測るかで、同じ電線でも100Vにも200Vにもなります。

2

変圧器の1本を大地につないでいる(B種接地)

低圧の電路は、変圧器のところで1本(または中性点)をB種接地しています。その線と大地のあいだは0Vになり、ほかの線と大地のあいだの電圧が決まります。

3

感電で体にかかるのは、多くの場合「対地電圧」

人は大地に立って電線にさわるので、体には電線と大地のあいだの電圧がかかります。だから安全の決まりは対地電圧で線を引きます。

どこが違う? ― 測る「2点」が違う

使用電圧は、電気設備技術基準の解釈(第1条)で「電路を代表する線間電圧」と決められています。カッコ書きで「公称電圧」とも書かれていて、100V・200V・6,600Vのように、その電路の呼び名になる電圧です。

対地電圧は、電線と大地のあいだの電圧です。内線規程の用語では、接地式の電路では電線と大地のあいだ、非接地式の電路では電線と同じ電路のほかの電線とのあいだの電圧、と決められています。

赤と黒200V
赤と白100V
赤と大地100V
白と大地0V

家の分電盤に来ている単相3線式100/200Vで確かめます。赤と黒のあいだは200Vで、これが使用電圧です。白(中性線)は電柱の変圧器でB種接地されているので、白と大地のあいだは0V。すると、赤と大地、黒と大地のあいだは100Vになります。これが対地電圧です。

たとえるなら
使用電圧は「階と階の差」、対地電圧は「地面からの高さ」
ビルの2階と4階の床の差(線間)を測るのか、地面から4階の床までの高さ(対地)を測るのか、の違いです。地面と同じ高さの1階(B種接地した白い線)がどこにあるかで、地面からの高さが決まります。落ちたときに危ないのは、地面からの高さのほうです。
ここに注意!
「200Vの回路だから、対地電圧も200V」とは限りません。
単相3線式の200Vは線間の数字で、対地電圧は100Vです。逆に三相3線式200Vは1線を接地するので、残り2線の対地電圧は200Vになります。数字が同じでも、配電方式で対地電圧は変わります。
ここまでのポイント
  • 使用電圧=電路を代表する線間電圧(公称電圧)
  • 対地電圧=電線と大地のあいだの電圧
  • 単相3線式100/200Vは使用200V・対地100V

配電方式で比べる ― 同じ200Vでも対地は2通り

ペン太ペン太
同じ200Vなのに、対地電圧が100Vだったり200Vだったりするんですか?
ハリタハリタ
そう。変圧器のどの線を大地につないでいるかで決まるんだ。配電方式で見比べると分かりやすいよ。

対地電圧は、変圧器のどこをB種接地しているかで決まります。代表的な配電方式を並べると、次のとおりです。

単相3線200V/100V
三相3線200V/200V
三相4線415V/240V
高圧6,600V
配電方式 使用電圧 対地電圧 接地しているところ
単相2線式 100V 100V 100V(片方は0V) 片方の線
単相3線式 100/200V 200V 100V 中性線
三相3線式 200V 200V 200V 1線
三相4線式 415/240V 415V 240V 中性点
高圧 6,600V(非接地式) 6,600V 6,600V(定義上) なし
三相3線式200VはΔ結線で1線を接地した場合。接地のしかたが違えば対地電圧も変わります。

高圧の6,600Vは、配電線のどの線も大地につないでいない非接地式です。そのため、対地電圧は定義どおり線間と同じ6,600Vとして扱います。ただし実際に大地とのあいだに出ている電圧は、3本がつり合っていれば約3,810V(6,600÷√3)です。非接地にしている理由は中性点接地の記事で説明しています。

ここに注意!
検電器が白い線で光らないのは、こわれているからではありません。
検電器は対地電圧に反応します。単相3線式の白は対地電圧0Vなので、正常なら光りません。使い方と注意点は検電器の使い方にまとめています。
ここまでのポイント
  • 対地電圧はB種接地の場所で決まる
  • 単相3線式は対地100V、三相3線式200Vは対地200V
  • 高圧6,600Vは非接地式で、定義上は対地も6,600V


絶縁抵抗の表は、どちらで読む? ― 先に使用、次に対地

ペン太ペン太
で、結局、絶縁抵抗は何MΩで見ればいいんですか?
ハリタハリタ
使用電圧を先に見て、300V以下なら次に対地電圧を見る。この2段の順番さえ覚えれば迷わないよ。

2つの電圧がいちばん並んで出てくるのが、低圧の電路の絶縁抵抗の基準(電気設備技術基準 第58条)です。

電路の使用電圧の区分 絶縁抵抗値
300V以下 対地電圧が150V以下 0.1MΩ以上
300V以下 その他の場合 0.2MΩ以上
300Vを超えるもの ― 0.4MΩ以上
出典:電気設備に関する技術基準を定める省令 第58条の表

表は2段になっています。まず使用電圧で300V以下かどうかを分け、300V以下なら次に対地電圧で150V以下かどうかを分けます。順番どおりに当てはめれば迷いません。

0.1MΩ対地150V以下
0.2MΩ300V以下の残り
0.4MΩ300V超
単相3線200V0.1MΩ

住宅の分電盤から出る100Vと200Vの回路は、どちらも対地電圧100Vなので0.1MΩ以上です。工場の三相200Vの動力は0.2MΩ以上、400V級の動力は0.4MΩ以上になります。数字の根拠は絶縁抵抗値の基準の解説で詳しく見られます。

住宅の屋内の電路を対地電圧150V以下にする決まり(電技解釈 第143条)も、見ているのは対地電圧です。200Vのエアコンが住宅で使えるのは、単相3線式の対地電圧が100Vだからです。くわしくは内線規程【001】対地電圧の制限を見てください。

ここに注意!
「200Vの回路だから0.2MΩ」は読み違いです。
単相3線式の200V回路は、使用電圧200Vでも対地電圧100Vなので、いちばん上の0.1MΩ以上の区分です。表の左側(使用電圧)だけを見て決めないようにします。
ここまでのポイント
  • 絶縁抵抗の表は、使用電圧→対地電圧の順に当てはめる
  • 単相3線式の100V・200V回路は0.1MΩ以上
  • 住宅の150V以下の決まりも、見ているのは対地電圧


公称・最大使用・定格はどうつながる? ― 6,600Vで追う

ペン太ペン太
6,600V・6,900V・7.2kV…数字がたくさんあって覚えられません。
ハリタハリタ
全部つながってるんだ。公称から係数を掛けて最大使用、そこから試験電圧。機器はそれより少し上の定格で作る、という流れさ。

使用電圧(公称電圧)は、電路の呼び名です。実際の電圧は少し上下するので、試験や機器選びには、もう少し高い電圧を使います。

公称6,600V
最大使用6,900V
定格7.2kV
試験10,350V
電圧 高圧の例 低圧の例 決め方・使いみち
使用電圧(公称電圧) 6,600V 100V・200V 電路を代表する線間電圧(電技解釈 第1条)
最大使用電圧 6,900V 115V・230V 使用電圧×係数。1,000V以下は1.15、1,000V超500,000V未満は1.15/1.1
定格電圧(機器) 7.2kV 機器ごと VCB・PAS・LBSなどの高圧機器は7.2kVで作られる
絶縁耐力試験電圧 10,350V ― 最大使用電圧×1.5(7,000V以下)。ケーブルを直流で試すときはその2倍の20,700V(電技解釈 第15条)
電力会社が守る範囲 ― 101±6V・202±20V 標準電圧100V・200Vに対する範囲(電気事業法施行規則 第38条)

なお、低圧・高圧の区分(電気設備技術基準 第2条)も電圧で分けています。交流は600V以下が低圧、7,000V以下が高圧、7,000Vを超えると特別高圧です。6,600Vが7,000Vの少し下に決まっているわけはなぜ高圧は6,600Vなのかで読めます。

たとえるなら
公称電圧は「身長の呼び名」、最大使用電圧は「靴をはいたときの高さ」
170cmの人でも、靴をはけば少し高くなります。ドアの高さ(機器の定格)は、靴をはいた高さより上に作ります。さらに安全を確かめるときは、もっと高いバー(試験電圧)をくぐらせてみます。
ここに注意!
仕様書の「7.2kV」を、電路の電圧と取り違えないようにします。
7.2kVは機器の定格電圧で、使っている電路は6,600Vです。逆に、受電設備の電路の電圧を書く欄に7.2kVと書くのは誤りです。
ここまでのポイント
  • 使用電圧(公称電圧)×係数=最大使用電圧
  • 6,600V→最大使用6,900V→試験10,350V
  • 機器の定格7.2kVは、電路の電圧より少し上で作る


まとめ|結論

結論

使用電圧は電路を代表する線間電圧(公称電圧)、対地電圧は電線と大地のあいだの電圧です。安全の決まりは対地電圧で、区分の大枠は使用電圧で線を引くので、法令の表は「先に使用電圧、次に対地電圧」の順で読みます。

表や仕様書で「〇〇V」が出てきたら、この順で確かめます。

  1. 線と線のあいだか、線と大地のあいだか
  2. 配電方式と、B種接地している線はどれか
  3. 公称の電圧か、最大使用電圧か、機器の定格電圧か
  4. 表の区分は、使用電圧→対地電圧の順に当てはめる

よくある質問

使用電圧と対地電圧の違いは何ですか?

使用電圧は、その電路を代表する電線どうしの電圧(線間電圧)です。対地電圧は、電線と大地のあいだの電圧です。単相3線式100/200Vなら、使用電圧は200V、対地電圧は100Vになります。

使用電圧と公称電圧は同じですか?

電気設備技術基準の解釈では「使用電圧(公称電圧)」と並べて書かれ、どちらも電路を代表する線間電圧を指します。6,600Vや200Vのように、電路の呼び名として使う電圧です。

最大使用電圧はどうやって求めますか?

公称電圧の電路なら、使用電圧に係数を掛けます。1,000V以下は1.15倍、1,000Vを超え500,000V未満は1.15/1.1倍です。6,600Vなら6,900V、100Vなら115Vです。絶縁耐力試験の試験電圧は、この最大使用電圧をもとに決まります。

単相3線式の200V回路の絶縁抵抗は0.1MΩですか、0.2MΩですか?

0.1MΩ以上です。使用電圧は200V(300V以下)ですが、対地電圧が100V(150V以下)なので、いちばん上の区分に入ります。三相3線式200Vのように対地電圧も200Vになる回路が0.2MΩ以上です。

高圧6,600Vの対地電圧は何Vですか?

6,600Vの配電線は非接地式なので、対地電圧の定義(電線と同じ電路のほかの電線とのあいだの電圧)では6,600Vとして扱います。ふだん大地とのあいだに出ている電圧は、約3,810V(6,600÷√3)です。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。