非常コンセント設備と無線通信補助設備は、消防用設備等のなかでも性格が変わっています。建物の利用者が使う設備ではなく、駆けつけた消防隊が使う設備だからです。避難のためでも初期消火のためでもなく、消防隊が破壊器具や照明を使い、無線で連絡を取るための「足場」を建物側に用意しておく、という発想の設備です。

どちらも工事の中身はほぼ電気工事です。ところがこの2つは消防設備士でなければ行ってはならない工事に指定されていません。着工届も不要です(設置届は必要)。この非対称を知らないまま進めると、届出の段取りで慌てることになります。

この記事では、消防法施行令第29条の2・第29条の3と施行規則第31条の2・第31条の2の2をe-Gov法令APIで確認しながら、義務判定・設置位置・回路構成・非常電源・届出までを電気設計の視点で整理します。実務でよく言われる「階段の出入口から5m以内」が国の政省令には存在しないことも、条文で確認したうえで説明します。

この2つは「消防隊のための設備」

非常コンセント設備は、高層建築物や地階で消火活動を行うときに、消防隊が現地で扉や窓を破壊する器具の電源、あるいは排煙機や照明の電源を取るための設備です。無線通信補助設備は、地階や地下街のように電波の通りが悪い場所で、消防隊が無線機を使って連絡を取れるようにするための設備です。

どちらも建物の利用者は触りません。消防用設備等の分類でいうと「消火活動上必要な施設」で、排煙設備・連結散水設備・連結送水管・消防用水と同じグループです。設計するときは「誰が、どんな状況で使うのか」を先にイメージしておくと、位置決めの判断がぶれません。

設置義務|対象になる建物がまったく違う

この2設備はセットで語られがちですが、設置対象は大きく違います。

2設備は「対象になる建物」が違う非​常コンセント設備(令第29条の2)対象①地階を除く階数が11以上の建築物(令別表第一に掲げる建築物)→ 設置するのは「11階以上の階」対象②地下街(十六の二)項で延べ面積 1,000㎡ 以上→ 設置するのは「地階」共通:その階の各部分から水平距離 50m 以下階段室・非常用エレベーターの乗降ロビー等で消​防隊が有効に消火活動を行うことができる位置無線通信補助設備(令第29条の3)対象地下街(十六の二)項で延べ面積 1,000㎡ 以上→ これ1つだけ11階以上の建築物は対象外高層ビルに非​常コンセントはあっても無線通信補助設備の義務はない無​線機接続端子は2か所に設ける① 地上で消​防隊が有効に活動できる場所② 防​災センター等どちらも「消火活動上必要な施設」。建物の利用者ではなく、駆けつけた消​防隊が使う設備という点が共通HARITA
図1:非常コンセント設備は11階以上の建築物と地下街、無線通信補助設備は地下街のみが対象
設備 根拠 設置対象
非常コンセント設備 令第29条の2第1項第1号 令別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が11以上のもの(設置するのは11階以上の階)
令第29条の2第1項第2号 令別表第一(十六の二)項=地下街で、延べ面積1,000㎡以上のもの(設置するのは地階)
無線通信補助設備 令第29条の3第1項 令別表第一(十六の二)項=地下街で、延べ面積1,000㎡以上のもののみ

無線通信補助設備は地下街だけが対象です。11階以上の高層ビルは対象になりません。高層ビルで無線が入りにくいという問題は現実にありますが、それは消防法上の義務ではなく、施主要望や自治体の指導によって設ける話になります。「非常コンセントがあるなら無線通信補助設備もあるはず」という思い込みで積算すると外します。

水平距離50m|連結送水管と同じ考え方

非常コンセントの配置は、令第29条の2第2項第1号でその階の各部分から一の非常コンセントまでの水平距離が50m以下と定められています。11階以上の階も地下街の地階も、どちらも50mです。

この50mという数字と「階段室、非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所」という位置指定は、連結送水管の放水口とほぼ同じ考え方です。消防隊はホースを持って階段を上がってくるので、縦動線の脇にまとめて置くのが理にかなっています。実際の設計でも、連結送水管の放水口と非常コンセントを同じ階段室・同じ乗降ロビーに並べる例がほとんどです。

なお、建築基準法側にも対応する規定があります。建築基準法施行令第129条の13の3第3項第8号は、非常用エレベーターの乗降ロビーの構造として「屋内消火栓、連結送水管の放水口、非常コンセント設備等の消火設備を設置できるものとすること」と定めています。乗降ロビーは耐火構造の床・壁で囲まれ、特定防火設備で区画され、予備電源付きの照明を備え、非常用エレベーター1基につき10㎡以上の面積を確保する空間です。消防隊の活動拠点として設計された部屋だからこそ、そこに電源を置く構成になっています。


非常コンセント設備の細目|規則第31条の2の全10号

規則第31条の2は10号構成で、数字がはっきり書かれている条文です。図面と施工要領に直結するので、そのまま押さえておく価値があります。

非​常コンセントの保護箱と要件FL非​常コンセント赤色の灯火保護箱は埋込式FL+1.0〜1.5m高さ床面又は階段の踏面からの高さが 1メートル以上1.5メートル以下規則第31条の2第1号保護箱埋込式の保護箱内に設ける/表面に「非​常コンセント」と表示規則第31条の2第2号・第9号イコンセントJ​IS C 8303 の接​地形二極コンセント(定格15A・125V)刃受の接​地極に接​地工事 | 規則第31条の2第3号・第4号供給電力単相交流100ボルトで15アンペア以上の電気を供給できるもの令第29条の2第2項第2号表示灯保護箱の上部に赤色の灯火を設ける/その回路の配線は耐​熱配線規則第31条の2第9号ロ・ハ回路各階において2以上の回路(1個のときは1回路可)/1回路に10個以下規則第31条の2第6号・第7号HARITA
図2:非常コンセントは床面から1.0〜1.5mの埋込式保護箱内に設け、上部に赤色の灯火を設ける

コンセントの規格|「接地形二極・15A125V」

第3号は日本産業規格C8303の接地形二極コンセントのうち定格が15アンペア125ボルトのものと指定しています。いわゆる2P+E(アース付きの3極)です。第4号で刃受の接地極に接地工事を施すことも求められています。

古い建物では、保護箱の中に照明用の接地形二極コンセントと動力用の三相コンセントが並んでいる例を見かけます。市販の解説書でもそうした設置例図が載っていることがありますが、現行の規則第31条の2第3号が規定しているのは接地形二極コンセント(15A125V)だけです。既存建物の改修で図面と現物が食い違う場合は、設置年と当時の基準を確認してください。

回路|「各階2回路以上」「1回路10個以下」

第6号は非常コンセントに電気を供給する電源からの回路は、各階において2以上となるように設けることとしています。ただし階ごとの非常コンセントの数が1個のときは1回路でかまいません。第7号は1回路に接続する非常コンセントの数は10以下です。

この2つの号は、幹線計画とEPSの盤スペースに直接効いてきます。各階2回路が原則なので、たとえば11〜20階の10層に非常コンセントを設ける建物では、最低でも20回路分を非常電源側から供給する計画になります。「非常コンセントは各階1個だから回路も1本」と早合点しないことです。

電源と非常電源

第5号は電源を規則第24条第3号の規定の例により設けるとしています。すなわち「蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとる」「電源の開閉器にその旨を表示する」という専用回路の要求です。

第8号は非常電源を規則第12条第1項第4号の規定に準じて設けるとしています。ここが少し込み入っているので分けて書きます。

  • 種別は非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備。ただし特定防火対象物で延べ面積1,000㎡以上のものは非常電源専用受電設備が使えず、自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備に限られます
  • 容量は有効に30分間以上
  • 非常電源からの配線は、耐火構造とした主要構造部に埋設するなど耐火配線とすること(MIケーブル又は消防庁長官が定める基準に適合する電線を使用する場合を除く)

令第29条の2第1項第2号の地下街は令別表第一(十六の二)項=特定防火対象物で、しかも延べ面積1,000㎡以上が要件です。つまり地下街の非常コンセント設備では、非常電源専用受電設備は必ず使えません。11階以上の建築物のほうは、その建築物が特定防火対象物かどうか・延べ面積がいくらかで分かれます。消防用設備の非常電源|4種類の違いと選び方もあわせてご覧ください。

表示灯の配線は耐熱配線

第9号ロの赤色の灯火について、ハで「灯火の回路の配線は、第12条第1項第5号の規定の例による」とされています。規則第12条第1項第5号は、600V二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線を使い、金属管工事・可とう電線管工事・金属ダクト工事又はケーブル工事により設ける、という耐熱配線の規定です。

非常電源からの本体回路は耐火配線、表示灯回路は耐熱配線。同じ盤から出る2種類の配線で要求が違うので、電線種別の指定を図面に明記しておくと現場で迷いません。

総合操作盤の準用

第10号は規則第12条第1項第8号の規定を非常コンセント設備について準用しています。総合操作盤が義務になる規模の建物では、非常コンセント設備も総合操作盤に載ります。詳しくは総合操作盤はいつ義務になるかをご覧ください。

非​常コンセントの回路構成13F回路①回路②12F回路①回路②11F回路①回路②10F10階以下は設置対象外(地下街の場合は地階が対象)耐​火配線非​常電源自​家発電設備/蓄​電池設備/燃​料電池設備 容量30分以上各階に2以上の回路ただし階ごとの非​常コンセントが1個のときは1回路でよい(規則31条の2第6号)1回路に10個以下1つの回路に接続する非​常コンセントの数の上限(第7号)電源は専用回路蓄電池又は交流低圧屋内幹​線から他の配線を分岐させずにとる(第5号)非​常電源からは耐​火配線特定防火対象物で1,000㎡以上は非常電源専用受電設備を使えない(第8号)HARITA
図3:非常電源から耐火配線で立ち上げ、各階2回路以上・1回路10個以下で分ける

実務でよく言われる「階段室の出入口から5m以内」は、国の政省令には存在しません。令第29条の2・規則第31条の2を通して条文上の距離要件は「その階の各部分から一の非常コンセントまでの水平距離50m以下」だけです。5mや3mといった数値は、各消防本部の審査基準・指導基準に書かれているものです。所轄が変わると数字も変わりうるので、根拠を「政省令」と「審査基準」で分けて持っておいてください。


無線通信補助設備|漏えい同軸ケーブルで電波を届ける

無線通信補助設備は、地階や地下街のように電波の通りが悪い場所で、消防隊が無線機を使えるようにするための設備です。構成は同軸ケーブル、漏えい同軸ケーブル、分配器、混合器、分波器、無線機接続端子、増幅器です。

無線通信補助設備の系統無​線機接続端子(地上)保護箱の表面は赤色に塗色GL地下1階地下2階防​災センター等無​線機接続端子増​幅器非​常電源 30分以上分​配器同​軸ケーブル終端抵​抗器終端抵​抗器漏えい同​軸ケーブル(LCX)漏えい同​軸ケーブル(LCX)消​防隊公称イ​ンピーダンスは50オーム。漏えい同​軸ケーブル等は難燃性を有し、湿気で電気的特性が劣化せず、耐熱性を有するように設置無​線機接続端子はJ​IS C 5411のC01形コネクター、床面又は地盤面から0.8m以上1.5m以下。周波数帯は消防長又は消防署長が指定HARITA
図4:地上と防災センター等の無線機接続端子から同軸ケーブルで分配器へ、そこから漏えい同軸ケーブルを地階に敷設する

漏えい同軸ケーブル(LCX)とは

同軸ケーブルは、テレビのアンテナ引込にも使われる丸い断面のケーブルで、外側にアルミの外部導体があり、その内側に絶縁体に包まれた芯線が入っています。通常はこの構造のおかげで電波が外に漏れません。

漏えい同軸ケーブル(LCX:Leaky Coaxial Cable)は、このアルミ外部導体にスロットと呼ばれる切れ目を規則的に入れたものです。このスロットから電波が外に放射され、また外の電波を拾うことができるため、ケーブル自体が細長いアンテナのように働きます。地下通路の天井に沿って敷設すれば、通路全体で無線が通じるという仕組みです。

図4のように、電波の放射が必要な区間だけをLCXにして、それ以外の区間は通常の同軸ケーブルでつなぐのが基本的な組み方です。LCXの末端には終端抵抗器を設けて反射を抑えます。

規則第31条の2の2の主な要件

項目 内容
方式 漏えい同軸ケーブル、漏えい同軸ケーブルとこれに接続する空中線、又は同軸ケーブルとこれに接続する空中線。周波数帯は消防長又は消防署長が指定 第1号
インピーダンス 公称インピーダンスは50オーム。接続する空中線・分配器等も整合させる 第2号
ケーブルの性能 難燃性を有し、かつ湿気により電気的特性が劣化しないもの 第3号
設置方法 耐熱性を有するように、かつ金属板等により電波の輻射特性が低下しないように設置。支持金具等で堅固に固定 第4号・第5号
増幅器 電源は規則第24条第3号の例(専用回路)。非常電源を附置し、容量は有効に30分間以上。防火上有効な措置を講じた場所に設ける 第7号
無線機接続端子 地上で消防隊が有効に活動できる場所及び防災センター等に設ける。JIS C 5411のC01形コネクター。床面又は地盤面から0.8m以上1.5m以下。保護箱は堅ろうでみだりに開閉できない構造とし、防塵・防水措置。保護箱の表面は赤色に塗色し「無線機接続端子」と表示 第8号
共用 警察の無線通信その他の用途と共用する場合は、消防隊相互の無線連絡に支障のない措置を講じる 第10号

「保護箱を赤く塗る」のは無線通信補助設備のほうです。非常コンセント設備の規則第31条の2には保護箱の色の規定がなく、あるのは「埋込式」「表面に『非常コンセント』と表示」「上部に赤色の灯火」だけです。一方、無線通信補助設備の無線機接続端子は規則第31条の2の2第8号ニ(ロ)で保護箱の表面を赤色に塗色することが明記されています。混同しやすいところです。

高さも違います。非常コンセントは1.0m以上1.5m以下、無線機接続端子は0.8m以上1.5m以下。数十cmの差ですが、どちらも条文の数値なので図面の姿図には正しく書き分けてください。


非常電源の供給時間|設備ごとの早見表

非常コンセント設備も無線通信補助設備も非常電源が必要です。どちらも30分ですが、使える非常電源の種類は設備ごとに違います。全体を並べると位置づけが見えやすくなります。

設備の種類 供給時間 専用受電 自家発電 蓄電池 燃料電池
屋内消火栓設備 30分
スプリンクラー設備 30分
水噴霧消火設備 30分
泡消火設備 30分
不活性ガス消火設備 1時間 ×
ハロゲン化物消火設備 1時間 ×
粉末消火設備 1時間 ×
屋外消火栓設備 30分
自動火災報知設備 10分 × ×
ガス漏れ火災警報設備 10分 × ※1 ※1
非常警報設備 10分 × ×
誘導灯 20分 ※2 × × ×
排煙設備 30分
連結送水管 2時間
非常コンセント設備 30分
無線通信補助設備 30分 × ×
非常用進入口赤色灯 ※3 30分
非常用の照明装置 ※3 30分

※1 1分間蓄電池設備又は予備電源で補完できる場合に限る。/※2 大規模・高層建築物の主要な避難経路に設置する場合は60分。/※3 非常用進入口赤色灯・非常用の照明装置は建築基準法により設置するもの。

この表は各設備の技術基準を横断してまとめた早見表です。表で「専用受電○」となっている設備でも、特定防火対象物で延べ面積1,000㎡以上のものは非常電源専用受電設備が使えないという共通の制限(規則第12条第1項第4号の柱書)がかかります。非常コンセント設備の場合、地下街(十六の二項=特定防火対象物)で1,000㎡以上が対象なので、地下街では必ず自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備のいずれかになります。

消防設備士の独占業務ではない|着工届は不要、設置届は必要

ここは段取りに直結する話です。消防法施行令第36条の2は、消防設備士でなければ行ってはならない工事・整備の対象設備を号で列挙しています。

  • 工事(第1項):屋内消火栓設備/スプリンクラー設備/水噴霧消火設備/泡消火設備/不活性ガス消火設備/ハロゲン化物消火設備/粉末消火設備/屋外消火栓設備/自動火災報知設備/ガス漏れ火災警報設備/消防機関へ通報する火災報知設備/金属製避難はしご(固定式)/救助袋/緩降機
  • 整備(第2項):上記に加えて消火器、漏電火災警報器

非常コンセント設備と無線通信補助設備は、この列挙のどこにも出てきません(連結送水管・排煙設備も同様です)。したがって消防設備士の独占業務ではありません。

手続 非常コンセント設備・無線通信補助設備 根拠
着工届(工事着手の10日前まで) 不要 法第17条の14の対象は令第36条の2第1項の工事。この2設備は不掲載
設置届・検査 必要 法第17条の3の2。令第35条第2項で除外されるのは簡易消火用具と非常警報器具だけ
消防設備士による工事・整備 義務ではない 令第36条の2に不掲載

「着工届は不要だが設置届は必要」という非対称になります。工事の段取りとしては、着工届の10日前ルールに縛られない一方で、竣工前の設置届と消防検査には確実に間に合わせる必要があるということです。もっとも、実際の工事では自動火災報知設備など着工届が必要な設備と同時に進むことがほとんどなので、全体の届出スケジュールのなかで扱うことになります。


共同住宅用非常コンセント設備という選択肢

共同住宅には、通常の非常コンセント設備に代えて使える共同住宅用非常コンセント設備があります。根拠は平成17年総務省令第40号と関係告示で、特定共同住宅等として構造類型が定められた建物で、通常用いられる消防用設備等(非常コンセント設備)に代えて用いることができるものです。

11階以上の共同住宅は非常コンセント設備の対象になるので、タワーマンションの設計ではこの選択肢が現実的な検討対象になります。構造類型と設置できる設備の対応は特定共同住宅等の消防用設備|構造類型と階数で決まる早見表で整理しています。省令40号そのものの位置づけについては消防用設備の3つのルートと令32条特例もあわせてご覧ください。

電気設計での実務ポイント

1. 縦動線に「3点セット」でまとめる

非常コンセント・連結送水管の放水口・非常用エレベーター乗降ロビーは、いずれも消防隊の活動拠点に集まります。階段室と乗降ロビーの平面を早い段階で機械設備・建築と共有し、3点セットの配置を固めておくと、後から壁の埋込位置でもめることが減ります。埋込式の保護箱なので、壁厚と下地の確認も同時に必要です。

2. 回路数を早めに数える

各階2回路以上・1回路10個以下という制約から、回路数は「対象階数×2」が下限になります。この回路が全部非常電源から耐火配線で立ち上がるので、EPSの断面と非常電源盤の主幹容量に効きます。11階以上が20層あれば40回路です。基本設計の段階で概算しておかないと、あとで幹線ルートの見直しになります。

3. 耐火配線と耐熱配線を図面で書き分ける

本体回路は耐火配線、表示灯回路は耐熱配線。同じ保護箱に入る2系統で要求が違います。凡例と電線種別表に明記し、施工要領書でも分けて書いてください。

4. 無線通信補助設備は「地下街だけ」を前提に確認する

義務は地下街1,000㎡以上だけです。高層ビルや地下駐車場で「電波が入らないので何とかしてほしい」という要望が出ることはありますが、それは消防法上の義務とは別枠の話になります。施主要望として設ける場合、機器選定も設置基準も自由度が高くなる代わりに、性能をどう担保するかを別途決める必要があります。

5. LCXは建築の仕上げと干渉しやすい

規則第31条の2の2第4号は「金属板等により電波の輻射特性が低下することのないように設置すること」としています。金属天井や金属ダクトの直近を通すと性能が落ちます。天井内のルートは、ダクト・ケーブルラック・スプリンクラー配管と競合しやすいので、総合図での調整項目に必ず挙げておいてください。

まとめ

  • 非常コンセント設備=地階を除く階数11以上の建築物(11階以上の階)と地下街1,000㎡以上(地階)。無線通信補助設備=地下街1,000㎡以上のみ。11階以上の建築物は無線通信補助設備の対象外
  • 非常コンセントはその階の各部分から水平距離50m以下で、階段室・非常用エレベーターの乗降ロビー等に設ける
  • 高さは1.0m以上1.5m以下埋込式の保護箱、JIS C 8303の接地形二極コンセント(15A125V)、刃受の接地極に接地工事
  • 供給電力は単相交流100Vで15A以上。回路は各階2以上1回路10個以下
  • 本体回路は耐火配線、表示灯回路は耐熱配線。非常電源は30分以上(地下街では専用受電設備は不可)
  • 「階段の出入口から5m以内」は国の政省令にはない。各消防本部の審査基準による
  • 無線機接続端子は0.8m以上1.5m以下保護箱の表面は赤色に塗色。非常コンセントの保護箱には色の規定がなく、赤いのは上部の灯火
  • どちらも消防設備士の独占業務ではなく、着工届も不要。ただし設置届と検査は必要

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参考・根拠

  • 消防法施行令 第29条の2(非常コンセント設備)、第29条の3(無線通信補助設備)、第35条(設置届の対象)、第36条の2(消防設備士でなければ行つてはならない工事又は整備) ― e-Gov法令検索
  • 消防法施行規則 第31条の2(非常コンセント設備の細目)、第31条の2の2(無線通信補助設備の細目)、第12条第1項第4号(非常電源)・第5号(耐熱配線)・第8号(総合操作盤)、第24条第3号(電源) ― e-Gov法令検索
  • 消防法 第17条の3の2(設置届)、第17条の5、第17条の14(着工届) ― e-Gov法令検索
  • 建築基準法施行令 第129条の13の3第3項第8号(非常用エレベーターの乗降ロビーの構造) ― e-Gov法令検索
  • 平成17年総務省令第40号及び関係告示(共同住宅用非常コンセント設備)
  • 防災研究会AFRI『図解入門ビジネス 最新消防法と設備がよ〜くわかる本』秀和システム(2024年)

条文の引用は趣旨を要約した箇所を含みます。非常電源供給時間の早見表は各設備の技術基準を横断して整理したもので、個々の適用には各条文と所轄消防本部の運用の確認が必要です。設計・申請にあたっては必ず最新の法令原文をご確認ください。

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