技術図書館電流だけでは決まらない|何秒耐えるかで決まる通電時間は変電所の継電器が動くまでの0.2秒。短時間許容電流が短絡電流を上回れば選定できるこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は、連載「引込・受電設備の設計マニュアル」の 第3回 引込方式とルート・第4回 責任分界点とPAS・UGS の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

高圧ケーブルが短絡すると、ふだんの何百倍もの電流が一気に流れます。その電流が止まるまでのほんの0.3秒ほどの間に、導体が熱くなりすぎて絶縁が傷まないか。高圧引込ケーブルのサイズは、この「短絡電流に何秒耐えるか」で下限が決まります。この記事では、配電用変電所の過電流継電器(OCR)の動作時間と遮断器の遮断時間から通電時間を決め、A=I√t/134 でサイズを判定する方法を、3つの質問と動く図で整理します。

①短絡電流が流れる間、導体は熱をため続けるので、長く流れるほど太いケーブルが要る、②通電時間は変電所OCRの動作0.2秒+遮断器0.1秒=0.3秒で見るのが実務的、③A=I√t/134で必要な断面積を出し、選んだサイズがそれ以上ならOKです。

ブラウザでそのまま使える登録不要ツール

この記事の方法で高圧ケーブルサイズを選定するなら、姉妹サイト「セコサポ」の高圧ケーブルサイズ選定ツール(6.6kV CVT・短絡電流対応・登録不要)が便利です。

この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

先に言葉をそろえる

言葉 ひとことで言うと
短絡電流 電線どうしが直接つながったときに流れる、とても大きな電流
短絡容量 受電点で起こりうる短絡の大きさ[MVA]。電力会社に確かめる値
OCR 過電流継電器。電流が設定を超えると遮断器に信号を送る
通電時間 t 短絡が起きてから、遮断器が電流を切り終わるまでの時間
短時間許容電流 そのケーブルが t 秒のあいだ耐えられる短絡電流
CV・CVT(架橋ポリエチレン絶縁・銅導体)ケーブルの場合で説明します。

質問① なぜ通電時間が効く?

短絡電流が流れる間、導体の温度は上がり続けます。細いケーブルは許容温度を超え、太いケーブルは許容温度以内に収まります。

短絡電流が流れると、導体には電流の2乗×時間に比例した熱がたまります。遮断されるまでの短い時間は熱が逃げる暇がないので、導体の温度はどんどん上がります。架橋ポリエチレンの許容温度を超えると絶縁が傷むため、遮断されるまでに許容温度を超えない断面積が必要です。同じ短絡電流でも、流れる時間が長いほど太いケーブルが要ります。

たとえるなら
短絡に耐えるのは、熱いフライパンを素手で持つようなものです。
一瞬なら平気でも、長く持つほど手は熱くなります。厚い鍋つかみ(太いケーブル)なら、同じ時間でも熱が伝わりにくい。だから「どれだけ熱いか(短絡電流)」と「何秒持つか(通電時間)」の両方で、鍋つかみの厚さ(断面積)を決めます。
ここまでのポイント
  • 短絡の熱は「電流の2乗×時間」でたまる
  • 遮断されるまでに許容温度を超えない断面積が必要
  • 通電時間が長いほど太いケーブルが要る

質問② 通電時間は何秒で見る?

短絡が起きてから、変電所のOCRが0.2秒で動作し、遮断器が0.1秒かけて電流を切り終わるので、通電時間は合計0.3秒で見ます。

引込ケーブル(受電点から自分の受電用遮断器まで)で短絡が起きると、その電流を切るのは電力会社の配電用変電所の遮断器です。変電所のOCRの動作時間は0.2秒として扱われることが多いのですが、実際に電流が止まるのは、そのあと遮断器が電流を切り終えたときです。遮断時間は50Hzで5サイクル=0.1秒が目安なので、合計0.3秒で見るのが実務的です。

ひっかけ注意
「通電時間=OCRの動作時間0.2秒」だけでは、遮断器の時間が抜けています。
OCRは「切れ」という信号を出すまでの時間で、電流を止めるのは遮断器です。0.2秒で計算すると耐える時間を短く見て、細めのサイズを選んでしまうことがあります。電力会社から動作時間を聞けた場合は、その値に遮断時間を足します。

なお、受電用の遮断器(VCB+OCR)は、変電所のOCRより先に動作するように整定します(保護協調)。自分の構内の事故で配電線全体を止めないためです。受電用遮断器より負荷側のケーブルは、その遮断器の動作時間で検討できます。

ここまでのポイント
  • 引込ケーブルの短絡は変電所の遮断器が切る
  • 通電時間はOCR 0.2秒+遮断器 0.1秒=0.3秒で見る
  • 受電用遮断器は変電所より先に動くように整定する


質問③ どう判定する?

t=0.3秒のとき、短時間許容電流は22sqで5.4kA、38sqで9.3kA、60sqで14.7kA、100sqで24.5kAです。短絡電流6.47kAなら38sq以上、12.5kAなら60sq以上が必要です。

必要な断面積 A = I × √t / 134 [mm²]

Iは短絡電流[A]、tは通電時間[秒]、134はCV(架橋ポリエチレン絶縁・銅導体)の係数です。反対に、あるサイズが耐えられる短絡電流は 134×A÷√t で出せます。選んだサイズの短時間許容電流が、受電点の短絡電流を上回ればOKです。

サイズ t=0.2秒 t=0.3秒
22sq 6.6kA 5.4kA
38sq 11.4kA 9.3kA
60sq 18.0kA 14.7kA
100sq 30.0kA 24.5kA
係数134(短絡時の許容温度230℃)で計算。200℃と置く資料では係数が約121になり、値は1割ほど小さくなります(60sq・t=0.2秒で約16.2kA)。資料を比べるときは K と t をそろえます。
ひっかけ注意
手元の資料の「60sq=16.3kA」と、この表の18.0kAが合わない?
係数(短絡時の許容温度)と通電時間の置き方が違うためです。係数134・t=0.2秒なら18.0kA、係数約121なら約16.2kAです。どちらが正しいというより、前提をそろえて比べることが大事です。安全側に見るなら、係数の小さいほう・時間の長いほうで確かめます。
ここまでのポイント
  • A=I√t/134 で必要な断面積を出す
  • サイズの短時間許容電流=134×A÷√t が短絡電流を上回ればOK
  • 係数とtの前提をそろえて比べる

選定の手順と計算例

①電力会社に短絡容量を聞く、②短絡電流を出す、③通電時間を0.3秒とする、④必要な断面積を出す、⑤それ以上の標準サイズを選ぶ、の5ステップです。短絡容量74MVAなら6.47kA、26.4mm²で38sqになります。
手順 計算例(短絡容量74MVA)
① 短絡容量 引込点に近い電柱番号で電力会社に照会 → 74MVA
② 短絡電流 74 ÷(1.732×6.6)= 6.47kA
③ 通電時間 0.2秒+0.1秒=0.3秒
④ 必要な断面積 6,470 × √0.3 ÷ 134 = 26.4mm²
⑤ 選定 26.4mm²以上 → 38sq(t=0.3秒で9.3kA)
短絡容量の回答前に当たりを付けるなら、6.6kV配電線の最大短絡電流12.5kAで計算すると外れません(必要51mm² → 60sq)。

短絡電流で決まるのはサイズの下限です。このあと、最大負荷電流を流せるか(許容電流)、こう長が長いときの電圧降下でも確かめ、いちばん太いサイズを採用します。3つの条件をまとめた手順は、高圧ケーブルのサイズ選定方法と計算手順で解説しています。

ひとことで言うと:「短絡電流に0.3秒耐えられるか。A=I√t/134 で必要な断面積を出し、それ以上のサイズを選ぶ」。


よくある質問

高圧ケーブルの短絡電流による選定はどう計算しますか?

必要な断面積を A=I√t/134 で求めます。Iは短絡電流[A]、tは通電時間[秒]、134はCV(銅導体)の係数です。それ以上の標準サイズを選びます。

通電時間は何秒で計算しますか?

配電用変電所のOCRの動作時間0.2秒に、遮断器の遮断時間0.1秒(50Hz・5サイクル)を足した0.3秒で見るのが実務的です。

短絡電流はどう求めますか?

短絡容量[MVA]÷(√3×6.6[kV])で求めます。短絡容量は、引込点に近い電柱番号を控えて電力会社に問い合わせます。

短絡容量がまだわからないときは?

6.6kV配電線の最大短絡電流12.5kAで計算しておけば外れません。t=0.3秒なら必要な断面積は約51mm²で、60sq以上になります。

資料によって短時間許容電流の値が違うのはなぜですか?

短絡時の許容温度(係数)と通電時間の置き方が違うためです。係数134なら60sq・0.2秒で18.0kA、係数約121なら約16.2kAです。前提をそろえて比べます。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
通電時間はOCRの0.2秒 遮断器の0.1秒を足して0.3秒
短絡電流は6.0kVで割る 6.6kVで割る(74MVAなら6.47kA)
60sqは16.3kA 係数134・0.2秒なら18.0kA。前提をそろえる
短絡電流だけでサイズが決まる 許容電流・電圧降下でも確かめる
短絡容量は図面でわかる 電力会社に照会(未回答なら12.5kA)
「短絡容量 → 短絡電流 → 通電時間 → 必要な断面積 → 他の条件」の順で確かめます。
📘 体系的に学びたい方へ
このテーマは、連載「高圧受変電設備の設計マニュアル(全14回+資料編)」で、単線結線図の読み方・書き方とあわせて基礎から解説しています。
関連する回:④ 引込部 ― 責任分界点とPAS・UGS / ⑧ 保護継電器と保護協調
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

30秒アンケートこの記事は役に立ちましたか?

タップするだけで完了します。あなたの声でこのサイトは育ちます。

次に読むならこれ【引込・受電設備の設計マニュアル⑥・最終回】工事区分と図面化 ― 境界は、言葉ではなく図面で決める設計マニュアル
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。