「拾い分けの区分、空調工事との取りあいを詳しく知りたい」という声をいただきました。積算・見積のきほんの記事では、数量が金額に変わる流れを説明しましたが、どこまでが電気工事の数量かという線引きまでは書いていませんでした。この記事は、空調まわりの取りあいと、支給品の拾い方だけを扱います。

結論

取りあいは特記仕様書の工事区分表で決まります。よくある区分では、機器までの電源は電気、機器どうしの渡りとリモコン線は空調。空調リモコンはボックスと空配管(呼び線入れ)まで電気です。支給品は材料0円、取付・結線の手間は拾うが基本です。

  • 電源の配管配線と手元開閉器は電気、室内外の渡り配線は空調が多い
  • リモコンは「ボックス+空配管まで電気、リモコン線は空調(別途)」
  • 支給品は材料を0円にして、取付の手間を計上する
  • 手元開閉器・制御盤の二次側は案件で変わるので必ず確かめる

取りあい ― 「誰の工事か」を先に決める

取りあい(工事区分)は、ひとつの機器や配線を、建築・電気・機械(空調)のどの工事が受け持つかの境目です。積算では、この境目が数量の範囲そのものになります。境目をまちがえると、同じものを2つの工事で拾う(ダブり)か、誰も拾わない(抜け)が起きます。

境目は、設計図書の特記仕様書にある工事区分表で決めます。図面の凡例や備考に「別途」「空調工事」「支給」と書いてあれば、それも区分の指示です。

たとえるなら
取りあいは、リレーのバトンの受け渡し場所
走る区間(工事)ごとに走者が決まっていて、バトンを渡す線(取りあい)がはっきりしていないと、2人で同じ区間を走ったり、誰も走らない区間ができたりします。
ここまでのポイント
  • 取りあい=どの工事が受け持つかの境目
  • まちがえると、ダブりか抜けになる
  • 特記仕様書の工事区分表で決める

空調まわりのよくある区分

空調まわりは取りあいが多い場所です。大学の施設部が公開している工事区分などをもとに、よくある区分の一例を並べます。

電源盤〜手元開閉器〜機器は電気
渡り室内外の配線は空調
リモコンボックス+空配管は電気
別途リモコン線と結線は空調
項目 電気工事 空調工事
空調機の電源(盤〜機器) 配管配線(電源送りのみ) ―
手元開閉器 電気のことが多い 機器付属なら空調
動力制御盤 一次側(電源・接地線) 二次側(盤〜機器)
室内機〜室外機の渡り ― 電源・制御の配管配線
空調リモコン ボックス・空配管(呼び線) リモコン線・取付・結線
換気扇・全熱交換器 電源送りのみ 制御を含む配管配線
集中コントローラ 電源 制御線
よくある区分の一例。参考:北海道大学 施設部「工事区分」ほか。実際の区分は案件ごとの工事区分表に従う。
ここに注意!
「空調機につながる線は全部空調工事」ではありません。
電源は電気工事で拾うことが多く、逆に室内外の渡りは電源線でも空調工事になることがあります。線の種類ではなく、工事区分表の区切りで判断します。
ここまでのポイント
  • 電源は電気、機器どうしの渡りとリモコン線は空調が多い
  • 手元開閉器・制御盤二次側は案件で変わる
  • 線の種類ではなく工事区分表で分ける


空調リモコン ― 「空配管・ボックスまで」で拾うもの

「空調リモコンは空配管およびボックスまで電気、リモコン線は別途」という区分では、電気工事はリモコンを付ける場所の下地(ボックス)と、天井内の室内機近くまでの配管を受け持ちます。中に線を入れないので「空配管」と呼び、あとで線を通すための呼び線を入れておきます。

拾うもの 数量の例(1か所) 備考
スイッチボックス(1個用) 1個 リモコンの取付寸法に合うものか確認
合成樹脂製可とう電線管(PF管など) 天井内まで約3m 管の太さはリモコン線に合わせて空調側と決める
呼び線 配管と同じ長さ 空配管には必ず入れる
プレート 要確認 リモコンに付属することが多い
数量はよくある納まりの一例。リモコン線・取付・結線は空調工事(別途)。

見積書には「空調リモコン用 空配管(呼び線入れ)・ボックス 〇か所」と書き、「リモコン配線・取付は空調工事」と明記しておくと、後のもめごとを防げます。

ここまでのポイント
  • 電気はボックスと空配管(呼び線入れ)
  • 管の太さは空調側と決める
  • 見積書に「リモコン配線は空調工事」と明記

支給品 ― 材料は0円、手間は拾う

スイッチや器具が施主や建築から支給されるときは、物は受け取り、取付と結線は電気工事、という区分になります。拾い表では、材料と手間を分けて書きます。

本体支給なので材料費0円
手間取付・結線は電気で拾う
まわりボックス・配線・プレートは確認
受け取り保管・検品の取り決め
品名 数量 材料 取付・結線
スイッチ(施主支給) 20個 支給(0円) 計上する
スイッチボックス 20個 計上する 計上する
VVF 1.6-2C 図面から拾う 計上する 計上する
プレート 20枚 支給範囲を確認 計上する
支給品がある場合の拾い表の書き方の一例

支給品は、いつ・どこで受け取るか、保管中に壊れたときは誰が持つか、数が足りないときどうするか、も決めておきます。見積書には「スイッチ本体:施主支給」と書き、取付費だけを計上します。

ここまでのポイント
  • 材料は0円、取付・結線の手間は計上
  • ボックス・配線・プレートは支給範囲を確かめる
  • 受け取り・保管・検品の取り決めも


どこで確かめるか ― 迷ったときの順番

  1. 特記仕様書の工事区分表 電気・機械・建築の欄を見る
  2. 図面の凡例と備考 「別途」「支給」「空調工事」の書き込み
  3. 機器表 手元開閉器・制御盤が機器付属かどうか
  4. 空調図 リモコンの位置と、空調側が引く線の範囲
質疑の例
空調リモコンについて、電気工事はスイッチボックスおよび空配管(呼び線入れ)までとし、リモコン配線・取付・結線は空調工事と理解してよろしいでしょうか。また、空配管の管径のご指示をお願いします。
ここまでのポイント
  • 工事区分表 → 図面の備考 → 機器表 → 空調図
  • わからなければ前提を書いて質疑
  • 見積書に区分を書いて残す

まとめ|結論

結論

電気工事と空調工事の取りあいは、特記仕様書の工事区分表で決まります。よくある区分では、機器までの電源と手元開閉器は電気、室内外の渡りとリモコン線は空調、リモコンはボックスと空配管(呼び線入れ)まで電気です。支給品は材料0円、取付・結線の手間を拾います。

迷ったら、この順で確かめます。

  1. 工事区分表で電気・空調の欄を確かめる
  2. 電源・手元開閉器・制御盤一次側を電気で拾う
  3. リモコンはボックスと空配管(呼び線入れ)を拾う
  4. 支給品は材料0円、手間を計上する
  5. 見積書に区分と「別途」「支給」を書く

よくある質問

空調機の電源は電気工事ですか?

多くの案件で、盤から機器(手元開閉器)までの電源の配管配線は電気工事です。ただし工事区分表で確かめます。

室内機と室外機の間の配線は誰の工事ですか?

電源・制御とも、空調工事とする区分が多いです。

空調リモコンの「空配管」とは?

線を入れずに配管だけをしておくことです。あとで空調側が線を通せるよう、呼び線を入れておきます。

支給品のスイッチは拾いますか?

本体の材料費は0円にし、取付・結線の手間は計上します。ボックス・配線・プレートは支給範囲を確かめます。

工事区分表に書いていないときは?

前提を書いて質疑し、回答を見積条件として見積書に残します。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。