扇風機のそばで線香をたくと、煙はあっという間に部屋じゅうに広がります。建物の空調も同じで、火災のときに回り続けていると、ダクトを通して煙を別の部屋や別の階へ運んでしまいます。そこで、自火報が火災を見つけたら空調を止め、ダクトの途中にあるダンパーを閉めます。この記事では、自動火災報知設備(自火報)と空調停止・防火ダンパーの連動について、止める理由と範囲、信号の渡し方、FD・SD・SFDの使い分けまで、図で1つずつ丁寧に解説します。

結論

火災の合図で空調機・換気ファンを止めダクトのダンパーを閉めて、煙と火の通り道を断ちます。

  • 止めないと、ダクトが煙をほかの部屋・ほかの階へ運ぶ
  • 止める範囲は、全館・出火階+直上階・系統別の3つの考え方。設計の段階で決める
  • 信号は受信機の移報接点から。中継リレーで空調の制御盤や中央監視へ
  • FDは熱、SDは煙、SFDは両方で閉まる。竪穴区画などの貫通はSD・SFD
自火報から移報で空調機・換気ファンを停止し、連動制御器でSD・SFDを閉鎖し、FDは温度ヒューズで自分で閉まる、という3つの流れを示した全体像
空調を止める(ファン)と、ダクトをふさぐ(ダンパー)の2本立てです。

止める理由 ― ダクトは「煙の高速道路」

出火した部屋の煙が還気ダクトから空調機に吸い込まれ、給気ダクトで隣の部屋や別の階へ運ばれる様子と、空調を止めてダンパーを閉じると煙が出火した部屋にとどまる様子を示した動く図解
動く図解:空調が回っていると煙はほかの部屋へ。止めれば出火した部屋にとどまります。

ビルの空調は、部屋の空気を還気ダクトで吸い込み、空調機で冷やしたり温めたりして、給気ダクトでいくつもの部屋に配ります。ふだんは便利なこのしくみが、火災のときは煙を運ぶ高速道路になってしまいます。

そこで、国の建築設備設計基準では、火災発生時には火災の拡大を防ぐため、自動火災報知設備と連動して空気調和設備機器・換気設備機器などを停止するとしています。

場面 空調・換気の扱い
自火報が火災を感知 空調機・換気ファンを止める(範囲は建物ごとに決める)
排煙設備が動くとき 空調を止める。空調の風で排煙の気流を乱さないため
ガス系の消火設備が動くとき 消火剤を放射する前に、防護区画の換気装置を止める。消火剤が逃げないようにするため
建築設備設計基準(国土交通省)、消防法施行規則のガス系消火設備の基準などをもとに作成

📘 自火報の基準には「空調を止めろ」とは書いていない

自火報の設置基準(消防法施行規則24条など)そのものには、空調を止めるという一律の決まりはありません。それでも多くの建物で空調停止の連動を入れるのは、設計基準の考え方や、所轄の消防・確認検査機関の指導があるからです。「どの空調を、どの範囲で止めるか」は、設計の段階で決めて連動表に書いておきます。

ここまでのポイント
  • 空調が回っていると、ダクトが煙をほかの部屋へ運ぶ
  • 建築設備設計基準は、火災時に自火報と連動して空調・換気を止めるとしている
  • 排煙のとき、ガス系消火のときも空調・換気を止める

止める範囲と信号 ― 全館か、階か、系統か

空調の止め方として、全館停止、出火階と直上階だけの停止、ダクトの系統ごとの停止の3つを、6階建ての建物で比べた図
止める範囲には、3つの考え方があります。

空調を止める範囲は、法律で一律には決まっていません。建物の使い方と空調のしくみに合わせて選びます。

考え方 よいところ 気をつけるところ 向いている建物
全館停止 信号が1つで済み、単純で確実 火災でない階の空調も止まる 中小規模のビル、全館で1系統の空調
出火階+直上階 影響を小さくできる 階ごとの信号と、階ごとに止められる空調が必要 大きなオフィスビル、階ごとに空調機がある建物
系統別 ダクトのつながりに合わせて止められる 系統図と連動表をていねいに作る必要がある 複数階にまたがる空調系統がある建物
一般的な計画の例

信号は、自火報の受信機の移報接点(無電圧の接点)から渡します。受信機の接点は容量が小さく数も限られるので、中継リレーを入れて、空調機の動力盤、中央監視設備、ビル用マルチエアコンの外部停止入力などに分けるのが一般的です。

ペン太ペン太
空調を止めるだけなら、動力盤のブレーカーを落とせばいいんじゃないですか?
ハリタハリタ
ブレーカーを落とす方式だと、空調の制御盤が「電源が切れた故障」と勘違いしたり、復旧のときに一斉に動き出したりします。空調機の制御回路にある「非常停止」や「外部停止」の入力を使って、正規の手順で止めるのが基本です。
ここまでのポイント
  • 止める範囲は、全館・出火階+直上階・系統別の3つ
  • 受信機の移報接点から、中継リレーで分けて渡す
  • 空調の制御回路の停止入力を使い、正規の手順で止める


防火ダンパーの種類 ― FD・SD・SFD

温度ヒューズで閉まるFD、煙感知器と連動して閉まるSD、煙でも熱でも閉まるSFD、排煙ダクトに設ける280℃のHFDの4種類を並べた図
防火ダンパーは、閉まるきっかけで4つに分かれます。

空調を止めても、ダクトそのものは建物の中をつないだままです。ダクトが防火区画の壁や床を貫通するところには、煙や火を止めるダンパー(ダクトの中のふた)を付けます(建築基準法施行令112条21項)。たとえるなら、ダクトという廊下の途中にある防火戸です。

種類 閉まるきっかけ 主な使いどころ
FD(防火ダンパー) 温度ヒューズが溶ける(一般72℃程度、厨房など120℃程度) 面積区画などの貫通。熱と炎を止める
SD(防煙ダンパー) 煙感知器と連動して閉まる 竪穴区画・異種用途区画などの貫通。煙を止める
SFD(防煙防火ダンパー) 煙感知器と連動 + 温度ヒューズ 竪穴区画・異種用途区画などの貫通。煙でも熱でも閉まる
HFD(排煙用防火ダンパー) 温度ヒューズ(280℃) 排煙ダクト。閉じたら排煙機を止める
建築基準法施行令112条21項、昭和48年建設省告示第2565号と一般的な製品の例をもとに作成。温度は製品の仕様で確認する

ポイントは、竪穴区画・異種用途区画など、告示で定める防火区画を貫通するダクトには、煙で閉まるダンパー(SD・SFD)が求められることです(昭和48年建設省告示第2565号)。階段やシャフトは煙突になりやすいので、熱を待たずに煙の段階でふさぎます。考え方は「建築消防|自火報と防火戸・防火シャッターの連動|煙感知器の置き方・閉鎖のしくみ・危害防止とくぐり戸」の竪穴区画と同じです。排煙ダクトのHFDについては「建築消防|自火報と排煙設備の連動|排煙口の開放・排煙機の起動・手動開放装置と280℃ダンパー」で解説しています。

ここまでのポイント
  • ダクトが防火区画を貫通するところにダンパーを付ける
  • FDは熱、SDは煙、SFDは両方で閉まる
  • 竪穴区画・異種用途区画などの貫通は、煙で閉まるSD・SFD


SDが閉まる順番 ― 煙を見つけてダクトをふさぐ

部屋の天井の煙感知器が作動し、連動制御器が指令を出し、竪穴区画の壁を貫通するダクトのSDが閉まり、空調機も停止して防災センターに表示されるまでを示した動く図解
動く図解:①感知器 → ②連動制御器 → ③SD閉鎖 → ④空調停止 → ⑤表示の順に動きます。

SD・SFDは、防火戸と同じように煙感知器・連動制御器とつながって動きます。

  1. 煙感知器が作動:そのダクトが空気を吸い込む部屋で煙を見つける
  2. 連動制御器が指令:受け持つSD・SFDに閉鎖の信号を送る
  3. SDが閉まる:ダクトの中のふたが閉じ、煙が竪穴へ入るのを止める
  4. 空調機も停止:ダンパーが閉じたまま送風機が回っていると、ダクトに無理な力がかかる
  5. 防災センターに表示:どのダンパーが閉まったかを表示する

SDを閉めるための煙感知器は、昭和48年建設省告示第2565号で、間仕切壁などで区画された場所で、そのダンパーにつながる風道の換気口などがある場所に設けるとされています。つまり、「このダクトが吸い込む部屋」で煙を見つけられる位置です。ダクトの系統と感知器の受け持ちを合わせることが大切です。

ここまでのポイント
  • 感知器 → 連動制御器 → SD閉鎖 → 空調停止 → 表示
  • 感知器は、そのダクトの換気口がある部屋に付ける
  • ダンパーを閉じるなら、送風機も止める

取り合いの注意 ― 電気と空調の境目

空調停止の連動は、電気設備(自火報)と機械設備(空調)の境目にある仕事です。境目の仕事は、どちらも「相手がやるだろう」と思って抜けやすいもの。設計の段階で、次の点をはっきりさせておきます。

確認すること 起きがちなこと 対策
信号の受け渡し 空調の制御盤に停止入力の端子がない 機械設備の図面で、停止入力の有無と接点の仕様を確認する
止め漏れ 外調機・全熱交換器・厨房や便所の排気ファンが止まらない 連動表に、止める機器を1台ずつ書き出す
排煙との関係 排煙中に空調の給気が回って、煙の流れを乱す 排煙起動の信号でも空調を止める
復旧 火災の信号が戻ると、空調が一斉に再起動する 確認してから手動で再起動するように計画することが多い
点検口 天井の中のダンパーに手が届かない ダンパーの近くに点検口(一辺45cm以上が目安)を設ける
一般的な計画の例。建物ごとに設計図書の連動表(インターロック表)で確認する

⚠️ 改修で空調を入れ替えたら、連動も入れ替える

空調機やビル用マルチを更新すると、新しい機器に停止信号がつながっていないことがあります。改修の範囲に空調があるときは、自火報からの停止信号が新しい機器まで届いているかを必ず確認します。

ここまでのポイント
  • 電気と空調の境目は抜けやすい。連動表で機器を1台ずつ決める
  • 外調機・全熱交換器・排気ファンの止め漏れに注意
  • 復旧時の一斉再起動と、改修後の信号の接続を確認


試験と点検 ― 止まる・閉まる・戻るを確かめる

止まる機器、止まる範囲、SD・SFD、止め漏れ、復旧、点検口の6つの確認ポイントを並べた図
竣工前の連動試験と定期点検で確かめる6つのポイント。
  • 止まる機器:連動表どおりの空調機・換気ファンが止まるか
  • 止まる範囲:全館・階別・系統別の設定が設計どおりか
  • SD・SFD:感知器ごとに、正しいダンパーが閉まるか。防災センターに表示されるか
  • 止め漏れ:外調機・全熱交換器・厨房や便所の排気ファンが止まっているか
  • 復旧:火災の信号を戻したときに、空調が勝手に再起動しないか。ダンパーを元に戻せるか
  • 点検口:ダンパーの近くに点検口があり、手が届くか

連動試験は、自火報・空調・自動制御の業者がそろって行うのが理想です。1社だけでは、自分の範囲の外で信号が止まっていても気づけません。試験のあとは、止めた空調とダンパーを元に戻し、戻したことを記録に残します。

ここまでのポイント
  • 連動表どおりの機器が、設計どおりの範囲で止まるか
  • SD・SFDの閉鎖と表示、止め漏れを確認
  • 連動試験は、関係する業者がそろって行う

よくある質問

火災のときに空調を止めるのはなぜですか?

空調機やファンが回っていると、還気ダクトが出火した部屋の煙を吸い込み、給気ダクトでほかの部屋や別の階へ送り出してしまうからです。国の建築設備設計基準でも、火災発生時には自動火災報知設備と連動して空調機器・換気機器を停止するとしています。

空調停止は法律で義務づけられていますか?

自火報の設置基準そのものに、空調を止めるという一律の決まりはありません。ただし、ガス系の消火設備では消火剤を放射する前に換気装置を止めることが求められ、排煙設備を動かすときも空調を止めるのが一般的です。所轄の消防や確認検査機関の指導もあるため、設計の段階で範囲を決めておきます。

空調停止の信号は、どのように渡しますか?

自火報の受信機の移報接点(無電圧接点)から、空調機の動力盤や中央監視設備、ビル用マルチエアコンの外部停止入力などに信号を渡します。受信機の接点は容量が小さいので、中継リレーを入れて必要な数の機器に分けるのが一般的です。

FD・SD・SFDの違いは何ですか?

FDは温度ヒューズが溶けると閉まる防火ダンパー、SDは煙感知器と連動して閉まる防煙ダンパー、SFDは煙でも熱でも閉まる防煙防火ダンパーです。竪穴区画や異種用途区画などを貫通するダクトには、煙で閉まるSDやSFDを使います(昭和48年建設省告示第2565号)。

SDを閉めるための煙感知器は、どこに付けますか?

昭和48年建設省告示第2565号では、間仕切壁などで区画された場所で、そのダンパーにつながる風道の換気口などがある場所に設けるとしています。つまり、そのダクトが煙を吸い込む部屋で煙を見つけられる位置です。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。