技術図書館受雷部の配置は回転球体法が基本3つの方法の使いどころ、クラスごとの数値、突針の間の沈み込みこの資料をスライドで見る資料一覧を見る

避雷設備の設計で最初に悩むのが、受雷部をどこに置くかです。JIS Z 9290-3:2019 では、回転球体法・保護角法・メッシュ法の3つの方法で決めます。この記事では、それぞれの考え方とLPSクラスごとの数値、回転球体法の作図の手順、突針を並べたときの「球の沈み込み」の計算、実務での組み合わせ方を整理します。

結論

受雷部の配置は回転球体法・保護角法・メッシュ法で決めます。どんな形にも使える回転球体法が基本で、球が触れる点に受雷部を置きます。

  • クラスⅠ〜Ⅳで、球の半径は20m・30m・45m・60m、メッシュは5m〜20m角
  • 保護角法は高さに上限あり(Ⅰ:20m〜Ⅳ:60m)
  • 突針を並べたら、球の沈み込み p = r − √(r² − (d/2)²) を確認
  • 屋根の縁と突角部(かど)は、どの方法でも必ず守る
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
回転球体法・保護角法・メッシュ法の3つの方法のイメージと、LPSクラスⅠ〜Ⅳごとの回転球体の半径、メッシュの大きさ、保護角法が使える高さの表
受雷部の配置を決める3つの方法と、LPSクラスごとの数値です。
この記事で読めるようになる用語:受雷部 回転球体法 引下げ導線

3つの方法 ― 回転球体法が基本、ほかは使いどころで

受雷部の役割は、雷を「ここで受ける」と決めておくことです。そのためには、雷がどこに落ちうるかを知る必要があります。3つの方法は、その場所を見つけるための道具です。

方法 考え方 向いている場面
回転球体法 決まった半径の球を建物に沿って転がし、球が触れる点を「落ちうる点」とする どんな形の建物にも使える。複雑な形・高い建物
保護角法 受雷部の先端から、決まった角度の円すいの内側を保護範囲とする 単純な形の建物、屋上の塔屋・機器など低い部分
メッシュ法 屋根の面を決まった大きさの網目の導体で覆う 平らな屋根。面を守るのに向く
JIS Z 9290-3:2019 の受雷部の規定をもとに作成

数値はLPSクラスで決まります。クラスが高い(Ⅰに近い)ほど、球の半径は小さく、網目は細かくなり、守りが厚くなります。一般の建物はクラスⅣ以上、危険物施設は原則クラスⅠです。クラスの決め方は「強電設備の設計|建築物の避雷設備|2025年の規格切替と保護レベルの決め方」で解説しています。

たとえるなら、建物の上をボールがころころ転がっていくイメージです。ボールが当たるところが、雷の「着地点」の候補になります。

建物の断面に沿って回転球体が転がり、屋上の縁や塔屋のかどなど球が触れたところが順に赤く示される動く図解
動く図解:球を転がすと、雷が落ちうる点が順に見えてきます。
ここまでのポイント
  • 受雷部の配置は、雷が落ちうる場所を見つけて、そこに受雷部を置くこと
  • 回転球体法は万能。保護角法は単純な形・低い部分、メッシュ法は平らな屋根
  • クラスが高いほど、球は小さく、網目は細かい

回転球体法の作図 ― 球が触れる点を全部拾う

建物の立面に回転球体を当て、地面と建物の縁、屋上の面、塔屋のかどに球が触れる点を赤い点で示した図
球を地面と建物に沿って転がすと、屋上の縁やかど、塔屋のかどに触れます。触れる点が、受雷部が必要な場所です。

回転球体法は、断面図や立面図の上で作図します。手順は次のとおりです。

  1. 図面を用意する:建物の立面図・断面図を、方向を変えて何枚か用意します。塔屋や屋上機器も描き込みます
  2. 球を描く:LPSクラスで決まる半径(クラスⅣなら60m)の円を、同じ縮尺で描きます
  3. 転がす:円を地面に接したまま建物に近づけ、建物の外形に沿ってあらゆる位置へ転がします
  4. 触れる点を拾う:円が触れた点・線・面に印を付けます。そこが受雷部が必要な場所です
  5. 受雷部を置いて確認する:受雷部を配置したら、もう一度円を転がし、円が受雷部にだけ触れて建物に触れないことを確かめます

建物が球の半径より低ければ、球は屋根の縁で止まり、壁の側面には触れません。逆に、球の半径より高い建物では、球が壁の上のほうにも触れます。JIS Z 9290-3 では、高さ60mを超える建物について、上部20%の側壁にも受雷部を設けることを求めています。

💡 平面でも確認する

立面だけでなく、屋上の平面でも球を転がすイメージで確認します。塔屋や屋上機器があると、その周りの屋根面に球が届くことがあります。屋上の平面図に、受雷部から保護される範囲を描き込んでおくと、見落としが減ります。

ここまでのポイント
  • 同じ縮尺で球を描き、地面と建物に沿って転がす
  • 触れた点に受雷部を置き、もう一度転がして確認
  • 60mを超える建物は、上部20%の側壁も対象


突針を並べたとき ― 球の沈み込み p を計算する

2本の突針の間で回転球体が沈み込む深さpと、その計算式、クラスごとの計算例を示した図
突針の間では、球が先端より下に沈み込みます。守りたい機器の上端より p 以上高い突針にします。

屋上に突針(棒状の受雷部)を何本か立てて守る場合、突針と突針の間では、球が突針の先端より下に沈み込みます。沈み込む深さ p は、次の式で求めます。

p = r − √(r² − (d/2)²)

r は回転球体の半径、d は突針の間隔です。間隔20mの場合、クラスⅣ(r=60m)で p≒0.84m、クラスⅢ(r=45m)で p≒1.13m、クラスⅠ(r=20m)では p≒2.68m になります。突針の間にある機器を守るには、機器の上端より p 以上高い突針にするか、突針の間隔を狭めます。

ペン太ペン太
突針は、機器より少し高ければ大丈夫だと思っていました…
ハリタハリタ
1本だけならそれでもいいんですが、並べると間で球が沈むんです。クラスⅠだと間隔20mで2.7m近く沈む。計算してから高さを決めると、竣工後に「保護範囲から出てた」がなくなります。
ここまでのポイント
  • 突針の間では球が沈み込む
  • p = r − √(r² − (d/2)²)。クラスが高いほど沈み込みは大きい
  • 機器の上端+p より高い突針にするか、間隔を狭める

保護角法とメッシュ法 ― 使える範囲を守る

保護角法

保護角法は、受雷部の先端から一定の角度で広がる円すいの内側を保護範囲とする方法です。作図がかんたんなので、塔屋や屋上機器を突針で守るときによく使います。注意点は次の2つです。

  • 保護角は、受雷部の高さとクラスで変わる:受雷部が高いほど、角度は小さくなります。角度は規格の図表から読み取ります
  • 使える高さに上限がある:クラスⅠは20m、Ⅱは30m、Ⅲは45m、Ⅳは60mまで。これを超える高さは、回転球体法かメッシュ法で守ります

ここでいう高さは、守られる面(屋上の面など)から受雷部の先端までの高さです。屋上に立てた突針なら、屋上面からの高さで角度を読みます。

メッシュ法

平らな屋根の平面図に、縁に沿った導体と格子状のメッシュ導体を描き、四隅の突角部と、網から突き出る塔屋を示した図
メッシュ法は、屋根の縁に導体を回し、面を決まった大きさ以下の網目で覆います。網から上に出るものは別に守ります。
  • 屋根の縁には必ず導体:縁・棟・パラペットの上に導体を沿わせます
  • 網目は表の大きさ以下:クラスⅣなら20m×20m以下
  • 網から上に出るもの:塔屋や機器は、突針などで別に保護範囲に入れます
  • 金属の笠木や屋根:厚さなどの条件を満たせば、そのまま受雷部として使えます。継目は電気的につなぎます
ここまでのポイント
  • 保護角は高さとクラスで変わり、使える高さに上限がある
  • メッシュ法は縁に導体を回し、網目を表の大きさ以下に
  • 網から出る塔屋・機器は別に守る


実務の組み合わせ ― 縁と突角部を外さない

実際の建物では、3つの方法を組み合わせて使います。よくある組み合わせは次のとおりです。

建物の部分 よく使う方法
平らな屋上の面 メッシュ法(縁の導体+網目)
屋上の縁・パラペット 縁に沿った導体、金属笠木の利用
塔屋・屋上機器 突針+保護角法、または回転球体法で確認
勾配屋根 棟に沿った導体+回転球体法で確認
高さ60mを超える建物の上部 上部20%の側壁に受雷部(外装の金属材の利用など)
一般的な組み合わせの例

どの方法を使っても外せないのが、屋根の縁と突角部(かど)です。雷は建物の角や縁に落ちやすく、回転球体を転がしても、まず触れるのはここです。JIS Z 9290-3 では、既存の建物に当てはめる場合も、突角部に受雷部を追加することを求めています。

配置が決まったら、屋上の受雷部を引下げ導線でつなぎ、接地極へ下ろします。屋上の機器の守り方は「屋上の機器と避雷設備|室外機・太陽光・アンテナ・キュービクルを守る保護範囲・離隔距離・ボンディング」で詳しく整理しています。

ここまでのポイント
  • 実際は3つの方法を組み合わせる
  • 平らな屋上はメッシュ、塔屋・機器は突針
  • 屋根の縁と突角部は、どの方法でも必ず守る

よくある質問

受雷部の配置はどうやって決めますか?

JIS Z 9290-3:2019 では、回転球体法・保護角法・メッシュ法の3つの方法で決めます。LPSクラスごとに、回転球体の半径(Ⅰ:20m、Ⅱ:30m、Ⅲ:45m、Ⅳ:60m)、メッシュの大きさ(Ⅰ:5m×5m〜Ⅳ:20m×20m)、保護角が決まっています。3つの方法は組み合わせて使えます。

回転球体法とは何ですか?

LPSクラスで決まる半径の球を、地面と建物に沿ってあらゆる方向に転がし、球が触れる点を「雷が落ちうる点」とみなす方法です。球が触れる点や面には受雷部が必要で、受雷部を置いたあとにもう一度球を転がし、建物に球が触れないことを確認します。

保護角法はどんなときに使いますか?

形が単純な建物や、屋上の塔屋・機器など比較的低い部分を守るときに向いています。保護角は受雷部の高さとLPSクラスで変わり、高くなるほど小さくなります。クラスⅠは20m、Ⅱは30m、Ⅲは45m、Ⅳは60mまでの高さでしか使えず、それを超える場合は回転球体法かメッシュ法を使います。

メッシュ法の網目の大きさはどれくらいですか?

LPSクラスⅠで5m×5m、Ⅱで10m×10m、Ⅲで15m×15m、Ⅳで20m×20m以下です。平らな屋根に向いていて、屋根の縁・棟・パラペットには必ず導体を沿わせます。網から上に出る塔屋や機器は、突針などで別に保護します。

突針を2本並べたとき、間の機器は守られますか?

突針の間では、回転球体が突針の先端より下に沈み込みます。沈み込む深さは p = r − √(r² − (d/2)²)(r:球の半径、d:突針の間隔)で求めます。機器の上端より p 以上高い突針にしないと、機器に球が触れてしまいます。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。