避雷設備の規格は、2025年に旧JIS(JIS A 4201:2003)から新JIS(JIS Z 9290-3:2019)へ切り替わりました。では、今はもう新JISしか使わないのか。答えは「新築はそう。ただし旧JISが残る場面が3つある」です。この記事では、経過措置の終わり、既存建物と改修、火薬庫、そして旧JISの図面の読み方までを整理します。

結論

いま着工する建物と危険物施設はJIS Z 9290-3:2019 だけ。経過措置は2026年3月31日までの着工分で終わりました。旧JISが残るのは既存建物・火薬庫・規格そのものの3つです。

  • 建築基準法の告示は2025年4月1日に新JISへ。経過措置は2026年3月31日までに建物を着工した分で終了
  • 危険物施設(消防法)も2025年4月1日から新JIS
  • 既存の旧JISの避雷設備は、直ちに違法ではない。増築・大規模改修のときに見直す
  • 火薬庫の告示は JIS A 4201:2003 を引用(見直し中)。JIS A 4201:2003 自体も廃止されていない
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
新築の建物、危険物施設、既存建物(そのまま使う/増築・大規模改修)、火薬庫ごとに、法令と使う基準を並べた早見表
対象ごとの早見表。新築と危険物施設は新JIS、既存建物はつくった時の基準、火薬庫は経済産業大臣の告示によります。
この記事で読めるようになる用語:受雷部 引下げ導線 回転球体法 接地抵抗

新築は JIS Z 9290-3:2019 だけ ― 経過措置は終わった

1992年と2003年のJIS A 4201、2019年のJIS Z 9290-3、2025年4月1日の告示改正施行、2026年3月31日の経過措置終了を並べた年表
避雷設備のJISと告示の流れ。2026年3月31日で経過措置が終わり、いま着工する建物は新JISだけになりました。

建築基準法で避雷設備の構造を定めているのは、平成12年建設省告示第1425号です。この告示が引用する規格が、令和6年3月8日の改正で JIS A 4201:2003 から JIS Z 9290-3:2019 に変わり、2025年4月1日に施行されました。

改正には経過措置があり、施行日から1年を経過する日、つまり2026年3月31日までに工事に着手した建物は、旧JISによることができました。ここでいう「工事に着手」は、建築物本体の工事のことで、避雷設備の工事ではありません。いまは2026年4月を過ぎているので、これから着工する建物は新JISだけです。

法令 対象 いま引用している規格 切替日
建築基準法
(告示第1425号)
高さ20mを超える建物・工作物 JIS Z 9290-3:2019 2025年4月1日
(経過措置は2026年3月31日着工分まで)
消防法
(危険物の規制に関する規則 第13条の2の3)
指定数量の10倍以上の危険物を扱う製造所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所など JIS Z 9290-3:2019 2025年4月1日
火薬類取締法
(経済産業大臣の告示)
火薬庫など JIS A 4201:2003(保護レベルⅠ・Ⅱ) 見直しを審議中
各法令の告示・規則と、消防庁通知(消防危第321号)をもとに作成

設置義務の対象そのもの(高さ20mの測り方や危険物施設の範囲)は、「避雷設備の設置義務|対象になる建物・工作物・危険物施設と「高さ20m」の測り方」で詳しく整理しています。

ここまでのポイント
  • 建基法の告示は2025年4月1日に JIS Z 9290-3:2019 へ
  • 経過措置は2026年3月31日までに建物本体を着工した分で終了
  • 危険物施設も2025年4月1日から新JIS


既存の建物 ― 旧JISのままでも、直ちに違法ではない

旧JIS(2003年版や1992年版)でつくった避雷設備が付いている建物は、たくさん残っています。これらは、つくった時の基準に合っていれば、規格が変わっただけで違法になるわけではありません。いわゆる既存不適格の扱いです。

ただし、2025年4月1日以降に着工する増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、既存不適格の扱いが外れます(建築基準法第3条第3項第3号)。しかも避雷設備は、増築などの緩和を定めた第86条の7の対象に入っていません。そのため、小さな増築でも建物全体の避雷設備が現行の基準の対象になります。遡及がかかる工事・かからない工事は「避雷設備の遡及適用|既存建物の増築・大規模改修で新JISへの適合が必要になる条件」で詳しく整理しています。

既設建築物に新JISを当てはめるときのポイントとして、突角部の強化、側壁の受雷部の省略、引下げ導線の間隔50m以下の3つを並べた図
JIS Z 9290-3:2019 には、既設の建築物向けの考え方が入っています。新築と同じ設計をそのまま求めているわけではありません。

JIS Z 9290-3:2019 には、既設の建築物に当てはめるときの規定があります。たとえば、屋上の突角部を強化すれば側壁の受雷部を省略できること、既設の引下げ導線の間隔は50m以下とすることなどです。新築とまったく同じ配置を求めているわけではないので、改修の設計では規格本文のこの部分を確認してください。

💡 改修で見落としやすいところ

屋上に室外機・太陽光パネル・アンテナを後から増やすと、旧JISで決めた保護範囲から外れることがあります。規格の新旧に関係なく、屋上設備を増やしたら保護範囲とボンディングを見直してください。

ここまでのポイント
  • 旧JISの既存設備は、直ちに違法ではない(既存不適格)
  • 増築・改築・大規模の修繕・模様替で既存不適格が外れ、建物全体が対象(緩和なし)
  • 新JISには既設建築物向けの規定がある(突角部の強化、引下げ導線50m以下など)


火薬庫 ― 告示はまだ JIS A 4201:2003 を引用

火薬庫の避雷装置は、建築基準法でも消防法でもなく、火薬類取締法で決まっています。技術基準は経済産業大臣の告示で定められていて、現在は「JIS A 4201:2003 に適合し、保護レベルⅠまたはⅡとすること」を求めています。

つまり火薬庫は、建築基準法・消防法とは違い、いまも旧JISが基準です。ただし、2025年12月に経済産業省の審議会でこの告示の見直しが議題になっています。この記事の時点で改正の内容は確認できていないため、設計するときは最新の告示を必ず確認してください。

⚠️ 同じ敷地でも規格が分かれる

火薬庫と一般の建物が同じ敷地にある場合、一般の建物は JIS Z 9290-3:2019、火薬庫は告示(JIS A 4201:2003)と、建物ごとに基準が違うことがあります。図面や仕様書には、どの建物がどの規格によるのかを明記しておきます。

ここまでのポイント
  • 火薬庫は火薬類取締法の告示による
  • 告示は JIS A 4201:2003・保護レベルⅠまたはⅡを引用
  • 2025年12月から見直しを審議中。設計時は最新の告示を確認

JIS A 4201:2003 は廃止されていない ― 規格と告示は別もの

「新JISに切り替わった」と聞くと、旧JISが廃止されたように思えます。しかし、JIS A 4201:2003 はJISとして今も有効で、2023年10月25日に確認されています。

ここで押さえたいのは、JIS(規格)と告示(法令)は別ものだということです。JISは「こうつくる」という技術の決まりで、それ自体に法的な強制力はありません。法令の告示が「このJISによること」と引用して、はじめて義務になります。今回変わったのは、建築基準法と消防法の告示・規則が引用する規格です。

  • 規格(JIS):JIS A 4201:2003 も JIS Z 9290-3:2019 も、どちらも有効
  • 法令(告示・規則):建築基準法と消防法は JIS Z 9290-3:2019 を引用。火薬類取締法は JIS A 4201:2003 を引用

さらにさかのぼると、1992年版の JIS A 4201 でつくられた避雷設備も、旧告示の附則により、2003年版に適合するものとみなされていました。古い建物の図面で1992年版が出てきても、それだけで問題があるわけではありません。

ペン太ペン太
規格が有効なら、新築でも JIS A 4201:2003 で設計していいんですか?
ハリタハリタ
法令で義務になっている建物では、だめです。建築基準法と消防法は JIS Z 9290-3:2019 を引用しているので、義務の建物はそちらで設計します。旧JISが「有効」というのは、規格として残っているという意味です。
ここまでのポイント
  • JIS A 4201:2003 は廃止されておらず、JISとして有効
  • 義務になるのは法令が引用した規格。建基法・消防法は新JIS、火薬庫は旧JIS
  • 1992年版でつくられた設備も、旧告示で2003年版に適合とみなされていた


旧JISの図面を読むとき ― 新旧の対応表

既存建物の改修では、旧JISでつくられた図面を読むことになります。用語や数値の対応を表にまとめます。

項目 JIS A 4201:1992 JIS A 4201:2003 JIS Z 9290-3:2019
レベル分け なし(一般と危険物で区別) 保護レベル Ⅰ〜Ⅳ LPSクラス Ⅰ〜Ⅳ
受雷部の配置 保護角法(一般60°、危険物45°) 回転球体法・保護角法・メッシュ法 回転球体法・保護角法・メッシュ法
回転球体の半径 20m・30m・45m・60m 20m・30m・45m・60m
引下げ導線の間隔 Ⅰ10m・Ⅱ15m・Ⅲ20m・Ⅳ25m Ⅰ・Ⅱ10m・Ⅲ15m・Ⅳ20m
接地抵抗 総合10Ω以下・単独50Ω以下 形状と長さで決める 形状と長さで決める(10Ω未満を推奨)
突角部・側壁 突角部の対策。高さ60mを超える部分は上部20%の側壁にも受雷部
各規格の本文をもとに作成。細部は規格本文で確認してください

いちばん大きな違いは、「保護レベル」が「LPSクラス」になったことと、突角部(屋上の角)への対策が加わったことです。雷は建物の角に落ちやすいため、新JISでは角をしっかり守ることが求められます。引下げ導線の間隔もクラスⅡ〜Ⅳで狭くなりました。

一般の建物はクラスⅣ以上、危険物施設は原則クラスⅠ(合理的な理由があればⅡ)です。クラスの決め方は「強電設備の設計|建築物の避雷設備|2025年の規格切替と保護レベルの決め方」で詳しく解説しています。

ここまでのポイント
  • 保護レベル → LPSクラス。回転球体の半径は同じ
  • 新JISは突角部の対策と、60m超の側壁の受雷部が加わった
  • 引下げ導線の間隔はクラスⅡ〜Ⅳで狭くなった

よくある質問

避雷設備は、今は新JIS(JIS Z 9290-3:2019)だけですか?

新しく建てる建物・工作物と危険物施設は、JIS Z 9290-3:2019 だけです。建築基準法の告示は2025年4月1日に切り替わり、旧JIS(JIS A 4201:2003)を使える経過措置も、2026年3月31日までに工事に着手した建物で終わりました。ただし、既存の建物に付いている旧JISの避雷設備は、それだけで違法になるわけではありません。

旧JISでつくった既存の避雷設備は、改修しないといけませんか?

そのまま使っている限り、直ちに改修する義務はありません(既存不適格)。ただし、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をすると既存不適格が外れ、避雷設備には増築などの緩和もないため、建物全体が現行の基準の対象になります。計画の早い段階で確認検査機関と協議してください。

経過措置の「工事に着手」とは、どの時点ですか?

建築物本体の工事に着手した時点です。避雷設備そのものの工事ではありません。2026年3月31日までに建物の工事に着手していれば、旧JISで設計した避雷設備で進められました。

JIS A 4201:2003 は廃止されたのですか?

廃止されていません。JISとしては有効で、2023年10月25日に確認されています。変わったのは、建築基準法や消防法の告示・規則が引用する規格が JIS Z 9290-3:2019 になったことです。

火薬庫の避雷装置は、どの規格によりますか?

火薬類取締法の経済産業大臣告示によります。この告示は JIS A 4201:2003 に適合し、保護レベルⅠまたはⅡとすることを求めています。2025年12月に見直しの審議資料が出ているため、設計の際は最新の告示を確認してください。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。