技術図書館屋上の機器は入れて、離して、つなぐ保護範囲に入れる、離隔距離sの係数と計算、離せないときのボンディングとSPDこの資料をスライドで見る資料一覧を見る

屋上には、空調の室外機、太陽光パネル、アンテナ、キュービクルなど、たくさんの機器が載ります。避雷設備を設計するとき、これらの機器をどう雷から守るかは必ず出てくる論点です。この記事では、JIS Z 9290-3:2019 の考え方に沿って、保護範囲・離隔距離・ボンディングとSPDの3つの守り方と、機器ごとの納まりを整理します。

結論

屋上の機器は、まず受雷部の保護範囲に入れて、離隔距離 s 以上離す。離せないときは受雷部にボンディングして、建物に入る電線にSPDを付けます。

  • 保護範囲から出る機器には、棒状の受雷部を足して範囲に入れる
  • 離隔距離は s = ki × kc ÷ km × l。高い建物ほど大きくなる
  • ボンディングすると雷電流の一部が電線を通って建物に入る。入口でSPDに逃がす
  • 後から増える屋上機器が、いちばん見落とされやすい
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
屋上機器の守り方として、1 保護範囲に入れる、2 離隔距離 s をとる、3 ボンディングとSPD、の3つを並べた図
屋上機器の守り方は3つ。1と2を組み合わせるのが基本で、3は離隔がとれないときの手段です。
この記事で読めるようになる用語:受雷部 回転球体法 等電位ボンディング SPD 引下げ導線

守り方は3つ ― 入れて、離して、だめならつなぐ

屋上の機器が雷を直接受けると、機器が壊れるだけでなく、機器につながる電源線や信号線を通って雷電流が建物の中に入り込みます。これを防ぐ方法は、大きく3つです。

守り方 考え方 向いている場面
① 保護範囲に入れる 受雷部がつくる保護範囲の中に機器を置き、雷を直接受けないようにする すべての機器で最初に考える
② 離隔距離をとる 受雷部・引下げ導線から離隔距離 s 以上離し、雷電流が機器へ飛び移らないようにする ①とセット。屋上に余裕がある場合
③ ボンディング+SPD 機器の金属部分を受雷部に直接つなぎ、電位差をなくす。建物に入る電線にはSPDを付ける 離隔がとれない場合、機器が受雷部の近くにある場合
JIS Z 9290-3:2019 の考え方をもとに作成

①と②で雷電流を機器に入れないのが基本形です。③は、雷電流が機器まで来ることを前提に、その先の被害をSPDで食い止める方法です。どちらを選ぶかで、電気設備側の設計(SPDの種類と位置)が変わります。

ここまでのポイント
  • 屋上機器が雷を受けると、電線を通って雷電流が建物に入る
  • 基本は ①保護範囲に入れる + ②離隔距離をとる
  • 離せないときは ③ボンディングして、建物に入る電線にSPD

保護範囲に入れる ― 機器の上端と角まで確認する

棒状受雷部がつくる保護範囲の中に室外機を置き、受雷部と室外機の間に離隔距離 s 以上をとった断面のイメージ図
棒状受雷部を立てて室外機を保護範囲に入れ、受雷部から離隔距離 s 以上離した例です。

保護範囲は、回転球体法保護角法メッシュ法で決めます。屋上の機器で確認するのは、次の点です。

  • 機器の上端と角まで範囲に入っているか:室外機や架台は意外と高さがあります。回転球体を転がして、機器の上端と角に球が触れないかを確認します
  • 範囲から出るなら受雷部を足す:屋上の縁の受雷部だけでは届かない位置の機器には、近くに棒状の受雷部を立てて範囲に入れます
  • メッシュ法の屋根では、メッシュより上に出る機器に注意:メッシュ導体より上に突き出る機器は、メッシュだけでは守れません
  • 金属の機器や架台を受雷部として使う方法もある:厚さや材料が規格の条件を満たし、電気的につながっていれば、自然の受雷部として扱えます。その場合は受雷部の一部としてボンディングします

規格には、保護範囲に入れなくてもよい小さな突起物の条件も書かれています。寸法の条件は細かいので、使う場合は規格本文で確認してください。

ここまでのポイント
  • 機器の上端と角まで保護範囲に入れる。架台の高さも見る
  • 届かないなら棒状の受雷部を足す
  • 金属の機器や架台を自然の受雷部として使う方法もある


離隔距離 s ― 高い建物ほど離しにくい

保護範囲に入れても、受雷部や引下げ導線に近すぎると、雷電流が流れたときに導線と機器の間で火花放電(フラッシオーバ)が起きます。これを防ぐのが離隔距離 sです。

離隔距離の式 s = ki × kc ÷ km × l と、係数ki・kc・kmの値、lの定義、クラスⅢ・引下げ導線4本での計算例を示した図
離隔距離の式と係数。l が長いほど、つまり高い建物の屋上ほど、必要な離隔は大きくなります。
係数 何で決まるか
ki LPSクラス Ⅰ:0.08 Ⅱ:0.06 Ⅲ・Ⅳ:0.04
kc 引下げ導線の本数(簡易法) 1本:1 2本:0.66 3本以上:0.44
km 受雷部と機器の間にある材料 空気:1 コンクリート・れんが・木:0.5
l 離隔を見る点から、最も近い等電位ボンディング点(または接地)までの、導線に沿った長さ(m)
JIS Z 9290-3:2019(IEC 62305-3 対応)の離隔距離の規定をもとに作成

たとえば、クラスⅢ、引下げ導線4本、間が空気の場合、l=20m なら s≒0.35m ですが、l=60m なら s≒1.06m になります。高い建物の屋上ほど離隔が大きくなり、とりにくくなるのが分かります。間にコンクリートがあると km=0.5 なので、必要な距離は2倍になります。

💡 l を短くするには

l は「最も近い等電位ボンディング点」までの長さです。途中の階で引下げ導線と建物の鉄骨・鉄筋をボンディングする(等電位化する)と、l が短くなり、必要な離隔も小さくなります。構造体を引下げ導線に使う建物では、この効果が大きくなります。

ここまでのポイント
  • s = ki × kc ÷ km × l
  • l は最も近いボンディング点までの導線に沿った長さ。高い建物ほど大きい
  • 途中の階で等電位化すると l が短くなり、離隔も小さくできる

離せないとき ― ボンディングして、建物の入口でSPD

屋上機器を受雷部にボンディングし、電源線・信号線を通って建物に入る雷電流を分電盤のSPDで逃がす流れを示した図
ボンディングすると、雷電流の一部は機器の電線を通って建物に入ります。建物に入るところでSPDに逃がします。

屋上が狭い、機器が大きい、建物が高いなどで離隔がとれないときは、機器の金属部分を受雷部に直接ボンディングします。つないでしまえば、導線と機器の間に電位差ができないので、火花放電は起きません。

ただし、そのかわりに雷電流の一部が機器の電源線や信号線を通って建物の中へ流れ込みます。そこで次の対策をセットで行います。

  • 建物に入るところにSPD分電盤や引込口で、電源線・信号線にSPDを付けます。部分的な雷電流が流れる線には、それに耐えるSPD(クラスⅠ試験のもの)を選びます
  • ケーブルのシールドや金属管のボンディング:屋上から下りてくるケーブルのシールドや金属管は、建物に入るところでボンディング用バーにつなぎます
  • 屋上側の機器の保護:機器そのものを守るには、機器側にもSPDが必要になることがあります。機器メーカーと相談します
ペン太ペン太
ボンディングすれば安全なら、全部つないじゃえばいいんじゃないですか?
ハリタハリタ
つなぐと、雷電流の通り道が建物の中まで延びるんです。だからSPDとセットで、SPDの種類も一段強いものになる。まずは離せないかを考えて、どうしても無理なときにボンディング、という順番が基本です。
ここまでのポイント
  • 離せないときは機器を受雷部に直接ボンディング
  • 雷電流の一部が電線を通って建物に入るので、入口にSPD(クラスⅠ試験)
  • ケーブルのシールド・金属管も入口でボンディング


機器別の考え方 ― 室外機・太陽光・アンテナ・キュービクル

機器 基本の対応 離隔がとれないとき
空調の室外機 近くに棒状の受雷部を立てて保護範囲に入れ、離隔をとる。冷媒管・電源線も導線から離す 架台を受雷部にボンディング。室外機の電源の分電盤側にSPD
太陽光パネル 保護範囲に入れ、架台と配線を受雷部・導線から離す 架台をボンディング。直流側(パワーコンディショナ側)と交流側にSPD
アンテナ・カメラのマスト 保護範囲に入れる。マストが高ければ、それ自体を受雷部として扱う マストを受雷部にボンディング。同軸ケーブルのシールドを建物の入口でボンディングし、SPD
屋上キュービクル 保護範囲に入れ、外箱を受雷部・導線から離す 外箱をボンディング。接地を避雷設備と統合するか分けるかを、設計方針として決めておく
換気ファン・排気筒 保護範囲に入れる 金属なら受雷部にボンディング
手すり・笠木・金属屋根 規格の厚さ・材料の条件を満たせば、自然の受雷部として使う 継目を橋絡して電気的に連続させる
JIS Z 9290-3:2019 の考え方をもとに、一般的な対応を整理

後から増える機器がいちばん漏れる

竣工後に、室外機の増設、太陽光パネルの設置、携帯電話の基地局の設置などで、屋上の機器はどんどん増えます。新しい機器が保護範囲の外に出たり、受雷部の近くに置かれて離隔がとれなかったりするのは、よくある見落としです。

  • 屋上に機器を置く工事では、避雷設備の保護範囲と離隔を必ず確認する
  • 受雷部の追加やボンディングで防水を貫通するときは、防水処理を忘れない
  • 確認した結果は、避雷設備の点検記録に残す

なお、屋上に機器を載せるだけなら、法律上の遡及(既存建物を現行基準に合わせる義務)の引き金にはならないのが普通です。詳しくは「避雷設備の遡及適用|既存建物の増築・大規模改修で新JISへの適合が必要になる条件」で整理しています。ただし、遡及しないから放置してよいわけではありません。新しく置く機器は、いまの規格で守ります。

ここまでのポイント
  • 室外機・太陽光・アンテナ・キュービクルとも、まず保護範囲と離隔
  • 離せないならボンディング+SPD。太陽光は直流側のSPDも
  • 後から増える機器は、工事のたびに保護範囲と離隔を確認


よくある質問

屋上の室外機は、避雷設備でどう守りますか?

基本は、受雷部の保護範囲の中に室外機を置き、受雷部や導線から離隔距離 s 以上離すことです。保護範囲から出るなら棒状の受雷部を追加します。離隔がとれない場合は、架台を受雷部にボンディングし、室外機の電源が建物に入るところ(分電盤など)にSPDを付けます。

離隔距離 s はどうやって計算しますか?

JIS Z 9290-3:2019 の式 s = ki × kc ÷ km × l で求めます。ki はLPSクラスで決まる係数(Ⅰ:0.08、Ⅱ:0.06、Ⅲ・Ⅳ:0.04)、kc は引下げ導線の本数で決まる係数(簡易法で1本:1、2本:0.66、3本以上:0.44)、km は間にある材料の係数(空気:1、コンクリート・れんが・木:0.5)、l は離隔を見る点から最も近いボンディング点までの導線に沿った長さです。

離隔がとれないときは、どうすればいいですか?

機器の金属部分を受雷部に直接ボンディングします。このとき、雷電流の一部が機器の電源線や信号線を通って建物の中へ流れ込むため、建物に入るところにSPDを付けます。部分的な雷電流が流れる線には、それに耐えるSPD(クラスⅠ試験のもの)を選びます。

屋上に機器を後から追加したとき、避雷設備の見直しは必要ですか?

必要です。室外機、太陽光パネル、アンテナ、携帯電話の基地局などが増えると、保護範囲や離隔距離が崩れることがあります。法律上の遡及の引き金にならなくても、新しい機器が保護範囲に入っているか、離隔がとれているかを確認し、必要なら受雷部の追加やボンディングを行います。

金属の手すりや笠木は受雷部として使えますか?

使えます。厚さや材料が規格の条件を満たし、継目が電気的につながっていれば、自然の受雷部として使えます。継目は橋絡して、電気的に連続させます。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。