この記事は連載「内線規程の解釈と解説」(全119回)の1本です。
技術図書館漏電遮断器|差で検知し、必要な場所に設ける電流の大きさではなく行きと帰りの差で漏電を見つける。60V超の金属外箱機器・300V超の低圧電路・水気の多い場所という2つの入口を全6枚のスライドで整理この資料をスライドで見る資料一覧を見る

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洗濯機を触ったらピリッとした、雨の日に分電盤のブレーカーが落ちた。どちらも漏電のサインです。漏電遮断器は、電気の「行き」と「帰り」のわずかな差から漏電を見つけ、人が感電したり、漏れた電気で火災が起きたりする前に電路を切ります。この記事では、漏電遮断器のしくみ、電技解釈 第36条・第143条で付ける必要がある電路、目的に合った感度の選び方を、3つの質問と動く図で整理します。

①漏電遮断器は行きと帰りの電流の差をZCTで見て、差が設定を超えたら自動で切る、②必要なのは60V超・金属製外箱の機器の電路が基本で、高圧と結合する300V超の低圧電路や住宅の150V超の電路も、③感電を防ぐなら高感度高速形(30mA・0.1秒)を選びます。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

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先に言葉をそろえる

言葉 ひとことで言うと
漏電 絶縁が悪くなり、電気が本来の電線以外(外箱や大地)へ流れること
地絡遮断装置 地絡(漏電)が起きたとき自動で電路を切る装置。漏電遮断器はその代表
ZCT 零相変流器。行きと帰りの電線をまとめて通し、その差(零相電流)を取り出す
定格感度電流 漏電遮断器が動作する漏れ電流の大きさ(15mA・30mAなど)
簡易接触防護措置 人が容易に触れないように、高さや囲いで守ること
電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)第36条・第143条と、内線規程の漏電遮断器の規定によります。

質問① どう漏電を見つける?

正常なときは行きと帰りの電流が同じで差はゼロ。漏電すると一部が大地へ逃げて帰りが減り、行き10Aに対して帰り9.97Aなら差30mAを検出して自動で遮断します。

電気は、行きの電線で機器へ流れ、帰りの電線で戻ってきます。正常なら行きと帰りの電流は同じです。絶縁が悪くなって一部が外箱や大地へ漏れると、そのぶん帰りが減り、差が生まれます。漏電遮断器は、行きと帰りの電線をまとめて通したZCT(零相変流器)でこの差を取り出し、設定値(定格感度電流)を超えると電路を切ります。流れている電流が大きいか小さいかではなく、差を見ているのがポイントです。

たとえるなら
漏電遮断器は、改札の「入場と出場の人数」を数える係です。
駅に入った人数と出た人数が同じなら問題なし。数が合わなければ、どこかに抜け道(漏電)があるとわかります。何人通ったか(負荷電流の大きさ)ではなく、入りと出の差を見ているので、わずかな抜け道でも見逃しません。
ここまでのポイント
  • 行きと帰りの電流の差(零相電流)で漏電を見つける
  • ZCTで差を取り出し、定格感度電流を超えたら切る
  • 負荷電流の大きさではなく「差」を見ている

質問② どこに必要? ― 第36条第1項

電技解釈 第36条第1項では、金属製外箱を持つ使用電圧60V超の低圧機械器具に接続する電路に地絡遮断装置を付けます。簡易接触防護措置、乾燥した場所、対地電圧150V以下で水気のある場所以外、2重絶縁の機器などの場合は省略できます。

電技解釈 第36条第1項では、金属製外箱を持つ使用電圧60V超の低圧機械器具に接続する電路に、地絡遮断装置(漏電遮断器など)を施設することを求めています。ただし、次のような場合は省略できます。

省略できる主な場合(第36条第1項)
機械器具に簡易接触防護措置を施す
発電所・変電所またはこれに準ずる場所、乾燥した場所に施設する
対地電圧150V以下の機器を、水気のある場所以外に施設する
電気用品安全法の2重絶縁構造の機器、ゴム・合成樹脂などで被覆した機器
C種・D種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下
絶縁変圧器(機器側300V以下)を施設し、機器側の電路を非接地にする
電気用品安全法の漏電遮断器を機器に内蔵し、電源引出部が損傷を受けないようにする
このほか、誘導電動機の2次側電路、管灯回路なども省略できます。
ひっかけ注意
「100Vだから漏電遮断器は要らない」は、水気のある場所では通用しません。
対地電圧150V以下で省略できるのは「水気のある場所以外」に施設する場合です。浴室の近く・屋外・水を使う作業場など水気のある場所の100V機器には、地絡遮断装置が必要です。
ここまでのポイント
  • 60V超・金属製外箱の低圧機械器具の電路に必要
  • 乾燥した場所・簡易接触防護・2重絶縁などは省略できる
  • 対地電圧150V以下でも、水気のある場所では省略できない


ほかにも必要な電路 ― 300V超・住宅150V超

第36条第3項では、高圧・特別高圧と変圧器で結合される使用電圧300V超の低圧電路に、第143条第1項では住宅の屋内電路で対地電圧が150Vを超えるものに地絡遮断装置が必要です。
条文 地絡遮断装置が必要な電路
第36条第3項 高圧・特別高圧の電路と変圧器で結合される、使用電圧300V超の低圧電路(発電所・変電所の電路、電気炉などの専用電路を除く)
第143条第1項 住宅の屋内電路で対地電圧が150Vを超えるもの(2kW以上の機器の専用回路など。絶縁変圧器で非接地にした場合を除く)
第36条第3項・第143条第1項第一号ト。
ひっかけ注意
「300Vを超える低圧電路には必ず漏電遮断器」ではありません。
第36条第3項が対象にしているのは、高圧・特別高圧と変圧器で結合される300V超の低圧電路です。条文の条件を読み飛ばさないようにします。一方、住宅は第143条で、対地電圧が150Vを超える電路に地絡遮断装置を求めています。
ここまでのポイント
  • 高圧と変圧器で結合される300V超の低圧電路に必要
  • 住宅の対地電圧150V超の屋内電路に必要
  • 条文ごとの条件と除外をたしかめる

質問③ どれを選ぶ? ― 感度と動作時間

定格感度電流15mA以下・0.1秒以下は水気のある場所以外でD種接地を省略できる条件、30mA以下・0.1秒以下は高感度高速形で人の感電防止の基本、100mA以上などは中感度形で漏電火災の防止などに使われます。

漏電遮断器は、定格感度電流と動作時間で種類が分かれます。人の感電を防ぐ目的なら、高感度高速形(30mA以下・0.1秒以下)が基本です。定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の漏電遮断器を水気のある場所以外に施設すると、D種接地工事を省略できる場合があります(電技解釈 第29条)。幹線など上位で漏電火災を防ぐ目的では、中感度形や時延形を使い、下位の高感度形と動作が重ならないようにします。

選ぶときの確認 内容
感度・動作時間 感電防止なら30mA・0.1秒以下。上位と下位で協調をとる
定格電流・遮断容量 過電流保護付なら、配線用遮断器と同じく定格と遮断容量を確かめる
極数・中性線欠相保護 単相3線式の主幹には中性線欠相保護付を使う
適合規格 JIS・電気用品安全法に適合したもの
不要動作が多いときは、回路を分けて1回路の漏れ電流を小さくする、インバーター機器には高調波・サージ対応品を使う、などで対処します。
ここまでのポイント
  • 感電防止は高感度高速形(30mA・0.1秒以下)
  • 15mA・0.1秒以下ならD種接地の省略条件にも使える
  • 上位は中感度・時延形で、下位と動作を協調させる
ひとことで言うと:「漏電遮断器は行きと帰りの差で漏電を見つける。60V超・金属製外箱の機器の電路が基本で、水気のある場所では100Vでも必要。感電防止は30mA・0.1秒」。


よくある質問

漏電遮断器はどうやって漏電を見つけますか?

行きと帰りの電流の差(零相電流)をZCT(零相変流器)で取り出し、定格感度電流を超えたら電路を切ります。

漏電遮断器が必要な電路は?

電技解釈 第36条第1項では、金属製外箱を持つ使用電圧60V超の低圧機械器具に接続する電路です。乾燥した場所、対地電圧150V以下で水気のある場所以外、2重絶縁の機器などの場合は省略できます。

300Vを超える低圧電路には必ず必要ですか?

第36条第3項で必要とされるのは、高圧・特別高圧の電路と変圧器で結合される使用電圧300V超の低圧電路です(発電所・変電所の電路などを除く)。

住宅で漏電遮断器が必要になるのは?

第36条第1項の条件のほか、第143条で住宅の屋内電路の対地電圧が150Vを超える場合(2kW以上の機器の専用回路など)に地絡遮断装置が必要です。

感電防止にはどの漏電遮断器を選びますか?

高感度高速形(定格感度電流30mA以下・動作時間0.1秒以下)が基本です。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
電流の大きさで漏電を見る 行きと帰りの差で見る
300V超の低圧電路はすべて必要 高圧と変圧器で結合される300V超の低圧電路
100Vなら不要 水気のある場所では必要
住宅の水回りだけ気にすればよい 対地電圧150V超の住宅電路にも必要
感度はどれでも同じ 感電防止は30mA・0.1秒以下
「しくみ → 第36条第1項 → 第36条第3項・第143条 → 感度の選定」の順で確かめます。

📘 この記事の根拠規程|解説の原文は内線規程(JEAC8001-2022)に掲載されています。実務で使う方は手元に1冊どうぞ → 電気設備の必携書籍おすすめ4選【2026年版】

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ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。