技術図書館棟が2つでも引込は1つ|原則は変わらない1構内または1建築物を1需要場所として扱う。別引込は建物が独立していることが入口で、判断は電力会社との協議この資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は、連載「引込・受電設備の設計マニュアル」の 第3回 引込方式とルート の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

既設の建物の横に離れを増築する。幹線を引き回すより、目の前の電柱から直接引き込んだほうが安くて早い――設計の現場でよく出る相談です。ところが電力の引込みには「1需要場所に1引込み」という原則があり、同じ構内の建物なら、棟が増えても引込みは1つが基本です。この記事では、一般送配電事業者の託送供給等約款にある「需要場所」の決め方と、別引込(2引込)を検討できる場合を、3つの質問と動く図で整理します。

①1需要場所に1電気方式・1引込み・1計量が原則で、同じ需要場所なら棟が増えても引込みは1つ、②需要場所はさく・へいで区切られた1構内が原則で、構内をなさなければ独立した1建物、③別の構内・別の需要場所と認められたときや、臨時・予備送電などの例外で2引込を検討でき、必ず協議します。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

先に言葉をそろえる

言葉 ひとことで言うと
需要場所 電気の供給を受ける単位となる場所。料金や引込みはこの単位で決まる
1構内 さく・へい等で区切られ、公衆が自由に出入りできない区域(原則、建物は同一会計主体)
1建物 独立した1つの建物。連結していて所有者・使用者が同じなら1建物とみなす
会計主体 電気料金を払う主体(会社・個人など)
託送供給等約款 送配電事業者が定める供給のルール。各社でほぼ共通
条文の表現は四国電力送配電「託送供給等約款」(14 発電場所および需要場所/15 供給および契約の単位)によります。管轄の送配電事業者の約款で確かめてください。

質問① 引込みの原則は?

さく・へいで区切られた1構内に既設建物と離れがある場合、引込みは1つで、離れへは構内の幹線で送ります。電柱から離れへ直接引き込む2引込は原則できません。

託送供給等約款では、1需要場所について、1電気方式・1引込み・1計量で供給することを原則としています。つまり、同じ需要場所と判断される限り、建物が2棟、3棟と増えても、引込みは1つ。離れへは、既設側の受電点から構内の幹線で送るのが基本です。

たとえるなら
1需要場所1引込みは、「1世帯に水道メーター1つ」と同じです。
同じ家の敷地に物置や離れを建てても、水道メーターは1つで、敷地の中で配管を分けます。道路からもう1本引き込んでメーターを増やすには、別の世帯(別の需要場所)と認められる理由が要ります。
ひっかけ注意
「幹線のコストが高いから」は、別引込の理由になりません。
引込みを分けられるかは、費用ではなく需要場所がいくつあるかで決まります。同じ構内の同じ会計主体の建物なら、どれだけ離れていても原則は1需要場所です。まず敷地と建物の状況を整理し、需要場所の単位から考えます。
ここまでのポイント
  • 1需要場所に1電気方式・1引込み・1計量が原則
  • 同じ需要場所なら、棟が増えても引込みは1つ
  • 費用は別引込の理由にならない


質問② 需要場所の単位は? ― 構内と建物

まず、さく・へいで区切られ公衆が自由に出入りできない区域かを見ます。はいなら1構内が1需要場所、いいえなら独立した1建物が1需要場所です。地上・地下で連結し所有者・使用者が同じなら1建物とみなします。

約款では、1構内をなすものは1構内を1需要場所とし、これによりがたい場合に1建物をなすものは1建物を1需要場所とします。判断の順番は「構内 → 建物」です。

単位 約款の定義
1構内 さく、へい等によって区切られ、公衆が自由に出入りできない区域。原則として区域内の各建物が同一会計主体に属するもの
1建物 独立した1建物。複数の建物でも、地上または地下で連結され、所有者と使用者が同一など一体性があれば1建物とみなす
付属の屋外灯 看板灯・庭園灯・門灯など建物に付属した屋外電灯は、建物と同じ需要場所
このほか、1建物の中で会計主体が異なり固定的な隔壁で区分された部分(共同住宅の各戸、テナントなど)は、条件を満たせば各部分を1需要場所にできます。
ひっかけ注意
「建物が独立していれば、同じ構内でも別引込にできる」とは限りません。
約款は構内が先です。同じ構内(同じ会計主体)の中にある独立した建物は、原則として構内全体で1需要場所になります。「1建物」の単位が使われるのは、構内をなさない場合や、1建物の中を会計主体ごとに分ける場合です。
ここまでのポイント
  • 判断の順番は「構内 → 建物」
  • 1構内=さく・へいで区切られ、原則として同一会計主体
  • 連結していても所有者・使用者が違えば1建物とみなされないことがある

質問③ 2引込にできるのは?

区切りが途切れて扉や開口で行き来できる場合は1構内のまま。完全に区切られ、それぞれに出入口がある場合は、別構内として協議する土台になります。

別引込を検討できるのは、大きく分けて別の需要場所と認められる場合と、約款の例外にあたる場合です。

検討できる場合 ポイント
別の構内として整理できる さく・へい等で区域を区切り、公衆が自由に出入りできない区域がそれぞれに成り立つ。扉や開口で行き来できる区切りは1構内と見られやすい
会計主体が異なる 別の会社・別の世帯が使う建物や部分は、条件を満たせば別の需要場所になりうる
約款の例外にあたる 臨時・電灯と動力・予備送電・共同引込線・特例区域等・特別の事情(下の図)
最終的な判断は、管轄の送配電事業者との協議によります。
約款の例外には、臨時接続送電サービス、低圧の電灯と動力、予備送電サービス、共同引込線、特例区域等、技術上・経済上やむをえない特別の事情があります。

このうち「特例区域等」は、災害対策や温室効果ガスの排出抑制などのための設備(たとえば非常用の設備や充電設備など)を新たに使う際に、その設備の区域を別の需要場所にできる規定です。ほかの需要者の承諾、外観上の区分、配線の分離などの条件があります。

ひっかけ注意
柵を立てれば、それだけで別構内になるわけではありません。
区切り方に加えて、それぞれの区域の会計主体や使い方も見られます。同じ会社が同じ目的で使う建物を柵で分けただけでは、1構内(または隣接する複数構内を1需要場所)と判断されることがあります。形だけ整えるのではなく、実態を説明できるように準備します。
ここまでのポイント
  • 別の構内・別の会計主体として整理できれば別の需要場所に
  • 臨時・予備送電・特例区域等などの例外もある
  • 柵だけでなく、会計主体と使い方の実態が見られる


電力会社との協議の進め方

別引込を考えるときは、早い段階で管轄の送配電事業者に相談します。協議では、次のものをそろえておくと話が早く進みます。

準備するもの 内容
配置図 敷地境界・さくやへい・出入口・建物の位置と、既設の引込位置
使い方 各建物の所有者・使用者(会計主体)・用途
設備の概要 受電電圧・契約電力の見込み、既設の受電設備
希望の理由 別引込を希望する理由(費用だけでなく、運用・保安上の理由)
原則どおり1引込とする場合は、既設の受電設備の容量と、離れまでの幹線(サイズ・電圧降下・ルート)を検討します。
ひとことで言うと:「1需要場所に1引込みが原則。需要場所は構内が先、なければ建物。別引込は別の需要場所か約款の例外で、最後は協議」。

よくある質問

電力の引込みは1引込と2引込のどちらが原則ですか?

1需要場所について1電気方式・1引込み・1計量が原則です(託送供給等約款)。同じ需要場所なら、建物が複数あっても引込みは1つです。

1構内とは何ですか?

さく・へい等によって区切られ、公衆が自由に出入りできない区域で、原則として区域内の各建物が同一会計主体に属するものです。

同じ敷地の離れを別引込にできますか?

同じ構内・同じ会計主体なら原則として1需要場所なので、離れへは構内の幹線で送ります。別の構内・別の会計主体として整理できる場合や、約款の例外にあたる場合は、協議の上で別引込を検討できます。

柵で区切れば別構内になりますか?

区切り方に加え、会計主体や使い方も判断されます。扉や開口で行き来できる区切りは1構内と見られやすく、最終的には送配電事業者との協議によります。

1需要場所で引込みを分けられる例外は?

臨時接続送電サービス、低圧の電灯と動力、予備送電サービス、共同引込線、特例区域等、技術上・経済上やむをえない特別の事情などです。


まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
棟ごとに引込みを取れる 1需要場所に1引込みが原則
1構内=人が行き来できる敷地 さく・へいで区切られ公衆が自由に入れない区域
建物が独立していれば別引込可 構内が先。同じ構内なら原則1需要場所
柵を立てれば別構内 会計主体と使い方の実態も見られる
幹線が高いから別引込に 費用は理由にならない。例外と協議で判断
「需要場所の単位 → 別の需要場所になるか → 例外にあたるか → 協議」の順で確かめます。
📘 体系的に学びたい方へ
このテーマは、連載「高圧受変電設備の設計マニュアル(全14回+資料編)」で、単線結線図の読み方・書き方とあわせて基礎から解説しています。
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ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。