技術図書館高調波とは|発生原因と対策の考え方を、スライド8枚で基本波の整数倍という定義、対策の種類、そして計算が不要になる4条件までを図で確認できます。この資料をスライドで見る資料一覧を見る

高調波は、基本波(50Hz/60Hz)の整数倍の周波数をもつ成分です。インバータのように交流を半導体で切り刻む機器から生まれ、配電線を通って外へ流れ出ます。ただ、実務でまず困るのは「他人に迷惑がかかる」ことではなく、自分の進相コンデンサと直列リアクトルが過熱して壊れることです。この記事では、高調波が何か、何が起きるか、どの機器を拾うのか、そしてルールと計算の要否・対策の選び方までを順に整理します。

結論

高調波は基本波の整数倍の成分。高圧受電なら等価容量50kVAを境に計算の要否が決まります。

  • 実務で問題になるのは主に第5次・第7次。単相負荷では第3次が中性線に重なる
  • 最初に壊れるのは進相コンデンサと直列リアクトル。うなり音が出たら疑う
  • ルールは「高調波環境目標レベル(6.6kV系統で総合電圧ひずみ率5%、特別高圧で3%)」から降りてくる
  • 需要家側は高調波抑制対策ガイドライン(1994年制定・2004年改正)、機器側はJIS C 61000-3-2
  • 計算方法を定めた技術指針はJEAG 9702。1995 → 2013 → 2018 →2023年版が最新
  • 等価容量 P0=Σ(Ki×Pi) が6.6kV受電で50kVA以下なら、その時点で検討不要
  • 対策は「機器側で出さない(ACL・DCL・12パルス)」か「受電側で吸う(フィルタ)」かの二択
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
この記事は全体の流れを扱います。③⑤の計算そのものは別の記事で詳しく解説しています。
この記事で読めるようになる用語:高調波進相コンデンサ直列リアクトル力率

高調波とは ― 基本波の整数倍

高調波は、ひずみ波交流に含まれる、基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波成分です。基本波が50Hzなら第3次は150Hz、第5次は250Hz。60Hzなら180Hz、300Hzになります。「余計な周波数が混ざっている」というより、ひずんだ波形を正弦波に分解すると出てくる成分と考えるほうが実態に近い見方です。

基本波に第5調波が重なると、波形の頭がつぶれたひずみ波になります。
理論上は「1/n」で小さくなります。5次が20%でいちばん大きく、次が7次です。
次数 50Hz地域 60Hz地域 実務での扱い
第3次 150Hz 180Hz 単相負荷で出る。三相では零相分として中性線に重なる
第5次 250Hz 300Hz 三相の整流回路で最も大きい。対策の主役
第7次 350Hz 420Hz 5次に次いで大きい
第11次・第13次 550/650Hz 660/780Hz 12パルス化しても残る次数
三相の6パルス整流では、5・7・11・13…(6K±1)の次数が出ます。偶数次はほとんど問題になりません。
ペン太ペン太
なぜ5次と7次が大きいんですか?
ハリタハリタ
三相を6パルスで整流すると、6K±1の次数だけが残るからです。Kが1のときが5次と7次で、いちばん大きく出ます。
ここまでのポイント
  • 高調波=基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波成分
  • 50Hzなら第5次は250Hz、60Hzなら300Hz
  • 三相の6パルス整流では 6K±1(5・7・11・13…)の次数が出る
  • 単相負荷の第3次は零相分となり、中性線に重なって流れる

何が起きるか ― 先に壊れるのは自分の設備

高調波の説明は「系統に流出して他の需要家に迷惑がかかる」から始まることが多いのですが、設計・保守の現場で先に現れるのは自分の受変電設備の不具合です。とくに進相コンデンサと直列リアクトルは、高調波を吸い込みやすく、いちばん早く音を上げます。

うなり音は最初のサインです。放っておくとリアクトルの焼損に進みます。
設備 起きること 気づき方
直列リアクトル 高調波電流が流れ込んで過熱し、焼損に至る うなり音、外箱の変色、においで気づく
進相コンデンサ 過電流で寿命が縮む。リアクトルなしだと高調波を拡大させる うなり音、膨れ、保護装置の動作
変圧器 銅損が増えて温度が上がる うなり音が大きくなる、温度計の指示上昇
中性線 単相負荷の第3次が重なり、相電流より大きくなることがある 電線の発熱。クランプで実測して確認する
制御機器 電圧ひずみで誤動作する 原因の分からない停止・リセット
直列リアクトルなしの進相コンデンサは、高調波に対してインピーダンスが低く、電流を吸い込む側に回ります。
基本波は120度ずつずれて打ち消し合いますが、第3次は3相とも同相になります。

⚠ コンデンサのうなり音は「高調波の警報」と考える

キュービクルで「ブーン」という音が大きくなったとき、まず疑うのは高調波です。直列リアクトルが付いているか、付いていれば何%か、そして系統側の電圧ひずみがどうかを確認します。APFCで高調波警報を受けてコンデンサを切り離す構成もあります(APFCとVMCの設置基準と使用用途)。

ここまでのポイント
  • 最初に出るのは直列リアクトルの過熱・うなり音・焼損
  • 変圧器は銅損が増えて過熱し、寿命が縮む
  • 単相負荷の第3次は中性線に重なり、相電流より大きくなることがある
  • 電圧ひずみは制御機器の誤動作を招く


どの機器を拾うのか

高調波を出すのは、交流を半導体で切り刻む機器=整流回路をもつ機器です。インバータが付いていれば、まず対象と考えて差し支えありません。ただし、機器の大きさによってルールの入口が変わります。

屋上の空調室外機、昇降機、電気室のUPS、ホールの調光盤。だいたいこの辺りにあります。
20Aを境に、機器そのものを規制する側と、需要家がまとめて拾う側に分かれます。
区分 対象 根拠
需要家がまとめて拾う インバータ機器、UPS・整流装置、調光装置、医療機器、クレーン・巻上機、EV充電設備など 高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン
機器そのものを規制 入力電流20A以下の機器 JIS C 61000-3-2
どちらでもない 20Aを超える機械・装置 JIS C 61000-3-2 の適用範囲外。需要家側で拾う
汎用インバータとサーボアンプ単体は、全容量範囲で需要家側ガイドラインの抽出対象です(日本電機工業会)。

💡 「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」はもうない

かつては機器側にも同名のガイドラインがありましたが、2004年9月に廃止され、入力電流20A以下の機器はJIS C 61000-3-2の要求に移りました。古い資料では今も「家電・汎用品ガイドライン」という言い方が残っているので、出典の年を確かめてから使います。

ここまでのポイント
  • 高調波を出すのは整流回路をもつ機器。インバータが付いていればまず対象
  • 入力電流20A以下の機器はJIS C 61000-3-2で機器側が規制される
  • 20Aを超える機械・装置は需要家側のガイドラインで拾う
  • 汎用インバータとサーボアンプ単体は全容量が抽出対象

ルールの全体像

高調波のルールは、電気の環境基準にあたる「高調波環境目標レベル」から降りてきます。6.6kV配電系統で総合電圧ひずみ率5%、特別高圧系統で3%。これを守るために、需要家からの流出電流に上限が設けられている、という構造です。

ガイドラインが「どこまで流してよいか」、技術指針が「どう計算するか」を決めています。
決まりごと 内容 年・版
高調波環境目標レベル 総合電圧ひずみ率 6.6kV配電系統 5%/特別高圧系統 3% —
需要家向けガイドライン 高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン 1994年9月 制定/2004年1月 改正
機器側の規格 JIS C 61000-3-2(入力電流20A以下の機器) 家電・汎用品ガイドラインは2004年9月廃止
計算の技術指針 JEAG 9702 高調波抑制対策技術指針 1995 → 2013 → 2018 → 2023(最新)
JEAG 9702 は2023年に第4版へ改訂されています。古い記事や資料は2013年版を前提にしていることが多いので注意します。

6.6kV受電の流出電流上限値

指針では、契約電力1kWあたりで流してよい高調波電流が次数ごとに決められています。この値に契約電力(相当値)を掛けたものが、その建物の許容値になります。

受電電圧 第5次 第7次 第11次 第13次
6.6 kV 3.5 2.5 1.6 1.3
22 kV 1.8 1.3 0.82 0.69
33 kV 1.2 0.86 0.55 0.46
単位は[mA/kW]。たとえば6.6kV受電・契約電力300kWなら、第5次の許容値は 3.5×300=1,050mA(約1.05A)になります。
ペン太ペン太
この上限値は、誰が測って確かめるんですか?
ハリタハリタ
設計段階では計算です。実測ではなく、指針の手順で求めた値が上限値以内かどうかを見ます。
ここまでのポイント
  • 高調波環境目標レベルは6.6kV系統で総合電圧ひずみ率5%、特別高圧で3%
  • 需要家向けガイドラインは1994年制定・2004年改正、技術指針JEAG 9702は2023年版が最新
  • 6.6kV受電の流出電流上限値は5次3.5/7次2.5/11次1.6/13次1.3[mA/kW]
  • 上限値×契約電力(相当値)が、その建物の許容値になる


検討の流れ ― どこで止まってよいか

検討は2段階に分かれています。第1ステップが等価容量による判定、第2ステップが流出電流による判定です。大事なのは、多くの物件は第1ステップで終わるということ。いきなり流出電流の計算を始めると、本来しなくてよい作業をすることになります。

緑の「検討終了」に当たれば、そこで終わりです。②か④で終わるケースが多くあります。

第1ステップ ― 等価容量で判定する

まず高調波発生機器を洗い出し、回路種別から換算係数 Ki を確認します。そのうえで等価容量 P0 = Σ(Ki × Pi) を求め、受電電圧ごとの限度値と比べます。Ki は「同じ容量でも、この回路ならどれだけ高調波を出すか」を表す係数で、大きいほど多く出す回路です。

機器ごとに Ki×Pi を出して足すだけです。この例は57.5kVAで、50kVAを超えています。
受電電圧 等価容量の限度値 判定
6.6 kV 50 kVA これ以下なら検討終了
22 kV・33 kV 300 kVA これ以下なら検討終了
66 kV以上 2,000 kVA これ以下なら検討終了
計算の進め方は高調波流出電流計算の解説[簡略方法]、等価容量の求め方は等価容量の計算方法で扱っています。
Ki=3.4 三相ブリッジ6パルス・リアクトルなし(いちばん高調波が多い)
Ki=1.8 三相ブリッジ6パルス・直流側にリアクトルあり
Ki=1.4 三相ブリッジ6パルス・交流側と直流側の両方にリアクトルあり
Ki=0.5 12パルス変換装置

ビル設備なら、その前に終われることがある

等価容量を出す前に確認できる近道もあります。ビル設備の需要家を対象にした緩和で、条件をすべて満たせばその時点で検討終了にできます。

①〜③は図面で判断できます。④だけはメーカー仕様の確認が要ります。

⚠ 「直列リアクトル付」は6%を指す(2023年版で明確化)

条件のひとつ「進相コンデンサがすべて直列リアクトル付」について、2023年の改定でこれは「6%直列リアクトル付」を指し、13%直列リアクトル付は該当しないことが明確にされました。13%を採用している設備では、この緩和は使えません。また同じ改定で、第1ステップの判定に高調波発生機器の比率に関する条件(比率35%以下)が加わっています。古い資料の「4条件」だけで判断せず、最新版で確認してください。

第2ステップ ― 流出電流で判定する

第1ステップで終われなかったときに、初めて次数ごとの流出電流を計算します。ここで効いてくるのが「定格のまま足さない」という考え方です。機器が常に定格で回っているわけではないので、稼働率や規模による補正率をかけてから合計します。

稼働率と補正率をかけるので、定格容量をそのまま足した値よりはかなり小さくなります。
使う値 内容 例(ビルの場合)
最大稼働率 機器ごとの、実際に動いている割合 空調機器0.55/衛生ポンプ0.60/エレベータ0.60
ビル規模による補正率β 契約電力が大きいほど小さくなる 300kW以下1.0/500kW 0.9/1,000kW 0.85/2,000kW以上0.8
需要家の最大需要率 設備容量に対する最大需要電力の割合 ビルなら0.7を適用してもよい
低減効果 直列リアクトル付進相コンデンサによる高調波の低減 6%と13%で扱いが違う(JIS C 4902-2)
契約電力相当値 上限値[mA/kW]に掛ける値 自家用発電機がある需要家は相当値を使う
数値は技術指針の表によるビルの例です。工場では機器ごとに実際の運転状況から決めます。

💡 2023年版(JEAG9702-2023)で変わったところ

  1. 第1ステップの判定に、高調波発生機器の比率に関する条件が加わった
  2. 「直列リアクトル付」は6%を指すことを明確化(13%は該当しない/JIS C 4902-2を参照)
  3. 多パルス化したときに11次以上が上限値を上回る場合は、一般送配電事業者と協議することを明確化
  4. 流入電流が流出電流より大きい場合は、算出結果をマイナスのまま扱うことを明確化
  5. 特別高圧受電への対応を明確化

手元の資料が2013年版のままだと、とくに②で判断を誤ります。

出典:高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン、JEAG 9702 高調波抑制対策技術指針(2023年版)、JIS C 61000-3-2、JIS C 4902-2、日本電気技術者協会、指月電機製作所「高調波抑制対策技術指針について」

ここまでのポイント
  • 検討は第1ステップ(等価容量)と第2ステップ(流出電流)の2段階
  • 第1ステップは P0=Σ(Ki×Pi) を限度値(6.6kVで50kVA)と比べるだけ
  • ビル設備の条件をすべて満たせば、等価容量を出す前に終われる
  • 第2ステップでは稼働率・補正率βをかけてから合計する(定格のまま足さない)
  • 2023年版で「直列リアクトル付=6%」が明確化された。13%は緩和の対象外


対策の選び方

対策は大きく二つです。機器側で「出さない」か、受電側で「吸う・相殺する」か。順番としては機器側が先で、それでも超えるぶんを受電側で処理します。機器側で抑えると換算係数Kiが下がるので、計算そのものが楽になるからです。

機器側で抑えるとKiが下がり、等価容量が小さくなります。まずはこちらから。
ACLは整流器の手前、DCLは整流器とインバータの間。位置で換算係数が変わります。
対策 どこに入れるか 効き方
ACL(交流リアクトル) インバータの交流側 電流波形をなだらかにして高調波を減らす
DCL(直流リアクトル) インバータの直流側 同上。ACLと併用するとさらに下がる
12パルス化 多相化変圧器+2組の整流回路 5次・7次が打ち消され、12K±1だけが残る
直列リアクトル付コンデンサ 高圧側の力率改善設備 高調波の拡大を防ぐ。6%が標準
パッシブフィルタ 受電側 5次・7次・11次の共振回路で吸わせる
アクティブフィルタ 受電側 逆位相の電流を流して相殺する。効果は高いが高価
直列リアクトルの6%・13%の使い分けは6%・13%の意味とリアクトルの選定方法で扱っています。
6%は「共振点を5次より下にずらす」ための値です。5次以上では誘導性になります。

⚠ 直列リアクトルは「対策」であると同時に「被害者」でもある

直列リアクトルは高調波の拡大を防ぐために入れますが、系統側の電圧ひずみが大きいとそのリアクトル自身が過熱します。「リアクトルを付けたから安心」ではなく、発生源の量が想定内に収まっているかを確認したうえで選ぶものです。第3調波が問題になる設備では、6%ではなく13%を選ぶ判断もあります。

ペン太ペン太
とりあえず全部の機器にリアクトルを入れておけばいいのでは?
ハリタハリタ
過剰な対策はそのままコストになります。発生源を洗い出して、必要な機器だけに入れるのが設計です。
ここまでのポイント
  • 順番は「機器側で出さない」→「受電側で吸う」
  • 機器側で抑えると換算係数Kiが下がり、計算そのものが楽になる
  • 12パルス化すると5次・7次が打ち消され、12K±1だけが残る
  • 直列リアクトルは対策であると同時に、電圧ひずみで過熱する側でもある


よくある質問

高調波とは何ですか?

ひずみ波交流に含まれる、基本波(50Hz/60Hz)の整数倍の周波数をもつ正弦波成分のことです。基本波が50Hzなら第3次は150Hz、第5次は250Hz。これらを含んで流れる電流を高調波電流といいます。

なぜ第5次と第7次が問題になるのですか?

三相を6パルスで整流すると、6K±1(5次・7次・11次・13次…)の次数が残るためです。Kが1のときの5次と7次がいちばん大きく出ます。

高調波で最初に壊れるのはどこですか?

進相コンデンサと直列リアクトルです。高調波電流が流れ込んでリアクトルが過熱し、焼損に至ります。「ブーン」といううなり音が最初のサインになります。

中性線が熱いのは高調波のせいですか?

単相負荷の第3次高調波は零相分となり、各相で打ち消し合わずに中性線へ重なって流れます。相電流より中性線電流が大きくなることがあるため、クランプで実測して確認してください。

高調波のルールはどれを見ればよいですか?

需要家側は「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」(1994年制定・2004年改正)、計算方法はJEAG 9702 高調波抑制対策技術指針です。JEAG 9702は2023年版が最新で、2013年版を前提にした古い資料が多く残っています。

高調波流出電流の上限値はいくつですか?

6.6kV受電の場合、契約電力1kWあたり第5次3.5mA、第7次2.5mA、第11次1.6mA、第13次1.3mAです。22kV・33kVではこれより小さい値になります。

検討は何から始めればよいですか?

高調波発生機器の洗い出しと、回路種別からの換算係数Kiの確認です。そのあと第1ステップ(等価容量による判定)に進みます。いきなり流出電流を計算すると、本来しなくてよい作業をすることになります。

第1ステップと第2ステップは何が違いますか?

第1ステップは等価容量 P0=Σ(Ki×Pi) を限度値と比べるだけの簡単な判定で、多くの物件はここで終わります。第2ステップは次数ごとの流出電流を実際に計算し、契約電力相当値から求めた許容値と比べる段階です。

13%の直列リアクトルでもビル設備の緩和は使えますか?

使えません。2023年の改定で、条件にある「直列リアクトル付」は6%直列リアクトル付を指し、13%は該当しないことが明確にされました。13%を採用している設備では等価容量の計算に進みます。

流出電流は定格容量をそのまま足すのですか?

足しません。機器ごとの最大稼働率(ビルなら空調0.55、エレベータ0.60など)と、ビル規模による補正率β(300kW以下1.0〜2,000kW以上0.8)をかけてから合計します。需要家の最大需要率もビルなら0.7を適用してよいとされています。

高調波の計算は必ず必要ですか?

必要ありません。等価容量 P0=Σ(Ki×Pi) が受電電圧ごとの限度値以下なら検討終了です。6.6kV受電なら50kVA、22kV・33kVなら300kVA、66kV以上なら2,000kVAが限度値です。

ビル設備で計算が不要になる4条件とは?

①高圧受電である②用途がビルである③進相コンデンサがすべて直列リアクトル付である④換算係数Kiが1.8を超える機器がない、の4つです。すべて満たせば検討終了にできます。④は機器のメーカー仕様で確認します。

換算係数Kiはどこで分かりますか?

回路種別ごとに技術指針で決められています。三相ブリッジ6パルスでリアクトルなしが3.4、直流側にリアクトルありが1.8、12パルス変換装置が0.5です。実機の回路種別はメーカー仕様で確認します。

対策は何から検討すればよいですか?

まず機器側です。ACL・DCLの追加や12パルス化で換算係数が下がり、等価容量そのものが小さくなります。それでも超えるぶんを、受電側のパッシブフィルタやアクティブフィルタで処理します。

まとめ ― 取り違えやすいところと手順

取り違えやすいところ 正しくは
高調波は基本波より低い周波数の成分 基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波成分
高調波の被害は他の需要家に出る 先に出るのは自分の進相コンデンサと直列リアクトルの過熱・焼損
根拠はJEAG9702-2013 JEAG 9702は2023年版が最新。2013年版は2世代前
高圧受電なら必ず最後まで計算する 等価容量が6.6kVで50kVA以下なら検討終了。ビル設備の4条件による緩和もある
換算係数は小さいほど高調波が多い 大きいほど多い。6パルスでリアクトルなしが3.4、12パルスが0.5
リアクトルを付ければ高調波は解決する 直列リアクトルは拡大を防ぐだけ。電圧ひずみが大きいとリアクトル自身が過熱する
家電・汎用品ガイドラインで規制されている 2004年9月に廃止。20A以下の機器はJIS C 61000-3-2へ移行した
「直列リアクトル付」なら6%でも13%でもよい ビル設備の緩和条件では6%のみ。13%は対象外(2023年版で明確化)
いきなり流出電流を計算する まず第1ステップ(等価容量)。多くの物件はここで検討終了になる
「自分の設備が先に壊れる」と「2023年版が最新」の2つを押さえておけば、古い資料に引きずられません。
手順 やること 使う値・見るもの
1|抽出 高調波発生機器を洗い出す インバータ・UPS・調光・医療・クレーン
2|換算係数 回路種別からKiを確認する 6パルス3.4/リアクトル付1.8/12パルス0.5
3|等価容量 P0=Σ(Ki×Pi) を求める 機器ごとの容量[kVA]
4|判定 限度値と比べる 6.6kV:50kVA/22・33kV:300kVA
5|流出電流 超えるなら次数ごとに計算する 5次3.5/7次2.5[mA/kW]ほか
6|対策 機器側→受電側の順で選ぶ ACL・DCL・12パルス/フィルタ
この6手順なら、どこで止まってよいかが分かるので、不要な計算をしなくて済みます。

📘 あわせて確認したいこと

計算の進め方は高調波流出電流計算の解説[簡略方法]、等価容量は等価容量の計算方法、力率改善設備の全体像は設計マニュアル⑪ 力率改善設備で扱っています。

出典:高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン(1994年9月制定・2004年1月改正)、JEAG 9702 高調波抑制対策技術指針(2023年版)、JIS C 61000-3-2、日本電気技術者協会「高調波抑制対策要否の判断と流出電流の計算」、日本電機工業会「汎用インバータ及びサーボアンプの高調波抑制対策について」。数値は指針の版によって変わることがあります。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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次に読むならこれ参考文献『2023年度版』|高圧受電設備規程高圧受電設備規程
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。