受変電設備の設計|APFCとVMCの設置基準と使用用途について詳しく解説
高圧受変電設備では、基本料金を下げるために電力用コンデンサで力率を改善します。ただし力率は良ければ良いほどよい、ではありません。夜間や休日に負荷が止まってもコンデンサだけが働き続けると、力率が進みすぎて受電端の電圧が上がります。しかも進み側は料金の割引になりません。この記事では、進み力率がなぜ損になるのかを料金のしくみから確かめたうえで、それを自動で切り離すAPFC(自動力率調整器)とVMC(高圧電磁接触器)の役割と選び方を整理します。
結論
力率は100%で頭打ち。進み側にしても得はないので、APFCが監視し、VMCが切り離す構成にします。
- 基本料金の割引は8時〜22時の平均力率が対象で、瞬間力率が進みの場合は100%として扱われる
- つまり夜間・休日に進み力率にしても料金は下がらず、電圧上昇の弊害だけが残る
- APFCは力率を監視して信号を出すだけ。実際に開閉するのはVMC
- APFCがコンデンサを切る合図は軽負荷検出・外部タイマー・高調波警報の3つ
- VMCの開閉耐久性は機械的250万回/電気的25万回。コンデンサ回路では2000kvarで約3万回まで下がる(LBSは機械的1,000回・電気的200回)
- 開放から再投入までは5分以上あけるか、放電コイルを付ける(JIS C 4902-1)
力率は「良すぎても」得しない
まず料金のしくみから確かめます。高圧の電気料金では、力率が85%を上回る1%につき基本料金を1%割引、下回る1%につき1%割増となります。ここまでは知られていますが、実務で効いてくるのは次の2点です。
| 決まりごと | 内容 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 対象の時間帯 | 1月のうち8時から22時までの平均力率 | 夜間の力率は料金に関係しない |
| 進み力率の扱い | 瞬間力率が進みの場合、その瞬間力率は100%とする | 進めても割引は増えない |
| 割引・割増 | 85%を上回る/下回る1%につき基本料金を1% | 85→100%で最大15%の割引 |
| 電気を使わない月 | その1月の力率は85%とみなす | 割引も割増もない |
ペン太
ハリタ- 基本料金の割引は、8時〜22時の平均力率が対象
- 瞬間力率が進みのときは100%として扱われ、それ以上は割引が増えない
- 85%を基準に、1%につき基本料金が1%動く(85→100%で最大15%)
- 夜間・休日の進み力率は、料金上まったく得にならない
夜間・休日に何が起きているか
得にならないだけなら放っておけばよさそうですが、そうはいきません。負荷が止まってもコンデンサは電流を流し続けるので、打ち消す相手のいない進み無効電力がそのまま系統へ出ていきます。
| 起きること | なぜ | 影響 |
|---|---|---|
| 受電端の電圧上昇 | 進み電流がケーブルや変圧器のリアクタンスを通ると、受電端が送電端より高くなる | 機器への過電圧、変圧器タップとの不整合 |
| 機器の劣化・誤動作 | 定格を超える電圧が常時かかる | 絶縁の劣化、制御機器の誤動作 |
| 系統電圧の管理に影響 | 需要家から進み無効電力が逆に流れる | 電力会社から是正を求められることがある |
| 料金の得はない | 進み側は力率100%として扱われる | リスクだけが残る |
⚠ 電力会社からも、容量の適正化と自動制御を求められている
一般送配電事業者は、需要家向けの案内で進み力率になるような過剰な容量でコンデンサが設置されていると、系統側の調整範囲を超えて電圧を急激に上昇させることがあると説明しています。そのうえで、高圧受電設備規程の算定方法にもとづく適切な容量(進み力率とならない容量)で設計すること、コンデンサの投入量を自動的に制御する装置を使うことを求めています。とくに春秋の軽負荷期は系統の電圧が上がりやすい時期です。
⚠ 「コンデンサは入れっぱなしで大丈夫」ではない
進相コンデンサの容量は、過度の進み力率にならない定格設備容量とすることが前提です。コンデンサを分割せず一括で入れている設備ほど、夜間に進みすぎやすくなります。容量の求め方は進相コンデンサの定格容量の求め方(6%・13%換算早見表)で扱っています。
- 負荷が止まってもコンデンサは進み無効電力を出し続ける
- 打ち消す相手がいないため、受電端の電圧が上がる(フェランチ効果)
- 過電圧は機器の劣化・誤動作につながり、電力会社から是正を求められることもある
- 料金の得はないので、残るのは弊害だけ
APFCが見張り、VMCが開閉する
対策は「負荷が軽いときはコンデンサを切り離す」ことです。これを自動でやるのがAPFCとVMCの組み合わせで、役割ははっきり分かれています。
| 機器 | 正式名称 | 受け持つこと |
|---|---|---|
| APFC | 自動力率調整器(Automatic Power Factor Controller) | VT・CTから力率を監視し、設定値を外れたら開閉信号を出す |
| VMC | 高圧交流真空電磁接触器(Vacuum Magnetic Contactor) | 信号を受けて、コンデンサ回路を投入・遮断する |
| SR | 直列リアクトル | 高調波の拡大を防ぎ、投入時の突入電流を抑える(6%が標準) |
| SC | 高圧進相コンデンサ | 進み無効電力を供給して力率を改善する |
💡 APFC・APFR・自動力率調整装置は同じもの
呼び方が複数あります。APFC(Automatic Power Factor Controller)、APFR(Automatic Power Factor Regulator)、メーカーのカタログでは自動力率調整装置と書かれることが多く、単線結線図の機器記号も APFR が使われます。図面と仕様書で記号がそろっているかだけ確認しておけば、機能は同じものと考えて差し支えありません。
APFCがコンデンサを切る3つの合図
ペン太
ハリタ- APFCは監視と信号送出、VMCは主回路の開閉を受け持つ
- APFCの入力はVT・CT、出力はVMCへの開閉信号
- 切る合図は「軽負荷検出」「外部タイマー」「高調波警報」の3つ
- コンデンサ回路はVMC+直列リアクトル(6%)+コンデンサで構成する
なぜLBSではなくVMCなのか
自動制御にすると、コンデンサは1日に何度も入り切りされます。ここで効いてくるのが開閉耐久性です。普段キュービクルで使っているLBS(限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器)とは、桁がまるで違います。
| 項目 | VMC(高圧交流真空電磁接触器) | LBS(高圧交流負荷開閉器) |
|---|---|---|
| 機械的開閉耐久性 | 250万回 | 1,000回 |
| 電気的開閉耐久性 | 25万回 | 200回 |
| コンデンサ回路での寿命 | 〜1000kvar:約8万回 2000kvar:約3万回 |
— |
| 開閉頻度 | 600回/時 | 規定なし(常時開閉を想定しない) |
| 適合規格 | JEM 1167(高圧交流電磁接触器)ほか | JIS C 4605/JIS C 4611 |
| 向いている用途 | 高頻度の入り切り(コンデンサ・電動機) | 変圧器などの区分開閉、年に数回の開閉 |
💡 コンデンサ回路では「25万回」をそのまま使わない
カタログの電気的開閉耐久性25万回は、一般の負荷回路での値です。コンデンサ回路は突入電流が大きいぶん寿命が短く、例では〜1000kvarで約8万回、2000kvarで約3万回とされています。1日に10回入り切りすると年3,650回なので、3万回でもおよそ8年です。開閉回数の見積もりは、容量と制御方式から立てておきます。
突入電流も、開閉器を選ぶ理由のひとつ
コンデンサを投入する瞬間には大きな突入電流が流れます。直列リアクトルがないと定格電流の数十倍、6%の直列リアクトルを入れておおむね5倍程度に抑えられます。この電流はCT二次側の異常電圧や制御機器の誤動作の原因にもなるため、リアクトルは省略できません。
出典:日本電気技術者協会「進相コンデンサ回路に直列リアクトルを設置する目的」、JEM 1167、JIS C 4605、JIS C 4611
- VMCの開閉耐久性は機械的250万回・電気的25万回、開閉頻度600回/時
- LBSは機械的1,000回・電気的200回。毎日の入り切りには耐えない
- コンデンサ回路では電気的寿命が下がる(2000kvarで約3万回)
- 投入時の突入電流は直列リアクトル6%でおおむね5倍程度に抑える
設計で外しやすいところ
APFCとVMCを入れれば終わりではありません。切ったコンデンサをいつ入れ直せるかを決めておかないと、機器を傷めます。
⚠ 開放してすぐの再投入は禁止
JIS C 4902-1では、コンデンサの放電性能を残留電圧が5分間で50V以下と規定しています。さらに附属書JAでは、「開放後極めて短時間に再投入すると残留電荷のために大きな突入電圧が生じることがある。開閉間隔を5分以上にとるか、短時間で放電する放電コイルを用いるなど、残留電荷を50V以下にして再投入する配慮が必要」としています。
APFC側の再投入阻止タイマーと、コンデンサ側の放電方式はセットで決めます。
| 決めること | 選び方 | 理由 |
|---|---|---|
| 再投入までの時間 | 5分以上/放電コイルなら短縮できる | 残留電荷を50V以下にしてから入れる |
| 放電方式 | 放電抵抗(内蔵)か放電コイル | 短い周期で制御するなら放電コイル |
| コンデンサの分割 | 負荷の変動幅に合わせて2〜3バンクに分ける | 段階的に入り切りでき、進みすぎを避けやすい |
| 直列リアクトル | 6%を標準、第3調波が問題なら13% | 突入電流の抑制と高調波の拡大防止 |
| 高調波警報 | APFCの警報入力を使うか決める | 直列リアクトルの焼損事故を避ける |
| 更新の時期 | 高圧進相コンデンサは15年が推奨 | JEMAの更新推奨時期 |
ペン太
ハリタ- 開放から再投入までは5分以上あける(放電コイルなら短縮できる)
- JIS C 4902-1は残留電圧を5分間で50V以下と規定している
- コンデンサを2〜3バンクに分けると、段階的な制御ができる
- 高圧進相コンデンサの更新推奨時期は15年(JEMA)
よくある質問
なぜ力率は「良すぎても」だめなのですか?
料金の面では、進み力率は力率100%として扱われるため、それ以上は割引が増えないからです。一方で、打ち消す相手のいない進み無効電力は受電端の電圧を押し上げ、機器の劣化や誤動作、系統電圧の管理への影響につながります。得がないのに弊害だけが残る状態になります。
APFCとは何ですか?
APFC(自動力率調整器)は、VT・CTから力率を常に監視する装置です。力率が設定値を外れたと判断すると、コンデンサ回路のVMCへ開閉信号を送ります。軽負荷検出のほか、外部タイマー信号や高調波警報でも遮断できます。
VMCとは何ですか?
VMC(高圧交流真空電磁接触器)は、コンデンサ回路の投入・遮断を行う開閉器です。真空バルブを使っており、高い開閉耐久性と開閉頻度をもちます。適合規格はJEM 1167です。
コンデンサの開閉になぜLBSを使わないのですか?
開閉回数が足りないためです。LBSの電気的開閉耐久性は200回、機械的でも1,000回程度で、常時の入り切りを想定していません。VMCは機械的250万回・電気的25万回、開閉頻度600回/時に対応します。
VMCは25万回まで使えるということですか?
一般の負荷回路での値です。コンデンサ回路は突入電流が大きいため寿命が短くなり、カタログ例では〜1000kvarで約8万回、2000kvarで約3万回とされています。開閉回数の見積もりから余裕を確認してください。
コンデンサを切ったあと、すぐに入れ直せますか?
入れられません。JIS C 4902-1は残留電圧を5分間で50V以下と規定しており、附属書JAでは開閉間隔を5分以上にとるか、短時間で放電する放電コイルを用いることを求めています。短い周期で制御したい場合は放電コイルを選びます。
APFCはどんな建物で使いますか?
夜間や休日に負荷がほとんどゼロになる建物です。工場・学校・事務所などで、コンデンサを分割して設置している設備に向いています。
高調波警報でコンデンサを切るのはなぜですか?
直列リアクトルが高調波電流で過熱し、焼損する事故を避けるためです。APFCの警報入力を使って、高調波が増えたときにコンデンサ回路を切り離します。
APFCとAPFRは違うものですか?
同じものです。APFC(Automatic Power Factor Controller)、APFR(Automatic Power Factor Regulator)、自動力率調整装置はいずれも同じ機器を指します。単線結線図の機器記号にはAPFRが使われることが多いので、図面と仕様書で記号をそろえておけば問題ありません。
進み力率を電力会社から指摘されることはありますか?
あります。需要家から進み無効電力が流れると系統の電圧管理に影響するため、夜間のコンデンサ開放を求められることがあります。自動制御にしておけば、こうした指摘にも対応しやすくなります。
まとめ ― 取り違えやすいところと手順
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| 力率は100%に近いほど常に得 | 料金の計算では進み側は100%として扱われる。それ以上は割引が増えない |
| 進み力率は電気料金の問題 | 料金には効かない。問題は受電端の電圧上昇と機器への影響 |
| 力率割引は1日中の力率で決まる | 対象は8時から22時までの平均力率。夜間の力率は関係しない |
| APFCがコンデンサを直接開閉する | APFCは監視と信号送出。開閉するのはVMC |
| 開閉器ならLBSでも同じ | LBSの電気的開閉耐久性は200回。毎日の入り切りには耐えない |
| VMCは25万回もつ | 一般負荷回路での値。コンデンサ回路では2000kvarで約3万回 |
| 切ったらすぐ入れ直せる | 残留電荷が50V以下になるまで5分以上、または放電コイルを使う |
| 手順 | やること | 使う値・見るもの |
|---|---|---|
| 1|現状 | 検針票で力率と基本料金を確かめる | 8時〜22時の平均力率 |
| 2|容量 | コンデンサ容量と分割のしかたを決める | 過度の進みにならない容量、2〜3バンク |
| 3|要否 | 自動制御が要るかを判断する | 夜間・休日に負荷が落ちるか |
| 4|制御 | APFCの制御方式を決める | 軽負荷検出/タイマー/高調波警報 |
| 5|開閉器 | VMCを選ぶ | 開閉容量[kvar]と想定開閉回数 |
| 6|再投入 | 待ち時間と放電方式を決める | 5分以上/放電コイル |
📘 あわせて確認したいこと
力率改善設備の全体像は高圧受変電設備の設計マニュアル⑪ 力率改善設備、リアクトルの6%・13%は6%・13%の意味と選定方法、高調波の基礎は高調波ってなに?で扱っています。
出典:電気供給約款(力率の定義)、一般送配電事業者の需要家向け案内(進相コンデンサの容量適正化と自動力率調整装置の設置)、JIS C 4902-1 高圧及び特別高圧進相コンデンサ並びに附属機器(放電性・附属書JA)、JEM 1167 高圧交流電磁接触器、JIS C 4605/JIS C 4611、日本電機工業会(高圧進相コンデンサの更新推奨時期)、メーカーカタログの仕様例。開閉耐久性や寿命の値は機種によって変わります。


