技術図書館避雷器LAの設置基準を8枚のスライドで読む設置が必要な4ケースと、接地線14mm²以上・10Ω以下・1m以上の仕様を図解つきで確認できます。スライドを見る資料一覧を見る

避雷器(LA)は「容量が大きい建物に付けるもの」ではありません。電気設備技術基準の解釈が義務としているのは高圧架空電線路から受電し、受電電力が500kW以上の場合の引込口で、地中引込にはこの義務がかかりません。この記事では、条文どおりの設置条件、A種10Ωと接地線の太さの根拠の違い、そしてPAS本体・SOG制御装置と接地を共用するときの条件を整理します。

結論

義務になるのは架空引込 + 受電電力500kW以上。接地はA種10Ω以下で、共用すると厳しい側に引き上げられます。

  • 根拠は電気設備技術基準の解釈 第37条。判定に使うのは受電「容量(kVA)」ではなく受電「電力(kW)」
  • 地中引込には第37条の義務はかからない(UGS・UASにLA内蔵品が一般的でない理由)
  • 500kW未満でも、架空引込なら雷害対策としてLA内蔵形を選ぶのが実務の定番
  • 避雷器の接地はA種接地工事(同条第3項)。A種の接地抵抗値は10Ω以下(解釈 第17条第1項第一号)
  • 接地線14mm²は法規上の最小ではなく、民間規格・メーカー指定として使われている値
  • PAS本体のA種と共用してよい。SOG制御装置(D種)も共用するなら10Ω以下が必要
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
この記事は⑤の一項目です。ただし結論は①の引込方式で変わります。
この記事で読めるようになる用語:避雷器(LA)PAS(高圧気中開閉器)地絡電流保護協調

避雷器は何を、どこまで守るのか

守れるのは「近くにある機器」だけ。置く位置で効き方が変わります。

避雷器は、雷サージのような異常電圧が加わったときだけ導通して電流を大地へ逃がし、機器に加わる電圧を制限する装置です。通常の運転電圧では絶縁物としてふるまいます。

大事なのは置く位置です。高圧受電設備規程は「避雷器は、それによって保護される機器のもっとも近い位置に施設すること」を推奨しています。PASに内蔵しても、そこからキュービクルまでが長ければ、受電設備側にも避雷器を設ける多段保護を検討します。

ここまでのポイント
  • 避雷器は異常電圧のときだけ導通して、機器に加わる電圧を制限する
  • 守れるのは近くの機器。規程も「保護される機器のもっとも近い位置に」としている
  • PAS内蔵と受電設備側の多段保護という考え方がある

設置が義務になる条件(電技解釈 第37条)

判定は「架空か地中か」が先。そのうえで受電電力を見ます。

条文は「高圧及び特別高圧の電路中、次の各号に掲げる箇所又はこれに近接する箇所には、避雷器を施設すること」として、4つの箇所を挙げています。需要家の設計で効いてくるのは第三号です。

施設する箇所 需要家との関係
発電所、蓄電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所の架空電線の引込口(需要場所の引込口を除く)及び引出口 括弧書きで需要場所は除かれる
架空電線路に接続する、第26条に規定する配電用変圧器の高圧側及び特別高圧側 電気事業者側の設備
高圧架空電線路から電気の供給を受ける受電電力が500kW以上の需要場所の引込口 ここが高圧需要家の義務
特別高圧架空電線路から電気の供給を受ける需要場所の引込口 特別高圧受電の場合
第3項で「高圧及び特別高圧の電路に施設する避雷器にはA種接地工事を施すこと」と定められています。

⚠ 判定でつまずきやすい2点

  1. 「受電容量500kVA」ではない 条文は受電電力500kWです。変圧器の合計容量で判定すると、要否を取り違えます
  2. 「高圧架空電線路から電気の供給を受ける」が前提 地中引込には第37条の義務がかかりません。UGS・UASにLA内蔵品が一般的でないのはこのためです。ただし配電線路が架空で引込だけ地中というケースもあるので、供給形態を電力会社と確認します

出典:電気設備の技術基準の解釈 第37条(避雷器等の施設)、同 第17条(接地工事の種類及び施設方法)、高圧受電設備規程(JEAC 8011)

ペン太ペン太
500kVAの建物なら義務ですか?
ハリタハリタ
条文は受電電力500kWです。kVAの合計とは別物なので、契約の受電電力で判定してください。
ここまでのポイント
  • 義務は 架空引込 + 受電電力500kW以上(解釈 第37条第三号)
  • 判定は受電「容量(kVA)」ではなく受電「電力(kW)」
  • 第一号には「需要場所の引込口を除く」という括弧書きがある
  • 地中引込には第37条の義務がかからない


500kW未満はどうするか

法的な義務はありません。それでも架空引込ならLA内蔵形のPASを選ぶのが実務の定番です。理由は単純で、雷サージで失うのはPASだけでなく、その先のキュービクル一式だからです。内蔵形なら現地でLAを別置きする手間もなくなります。

条件 法的な位置づけ 実務での選び方
架空引込・500kW以上 義務(解釈 第37条第三号) 引込口に施設。LA内蔵形PASが一般的
架空引込・500kW未満 義務ではない LA内蔵形を選ぶのが定番。雷害の多い地域では特に
地中引込 第37条の義務なし UGS・UASにはLA内蔵品が少ない。必要なら受電設備側で検討
構内が長い PAS内蔵+受電設備側の多段保護を検討する
LAを内蔵するかどうかは、引込方式・受電電力・雷害の多さ・構内の長さで決めます。
ここまでのポイント
  • 500kW未満に義務はないが、架空引込ならLA内蔵形が実務の定番
  • 守る対象はPASではなく、その先の受電設備一式
  • 構内が長いときは受電設備側にも避雷器を検討する

接地の仕様 ― 10Ω・14mm²・埋設方法

抵抗値・太さ・埋設方法は、それぞれ根拠が違います。
項目 根拠
接地工事の種類 A種接地工事 解釈 第37条第3項
接地抵抗値 10Ω以下 解釈 第17条第1項第一号(A種接地工事)
接地線の太さ(法規上の最小) 直径2.6mm(約5.5mm²)以上 解釈 第17条第1項(引張強さ1.04kN以上の軟銅線)
接地線の太さ(実務) 14mm² 以上 民間規格・メーカー指定として広く使われる値
接地極の埋設深さ 地下75cm以上 解釈 第17条第1項第二号イ
金属体との離隔 地中で1m以上 解釈 第17条第1項第二号ロ(金属体に近接して施設する場合)
「14mm²でなければ法規違反」ではありません。法規の最小と、実務で採用する太さを分けて理解しておくと、根拠を聞かれたときに答えられます。

⚠ 「他の接地極から1m以上」という言い方に注意

解釈 第17条第1項第二号ロが求めているのは、接地極を金属体に近接して施設する場合に、地中でその金属体から1m以上離すことです。「他の接地極から1m以上離す」という実務の言い方は、これと、電力会社の配電線路側の規定(JESC E2018など)が混ざって広まったものと考えられます。図面に書くときは、何から何を1m離すのかを明記してください。

なお接地抵抗値の緩和規定(30Ωなど)は電気事業者の高圧架空配電線路を対象としたもので、需要家の引込口の避雷器にそのまま当てはめられるとは限りません。緩和を前提にするなら、電力会社・保安管理者に確認してください。

ここまでのポイント
  • 避雷器の接地はA種接地工事(解釈 第37条第3項)、A種は10Ω以下(第17条第1項第一号)
  • 法規上の接地線の最小は直径2.6mm(約5.5mm²)。14mm²は実務の標準値
  • 「1m以上」は金属体との離隔の規定。何から離すのかを明確にする
  • 接地抵抗の緩和規定は適用範囲が違うので、そのまま当てはめない


PAS本体・SOG制御装置との接地の共用

共用したら、いちばん厳しい条件で評価されます。
対象 単独のとき 共用したとき
避雷器(LA) A種接地工事 10Ω以下
PAS本体(金属製外箱) A種接地工事 10Ω以下 LAと共用してよい
SOG制御装置 D種接地工事 100Ω以下 A種と共用するなら10Ω以下が必要
メーカーの取扱説明書も「5.5mm²以上でD種接地、または開閉器の接地(A種)と共用」としています。共用した時点でA種扱いです。

⚠ よくある誤解

「SOG制御装置はD種だから100Ωでよい。まとめて1系統にすれば工事が楽になる」——これは成立しません。A種と共用した接地線は、共用しているすべてが10Ω以下を満たす必要があります。工事を簡素にしたいなら10Ω以下で施工し、10Ωが確保できない土地なら分離して施工します。どちらにするかは施工前に決めて、接地の系統を図面に書いておきます。

選定したPASと避雷器を、そのまま単線結線図に落とし込めます。機器の配置・接続・接地の表現まで画面上で確認できるブラウザツールです(登録不要)。

単線結線図デザインスタジオを開く

ここまでのポイント
  • LAとPAS本体はどちらもA種10Ω以下。共用してよい
  • SOG制御装置は単独ならD種100Ω以下だが、A種と共用するなら10Ω以下
  • 「D種100Ωのまま1系統にまとめる」はできない
  • 共用するかどうかは施工前に決めて、接地の系統を図面に残す

よくある質問

避雷器の設置が義務になるのはどんなときですか?

高圧架空電線路から電気の供給を受ける、受電電力が500kW以上の需要場所の引込口です(電気設備技術基準の解釈 第37条第三号)。

500kVAの受電設備なら義務ですか?

条文は受電「電力」500kW以上です。変圧器の合計容量(kVA)とは別なので、契約の受電電力で判定してください。

地中引込でも避雷器は必要ですか?

第37条の義務は「高圧架空電線路から電気の供給を受ける」場合にかかるため、地中引込には義務がかかりません。UGS・UASにLA内蔵品が一般的でないのはこのためです。

500kW未満なら付けなくてよいですか?

法的な義務はありません。ただし架空引込なら、雷サージで受電設備一式を失うリスクを下げるためにLA内蔵形を選ぶのが実務の定番です。

避雷器の接地は何種ですか?

A種接地工事です(解釈 第37条第3項)。A種の接地抵抗値は10Ω以下(解釈 第17条第1項第一号)です。

接地線は14mm²でないといけませんか?

法規上のA種の最小は直径2.6mm(約5.5mm²)で、14mm²は民間規格・メーカー指定として広く使われている値です。「14mm²でなければ違反」ではありませんが、実務では14mm²が標準です。

PAS本体の接地と避雷器の接地は共用できますか?

できます。どちらもA種接地工事なので、共用して10Ω以下を確保します。

SOG制御装置の接地も一緒にまとめてよいですか?

共用は可能ですが、A種と共用した時点で10Ω以下が必要です。「D種だから100Ωでよい」とはなりません。


まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
受電容量500kVA以上で義務 受電電力500kW以上(解釈 第37条第三号)
容量が大きければ引込方式に関係なく義務 義務がかかるのは高圧架空電線路から受電する場合。地中引込は対象外
接地線は14mm²が法規の最小 法規上の最小は直径2.6mm(約5.5mm²)。14mm²は実務の標準値
「他の接地極から1m以上」が条文 条文は「金属体に近接する場合、地中で1m以上離す」
SOGはD種なので100Ωでまとめてよい A種と共用したら10Ω以下が必要
避雷器はどこに付けても効果は同じ 保護される機器のもっとも近い位置に。離れるほど効果が落ちる
条文の号立てと「電力/容量」の違いは、審査で必ず確認されるところです。

📘 あわせて確認したいこと

本体の定格はPASの選定方法と定格電流の計算、制御電源とVTはPAS内蔵VTの選定と設置基準、接地全体の考え方は高圧受変電設備の設計マニュアル⑤で扱っています。

出典:電気設備の技術基準の解釈 第17条・第37条、高圧受電設備規程(JEAC 8011)、戸上電機製作所 GR付PAS 取扱説明書。接地抵抗の緩和規定は適用範囲が異なるため、適用の可否は電力会社・保安管理者にご確認ください。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。