📚 この記事は連載「高圧受変電設備の設計マニュアル」(全14回)の第5回です。前回:第4回 引込部 ― 責任分界点とPAS・UGS/資料編:機器別 目的早見表

こんにちは、HARITAの設計室です。第5回は、いよいよキュービクルの中に入ります。

引込ケーブルがキュービクルに入ってから、主遮断装置(VCBやLBS)にたどり着くまでの間に、3つの機器が並んでいます。VCT・Wh(測る)→ DS(切り離す)→ LA(守る)なぜこの順番なのかが分かると、受電部の図面は一気に読みやすくなります。

ペンタ
キュービクルの入口のあたり、記号がごちゃっと並んでて…どれが何なのか。とりあえず全部覚えるしかないですか?
はりた
覚えなくていい。並び順に理由があるから、そこを押さえれば思い出せる。今日は3つだけ。測る・切り離す・守る、の3つだよ。

受電部の入口は「測る → 切り離す → 守る」の順に並ぶ

📐 なぜこの順番なのか
 引込ケーブル(責任分界点から)
   │
  [VCT]──[Wh] ① 測る
   │    (取引用計量)
   │
   ╲ DS   ② 切り離す
   │    (点検用)
   ├──▽ LA  ③ 守る
   │  ┴  (雷サージ)
   ▼
  主遮断装置(VCB / LBS+PF)へ
① 測るのが最初
計量は使った電気の全量を測らなければ意味がありません。だから分岐する前、いちばん電源側に置きます。
② 次に切り離す手段
点検のとき、キュービクルの中を電源から確実に切り離すため。計量装置より負荷側に置きます。
③ 守るのは入口近く
避雷器は雷を入ってきたところで大地へ逃がすのが仕事。奥に置くと、そこまでの機器が守れません。

① VCT・Wh ― 取引のために測る

VCT(計器用変圧変流器)は、VT(電圧を落とす)とCT(電流を落とす)を1つの箱に納めたものです。その二次側にWh(電力量計)をつないで、使用電力量を積算します。

⚠ VCTと電力量計は「電力会社の支給品」
この2つは電力料金の根拠になるため、電力会社が支給し、封印します。需要家側で選定したり、勝手に触ったりすることはできません。
ただし収める場所(計器箱・計器スペース)と取付・配線は需要家側の仕事です。図面には「電力会社支給」と注記を入れておくのが親切な書き方になります。

電力量計には、その月の最大需要電力(デマンド)を記録する機能を持つものが一般的です。高圧受電の基本料金はこのデマンドで決まるため、この1台が電気料金そのものを左右します

図面での読みどころ
・VCTは責任分界点のすぐ内側、分岐する前にあるか
・「電力会社支給」「電力会社封印」の注記があるか
・デマンド監視装置(デマンドコントローラ)を付ける場合、パルス取出しの記載があるか


② DS ― 点検のために、確実に切り離す

DS(断路器)の目的はただ1つ、点検・修理のときに電路を開放し、それが目で見えるようにすることです。

ここでいちばん大事な性質はこれです。

⚡ DSは「電流が流れている状態」では開けない
断路器にはアークを消す機能がありません。電流が流れたまま開くと、接点間にアークが発生して機器が損傷し、最悪の場合は短絡事故になります。
DSは無負荷・無電流の状態でのみ操作する機器です。
操作順序(これは丸暗記でいい)
停電するとき 遮断器(VCB)を切る → そのあとDSを開く
送電するとき DSを入れる → そのあと遮断器(VCB)を入れる

覚え方は「電流を切るのは遮断器の仕事。DSはそのあと・その前」
この順序を守らせるために、盤にはインタロック(遮断器が入っているとDSが操作できない仕組み)が設けられます。

ペンタ
切るのに使えないのに、なんで「断路器」って名前なんですか…?
はりた
Disconnecting Switch =「つながりを断つ」。電流を切るんじゃなくて、回路を物理的に離すのが仕事なんだ。作業者が「確かに離れている」と目で確認できることに価値がある。
最近はDSを省く構成も増えている
PASやUGSで確実に開放でき、キュービクル内はLBSで区切れるため、受電用のDSを省略する構成も一般的になりました。古い図面と新しい図面で構成が違うのは、このためです。
省いてよいかどうかは、停電作業の手順が成立するかで判断します。「切り離す手段が本当にあるか」を図面上で追ってください。

③ LA ― 雷から設備を守る

LA(避雷器)は、雷サージなどの異常電圧が入ってきたときに、その電圧を大地へ逃がして後段の機器を守る機器です。ふだんは絶縁物として振る舞い、規定以上の電圧がかかったときだけ導通します。

高圧受電で使われる避雷器の定格
定格電圧 8.4kV/公称放電電流 2.5kA が高圧配電線用の標準です。
単線結線図には LA 8.4kV 2.5kA のように併記されます。「6.6kVの回路なのに8.4kV?」と思うかもしれませんが、常時の電圧では動作しないようにするための定格です。
📖 施設が義務づけられる場所(電技解釈 第37条)
避雷器の施設が求められるのは、おもに次の箇所です。
・発電所・変電所(またはこれに準ずる場所)の架空電線の引込口・引出口
・架空電線路に接続する配電用変圧器の高圧側・特別高圧側
高圧架空電線路から受電する、受電電力が500kW以上の需要場所の引込口
・特別高圧架空電線路から受電する需要場所の引込口

つまり500kW未満なら法的な義務ではありません。ただし雷害を受けたときの被害と復旧費を考えれば、実務では容量にかかわらず設けるのが標準です。

⚡ 避雷器は「接地」で性能が決まる
避雷器そのものより、接地のほうが重要です。雷の電流を大地へ流しきれなければ、避雷器を付けた意味がありません。
・接地はA種接地工事(原則10Ω以下。条件により30Ω以下に緩和される規定もある)
接地線できるだけ太く、できるだけ短く。雷サージは急峻な波形なので、線のインダクタンスが効いてしまう
・引き回しに鋭い曲がりを作らない
設計でも施工でも、ここが実力の差が出るところです。
📎 避雷器の設置基準と接地線サイズは、当サイトで詳しく解説しています。
→ PASの設計|避雷器[LA]の設置基準と接地線サイズの選定方法


単線結線図では、こう描かれる

受電部(入口側)の記載要素
① VCT…「電力会社支給」の注記。二次側にWh(電力量計)
② Wh…電力量計。最大需要電力計を兼ねる場合はその旨
③ DS…定格(例:7.2kV 400A)。三相なので「DS×3」と書く図面もある
④ LA…定格(例:8.4kV 2.5kA)と接地記号。「LA×3」の表記もよく見る
⑤ CH…ケーブルヘッド(引込ケーブルの端末)

「×3」は三相の各相に1つずつ入っているという意味です。単線結線図は線を1本にまとめて描くため、こうした注記で個数を補います。第2回で扱った「単線結線図に書かれていないこと」の実例です。

新人がやりがちなミス 3選

① DSを負荷がかかったまま操作しようとする
実際に事故が起きているミスです。DSの前に必ず遮断器を切る。インタロックがあっても、順序を理解していないと現場では通用しません。
② 避雷器の接地線を細く長く引く
「導通していればいい」と考えると失敗します。雷サージに対しては線の太さと長さ、曲げ方が性能そのもの。図面でも接地線のサイズと経路を明記してください。
③ VCTを需要家側で手配しようとする
VCTと電力量計は電力会社の支給品。逆に計器スペースと取付は需要家側です。この分担を取り違えると、受電直前に慌てることになります。

まとめ

第5回のまとめ
・受電部の入口は測る(VCT・Wh)→ 切り離す(DS)→ 守る(LA)の順
・計量は分岐する前、避雷器は入口近く。並び順には理由がある
・VCTと電力量計は電力会社の支給・封印。スペースと取付は需要家側
・DSは電流が流れていると開けない。切るのは遮断器の仕事
・操作順序は停電=遮断器→DS、送電=DS→遮断器
・避雷器は接地が命。太く・短く・鋭く曲げない
・500kW以上の需要場所の引込口は避雷器の施設が求められる(電技解釈第37条)
✅ 今日のチェックリスト(できたらチェック)


よくある質問

Q. VCTとVT・CTは何が違うのですか?
機能は同じですが目的が違います。VCTは取引用の計量のためにVTとCTを一体化した専用品で、電力会社の支給・封印。一方、キュービクル内の計器や継電器に使うVT・CTは運転管理と保護のためのもので、需要家が選定します。第7回で詳しく扱います。
Q. PASに避雷器が内蔵されていれば、キュービクル内のLAは不要ですか?
内蔵形だけで済ませる構成もありますが、引込ケーブルが長い場合や重要負荷がある場合は、キュービクル側にも設けるのが安全側です。雷サージはケーブルの途中からも侵入しうるため、守りたい機器の近くにあるほど効果的です。
Q. DSがない図面を見たのですが、間違いですか?
間違いとは限りません。PASやUGSで確実に開放でき、キュービクル内をLBSで区切れるなら、受電用DSを省く構成は成立します。確認すべきは「停電作業のとき、どこで切り離すのか」が図面から追えるかです。
Q. デマンドは図面のどこに関係しますか?
電力量計からパルス(計量値の信号)を取り出してデマンド監視装置に入れます。図面上は電力量計から制御線が1本出ている程度の表現ですが、電気料金の削減に直結する回路なので、設置の有無は必ず確認してください。

次回予告

第6回:受電部② ― 主遮断装置、CB形とPF・S形の使い分け
受変電設備の心臓部です。VCB+OCRの「CB形」と、LBS+PFの「PF・S形」。受電設備容量による選び分け(PF・S形は300kVA以下、CB形は4,000kVA以下)と、それぞれの長所・短所を整理します。

参考:電気設備の技術基準の解釈 第37条(避雷器等の施設)/高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/内線規程 JEAC 8001/各電力会社の電気供給約款

次に読むならこれ【コンセント設備の設計マニュアル⑥・最終回】図面化と拾い・積算 ― 「あとで拾える図面」で締めくくる設計マニュアル