技術図書館力率はジョッキのビールの割合有効・無効・皮相の3つの電力、力率が下がる理由と困ること、進相コンデンサでの改善この資料をスライドで見る資料一覧を見る
第二種電気工事士 合格カリキュラム学科③ 電気機器・配線器具・材料・工具
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「力率」は、電気設備の設計や省エネで必ず出てくるのに、イメージしにくい言葉です。でも、ビールのジョッキを思い浮かべると、ぐっとわかりやすくなります。この記事では、力率とは何か、電圧と電流のタイミング、機器ごとの力率、力率が低いと何が困るのか、改善の方法を、図とたとえで1つずつ解説します。

結論

力率はジョッキ全体(皮相電力)のうち、ビール(有効電力)の割合。電熱器は約100%、モータはコイルで電流が遅れるので低め。力率が低いと同じ仕事でも電流が増えるので、進相コンデンサで改善します。

  • 力率=有効電力÷皮相電力=cosθ
  • 電圧と電流のタイミングがずれるほど力率は下がる
  • 力率が低いと電流・損失・電圧降下が増える
  • 高圧受電の契約では、力率で基本料金が変わる制度がある
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
ビールのジョッキで力率をたとえた図。泡が無効電力、ビールが有効電力、ジョッキ全体が皮相電力で、力率はビール÷ジョッキ
力率は、ジョッキ全体に対するビールの割合です。

力率とは ― ジョッキの中のビールの割合

ジョッキにビールを注ぐと、上に泡ができます。お金を払ったのはジョッキ1杯分ですが、実際に飲めるのはビールの部分だけです。電気も同じで、電源が送り出す電力には、実際に仕事をする部分と、行ったり来たりするだけで仕事をしない部分があります。

たとえ 電力の名前 単位 意味
ビール 有効電力 P W(ワット) 熱・光・回転など、実際に仕事をする電力
泡 無効電力 Q var(バール) 電源と機器の間を行き来するだけの電力
ジョッキ全体 皮相電力 S V·A(ボルトアンペア) 電圧×電流。電源が送り出す見かけの電力
力率=有効電力÷皮相電力

泡が少ないほど、つまり無効電力が小さいほど、力率は100%に近づきます。

ここまでのポイント
  • 力率=有効電力÷皮相電力
  • ビール=有効電力、泡=無効電力、ジョッキ=皮相電力
  • 泡が少ないほど力率が高い

なぜ下がる ― 電圧と電流のタイミング

電熱器や白熱灯では電圧と電流の波がぴったりそろって力率が約100%になり、モータではコイルのために電流の波が遅れて力率が下がることを比べた動く図解
動く図解:電流の波が遅れると、力率が下がります。

交流では、電圧と電流が波のように行ったり来たりしています。電熱器や白熱灯のような抵抗だけの機器では、電圧と電流の波がぴったりそろって動きます。このとき力率はほぼ100%です。

ところが、モータのようにコイルを持つ機器では、電流の波が電圧より遅れてしまいます。たとえるなら二人三脚です。息がそろえば力がむだなく前に進みますが、足のタイミングがずれると、同じだけ力を使っても前に進みにくくなります。このずれの角度θを使って、力率は cosθ と表します。

ここまでのポイント
  • 抵抗は電圧と電流がそろう(力率約100%)
  • コイルは電流が遅れる(力率が下がる)
  • ずれの角度θで、力率=cosθ

電力の三角形 ― 3つの電力の関係

有効電力Pを底辺、無効電力Qを高さ、皮相電力Sを斜辺とする電力の三角形と、力率cosθ=P÷S、S²=P²+Q²、S=V×Iの関係を示した図
3つの電力は、直角三角形の関係になっています。

3つの電力は、直角三角形の関係になっています。底辺が有効電力P、高さが無効電力Q、斜めの辺が皮相電力Sです。

ここまでのポイント
  • 底辺P・高さQ・斜辺Sの直角三角形
  • cosθ=P÷S、S²=P²+Q²
  • S=V×I(単相の場合)


機器ごとの力率 ― 抵抗は高く、コイルは低め

機器ごとの力率のめやすとして、電熱器・白熱灯が約100%、LED照明と高力率形蛍光灯が90〜95%程度、誘導電動機が70〜90%程度、低力率形蛍光灯が50〜60%程度であることを示した棒グラフ
機器の中身によって、力率は変わります。
機器 力率のめやす 理由
電熱器・白熱灯 約100% ほぼ抵抗だけ。電圧と電流がそろう
LED照明(一般的な製品) 90〜95%程度 電源回路で力率を高めている製品が多い
誘導電動機 70〜90%程度 コイルで電流が遅れる。軽い負荷ほど低い
蛍光灯(低力率形) 50〜60%程度 安定器のコイルで電流が遅れる
あくまでめやす。実際の値は製品や負荷の大きさで変わる
ペン太ペン太
モータは軽い負荷で回すと力率が下がるんですか?
ハリタハリタ
そうなんです。磁界をつくるための電流は負荷が軽くてもほとんど変わらないので、仕事の割に「泡」が多くなるんですね。だから、必要以上に大きなモータを選ぶと力率が悪くなりやすいんですよ。
ここまでのポイント
  • 電熱器・白熱灯は約100%
  • モータは70〜90%程度、軽い負荷ほど低い
  • LED照明は一般に高め

低いと困ること ― 同じ仕事でも電流が増える

100Vで1kWの仕事をするとき、力率100%なら10A、80%なら12.5A、60%なら約16.7Aの電流が必要になることを比べた動く図解
動く図解:力率が下がると、同じ仕事でも電流が増えます。

電流は I=P÷(V×力率)で求められます。100Vで1kWの仕事をするとき、力率100%なら10Aですが、80%なら12.5A、60%なら約16.7Aも必要です。

困ること 理由
電線の損失が増える 損失は電流の2乗に比例する(I²R)
電圧降下が大きくなる 電流が増えるほど電線で電圧が下がる
設備が大きくなる 太い電線や大きな変圧器が必要になる
基本料金に影響する(高圧受電) 力率によって基本料金を割引・割増する制度がある
一般的な傾向

家庭の電力量料金は実際に使った有効電力量で決まるので、力率がそのまま料金を上げるわけではありません。一方で、高圧で受電するビルや工場では、力率が高いほど基本料金が割引される契約が一般的です。配線の設計の考え方は「電気設備の基本知識 #016【屋内配線の設計】」も参考にしてください。

ここまでのポイント
  • 同じ仕事でも、力率が低いと電流が増える
  • 損失・電圧降下・設備の大きさに影響する
  • 高圧受電では基本料金にも影響する


改善の方法 ― 進相コンデンサで打ち消す

力率改善の前後を電力の三角形で比べた図。モータだけでは無効電力が大きく力率約80%だが、進相コンデンサを追加すると無効電力が小さくなり力率約98%になる
コンデンサの「進み」が、コイルの「遅れ」を打ち消します。

コイルは電流を遅らせ、コンデンサは電流を進ませます。そこで、モータなどと一緒に進相コンデンサをつなぐと、遅れと進みが打ち消し合い、無効電力(泡)が小さくなって力率が100%に近づきます。有効電力(ビール)は変わりません。

⚠️ つけすぎに注意

コンデンサをつけすぎたり、モータが止まっているのにコンデンサだけがつながっていたりすると、今度は電流が進みすぎになり、電圧が上がるなどの問題が起きます。電動機のコンデンサは、手元開閉器の負荷側に並列につなぎ、電動機と一緒に入・切されるようにします。つなぎ方は「電気設備の基本知識 #010【誘導電動機】」で解説しています。

ここまでのポイント
  • コイルの遅れを、コンデンサの進みで打ち消す
  • 有効電力は変わらず、無効電力が減る
  • つけすぎると進みすぎになる

よくある質問

力率とは何ですか?

電源から送り出す見かけの電力(皮相電力)のうち、実際に仕事をする電力(有効電力)が占める割合です。力率=有効電力÷皮相電力=cosθ で表します。ビールのジョッキにたとえると、ジョッキ全体が皮相電力、ビールが有効電力、泡が無効電力です。

電熱器や白熱灯の力率はなぜ高いのですか?

中身がほぼ抵抗だけでできていて、電圧と電流のタイミングがそろうためです。電気がそのまま熱や光になるので、力率はほぼ100%になります。

モータの力率が低くなるのはなぜですか?

モータの巻線(コイル)が磁界をつくるため、電流が電圧より遅れて流れます。この遅れの分が無効電力になり、力率が下がります。とくに軽い負荷で回しているときは力率が低くなります。

力率が低いと電気代は高くなりますか?

家庭などの電力量料金は、実際に使った有効電力量で決まるので、力率がそのまま料金を上げるわけではありません。ただし、高圧で受電するビルや工場の契約では、力率によって基本料金が割引・割増される制度があります。また、力率が低いと電流が増え、電線の損失や電圧降下が大きくなります。

力率を改善するにはどうすればよいですか?

進相コンデンサをつなぎます。コイルは電流を遅らせ、コンデンサは電流を進ませるので、遅れを打ち消して力率を100%に近づけられます。ただし、つけすぎると逆に進みすぎになるので、負荷に合った容量にします。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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