電気室に消火設備を入れることになった。駐車場の消火設備をどれにするか聞かれた。指定可燃物の倉庫で何が使えるか調べたい。こういうとき最初に開くのが消防法施行令第13条第1項の表です。この表は「どの部分に」「どの消火設備を選べるか」を対応させたもので、部分によって選べる設備が違います

そして電気設備の設計者にとって重要なのは、選んだ設備によって非常電源に何が使えるか、容量が何分かが変わることです。水系(水噴霧・泡)は非常電源専用受電設備が使えて30分、ガス系(不活性ガス・ハロゲン化物・粉末)は専用受電設備が使えず1時間。この違いは受電計画そのものに跳ね返ります。

この記事は、消防法施行令第13条から第18条と、消防法施行規則第16条から第21条を条文にあたって整理したものです。

令第13条の表 どの部分に何を選べるか

まず全体像です。表は12行あり、行ごとに選べる設備が違います。

令13条の表 どの部分にどの設備を選べるか消防法施行令 第13条第1項の表  ◯*は全域放出方式に限る防​火対象物又はその部分水噴霧不活性ガスハロゲン化物粉末(13)項ロ 飛行機・回転翼航空機の格納庫×××屋上部分で回転翼航空機・垂直離着陸航空機の発着の用に供されるもの×××道路の用に供される部分(屋上600㎡以上/その他400㎡以上)×自動車の修理・整備の部分(地階・2階以上200㎡/1階500㎡以上)×駐車の用に供される部分(機械装置式は収容10台以上)発​電機、変​圧器その他これらに類する電気設備の部分(200㎡以上)××鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する部分(200㎡)××通信機器室(500㎡以上)××指​定可燃物 綿花類・木毛・ぼろ(非油性)・糸類・わら類・合成樹脂類(ゴム製品等)××指​定可燃物 ぼろ・紙くず(動植物油がしみ込んだもの)・石炭・木炭類×××指​定可燃物 可燃性固体類・可燃性液体類・合成樹脂類(ゴム製品等を除く)指​定可燃物 木材加工品及び木くず×HARITA
図1 消防法施行令第13条第1項の表。行ごとに選べる設備が違い、電気設備の部分はガス系3種に限られる。

この表でとくに押さえたい3行

  • 発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている部分(200㎡以上)
    下欄の原文は「不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備」。水噴霧と泡は入りません。
  • 道路の用に供される部分(屋上600㎡以上/その他400㎡以上)
    下欄の原文は「水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備又は粉末消火設備」。ハロゲン化物だけが入りません。
  • 駐車の用に供される部分
    下欄の原文は「水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備」。5設備すべてから選べます。

「駐車場には泡消火設備しか使えない」という説明を聞くことがありますが、条文上は5設備すべてが選択肢です。実際に泡が多いのは、水損の程度や設備コスト、人が出入りする場所であることを踏まえた結果であって、法令が泡に限定しているわけではありません。

逆に「電気室に水噴霧」という記述も、令第13条の設置義務としては誤りです。電気設備の部分で選べるのは不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の3つだけです。屋外変圧器などに水噴霧を用いる例はありますが、それは別の文脈になります。

通信機器室と電気設備の部分は同じ扱い

「発電機・変圧器等の電気設備の部分(200㎡以上)」「鍛造場・ボイラー室・乾燥室その他多量の火気を使用する部分(200㎡以上)」「通信機器室(500㎡以上)」の3行は、いずれも下欄が同一の文言(不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備)です。面積の閾値だけが違います。

指定可燃物は種類ごとに分かれる

指定可燃物は4行に分かれており、扱う物品によって選べる設備が変わります。

指定可燃物の4行(いずれも危政令別表第四の数量の1,000倍以上)

  • 綿花類、木毛・かんなくず、ぼろ・紙くず(非油性)、糸類、わら類、再生資源燃料、合成樹脂類(ゴム製品等に限る)
    → 水噴霧、泡、全域放出方式の不活性ガス
  • ぼろ・紙くず(動植物油がしみ込んだものに限る)、石炭・木炭類
    → 水噴霧、泡のみ
  • 可燃性固体類、可燃性液体類、合成樹脂類(ゴム製品等を除く)
    → 5設備すべて
  • 木材加工品及び木くず
    → 水噴霧、泡、全域放出方式の不活性ガス、全域放出方式のハロゲン化物

なお令第13条第2項により、指定可燃物(可燃性液体類に係るものを除く)を貯蔵・取り扱う建築物等にスプリンクラー設備を令第12条の技術基準に従って設置したときは、有効範囲内の部分について表の下欄の設備を設置しないことができます。


電気設計から見た5設備の違い

ここが本題です。設備を選ぶと、電気の仕事の内容が変わります。

電気設計から見た5設備の違い非​常電源の準用の書き方が、そのまま「専​用受​電設備が使えるか」「容量が何分か」を決めています設 備非​常電源の根拠専​用受​電設備容量配線の準用総​合操作盤・耐震水噴霧消​火設備規則16条3項2号(17条6項で準用)使える30分定めを確認できずいずれも準用あり泡消​火設備規則18条4項13号使える30分規則18条4項7号いずれも準用あり不活性ガス消​火設備規則19条5項20号使えない1時間規則19条5項21号いずれも準用ありハロゲン化物消​火設備規則20条4項15号 → 19条5項20号使えない1時間19条5項21号を経由いずれも準用あり粉末消​火設備規則21条4項17号 → 19条5項20号使えない1時間19条5項21号を経由いずれも準用あり条文の書き方の違い水系(水噴霧・泡) 「第12条第1項第4号の規定の例による」 → 範囲の限定がないので イ(非​常電源専​用受​電設備)も使えるガス系(不活性ガス・ハロゲン化物・粉末) 「自​家発電設備、蓄​電池設備又は燃​料電池設備によるものとし、容量を1時間 作動できる容量以上とするほか、第12条第1項第4号ロからホまでの例による」 → イが外れているので専​用受​電設備は不可消​火設備をひとくくりに「非​常電源は30分」と覚えると、ガス系で不適合になります。HARITA
図2 非常電源・配線・総合操作盤・耐震措置の比較。水系とガス系で非常電源の条件が明確に分かれる。

非常電源は「準用の書き方」で決まる

各設備の規則条文は、いずれも消防法施行規則第12条第1項第4号を準用しています。ただし準用する範囲の書き方が違います

水系(水噴霧・泡)

  • 水噴霧 規則第16条第3項第2号「呼水装置又は非常電源は、第12条第1項第3号の2又は第4号の規定の例により設けること」(道路・駐車の場合も規則第17条第6項で準用)
  •  規則第18条第4項第13号「非常電源は、第12条第1項第4号の規定の例により設けること」

いずれも範囲の限定がありません。したがって第12条第1項第4号の柱書がそのまま働き、延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物(小規模特定用途複合防火対象物を除く)でなければ非常電源専用受電設備も使えます。容量は屋内消火栓設備と同じ30分です。

ガス系(不活性ガス・ハロゲン化物・粉末)

  • 不活性ガス 規則第19条第5項第20号
  • ハロゲン化物 規則第20条第4項第15号 → 第19条第5項第20号
  • 粉末 規則第21条第4項第17号 → 第19条第5項第20号

条文は「自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備によるものとし、容量を1時間作動できる容量以上とするほか、第12条第1項第4号ロからホまでの規定の例による」という書き方です。

イ(非常電源専用受電設備)が明文で外れているため、ガス系3設備では専用受電設備を選べません。容量も30分ではなく1時間です。

「消火設備の非常電源は30分」とまとめて覚えていると、ガス系で不適合になります。令第13条の表でどれを選ぶかを決めた時点で、非常電源の仕様も決まっていると考えておくのが安全です。

配線・総合操作盤・耐震措置

配線については、規則第12条第1項第5号(耐熱配線)の準用が設備によって違います。

配線の準用

  •  規則第18条第4項第7号「操作回路及び第4号ロの灯火の回路の配線は、第12条第1項第5号の規定の例により設けること」
  • 不活性ガス 規則第19条第5項第21号(操作回路・音響警報装置回路・表示灯回路)
  • ハロゲン化物・粉末 いずれも第19条第5項第21号を経由して同じ内容
  • 水噴霧 規則第16条・第17条に第12条第1項第5号を準用する定めを確認できませんでした(配管は第6号を準用)

総合操作盤(第12条第1項第8号)と耐震措置(同第9号)は、水噴霧・泡・ハロゲン化物・粉末のいずれも準用があります。ただし耐震措置の対象がやや違い、ガス系は貯蔵容器・加圧用ガス容器・配管に加えて非常電源そのものが明記されています。水系は貯水槽等が対象です。


水噴霧消火設備

水を霧状にして放射し、冷却効果と窒息効果で消火する設備です。基準は令第14条ですが、規則は2か条に分かれています。

水噴霧消​火設備で押さえる2つ駐車の用に供される部分の排​水設備 規則第17条第5項1号床面には、排水溝に向かつて100分の2以上の勾配をつける2号車両が駐車する場所の床面に高さ10cm以上の区画境界堤を設ける3号消火ピットは油分離装置付とし、火災危険の少ない場所に設ける4号車路の中央又は両側に排水溝を設ける5号排水溝は長さ40m以内ごとに1個の集水管を設け消火ピットに連結6号加​圧送水装置の最大能力の水量を有効に排水できる大きさ・勾配電気設計が直接みる規定令第14条第3号高圧の電気機器がある場所においては、当該電気機器と噴霧ヘッド及び配管との間に、電気絶縁を保つための必要な空間を保つこと距離の数値は令にも規則にも書かれていません水源水量一般(規則16条2項)  10 L/min・㎡ × 20分道路(規則17条)   20 L/min・㎡ × 20分駐車(規則17条)   20 L/min・㎡ × 20分一般と駐車は床面積が50㎡を超えるときは50㎡として計算規則は2か条に分かれている・規則第16条=指​定可燃物等の一般の場合  ・規則第17条=道路の用に供される部分と駐車の用に供される部分・規則第17条第6項は、第16条第3項のうち第3号(加​圧送水装置)と第5号(排​水設備)を除いて準用する。 つまり非​常電源(第2号)・総​合操作盤(第6号)・耐震措置(第7号)は道路・駐車の場合にもかかります。HARITA
図3 水噴霧消火設備の排水設備と、高圧の電気機器がある場所の電気絶縁の空間。

規則が2か条に分かれている

  • 規則第16条 指定可燃物等の一般の場合
  • 規則第17条 道路の用に供される部分と駐車の用に供される部分

「水噴霧は規則第16条」とだけ覚えていると、駐車場の設計で必要な排水設備の規定(規則第17条第5項)を丸ごと見落とします。

高圧の電気機器がある場所の空間

電気設備の設計者が直接関係するのが令第14条第3号です。

令第14条第3号

「高圧の電気機器がある場所においては、当該電気機器と噴霧ヘッド及び配管との間に電気絶縁を保つための必要な空間を保つこと」

この規定は令の本体にあり、規則ではありません。そして「必要な空間」の具体的な距離は、令にも規則にも書かれていません。実務では消防庁の指針や各消防本部の審査基準、機器メーカーの標準に従うことになります。

前述のとおり令第13条の表では電気設備の部分に水噴霧を選べませんが、駐車場や道路の部分に水噴霧を入れたときに、そこへ高圧の電気機器が置かれているケースはあります。この号はそういう場合に効いてきます。

駐車場に設けるときの排水設備

水噴霧は大量の水を撒くため、排水の設計が条文で細かく決められています。規則第17条第5項の6つの号です。

規則第17条第5項

  • 第1号 床面には、排水溝に向かって100分の2以上の勾配をつけること
  • 第2号 車両が駐車する場所の床面に、高さ10cm以上の区画境界堤を設けること
  • 第3号 油分離装置付の消火ピットを、火災危険の少ない場所に設けること
  • 第4号 車路の中央または両側に排水溝を設けること
  • 第5号 排水溝は長さ40m以内ごとに1個の集水管を設け、消火ピットに連結すること
  • 第6号 加圧送水装置の最大能力の水量を有効に排水できる大きさおよび勾配とすること

電気の仕事ではありませんが、この排水ピットの水位計や排水ポンプの電源は電気の範囲です。消火ピットにポンプが入るなら、その動力と制御をどこから取るかを早めに確認しておくとよいと思います。

水源水量は、一般の場合が床面積1㎡につき10L/minで20分間(規則第16条第2項)、道路と駐車の場合が20L/minで20分間(規則第17条)です。一般と駐車は床面積が50㎡を超えるときは50㎡として計算します。


泡消火設備

泡で燃焼面を覆い、窒息と冷却で消火する設備です。基準は令第15条規則第18条です。

泡消​火設備の選び分け膨張比と泡消火薬剤 規則第18条第1項第1号低発泡膨張比 20以下移動式に使えるのは低発泡だけ(規則18条4項3号)高発泡膨張比 80以上1000未満固定式のみ泡消火薬剤の種類たん白泡消火薬剤 / 合成界面活性剤泡消火薬剤 / 水成膜泡消火薬剤泡放出口の使い分け 規則第18条第1項第2号フォーム・ウォーター・ス​プリンクラーヘッド航空機の発着に使う施設指​定可燃物を貯蔵・取り扱う部分フォームヘッド道路の用に供される部分/自動車の修理・整備の部分駐車の用に供される部分/指​定可燃物を扱う部分固定式か移動式か、そして起​動装置・火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所に設けるものは固定式とすること(規則第18条第4項第1号)。・道路の用に供される部分は固定式。ただし道路の用に供される屋上部分はこの限りでない(同項第1号の2)。・「駐車場は移動式にできる」と駐車場を名指しした条文はありません。第1号の当てはめで決まります。・移動式のホース接続口までの水平距離は15m以下。泡放射用器具格納箱は接続口から3m以内(令第15条)。・起​動装置は同項第10号。操作部は床面からの高さ0.8m以上1.5m以下(同号ロ(ハ)に明記)。・操作回路および第4号ロの灯火の回路の配線は、規則第12条第1項第5号の例による(同項第7号)。HARITA
図4 泡消火設備の膨張比・放出口の使い分け・起動装置。

膨張比(規則第18条第1項第1号)

  • 低発泡 膨張比20以下
  • 高発泡 膨張比80以上1,000未満

移動式に使えるのは低発泡に限られます(規則第18条第4項第3号)。

泡消火薬剤はたん白泡消火薬剤・合成界面活性剤泡消火薬剤・水成膜泡消火薬剤の3種類です。

泡放出口の使い分け(規則第18条第1項第2号)

  • フォーム・ウォーター・スプリンクラーヘッド 航空機の発着に使う施設、指定可燃物を貯蔵・取り扱う部分
  • フォームヘッド 道路の用に供される部分、自動車の修理・整備の部分、駐車の用に供される部分、指定可燃物を貯蔵・取り扱う部分

固定式にするか移動式にするか

よく「駐車場は移動式にできる」と説明されますが、駐車場を名指しした条文はありません。判断の根拠になるのは一般的な要件です。

規則第18条第4項

  • 第1号 火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所に設けるものは、固定式のものとすること
  • 第1号の2 道路の用に供される部分に設けるものは固定式とすること。ただし道路の用に供される屋上部分にあってはこの限りでない
  • 第3号 移動式のものは低発泡のものとすること

駐車場が固定式になるかどうかは、第1号の「著しく煙が充満するおそれのある場所」に当たるかの判断です。地下駐車場は当たると判断されることが多く、開放型の自走式駐車場は移動式が認められることがあります。

移動式の場合、ホース接続口までの水平距離は15m以下、泡放射用器具を格納する箱は接続口から3m以内(令第15条第2号〜第4号)です。

起動装置と配線

起動装置は規則第18条第4項第10号で、手動式起動装置の操作部は床面からの高さ0.8m以上1.5m以下と同号ロ(ハ)に直接書かれています。ガス系のように他条を準用する形ではなく、自条文に数値があります。

配線は同項第7号で、操作回路および第4号ロの灯火の回路が規則第12条第1項第5号の例によることとされています。灯火の回路まで耐熱配線の対象になる点に注意してください。


ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備

この2つは、電気室のように水をかけられない場所の選択肢として、不活性ガス消火設備と並びます。

ハロゲン化物と粉末の消火剤と放射時間ハロゲン化物消​火設備 規則第20条消火剤は6種類ハロン2402ハロン1211ハロン1301HFC-23HFC-227eaFK-5-1-12放射時間 規則第20条第1項第3号・ハロン2402・1211・1301 → 30秒以内・HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12 → 10秒以内起​動装置 規則第20条第4項第12号の2・ハロン系は手動式が原則(19条5項14号イ(イ)の例)・HFC系・FK系は自動式(同号ロの例)。移動式はハロン3種のみ粉末消​火設備 規則第21条消火粉末は4種類第1種炭酸水素ナトリウム第2種炭酸水素カリウム第3種りん酸塩類等第4種炭酸水素カリウムと尿素との反応生成物放射時間 30秒以内(規則第21条第1項第2号)加圧用ガス・蓄圧用ガス・窒素ガス又は二酸化炭素(規則21条4項6号イ)・定圧作動装置は4項9号、クリーニング装置は4項4号遡及とハロンについて・令第34条の遡及対象に入っている消​火設備は、簡易消火用具と不活性ガス消​火設備(全域放出方式・二酸化炭素)だけです。・ハロゲン化物・粉末・泡・水噴霧は令第34条に列挙されておらず、既存の設備に新しい基準は遡及しません。・ハロン1301は今も規則第20条に現行の消火剤として書かれています。禁止されたのは消火剤の新規製造(1994年全廃)です。・既設設備の使用は認められ、クリティカルユースにはリサイクルハロンを充てる運用です(平成13年消防予第155号ほか)。HARITA
図5 ハロゲン化物と粉末の消火剤・放射時間・起動方式、そして遡及の扱い。

ハロゲン化物(令第17条/規則第20条)

現行の規則第20条に書かれている消火剤は6種類です。

消火剤と放射時間(規則第20条第1項第3号)

  • ハロン2402、ハロン1211、ハロン1301 → 30秒以内に放射
  • HFC-23、HFC-227ea、FK-5-1-12 → 10秒以内に放射

移動式に使える消火剤はハロン2402・ハロン1211・ハロン1301に限られます(規則第20条第5項第1号)。HFC系とFK系は全域放出方式・局所放出方式のみです。

起動装置は規則第20条第4項第12号の2で、ここも消火剤によって分かれます。ハロン系は規則第19条第5項第14号イ(イ)・第15号・第16号の例によるため手動式が原則(常時人がいない防火対象物等は自動式も可)、HFC系とFK系は同号ロ・第16号の例によるため自動式です。不活性ガス消火設備で二酸化炭素が手動式原則、窒素等が自動式限定だったのと同じ構造になっています。

操作部の高さ0.8m以上1.5m以下は、規則第19条第5項第15号ハを準用する形で適用されます。ハロゲン化物の条文そのものには数値が書かれていません。

音響警報装置の例外

音響警報装置は規則第20条第4項第13号で第19条第5項第17号の例によることとされていますが、ハロン1301の全域放出方式は音声による警報装置としないことができるという例外があります。二酸化炭素の全域放出方式が令和4年改正で音声警報を義務づけられたのとは扱いが違います。

ハロン1301は今も使える

「ハロンはもう使えない」という説明を聞きますが、条文上は現行の消火剤として書かれており、新設も可能です。禁止されたのは消火剤の新規製造で、先進国では1994年1月1日に全廃されました。モントリオール議定書によるもので、消防法の規制ではありません。

既設設備の使用は認められており、消防庁はクリティカルユース(ハロンでなければならない用途)を明確にしたうえで、リサイクルハロンを充てる運用をしています。関係する通知は平成6年2月10日の消防予第32号・消防危第9号(ハロンバンクの運用等について)、平成13年5月16日の消防予第155号・消防危第61号(ハロン消火剤を用いるハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等について)です。運営はNPO法人消防環境ネットワークが担っています。

粉末消火設備(令第18条/規則第21条)

粉末を放射して燃焼を抑制する設備です。消火粉末は4種類あります。

消火粉末の種類

  • 第1種 炭酸水素ナトリウムを主成分とするもの
  • 第2種 炭酸水素カリウムを主成分とするもの
  • 第3種 りん酸塩類等を主成分とするもの
  • 第4種 炭酸水素カリウムと尿素との反応生成物

放射時間は30秒以内(規則第21条第1項第2号)。加圧用ガスまたは蓄圧用ガスは窒素ガスまたは二酸化炭素です(同条第4項第6号イ)。

粉末に特有の装置

  • 定圧作動装置(規則第21条第4項第9号) 貯蔵容器の圧力が設定値に達してから放出弁を開く装置
  • クリーニング装置(同項第4号) 放射後に配管内に残った粉末を排出する装置。残留ガス排出装置とあわせて規定されています

粉末は配管内に残ると次回の放射を妨げるため、この2つが不可欠です。ガス系の設備と同じつもりで設計すると抜けます。

起動装置は同項第14号で、規則第19条第5項第14号イ(イ)、第15号、第16号(同号イ(ロ)およびハを除く)の例によることとされています。操作部の高さ0.8m以上1.5m以下も第19条第5項第15号ハ経由で適用されます。

遡及の扱い

既存の建物に新しい基準がさかのぼって適用されるかどうかは、消防法施行令第34条に列挙されているかで決まります。

令第34条に列挙されている主なもの

  • 簡易消火用具
  • 不活性ガス消火設備(全域放出方式のもので総務省令で定める消火剤=二酸化炭素を放射するものに限る)
  • 自動火災報知設備
  • ガス漏れ火災警報設備
  • 漏電火災警報器
  • 非常警報器具および非常警報設備
  • 誘導灯および誘導標識 ほか

ハロゲン化物・粉末・泡・水噴霧は令第34条に列挙されていません。したがって、これらの設備は基準が改正されても既存の設備に遡及しません。二酸化炭素消火設備で令和5年4月1日から閉止弁や標識が既存にも義務づけられたのは、令第34条第2号に不活性ガス消火設備が入っているからで、他のガス系設備に同じ話は当てはまりません。

点検

点検の周期は規則第31条の6第1項と平成16年消防庁告示第9号により、機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回です。報告は特定防火対象物で1年に1回、非特定防火対象物で3年に1回(同条第3項)。

なお、5設備それぞれが総合点検の対象かどうかは昭和50年消防庁告示第14号の別表(水噴霧は別表第4、泡は別表第5など)で確認すべきところですが、公開されているPDFでは別表本体に到達できず、一次資料での確認ができませんでした。実務で使う際は点検基準の別表の実物を確認してください。

まとめ 条文にあたって確認したこと

この記事で訂正した点

  • 電気設備の部分(200㎡以上)に水噴霧・泡は選べない。下欄は「不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備」の3つだけ
  • 道路の用に供される部分だけハロゲン化物が入らない(水噴霧・泡・不活性ガス・粉末の4つ)
  • 駐車の用に供される部分は5設備すべてから選べる。「駐車場は泡だけ」は誤り
  • 電気室に粉末しか使えないという説明も誤り。不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の3択
  • 水系は非常電源専用受電設備が使えて容量30分、ガス系は使えず1時間。条文の準用の書き方が「第4号の例」か「第4号ロからホまでの例」かで分かれる
  • 水噴霧の規則は第16条と第17条の2か条。道路・駐車は第17条で、排水設備の規定はこちらにある
  • 高圧の電気機器との電気絶縁の空間は令第14条第3号(規則ではない)。距離の数値は条文にない
  • 「駐車場は移動式にできる」と名指しした条文はない。規則第18条第4項第1号「著しく煙が充満するおそれのある場所は固定式」の当てはめ
  • ハロン1301は現行の消火剤として規則第20条にある。禁止されたのは新規製造(1994年全廃)で、設置・使用の禁止ではない
  • ハロゲン化物・粉末・泡・水噴霧は令第34条の遡及対象ではない。遡及するのは不活性ガス(全域放出方式・二酸化炭素)だけ
  • ハロゲン化物の放射時間はハロン系30秒以内、HFC系・FK系10秒以内。粉末は30秒以内

確認できなかったこと

  • 昭和50年消防庁告示第14号の別表第4〜第8の個別内容(5設備それぞれが総合点検の対象かどうか)は、公開PDFから別表本体に到達できず確認できませんでした。
  • 水噴霧消火設備の起動装置について、操作部の高さを定めた規定を確認できませんでした。
  • 水噴霧について、規則第12条第1項第5号(配線)を準用する定めは見当たりませんでした(存在しないと断定はしません)。
  • ハロン関係の通知(消防予第32号、消防予第155号)は番号を二次資料で確認したもので、通知原文には当たっていません。

消火設備の選定は機械設備の仕事に見えますが、選んだ瞬間に電気の仕様が決まります。令第13条の表で選択肢を確認し、水系かガス系かで非常電源の条件が変わることを押さえる。この2段だけ最初にやっておけば、受電計画の手戻りはかなり減らせます。

参考にした法令・通知

  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第13条、第14条、第15条、第16条、第17条、第18条、第34条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条、第16条、第17条、第18条、第19条、第20条、第21条、第31条の6
  • 平成16年消防庁告示第9号(点検の期間)
  • 昭和50年消防庁告示第14号(消防用設備等の点検の基準)
  • 消防予第32号・消防危第9号(平成6年2月10日 ハロンバンクの運用等について)
  • 消防予第155号・消防危第61号(平成13年5月16日 ハロン消火剤を用いるハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等について)

条文は e-Gov 法令検索、告示・通知は消防庁ウェブサイトで確認しています(2026年8月時点)。

令第13条の表は、行ごとに下欄の設備が入れ替わります。電気設備の部分はガス系3種、道路はハロゲン化物を除く4種、駐車場は5種すべて。そして水系かガス系かで非常電源が30分か1時間か、専用受電設備が使えるかどうかが決まります。表を1枚手元に置いておくだけで、初動の判断がずいぶん速くなります。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。