技術図書館排煙の連動は口を開けてから回す建築と消防の排煙、動く順番と3つの起動方法、280℃で止める理由この資料をスライドで見る資料一覧を見る

火災で人の命をうばうのは、炎よりもです。天井の感知器が煙を見つけると、天井の排煙口がパタンと開き、屋上の排煙機が回り出して煙を外に出します。この一連の動きをつないでいるのが、自動火災報知設備(自火報)排煙設備の連動です。この記事では、排煙設備が2つの法律にある理由、動く順番、起動のしかた、止まる条件までを、図と条文で1つずつ丁寧に解説します。

結論

煙感知器が煙を見つけると、連動制御盤が排煙口を開き排煙口が開くと排煙機が自動で起動します。高温の煙でダンパーが閉じたら、排煙機を止めます。

  • 排煙設備は、建築基準法(避難のため)と消防法(消火活動のため)の2つにある
  • 手動開放装置は、壁付き0.8〜1.5m、つり下げはおおむね1.8m(建基令126条の3)
  • 消防の排煙の自動起動は、自火報の感知器やスプリンクラーヘッドと連動(施行規則30条)
  • 排煙ダクトの防火ダンパーが280℃で閉じたら、排煙機を止めるのが一般的な設計
煙感知器から連動制御盤、排煙口、排煙機へと信号が流れ、手動開放装置でも排煙口が開き、排煙口開放と排煙機運転が防災センターに表示される連動の全体像
煙感知器・連動制御盤・排煙口・排煙機が、順番にバトンを渡して動きます。

排煙設備の役割 ― 建築の排煙と消防の排煙

火災の煙は、お風呂の湯気のように天井にたまり、だんだん下りてきます。煙が頭の高さまで下りてくる前に、天井近くから煙を外に出して、逃げる時間をかせぐ。これが排煙設備の仕事です。たとえるなら、台所の換気扇です。排煙口は換気扇のフタ、排煙機は換気扇のモーター、天井から下がった垂れ壁(防煙壁)は、煙が横に広がるのを止める堤防です。

建築基準法の排煙と消防法の排煙について、目的・根拠・主な対象・起動・電源を左右に並べて比べた図
排煙設備は、建築基準法と消防法の2つに規定があります。

排煙設備は、2つの法律に出てきます。建築基準法の排煙は在館者の避難のため、消防法の排煙は消防隊の消火活動のための設備です。

項目 建築の排煙 消防の排煙
根拠 建築基準法施行令126条の2・126条の3 消防法施行令28条、施行規則30条
主な対象 特殊建築物で延べ面積500m²超、階数3以上で延べ面積500m²超、排煙上の無窓居室 など 地下街で延べ面積1,000m²以上、キャバレー・店舗・駅・駐車場などの地階や無窓階で床面積1,000m²以上 など
防煙区画 500m²以内ごとに防煙壁で区画 500m²以下に区画(用途などで条件あり)
排煙口の位置 区画の各部分から水平距離30m以下 区画の各部分から水平距離30m以下
電源 予備電源 非常電源(30分以上)
建築基準法施行令126条の2・126条の3、消防法施行令28条・施行規則30条をもとに作成。対象は主なものの抜粋

📘 1つの設備で両方を満たすのが基本

消防の通知(昭和46年消防予第54号)では、建築基準法にもとづいて設ける排煙設備は、消防法施行令28条の排煙設備として扱ってよいとされています。ただし、建築基準法では不要でも、消防法の対象になる部分には排煙設備が必要です。両方がかかる建物では、起動のしかたや電源は、厳しいほうに合わせて計画します。

排煙設備に代えて使える加圧防排煙設備については「建築消防|加圧防排煙設備と消防用水|排煙設備に代える設備と、消防隊が使う水源」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 煙は天井にたまって下りてくる。天井近くから外に出すのが排煙
  • 建築の排煙は避難のため、消防の排煙は消火活動のため
  • 1つの設備で両方の基準を満たすように計画するのが基本


動く順番 ― 煙を見つけてから排煙機が回るまで

部屋で火災が起き、煙が天井にたまると、煙感知器が作動し、連動制御盤が排煙口を開き、排煙機が回って煙を屋外に出し、防災センターに表示されるまでを順に示した動く図解
動く図解:①感知器 → ②連動制御盤 → ③排煙口 → ④排煙機 → ⑤表示の順に動きます。

自動で動く排煙設備は、次の順番で動きます。

  1. 煙感知器が煙を見つける:天井にたまった煙を感知する
  2. 連動制御盤が開放を指令:その感知器が受け持つ防煙区画の排煙口に、開放の信号を送る
  3. 排煙口が開く:ふだん閉じている排煙口の戸が開く
  4. 排煙機が自動で起動:排煙口が1つ開くと、それをきっかけに排煙機が回り出す
  5. 防災センターに表示:どの排煙口が開いたか、排煙機が動いているかを表示する

ポイントは、排煙機のスイッチが「排煙口が開いたこと」だという点です。建基令126条の3では、排煙機は排煙口の開放に伴って自動的に作動するものとされています。先に排煙口を開け、それから排煙機を回す。換気扇でいえば、フタを開けてからモーターを回す順番です。排煙口が1つも開いていないまま排煙機だけを回すと、ダクトの中が強く吸われて傷めるおそれもあります。

ペン太ペン太
自火報の感知器があるのに、排煙のために別の煙感知器を付けることがあるんですか?
ハリタハリタ
あります。建築の排煙口や防火戸を動かす連動制御盤に、専用の煙感知器をつなぐ方式がよく使われます。自火報の受信機と一体の「複合盤」にして、感知器を共用することもあります。どちらの方式にするかは、建物の規模や、所轄の消防・確認検査機関との協議で決めるんです。
ここまでのポイント
  • 感知器 → 連動制御盤 → 排煙口 → 排煙機 → 表示の順
  • 排煙機は、排煙口が開いたことをきっかけに自動で起動する
  • 専用の煙感知器を使う方式と、自火報と一体にする方式がある

起動のしかた ― 手で開ける・離れて開ける・自動で開ける

手動開放装置の取付け高さ(壁付き0.8〜1.5m、つり下げおおむね1.8m)と、自火報の感知器・スプリンクラーヘッド・専用の煙感知器・手動操作から自動手動切替装置を通って排煙設備が起動する関係を示した図
排煙設備を起動する方法は、手動・遠隔・自動の3つです。

排煙設備は、火災のときに確実に動かなければなりません。そのため、起動の方法を何通りも用意します。

起動の方法 だれが・何が 主な決まり
手動(現地) 近くにいる人が、手動開放装置のひもやボタンを操作 排煙口には手動開放装置を設ける。壁付きは床から0.8〜1.5m、つり下げはおおむね1.8m。使い方を表示する(建基令126条の3)
遠隔(防災センター) 防災センターや中央管理室の係員が操作 高さ31mを超える建物などでは、中央管理室で制御と監視ができるようにする
自動(建築の排煙) 煙感知器と連動する自動開放装置 排煙口は、手動・煙感知器連動・遠隔操作で開いたとき以外は閉じておく(建基令126条の3)
自動(消防の排煙) 自火報の感知器の作動、閉鎖型スプリンクラーヘッドの開放など 手動起動装置を防煙区画ごとに設け、自動起動はこれらと連動させる(施行規則30条)
建築基準法施行令126条の3、消防法施行規則30条をもとに作成

自動と手動の両方がある場合は、防災センターに自動・手動の切替装置を設けます(東京消防庁の技術基準)。点検や工事のときに自動を切って、誤って排煙口が開かないようにするためです。

⚠️ 手動開放装置が「使えない位置」になっていないか

内装の改修で、手動開放装置の前に棚や間仕切りができてしまうことがあります。高さが基準どおりでも、手が届かなければ意味がありません。改修の図面では、手動開放装置の位置と表示が残っているかを確認します。

ここまでのポイント
  • 手動開放装置は、壁付き0.8〜1.5m、つり下げおおむね1.8m
  • 消防の排煙の自動起動は、自火報の感知器やSPヘッドと連動
  • 防災センターに自動・手動の切替装置を設ける


止まる条件 ― 280℃のダンパーと復旧

排煙ダクトを流れる煙の温度が上がって280℃になると防火ダンパーが閉じ、その信号で排煙機が停止する様子を示した動く図解
動く図解:煙の温度が280℃になると、ダンパーが閉じて排煙機が止まります。

排煙機は、いつまでも回し続けるわけではありません。火が大きくなり、ダクトを流れる煙が高温になると、今度はダクトが火を運ぶ通り道になってしまいます。そこで、一般的な設計では、排煙ダクトに280℃で閉じる防火ダンパーを設け、ダンパーが閉じたら排煙機を止めます。

たとえるなら、台所の換気扇の奥に付いている防火ダンパーと同じです。ふだんは開いていて、高温になると閉じ、火がダクトを伝って広がるのを止めます。

場面 排煙設備の動き
ダンパーが280℃で閉じた 閉じたことを信号で知らせ、排煙機を止める。防災センターに表示する
防災センターで停止操作 係員や消防隊の判断で、手動で止める
停電した 建築の排煙は予備電源、消防の排煙は非常電源(30分以上)で動かし続ける
火災が終わった(復旧) 開いた排煙口を閉じ、排煙機を停止、ダンパーを元に戻す。排煙口は現地で手で閉じる方式が多い
一般的な設計の例。ダンパーの温度・位置・連動のしかたは、設計図書と機器の仕様で確認する
ここまでのポイント
  • 排煙ダクトの防火ダンパーが280℃で閉じたら、排煙機を止める
  • 停電しても、予備電源・非常電源で動き続ける
  • 復旧は、排煙口を閉じ、ダンパーを戻す(現地で手動の方式が多い)

ほかの設備との取り合い ― 空調・防火戸・給気・表示

排煙設備は、単独では役目を果たせません。煙をかき回さない、煙を閉じ込める空気を入れる状態を見せる。まわりの設備と組になって、はじめて煙がきれいに抜けます。

相手の設備 排煙のときの動き 理由
空調機 停止する 空調の風で煙をかき回したり、ほかの部屋へ送ったりしないため
防火戸・防火シャッター 閉じる 煙と火を区画の中に閉じ込めるため。同じ連動制御盤から動かすことが多い
給気機・給気口 排煙と同時に動く 出した分の空気を入れないと、煙が抜けにくい。消防の排煙では給気機も求められる場合がある
防災センター(総合操作盤 開放・運転・停止を表示 係員と消防隊が、どこで何が動いているかを一目で知るため
非常用発電機 停電時に排煙機へ電気を送る 排煙機はモーターが大きく、発電機の容量を決める要素になる
一般的な連動の例。建物ごとに設計図書の連動表(インターロック表)で確認する

防災センターの表示と操作については「建築消防|総合操作盤はいつ義務になるか|規則12条1項8号のイ・ロ・ハと2つの告示」で整理しています。空調停止、防火戸、発電機との関係は、このシリーズでこのあと1つずつ取り上げます。

ここまでのポイント
  • 排煙のときは空調を止め、防火戸を閉じる
  • 出した分の空気を入れる給気も大切
  • 状態は防災センターで表示。停電時は発電機が排煙機を支える


試験と点検 ― 開く・回る・止まるを確かめる

開く排煙口、排煙機の起動、手動で開く、防災センター、止まる条件、停電時の6つの確認ポイントを並べた図
竣工前の連動試験と定期点検で確かめる6つのポイント。
  • 開く排煙口:各感知器を作動させて、その感知器が受け持つ防煙区画の排煙口が開くか。改修で間仕切りが変わった建物は要注意
  • 排煙機の起動:排煙口が開いたら自動で回るか。回転の向きと風量
  • 手動で開く:手動開放装置の高さ・表示・操作のしやすさ
  • 防災センター:開放と運転が表示されるか。自動・手動の切替と遠隔操作
  • 止まる条件:ダンパーの閉鎖信号で排煙機が止まるか。空調が止まるか
  • 停電時:商用電源を切っても、非常電源・予備電源で動くか

試験のあとは、開いた排煙口を必ず閉じて復旧し、点検のために切った連動や自動・手動の切替を元に戻します。排煙口が開いたまま、連動が切れたままでは、次の火災で動きません。戻したことは記録に残します。

ここまでのポイント
  • 感知器ごとに、正しい区画の排煙口が開くか
  • 排煙機が起動し、ダンパーの閉鎖で止まるか
  • 試験のあとは、排煙口の復旧と連動の戻しを必ず確認

よくある質問

自火報と排煙設備はどのように連動しますか?

煙感知器が煙を見つけると、連動制御盤(自火報の受信機と一体の複合盤のこともあります)が排煙口に開放の信号を送ります。排煙口が開くと、排煙機が自動で起動して煙を屋外に出します。排煙口の開放と排煙機の運転は、防災センターに表示されます。

建築基準法の排煙と消防法の排煙は何が違いますか?

建築基準法の排煙(建基令126条の2・126条の3)は、在館者が避難する時間をつくるための設備です。消防法の排煙(消防法施行令28条・施行規則30条)は、消防隊が消火や救助の活動をする場所を確保するための設備です。建築基準法にもとづく排煙設備は、消防法の排煙設備として扱ってよいとされていて、1つの設備で両方の基準を満たすように計画するのが一般的です。

排煙口の手動開放装置はどの高さに付けますか?

壁に付ける場合は床から0.8m以上1.5m以下、天井からつり下げる場合は床からおおむね1.8mの高さです。見やすい方法で使い方を表示します(建基令126条の3)。消防法の手動起動装置も、防煙区画ごとに同じ高さで設けます(施行規則30条)。

消防法の排煙設備は、自火報と連動させる必要がありますか?

消防法施行規則30条は、自動で起動する場合は自動火災報知設備の感知器の作動、閉鎖型スプリンクラーヘッドの開放などと連動して起動するものとしています。東京消防庁の基準では、防災センターに自動と手動の切替装置を設けることとしています。

排煙機が止まるのはどんなときですか?

一般的な設計では、排煙ダクトに280℃で閉じる防火ダンパーを設け、ダンパーが閉じたら排煙機を止めます。高温の煙や炎をダクトで別の場所へ運ばないためです。また、防災センターからの手動操作でも止められます。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。