高圧の受電設備の単線結線図を見ると、PASの下に「DS」と書かれた開閉器があります。断路器です。名前に「断」の字があるのに、電流は切れません。では何のためにあるのか。この記事では、断路器のしくみ、遮断器との違い、操作の順番、図記号と種類を、動く図解で超基本から見ていきます。

結論

断路器(DS)は、点検のときに電路を切り離し、切れていることを目で確かめるための開閉器です。電流を切る力はないので、遮断器で電流を止めてから操作します。

  • 刃を倒すと、電路に目で見えるすき間ができる
  • 受電部ではPASの下、遮断器(VCB)の上に入る
  • 止めるときは遮断器→断路器、入れるときは断路器→遮断器
  • 単極形はフック棒で1極ずつ、三極形は3極同時に操作する
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

断路器は「目で見えるすき間」をつくる機器

断路器(DS:Disconnecting Switch)は、がいしの上に金属の刃が立っていて、その刃を受け金具から外すと電路が切れる、という単純なつくりです。刃が倒れると、電源側と負荷側のあいだに誰が見ても分かるすき間ができます。

刃を倒して切り離すがいしの上の刃が受け金具から外れる
すき間が目で見える切れていることをその場で確かめられる
電流は切れない電流が止まってから動かす機器
点検する人を守る作業中に電気が来ないことを形で示す

点検で受電設備の中に入る人にとって、「スイッチの表示が切になっている」だけでは不安が残ります。断路器なら、刃が離れていることを自分の目で確かめられます。これが、電流を切れない断路器をわざわざ入れる理由です。

たとえるなら
断路器は「はね上げた踏切の遮断かん」ではなく「外した橋板」
踏切の遮断かんは、列車が来ても上げ下げできます。断路器はそうではなく、川に渡した橋板を外すようなものです。人が渡っている最中には外せませんが、外してしまえば、向こう岸とつながっていないことが誰の目にも分かります。
ここまでのポイント
  • 断路器は、刃を倒して電路を切り離す開閉器
  • 切れていることを目で確かめられるのが役目
  • 電流を切る力はない

受電設備のどこにある? ― PASの下、遮断器の上

CB形の高圧受電設備では、電力会社側から順に、引込柱のPAS、断路器(DS)、遮断器(VCB)、変圧器と並びます。断路器は、受電部の入口で設備全体を切り離す位置にあります。

いちばん上はPAS引込柱にある区分開閉器
その下が断路器受電部の入口で切り離す
次に遮断器電流を切るのはここ
PF・S形は別受電点にLBSを使う形もある
機器 記号 主な役目
区分開閉器 PAS 電力会社の線と需要家の設備を区分する。地絡のときに開く
断路器 DS 点検のときに切り離し、目で見えるすき間をつくる
遮断器 VCB 負荷電流や短絡電流を切る
変圧器 TR 6.6kVを低圧に下げる
CB形の受電設備の例。PF・S形の受電設備では、受電点に限流ヒューズ付きの負荷開閉器(LBS)を使う。
ここまでのポイント
  • CB形の受電部は PAS → DS → VCB → 変圧器 の順
  • 断路器は受電部の入口で設備全体を切り離す
  • PF・S形では、受電点にLBSを使う


遮断器(VCB)との違い ― 電流が流れているときに切れるか

遮断器は、真空の中で接点を開いて電流を切ります。負荷電流はもちろん、短絡のときの大きな電流も切れます。断路器にはこの力がありません。電流が流れているときに刃を離すと、すき間にアーク(空気中を流れる強い放電)が出て、短絡や火災、やけどの事故になります。

遮断器は電流を切る負荷電流も事故電流も
断路器は切れない電流が止まってから開く
通電中に開くとすき間にアークが出る
2つで役割分担切るのは遮断器、見せるのは断路器
遮断器(VCB) 断路器(DS)
電流が流れているとき 切れる 操作しない
事故のときの大きな電流 切れる 切れない
切れていることの確認 表示で確かめる 刃のすき間を目で見る
役目 電流を切る・入れる 点検のために切り離す
一般的な性質。詳しい性能は、それぞれの機器の仕様で確かめる。
ここに注意!
「断路器も、名前に断とあるから電流を切れる」ではありません。
断路器は電流を切る機器ではありません。必ず遮断器で電流を止めてから、電流が流れていない状態で開きます。
ここまでのポイント
  • 遮断器は電流を切れる。断路器は切れない
  • 通電中に断路器を開くとアークが出る
  • 切るのは遮断器、すき間を見せるのは断路器

操作の順番 ― 止めるときは遮断器が先、入れるときは断路器が先

断路器を電流が流れていないときだけ動かすには、遮断器との順番を守ります。止めるときは遮断器が先、入れるときは断路器が先です。

停電は遮断器から電流を止めてから断路器を開く
検電して接地断路器の両側に短絡接地器具
復電は接地を外して付けたまま入れない
最後に遮断器ここで初めて電気が流れる
  1. 停電するとき 遮断器を開く → 断路器を開く → 検電器で電圧がないことを確かめる → 短絡接地器具を付ける
  2. 復電するとき 短絡接地器具を外す → 断路器を入れる → 遮断器を入れる

設備によっては、遮断器が入っているあいだは断路器を操作できないようにするインターロック(鍵や電気の仕組みで順番を守らせる装置)が付いています。それでも、手順そのものを守るのが基本です。操作の注意点と接地のしかたは断路器(DS)の基礎知識と安全操作のポイントで詳しく扱っています。

ここに注意!
「断路器を開いたら、すぐに作業してよい」ではありません。
断路器を開いたあと、検電器で電圧がないことを確かめ、短絡接地器具を付けてから作業します。
ここまでのポイント
  • 停電:遮断器 → 断路器 → 検電 → 接地
  • 復電:接地を外す → 断路器 → 遮断器
  • 電流を切る・入れるのは、いつも遮断器


図記号と種類 ― 単極形と三極形

単線結線図では、開閉器の記号の受け側(固定側)に短い横線を付けて断路器を表し、「DS」と書き添えます。製品には、1極ずつ操作する単極形と、3極が連結されて同時に動く三極形があります。

図記号受け側に短い横線
単極形フック棒で1極ずつ操作
三極形連結棒・ハンドルで3極同時に
定格の例7.2kV・200Aなど。仕様書で確かめる
種類 操作のしかた 見るところ
単極形 フック棒で1極ずつ開閉する 3極すべてが開いているか、1極ずつ目で確かめる
三極形 連結棒やハンドルで3極同時に開閉する ハンドルの位置と、刃の開きの両方を見る
操作方式には、フック棒・遠方手動・電動などがある(メーカー資料による)。定格電圧・定格電流は機器の銘板と仕様書で確かめる。
ここまでのポイント
  • 図記号は、受け側に短い横線の付いた開閉器
  • 単極形はフック棒で1極ずつ、三極形は3極同時
  • 定格は銘板と仕様書で確かめる

まとめ|結論

結論

断路器(DS)は、点検のときに電路を切り離し、切れていることを目で確かめるための開閉器です。電流を切る力はないので、止めるときは遮断器→断路器、入れるときは断路器→遮断器の順で、電流が流れていないときだけ操作します。

迷ったら、この順で確かめます。

  1. 単線結線図で、PASの下・遮断器の上にあるDSを確かめる
  2. 停電するときは、遮断器を開いてから断路器を開く
  3. 検電器で電圧がないことを確かめ、短絡接地器具を付ける
  4. 復電するときは、接地器具を外し、断路器→遮断器の順に入れる

よくある質問

断路器(DS)とは何ですか?

高圧の受電設備で、点検のときに電路を切り離し、切れていることを目で確かめられるようにする開閉器です。電流を切る力はないので、遮断器で電流を止めてから、電流が流れていない状態で操作します。

断路器と遮断器の違いは?

遮断器(VCB)は電流が流れていても切れ、事故のときの大きな電流も切れます。断路器は電流を切れず、切り離した場所に目で見えるすき間をつくるのが役目です。受電設備では2つを組み合わせて使います。

断路器を操作する順番は?

停電するときは、遮断器を開いてから断路器を開き、検電して短絡接地器具を付けます。復電するときは逆で、接地器具を外し、断路器を入れてから遮断器を入れます。

断路器の図記号は?

開閉器の記号の、受け側(固定側)に短い横線を付けて表します。単線結線図では「DS」と書き添えることが多いです。

単極形と三極形の違いは?

単極形は1極ずつフック棒で操作します。三極形は3極が連結されていて、ハンドルなどで3極同時に操作します。操作方式には、フック棒・遠方手動・電動などがあります。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。