避雷器や機器の仕様書、電験の電力科目に出てくる「絶縁協調」。用語集では一言で説明されますが、何と何を協調させるのか、6.6kVでは具体的にどんな数字になるのか、低圧ではどう考えるのかまでは分かりにくい言葉です。この記事は、この3つだけにしぼって説明します。

ペン太ペン太
用語集に「絶縁協調」ってあったんですけど、何と何を協調させるんですか?
ハリタハリタ
機器の「耐える力」と、避雷器の「抑える力」だよ。この2つのバランスをとるのが絶縁協調なんだ。
はじめての方へ:まず言葉の意味
雷が数百キロボルトの高い電圧でやってくると、避雷器が33キロボルト以下まで抑え、その下で耐電圧60キロボルトの機器が耐える、という絶縁協調の考え方を3コマで示す動く図解
ひとことで言うと
「絶縁協調」は、機器が耐えられる電圧と、避雷器が抑える電圧の組み合わせを決めて、雷などから設備を守る考え方です。
読み方
ぜつえんきょうちょう
どこで出てくる?
高圧受電設備の避雷器(LA)の選定、低圧のSPD(サージ防護デバイス)の選定、機器の耐電圧の仕様、電験の電力科目。

結論

絶縁協調は、避雷器・SPDで電圧を抑え、その下で機器が耐えるように、両方の数字を組み合わせる考え方です。6.6kVでは、避雷器の制限電圧33kV以下に対して、機器の雷インパルス耐電圧が60kVで、約1.8倍の余裕があります。低圧は、過電圧カテゴリⅣ〜Ⅰで段階的に考えます。

  • 抑える装置(避雷器・SPD)と、耐える力(耐電圧)の組み合わせ
  • 6.6kV:制限電圧33kV以下<雷インパルス耐電圧60kV
  • 避雷器は、機器の近くに、太く短い接地線で
  • 低圧:引込口4kV→分電盤2.5kV→家電1.5kV→電子機器0.8kV(150V以下)

この記事に出てくる言葉

読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。

言葉 読み方 やさしい説明
絶縁 ぜつえん 電気を通さないもので包んだり隔てたりして、電気が漏れないようにすること。
耐電圧 たいでんあつ 絶縁が破れずに耐えられる電圧。機器ごとに決まっている。
過電圧・サージ かでんあつ ふだんより高い電圧。雷などで一瞬だけ来るとても高い電圧をサージと呼ぶ。
避雷器(LA) ひらいき 高い電圧が来たときだけ電気を大地へ逃がし、電圧を抑える装置。
制限電圧 せいげんでんあつ 避雷器が雷の電流を逃がしているとき、両端に残る電圧。
SPD エスピーディー サージ防護デバイス。低圧で、避雷器と同じように電圧を抑える装置。
雷インパルス耐電圧 かみなりインパルスたいでんあつ 雷のような、ごく短い時間の高い電圧に耐える力。
商用周波耐電圧 しょうようしゅうはたいでんあつ ふだんと同じ50・60Hzの電圧を、決められた時間(1分など)かけても耐える力。
先に理解しておきたいこと

「絶縁協調」を理解するために、土台になる考え方を3つだけ押さえておきましょう。

1

電圧が高すぎると、絶縁は破れる

電線や機器は、絶縁物で電気を閉じこめています。ところが、絶縁物が耐えられる以上の電圧がかかると、絶縁が破れて電気が漏れ、ショートや火災、故障の原因になります。

2

雷などで、一瞬だけ高い電圧が来る

近くに雷が落ちたり、開閉器を操作したりすると、ほんの一瞬だけ、ふだんの何倍もの電圧(サージ)が電線に入ってきます。

3

すべてを強くするのは、高くつく

すべての機器を雷に耐えるほど強く作ると、大きく高価になります。そこで、電圧を抑える装置と、機器の耐える力を組み合わせて守ります。

絶縁協調とは? ― 「抑える」と「耐える」の組み合わせ

ペン太ペン太
全部の機器を、雷に耐えられるくらい強くすればいいんじゃないですか?
ハリタハリタ
雷は数百kVにもなるから、全部をそこまで強くするのは大変なんだ。だから避雷器で抑えて、その下で耐えるのさ。

雷のサージは数百kVにもなり、そのまま機器に入れば絶縁が破れます。かといって、すべての機器を数百kVに耐えるように作るのは現実的ではありません。そこで、避雷器(低圧ではSPD)で電圧を一定の値(制限電圧)まで抑え、機器はそれより高い耐電圧を持つようにします。この組み合わせを決めるのが絶縁協調です。

雷サージ数百kV
避雷器33kVに抑える
機器60kVまで耐える
余裕あいだをあける

大切なのは、抑えた電圧と耐える電圧のあいだに余裕をとることです。避雷器から機器までの配線や接地線でも電圧が上乗せされるので、ぎりぎりでは足りません。

たとえるなら
絶縁協調は、堤防と水門の組み合わせ
大雨のたびに町じゅうの家を高くするのは大変です。そこで、水門(避雷器)で川の水位を一定より上がらないようにし、堤防(機器の耐電圧)はそれより少し高く作っておく。この「抑える」と「耐える」の組み合わせが絶縁協調です。
ここに注意!
「避雷器があれば、機器の耐電圧は気にしなくてよい」ではありません。
避雷器は電圧をゼロにするのではなく、制限電圧まで下げるだけです。機器の耐電圧が制限電圧より十分高くなければ、避雷器があっても絶縁は破れます。
ここまでのポイント
  • 避雷器・SPDで、電圧を制限電圧まで抑える
  • 機器は、それより高い耐電圧を持つ
  • 2つのあいだに、余裕をとる

6.6kVの数字で見る ― 60kV・33kV・22kV・8.4kV

ペン太ペン太
6.6kVの避雷器と機器だと、どのくらいの数字なんですか?
ハリタハリタ
避雷器が抑えるのが33kV以下、機器が耐えるのが60kV。そのあいだが余裕だよ。

高圧受電設備で使う配電用避雷器と、6kV級の機器の数字を並べると、絶縁協調の考え方がよく分かります。

耐電圧雷60kV・商用22kV
避雷器制限33kV・定格8.4kV
ふだん約3.8kV
余裕約1.8倍
数字 何の値 意味
60kV 機器の雷インパルス耐電圧 雷のような短い高電圧に耐える力
33kV以下 避雷器の制限電圧(8/20μs・2.5kA) 雷の電流を逃がしているときに残る電圧
22kV 機器の商用周波耐電圧 50・60Hzの電圧に1分間耐える力
8.4kV 避雷器の定格電圧 ふだんの電圧や地絡時の電圧では動かないための値
約3.8kV ふだんの対地電圧 6,600V÷√3

避雷器が抑える33kVと、機器が耐える60kVのあいだには、約1.8倍の余裕があります。この余裕を食いつぶさないように、避雷器は守る機器の近くに付け、接地線はA種接地で太く短くします(高圧受変電設備の設計マニュアル⑤、避雷器LAの設置基準と接地線の太さ)。なお、制限電圧などの数字は、配電用避雷器の規格(JEC-203)の値です。

たとえるなら
数字の並びは、身長制限のあるゲート
機器の耐電圧60kVが「天井の高さ」、避雷器の制限電圧33kVが「通れる人の背の高さ」です。背の高さを天井よりかなり低くおさえておけば、少し背伸びしても(配線で電圧が上乗せされても)頭をぶつけません。
ここに注意!
「避雷器は、どこに付けても同じ」ではありません。
雷の電流が流れると、接地線や配線のインピーダンスで電圧が上乗せされます。避雷器から機器までが遠い、接地線が細く長いと、機器にかかる電圧が制限電圧よりずっと高くなります。
ここまでのポイント
  • 機器の雷インパルス耐電圧60kV、商用周波耐電圧22kV
  • 避雷器の制限電圧33kV以下、定格電圧8.4kV
  • 余裕は約1.8倍。近くに、太く短く


低圧の絶縁協調 ― 過電圧カテゴリⅣ〜Ⅰ

ペン太ペン太
家の中の機器にも、絶縁協調はあるんですか?
ハリタハリタ
あるよ。引込口は強く、奥の電子機器ほど弱いから、段階ごとにSPDで電圧を下げていくんだ。

低圧では、機器が建物のどこに付くかで過電圧カテゴリ(耐インパルス電圧カテゴリ)を4段階に分け、それぞれに耐えるべき電圧を決めています。雷サージは引込口から入ってくるので、引込口に近いほど強く、奥の電子機器ほど弱くてよい、という考え方です。

Ⅳ 引込口4kV
Ⅲ 分電盤2.5kV
Ⅱ 家電1.5kV
Ⅰ 電子機器0.8kV
カテゴリ 主な場所・機器 対地電圧150V以下 対地電圧300V以下
Ⅳ 引込口・電力量計 4kV 6kV
Ⅲ 分電盤・固定の設備 2.5kV 4kV
Ⅱ コンセントにつなぐ家電 1.5kV 2.5kV
Ⅰ 弱い電子機器 0.8kV 1.5kV

カテゴリの境目にSPDを置き、次の段の機器が耐えられる電圧まで、少しずつ下げていきます。SPDのクラスⅠ・Ⅱ・Ⅲの選び方は内部雷保護とSPD、家庭での雷対策は雷で家電が壊れるのはなぜ?で説明しています。表の数字は、IEC 60664-1(JIS C 60664-1)の耐インパルス電圧の表にもとづいています。

ここに注意!
「SPDを1つ付ければ、家じゅうの機器が守れる」とは限りません。
引込口のSPDだけでは、奥の電子機器が耐えられる電圧まで下がらないことがあります。カテゴリの境目ごとにSPDを置き、段階的に下げていきます。
ここまでのポイント
  • 低圧は、場所で過電圧カテゴリⅣ〜Ⅰに分ける
  • 150V以下なら4kV・2.5kV・1.5kV・0.8kV
  • 境目ごとにSPDを置き、段階的に下げる

まとめ|結論

結論

絶縁協調は、避雷器・SPDで電圧を抑え、その下で機器が耐えるように数字を組み合わせる考え方です。6.6kVでは、制限電圧33kV以下に対して雷インパルス耐電圧60kVで、約1.8倍の余裕があります。低圧は過電圧カテゴリⅣ〜Ⅰで、引込口ほど強く、奥ほど弱い機器をSPDで段階的に守ります。

絶縁協調を確かめるときは、この順で見ます。

  1. 守りたい機器の耐電圧(雷インパルス・商用周波)
  2. 避雷器・SPDの制限電圧(電圧防護レベル)が、それより十分低いか
  3. 避雷器・SPDが機器の近くにあり、接地線が太く短いか
  4. 低圧なら、カテゴリの境目ごとにSPDがあるか


よくある質問

絶縁協調とは何ですか?

機器の絶縁の強さ(耐電圧)と、雷などの過電圧を抑える装置(避雷器やSPD)の性能を組み合わせて、安全で経済的な設備にする考え方です。すべての機器をうんと強くするのではなく、抑える装置で電圧を下げ、その下で機器が耐えるようにします。

6.6kVの機器と避雷器の数字は、どう関係していますか?

一般的な配電用避雷器(定格電圧8.4kV・公称放電電流2.5kA)の制限電圧は、規格値で33kV以下です。一方、6kV級の機器の雷インパルス耐電圧は60kVで、避雷器が抑えた電圧と機器が耐える電圧のあいだに約1.8倍の余裕があります。

制限電圧とは何ですか?

避雷器が雷の電流を大地へ逃がしているときに、避雷器の両端に残る電圧です。この値が、守られる機器の耐電圧より十分低いことが大切です。

低圧の過電圧カテゴリとは何ですか?

低圧の機器を、建物のどこに付くかで4段階に分け、それぞれに耐インパルス電圧を決めたものです。対地電圧150V以下では、引込口(Ⅳ)4kV、分電盤(Ⅲ)2.5kV、家電(Ⅱ)1.5kV、電子機器(Ⅰ)0.8kVです(IEC 60664-1/JIS C 60664-1)。

避雷器やSPDは、どこに付ければよいですか?

守りたい機器のできるだけ近くに、太く短い接地線で付けます。接地線や配線が長いと、そのぶんの電圧が上乗せされ、機器にかかる電圧が制限電圧より高くなります。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。